マジカルトワイライト(全3話)

 ストーリー・魔法使い見習いのチップルは相当なおちこぼれで、今までに2回卒業試験に落ちている。四面楚歌な彼女は、藁をも掴む思いで、3度目の筆記試験に臨んだ。その結果は、言わずもがな散々なものであった。うなだれるチップル、そんな彼女を試験官は実技試験の出来次第によっては合格にしてもよいと言って慰める。肝心の試験内容は、人間界の司という男に好意を持ってもらうことであった。やる気を取り戻したチップルは意気揚々と人間界に向かった。その道中で、同じ試験課題を与えられたライ
バル、アイリンと出会う。彼女は魔法使いとして天性の実力をもっているが、その不真面目な性格が災いして、チップルと同じ境遇に甘んじていた。司、チップルそしてアイリンのドタバタ活劇が今にも始まろうとしていた。




 ・1995年にピンクパイナップルから発売されたアダルトアニメ。昔のピンパイ作品は、無論駄作もあるが、丁寧に作られているものが多い。この作品も例外にもれず、私は好感を持てたので、レビューすることとした。最初に、私がアダルトアニメについて思っていることを一般論的に述べたいと思う。本来は、個別レビューの場で、一般論を展開することはマナー違反なのかもしれないが、他に私の考えを表明するべき良い場所がないので、許してもらいたい。
さて、アダルトアニメを評価する上で、何を観点にすれば良いか?そのアニメのキャラクターの魅力、ストーリーの出来具合及びエロさ等、観点にすべき項目は色々と挙げられる。今回は、その中でもキャラクター、それも女キャラについて、考察してみようと思う。私たちはどのような女キャラに萌えるのか?これはアダルトアニメを鑑賞する上で、避けては通れない重要なテーマだ。まずは、「萌える」という動詞について定義しなければならない。この単語は昔から存在したが、歪曲して使われるようになったのは、比較的最近の話だ。「萌える」はネット上のとある空間で頻繁に用いられる、半ばネット用語のようなものであったが、近年はマスコミまでもが面白がって使うようになり、もはや正確な意味が分かりづらくなっている。もっとも、半ネット用語に正確な意味を求めること自体間違っているのかもしれないが。しかしながら、俗語であるとは言え、なかなか味のある表現なので、私はあえてこの単語を使わせてもらった。そして2次元創作物の女キャラに性的興味を示すという意味でそれを用いた。
萌えるための重要なポイントとして、私個人としては4つ挙げることができる。それは、「顔形」、「性格」、「言葉遣い」、「声色」である。最初に挙げた「顔形」は最も重要である。ある人が、「一般的な哺乳類は嗅覚により性欲を覚える。一方で、私たち人間をはじめとする霊長類は視覚により性欲を覚える。」と明言したように、それはエロさにとっても重要なファクターである。私はロリ系の顔形が好きである。これについては以前の私のレビューで何回か言及したと思うので、説明は省かせてもらう。

次に、「性格」についてであるが、私は女らしい性格を好む。男らしさ、女らしさという概念は、社会が後天的に人にそう思い込ませることにより生ずる、これを社会的性別、すなわちジェンダーと言う。
フェミニストたちは声高にこのように叫び、ジェンダー・フリー、ジェンダー・フリーと馬鹿の一つ覚えのように毎日これを連呼する。以前のレビューから察しがつくとは思うが、私はフェミ嫌いである。
だから、私は彼女たちの意見とは真っ向から対立する。が、彼女たちが定義したジェンダーという言葉の意味は、少なくとも一部は正しいと言わざるをえない。確かに、女らしい性格とはこのことだとしっかり定義することは難しい。しかしながら、私は感覚的にそれを表現することはできる。「淑やか」、「慎ましい」、「家庭的」等、私の貧弱な語彙力では、このようなベタな表現しか思いつかないが、日本語には口語文語問わず、女らしさを表現する良い言葉が他にもたくさんあると思われる。なお、これ
らの言葉にマイナスイメージを抱く人は、現代のニヒリズムに毒されているのであろう。
性格から見た女らしさとはこのように感覚に大きく依存し、フェミに攻撃されやすい脆さをもっている。一方で、我々日本人は女らしさとはこれだと断言できる他国に誇るべき特異的な表現手段を有している。それが「言葉遣い」である。女らしい言葉遣いは、一般的に女性語と呼ばれている。それは「わ」、「よ」、「かしら」、「あら」等、助詞と感嘆詞が大部分を占め、その数はそんなに多くはないが、「わよ」、「わね」等、助詞同士を組み合わせることで、それなりバリエーションが増え、女らしさを存分に表現できる手段となる。私は言語といえば、日本語と英語しか知らないので、断言することはできないが、女性語は日本特有のものであろう。少なくとも、助詞が存在しない英語にはない(sweetieやyummyなど、女が好んで使う表現は一応存在はするようである。)。私は女性語を使う女キャラを大いに好む。しかし、残念なことに、女性語を安定して使ってくれるのは、私があまり好かない熟女キャラしかいない。一方で、ロリキャラが女性語を使うことはまずない。よしんば使ってくれるとしても、安定感はほとんどない。この傾向は近年とくに顕著である。昔の作品ほど年齢設定に関係無く、女性語を使う女キャラの割合が増える傾向がある。しかしながら、アダルトアニメでは、昔から女性語を安定して使用する若い女キャラは案外少ない。後でレビューするマジカルトワイライトに出てくる主要女キャラ、チップルとアイリンは頻繁に女性語を用いるが、場面によっては、用いたり、用いらなかったりとあまり言葉遣いに統一性がない。アダルトアニメの脚本家は、個々のキャラクターの言葉遣いの統一性にあまり神経を使わないのであろうか?
最後は、「声色」である。これに関しては、私は前の3つほど気にしない。もちろん、声優はかわいい声でかつ演技力があるに越したことはないが。声優好きには大変失礼な表現であることを承知の上で、私はあえてこう言いたい。声優オタはキモいと。萌えるべきは特定のキャラクター自体であって、その声を演じる声優ではないはずだ。声優オタは例えるならば、女よりもむしろ彼女が履いている下着に興味を示す下着フェチのようなものだ。関心をもつべき対象か完全に別方向に行ってしまっているのである。言っておくが、声優は、脚本家が用意したセリフを忠実に音声化するだけだ。彼女たちはある時は少年役を任されるかもしれない。または、淑やかで言葉遣いが綺麗な女キャラを演じ後に、今度は、それとは正反対の粗暴で言葉遣いが汚い女キャラを演じるかもしれない。すなわち、萌えキャラを演じた声優が、次にはウザいキャラの声役を買って出ることは十分に有り得るわけだ。私はその時、確実に萎えるであろう。個々の声優の名前とその声をしっかりと把握し、しかも彼女たちがどんな役回りをしたことがあるのか、リストまで作っている声優オタを私は理解することができない。長くなったが、これで
女キャラについての考察を終わらせてもらう。
さて、本題のマジカルトワイライトのレビューを始めたいと思う。マジカルトワイライトは全3話から成る。そして物語の内容で区切るとするならば、1話と2-3話に分かれる。私は1話の出来のほうが良かったと思う。その理由は後述する。1話で出てくる主要キャラは、司、チップル、アイリン、リブそして司の友人である。ヒロインであるチップルは女らしく、そしてなによりも恋愛に関して一途であり、私のお気に入りのキャラである。一方、司は、2回大学入試を滑って、もう後がない予備校生で、最初はヘタレ
臭を撒き散らしていたが、1話に限って言えば、物語の中盤から非力でありながらも、チップルに身の危険が迫ると、体を張って彼女を守ろうとするなかなか男気のある奴であることが分かる。そんな司に徐々にチップルは惚れていったのであろう。アダルトアニメにおける男キャラは、あくまで女キャラを引き立てるための脇役に徹するべきではあるが、私は、男キャラの立ち回りはそのアダルトアニメの価値を大きく左右する重要なファクターであると考えている。めったには存在しないが、女キャラしか出てこず、エロシーンがレズのみのアニメに私が感銘を受けることは決してないだろう。アダルトアニメにおける男キャラについての考察はいずれどこかのレビューでやってみたいと私は思っている。アイリンは、チップルのライバルで、色気で司を魅了しようとするが、常に失敗に終わってしまう。彼女には性悪なイメージが漂っているが、実はかなりのお人好しである。そのことは3話目でより顕著となる。リブは黒魔法界の生徒で、チップルたちが司を幸せにすることを課題としているのに対し、彼女は司を殺すことを実技試験の内容としている。そんな物騒な彼女ではあるが、軟派な司の友人の性的テクニックに溺れて、彼の虜となり、すっかり課題のことなんか忘れてしまう。まあ、何はともあれ、リブと司の友人は物語の間をもたすために存在する脇役にすぎない。1話目の良い点は、チップルと司のキャラ設定が良かったのと、出会いから相思相愛に至るまでの彼らの経緯をしっかりと描いていたところにあると私は思う。
2-3話目は、残念ながら、1話目ほどの面白さを感じることができなかった。なぜならば、2話分も割いてまでやる内容とはとても思えず、展開がだれてしまったのと、時間をかけてストーリーを展開しているにも関わらず、チップルたち登場人物の行動や心理の描写がイマイチで、彼らの行動が奇抜に見えてしまったからである。2-3話目は温泉宿が舞台で、主要キャラは司、チップル、アイリン、宿屋の女将の綾子そして彼女の娘の稔である。ちなみに、稔の年齢は16歳である。2002年に発売されたDESCOVERYの義母
妹のヒロインの年齢は、規制によるものかどうかは分からないが、18歳で、同級生の主人公をお兄ちゃんと呼ぶ矛盾をきたしていたが、1995年当時は、2次元物に限って言えば、年齢規制がもっと緩やかだったのだろう。現行児童ポルノ法では、16歳を児童とみなすらしい。16歳の人間を児童と呼ぶとは、彼らをもう立派な大人であると断言するよりもふさわしくないと思うのは私だけだろうか?一方で、チップルとアイリンの年齢は一体いくつだろうか?物語中で、それについて触れている箇所は無い。アイリンがしきりにタバコをふかしているところを見ると、20歳以上か。しかし、20歳未満でタバコを吸う奴は現実でもたくさんいるわけで、この描写だけで年齢を判断することはできない。2-3話目の悪いところは、この段落の最初に書いたこともそうだが、さらに悪いのは、司の行動だろう。1話目の司は、どんなにアイリンが色気を使おうとも、チップル以外とは決して淫行を行おうとはしなかった一途な男として描かれていた。一方で、2-3話目の司は、綾子であろうが、稔であろうが、誰これ構わずセックスしまくる。これじゃ、一途に司を愛しているチップルが、いくらなんでも可愛そうになってくる。司が綾子とセックスをしたことは、3話目でチップルにばれる。その時のチップルの行動は実に訳がわからない。綾子と稔は喧嘩をしていて、稔は家出することを欲していた。チップルは、司の不倫を知った直後、何を思ったのか、当然稔の願いを聞き入れて、彼女たちが肉親であるという事実を魔法の力により忘却させた。人間の記憶を操作することは、魔法使いの世界では禁じ手らしく、そのペナルティとして、ライバルであり、かつ監視役でもあるアイリンが、人間界でチップルと出会った全ての人間から彼女との思い出を消し去った。もちろん、司も例外ではなかった。チップルのこれらの一連の行動は、浮気をした司に対する怒りが原動力となっていると考えるのが妥当だろう。彼女は故意に禁じ手を犯して、自分を欺いた司との決別を決意したのだとするならば、彼女のこの突発的な行動に納得はいく。しかし、彼女は、アイリンが司の記憶を奪うことを執拗に拒絶していた。チップルは司の浮気を知った後でも、彼への愛が冷めていなかったのだ。そうなると、チップルが禁じ手を冒した理由が全く説明つかない。唯一考えられるのは、一時的にヒステリーになり、行動の見境がつかなくなったからかもしれない。司との関係と旅館で偶然出会った親子とのそれを天秤に掛けた場合、彼女が冷静だったならば、間違いなく前者を重要視するはずだから。その後の稔の行動も訳が分からない。鬱陶しい親から離れることができて、心の底では寂しさがあるのかもしれないが、少なくとも一時的には清々したはずだ。彼女は芸能プロダクションからスカウトされていて、都会に行くことを望んでいた。ならば、彼女は期待に胸を膨らませ、まずは都会に行くのが道理だ。しかし、彼女はチップルが魔法を使ってから一日もたたないうちに川への投身自殺をはかる。結果的に、司に助けられるのだが、彼女の自殺理由はこうだ。育ての親(実の肉親であるが、彼女は魔法でそう思い込まされている。) が自分に冷たいから。おい、都会に行く話はどうなってしまったのか?スカウトマンに騙されたとか、厳しい競争の後、結局芸能人になれなかった後の自殺なら分かるが、いきなり彼女を自殺させる設定は、今までの展開を考慮に入れると、少し無茶な気がする。司と彼女はその後、いきなりセックスを始める。この時点の司はチップルとの思い出が魔法に
より欠落しているため、この行為はそれほど罪深くはないのかもしれないが、1話目の彼の一途なイメージはここまでくるともはや微塵もなくなってしまった。
この物語は、結果として、アイリンが彼女の良心により、司の記憶を取り戻したことによって、彼とチップルとの関係が元の鞘に収まることでエンディングを迎える。チップルは物語の最初から最後まで司に一途で、可愛らしく好感を持てるキャラクターであった。その一方で、2-3話目の司は、色々な女とセックスを楽しみ、その際、それぞれの女に気の利いた甘い言葉を何のためらいもなく、平気で投げかける調子の良い男に私には映った。2-3話目は、男キャラの設定の不出来で、物語の質が悪くなる良い見本であると言えよう。しかしながら、アダルトアニメにおいて、エロシーンをたくさん作らなければならない都合上、男キャラが移り気になるのはある意味しかたがないのかもしれない。抜ける度は、昔のピンパイの特徴か、全然エロくないので1とさせてもらう。

(りぷとー)


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