超神伝説うろつき童子・完結篇

 ストーリー・未来篇、放浪篇で登場した超神は、実は偽者で、ヒミがそいつをやっつけて、その戦いのショックで、天邪鬼は、明美が超神を宿してから100年後の世界にワープしたらしい(棒読み)。




 ・本作は名作として誉れの高いうろつき童子シリーズの黒歴史。作画、キャラ設定、ストーリー、どれをとっても誉めるところが見つからない。むしろ輝かしい歴史に泥を塗ったことに対する叱責の念が生まれるぐらいである。
 物語は超神(偽者だったらしい、以下超神(偽))と狂王、ヒミが対峙するところから始まる。一応、前シリーズ、放浪篇の続きという設定である。しかし、腑に落ちないのが、なぜ超神は実は偽者でした等という今までのシリーズを全否定するような陳腐なオチを冒頭に据えたのだろうか?しかも、未来篇から登場した物語の鍵となる種族、魔獣は存在すらなかったことにされている。当然、武獣、アレクトー、彼らの子供(シーザーズ・パレスのメインコンピューターが、彼こそが世界の運命を変えると仰々しく予言した。)は登場しない。これは、制作者が未来篇、放浪篇をなかったことにして仕切り直したいという意思の表れと捉えることができる。ただ、ヒミだけは、制作者のお気に入りだったのか、中途半端に本作での役回りが用意されている。未来篇、放浪篇を否定したがっているにも関わらず、その最大の遺産ともいえるヒミを残したことによって、ストーリーは冒頭から破綻している。どうせなら、狂王ことヒミすらいなかったことにし、初期3部作以外の全シリーズをなかったことにすれば、本作のストーリーは、かなりわかりやすくなっただろうに。もっとも、たとえそういう設定だったとしても、本作はタイトルに「うろつき童子」と付けることすらおこがましい駄作という事実に変わりはないだろうが。
 超神(偽)とヒミは対峙した途端にセックスを始める。その様子を解説役の天邪鬼がたんたんと説明し始める。このエロシーンはエロくないどころか、憎悪すら覚える。理由を箇条書きにすると、
@ ヒミが超神(偽)とのセックスを嫌がるどころか楽しんでいるから。
放浪篇ではヌードシーンすらほとんどなかったウブなヒミがなぜ?しかも、相手は敵であるはずの超神(偽)である。最も萎えたのが、淡い恋が芽生えた相手、魔獣、イダテンの存在を彼女が完全に忘れていることだ。本作では魔獣がいなっかったことにされているから、しかたないのかもしれないが、これではあんまりである。そもそも未来篇は、イダテンが殺されたことによる悲しみで狂王の力が覚醒したヒミと超神(偽)が対峙するところで終わっている。この時のヒミの心境を物語中でフォローぐらいしろ、それが本作の設定の都合上、出来ないのなら、冒頭でわざわざヒミを出すなと言いたい。後で調べてわかったことだが、超神(偽)とヒミのエロシーンは、放浪篇の総集編での追加カットの使い回しらしい。制作者は、使い回しで時間稼ぎをするために、どう考えても本作で浮いている超神(偽)とヒミのエロシーンを冒頭で挿入したように思えてならない。
A ヒミがおばさん顔になっているから。
未来篇、放浪篇のヒミは、制作者が狙ったのか、生粋のロリキャラだったはずだ。それをつまらんエロシーンのためだけにおばさん顔にするとは何事か。この様子を天邪鬼が「みるみるうちに成長なされて・・」と必死にフォローしている様は、怒るというよりも笑っちゃうぐらいただただあきれる。これは放浪篇のユフラの悪夢を見事に再現しているといえる。
 ヒミは超神(偽)の精気をセックスで吸い尽くし、超神(偽)を絶命させる。天邪鬼は「狂王ヒミさまは真の超神が眠る大阪城の結界を見事守りぬかれた。」と説明している。このセリフで思い浮かぶ疑問は、
@ 超神(偽)と狂王は敵対する存在ではなかったのか?それなら、狂王が超神を守りぬいたという表現はおかしい。
A このセリフだけでなく、天邪鬼はこのシーン全般に渡って狂王に対し、柄でもない敬語を多用している。そもそも狂王、ヒミと今まで呼び捨てにしていた男が突然狂王様、ヒミ様と畏まっている。かつて狂王を倒すと息巻いていたこともあるこの男の豹変振りは何だろうか。本作でその説明は皆無である。
このように本作は一つ一つのセリフにつっこみ所が満載である。物語の伏線未消化はある程度しょうがないわけであるが、もはやそういったレベルではない。物語の体をまるでなしていないのである。
 超神とヒミの闘い(笑)はかなり激しかったらしく、時空がゆがみ、一気に100年の歳月が流れたというオチで冒頭は終わる。天邪鬼がこの辺りをちゃちゃっと短文で説明するが、正直状況がよくわからない。制作者自身すら理解していない/できないのではなかろうか。100年後の日本では、脈絡も無く破壊神、南雲が再び破壊活動を始めていた。南雲は未来篇でファブネルに殺されたはず・・・というつっこみは今さら野暮だろうか。それに呼応するかのように、明美は超神を出産する。未来篇で明美が生んだのが超神(偽)だったのなら、明美は再び妊娠して、出産? ・・・もう未来篇との繋がりを考えるのはよそう。
本作はうろつき童子の同人誌的アナザーストーリーだ。あの名作シリーズとは全く関係のない代物だと考えるべきだと自分に言い聞かせた。
 超神は誕生してまもなく、両性具有の新人類を誕生させる。このリーダー的存在がミズチと呼ばれる人物である。ポジション的にはミュンヒハウゼンのような役回りなのだが、魅力が皆無である。うろつき童子シリーズの敵(主人公に敵対しているという意味で用いた)は、仁木、ミュンヒハウゼン、シーザー等、一癖も二癖もあるが、魅力的かつ印象的なキャラで占められていた。敵キャラが際立っているか否かが物語の優劣を決めるのにいかに重要かというのを思い知らされたしだいである。ミズチは天邪鬼の妹、恵をレイプする。別にたいしたことはないが、ここが本作の一番の見所といえるかもしれない。このシーンでミズチは奇妙なことを言う。恵は三界で最も強い力を持つ人物らしい。今さらこんな設定を場当たり的に追加されてもなあ・・・やはり恵が一番輝いていたのは、ヒロイン扱いを受けていた魔胎伝の時である。それ以外のシリーズでの彼女は微妙である。
 天邪鬼周辺の人物といったら、恵の他に黒子がいる。彼は初期3部作の第3話で覚醒南雲に殺される。が、なぜか本作では生き返っている。生き返った理由は、もちろん説明されず。未来篇、放浪篇がなかったことにされたのは目をつぶる(本当はつぶりたくない)にしても、初期3部作で登場人物がどうなったかくらいはしっかり把握して作れよと製作者に言いたい。
 超神を出産し終えた明美は大阪城で静かに眠っていた。100年経っても、外観は中学生(本作では高校生)のままである。これも超神のなせる技か。初期3部作のヒロインにまた会えると少しうれしかったが、それはまたすぐに失望に変わった。髪形が違うとはどういこうことよ?明美のトレードマークはツインテールにあったはずだ。それがストレートのロングヘアになっている。作画が全く異なる上に髪型も違う。これでは別人です。本当にありがとうございました。今思えば、明美は初期3部作、第1話「超神誕生篇」の時がダントツにかわいかった。でも、残念なことに出番が少ないんだよな・・・
 眠りから覚めた別人、明美(笑)は破壊神と化した南雲と再び出会う。そしてここで、初期3部作、第3話「完結地獄篇」の名シーン(明美が「南雲君!殺してぇーー!!」と叫ぶシーン)が流れる。ただし、このシーンは「完結地獄篇」の中に組み込まれていて始めて名シーンと言えるわけで、それをただコピーペーストしただけでは、ただの使い回しである。最初のヒミのエロシーン、BGM、そしてこれと本作は使い回しのオンパレードである。
 ラストは、天邪鬼が超神に向かっていくシーンで終わる。続編が予定されていたのだろうが、制作者の一人が逮捕されたとかでめでたく(笑)打ち切りになった。たとえこのような事件がなかったとしても、この出来栄えではどっちにせよ打ち切りになるのは時間の問題だったと思われる。本作のタイトルは「うろつき童子 完結篇」であるが、「うろつき童子 黒歴史篇」と言うほうがふさわしい。私は、名作になり損ねた駄作、放浪篇の補完を望んでいた。伏線などどうでもいい、超神など出てこなくていい、壮大でなくていい、だからイダテンとヒミのラブストーリーを見てみたいと心のどこかで願ったが、私の期待とは180度違う別の路線を「うろつき童子シリーズ」は選び、そして「完結」してしまったようだ。猛き者も終には亡ぬ、偏に風の前の塵に同じ。抜ける度は1。
(りぷとー)


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