キミの名を呼べば(全2巻)

 ストーリー・中川の通うエリート校には、国から派遣されている性欲処理用の女子が多数飼われている。その1人、「3号」は、かつて中川が初恋を意識した相手だったが・・・・



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2008〜9年に「鈴木みら乃」レーベルから頒布された作品で、原作としてマンガ作品があるそうです。
 
内容的には、近未来・・・と言うか架空の世界の学校が舞台で、そこには男子生徒を慰安するために淫売婦(少女ですが)たちが飼われていると。
 その1人に恋してしまった主人公が、彼女と深く心を通わせるまでにはなるが、しかしお定まりの破滅が待っていると・・・そういうオハナシ。
 要するに、売春婦に入れあげてしまったウラナリ青年が、義憤から売春宿に特攻するも、彼の身を案じた売春婦が「お兄さんは純情すぎる。コッチは商売なんだよ」と、顔では嘲笑い、心では泣きながら身を引く・・・みたいな、非常に古臭い悲恋ドラマが本質です。
 しかし、古いからツマラナイかと言えば、決してそんなことはありません。
 
互いに激しく惹かれ合いながら、しかし運命を嘆くしかない主人公とヒロインの心情描写には迫力があり、それは丁寧で心のこもった脚本の賜物でありましょう(あるいは原作マンガがそもそも優れているのかもしれません)。
 
クライマックス、2人が月光の中で結ばれるシーンの哀感は見事で、まことにお恥ずかしい話ですが、オイラはボロボロ涙がこぼれてしまいました。
 一方で、そうした文芸の充実がエロとしてはマイナスに働いており、「抜ける度」は極めて低い印象です。オイラ個人的には「1」くらいでしょうか。
 なぜならば、こんな哀しいオハナシを見てマスをかきたくなる人なんかいないだろうと思えるからです。
 ヒロインが男子生徒らにムチャクチャに輪姦されるシーンなどが多いですが、よほど鬼畜視聴者でないかぎり、コレで勃起するのは難しいでしょう。
 しかしそのことが、本作の価値を下げるということはありますまい。
 少なくともオイラは、哀しい話だけど、イイモノを見せてもらったと感じました。
 ラストシーン・・・かつて2人で飲んだ缶コーヒーが、学校の屋上で錆び付いている。そして主人公は、それを見ながら、今日もまた缶コーヒーを飲んでいる・・・・
 
青春の蹉跌を、「エロアニメ」がこれほど鮮烈に表現しうるとは!
 
切れ味鋭い文学作品のようなその完成度に、オイラは心から敬意を表します。
 抜くのには使えないけど、個人的にオススメ作品です。
(彩雲11型)


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