黒瞳皇(こくどうおう・全五巻)

 

 ストーリー・イシルは小国ボッサールの若き王だ。ロハンとジェルドという2つの大国に挟まれたこの国では、外交のバランスが何より重要。そんなイシルの元へ、両大国は、王妃候補として若い皇女をそれぞれ送り込んできた。どちらを選ぶべきなのか・・・



 ・今は亡きファィブウェイズレーベルから、2000〜2002年にかけて五巻構成で頒布された大作です。原作は人気PCゲーム。
 内容的には、小国の王がお妃候補二人をSM調教しちゃって、一方で大国を手玉にとって国も安泰、良かったねという他愛もないモノです。
 見た印象は「クソマジメ」としか言いようがありません。
 主人公イシルの立場や心情、そして取るべき政策、また調教される姫達の葛藤などが、微に入り細を穿って描かれています。
 見ているとまるで、ゲームのパラメータをどう調整すればいいのか、その攻略法をチクチク説明されているみたい。
 恐らくは、原作ゲーを出来るだけ忠実に再現しようとしてこういう構成になったのではと想像されます。もっともオイラはエロゲをやりませんので、おき様や長十郎様のようなゲームフリークならば、もっと違った感想を抱かれるのか分かりませんが。
 さて、かように真面目な作品作りには敬意を払いたいのですが、しかしエロアニメとして見た場合、本作は退屈に過ぎます。
 ボッサール国の立場、イシルの複雑な心情、そんなモノはナレーションでサラッと触れれば良かったのではないでしょうか。
 別にエロだからエロシーンだけ映せとは言いませんが、非エロの文芸も見せようとする場合、それが面白くなくては意味がないと思います。描いてもつまらないなら、バッサリ切って濡れ場を増やした方が良いに決まっているからです。
 本作ではその濡れ場も相当に力不足で、いちいち心情を独白しながらというシーンが多くて白けてしまいますし(我を忘れるのが濡れ場なのに、冷静に心中を説明されてもねえ)、絵的にもファイブウェイズらしい平板な印象で、視聴者のリビドーに訴えるような迫力を欠いています。
 五巻もの尺を割いて、丁寧に作劇をしたレーベルの誠意は本当に尊いですが、センスの垢抜けなさ故、それが上手く報われなかったという感じですね。
 「抜ける度」は1.5。
 凡作ではありますが、こういう尺や文芸に余裕のある作り方が贅沢になってしまった今、エロアニメの全盛期をしのぶ意味で見てみるのも良いかも知れません。
(彩雲11型)


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