黒の断章(全4巻)

 

 ストーリー・涼崎聡は私立探偵だ。助手であり養女でもある明日香と共に出かけたスキーリゾートで猟奇殺人に出くわした彼は、事件の謎を解こうと捜査を開始する。しかし目星を付けた容疑者は殺され、涼崎が犯人として疑われてしまうのだった。何とこの事件の背後には、過去に涼崎の記憶を奪った忌まわしい出来事が関係していたのだ!・・・



 ・そのまま舞台を雪山に移したなごりか、涼崎らが休日を過ごす宿に安藤は住んでいます。古書を貯蔵している杜松も住人決定ですし、製薬会社の福利厚生施設と言われてもホテルなのかマンションなのか社宅なのか釈然としません。探偵もので始まって真相がアレというヒドい顛末ですが、それは原作も然り。原作はアメリカ編を英語で収録するような描写の細かさ・繊細さが売りなので(存在を抹消されたもう一人の主人公・草薙に象徴される)、アレなシナリオの方を再現してもここが限界かと思います。ただオリジナル要素やアニメとしての組み立てには努力が感じられ、ゲームやってストーリー把握してから観れば比較的観られます。残念なのは核心を外していることです。まず佐藤が過去の事件の当事者で復讐のため殺されたこと。原作では事件に無関係で、殺された理由はこの作品の重要なテーマに関わります。また、裏のテーマ(神話)である某人物の正体が原作と別人です。ここを変えておいて『Mystery of Necronomicom(魔道書の名)』ではそれこそクトゥルー神話に失礼というもの。そもそも眼球をいじったり皮膚を剥いだりホラーを描こうとしている時点で根本的に原作から外れています。咲水(さくみず)遙を「さきみず」と誤読していることからも、アニメのスタッフがゲームのスタッフとあまりコンタクトをとっていないと想像されます。
そしてゲームではハードボイルドな主人公・涼崎もその風貌のためうっかり動画にすると変態に見えて危険です(モテ男なのに)。束ねたロン毛をほどくともはや汚れ役にしか見えません。和姦が陵辱に見えます。
第二章で魅奈の声が勝生眞沙子に変わったのは一身上の都合なのか前任が降ろされたのか定かでないですが、勝生眞沙子が悶えて嬉しいのは確かです。エロアニメとしてはほぼEDな本作の希望の光と言えるでしょう。「抜ける度」1…というかEDです。
(eternal白)

 ・ディスカバリーから4巻構成で発売された作品で、テロップにはセガサターン版のゲームが原作と出ますが、元々はアボガドパワーズという会社の出したPCゲームがネタとなっているのだそうです。
 オイラはサターン版のゲームを遊んだことがあるのですが、主人公の人称が分かりにくかったり(探偵とその友人とかいう配置になっているが、なんで探偵に統一しないのか不明)、サスペンスの盛り上げが稚拙だったりして今ひとつ良い印象がありませんでした。
 原作ゲームは日本編とアメリカ編という二部構成になっていますが、このアニメ版も1〜2巻が日本編、3〜4巻がアメリカ編となっており、ある程度忠実に原作をなぞっています。しかし日本編は舞台を原作の都会からスノーリゾートへと変えており、これは閉鎖環境のサスペンス性を強調したかったためと思われますが(吹雪によってリゾートマンションに降り込められる)、どうもその工夫が生かし切れていない気がします。
 さてこの作品はいわゆるクトゥルー神話をモチーフとしており、それも含めて原作のストーリーは評価が高かったようなのですが、オイラ個人的には実にくだらないストーリーだなあと思っており、ですから同じストーリーをなぞっているこのアニメ版もオハナシはつまらないと思います。
 クトゥルーを扱うのならちゃんとしたクリーチャーを出して欲しいところですが、せいぜいゾンビくらいしか出ませんし、ネクロノミコンの深い神秘性も全然出ていません。これではクトゥルー創造者のラブクラフトに失礼だと思います。つまり企画の大本から(オイラ的には)ダメなような気がします。そもそもわざわざアメリカくんだりまで行くようなオハナシでしょうか。マンション内でサクッと終わらせてオツリの来るような小スケールのストーリーと思いますが・・・・
 またエロとしては非常に弱く、各巻にちょっとずつそれらしいシーンが配置されているだけです。あくまでストーリーの繋ぎ的に挿入されているので、抜く目的にはほとんど使えないと思います。作画もあまり良くありません。
 総評としましては、大変失礼ながら、元々つまらなかったオハナシをシェイプし損ねてさらにつまらなくし、エロとしてのサービスも弱い凡作だと思います。
 こうなることを回避するためには、シナリオをもっとスリムに練り直し(アメリカ編はいらないと思います)、登場人物ももっと整理し、さらにエロ的サービスにももっと気を配るべきだったでしょう。インタラクティブ性のあるゲームと違い、アニメの視聴者はあくまで受け身なので、もっとストーリーでグイグイ魅せたり、絵としてのエロさでハッと刮目させたりしなきゃいけないと思います。
 「抜ける度」は1。
 ちなみに高田の姉御とか浅田葉子氏など、有名どころの声優さんが実名でクレジットされている点は楽しいです。
(彩雲11型)


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