東京鎮魂歌(トーキョーレクイエム)

第1話 淫性の処術

 ストーリー・火・風・水・土の巫女を集めようと暗躍する組織と巫女を守る組織がせめぎあう東京(たぶん)。火の巫女焔邑(ほむら)は自分が巫女と知らぬまま渦中に飲まれていく。刺客が放った羽が焔邑の身体に宿り眠れるサラマンダーを呼び覚ます。




 ・かなり主観的なレビューになることを先にお詫びします。それはこの作品の特殊な印象を表しているものでもあります。

「純粋にエロい」「キャラが可愛い」「脚本・演技が良い」「見せ方がうまい」「リアリティーがある」「意欲的である」など、心に残る作品には何かしら武器があるものだが、そういうものは本作にはない。荒削りだが見所もある、努力賞くらいのものに見える。それなのに、この作品がとても好きだ。
それはヒロインの魅力といえるが、容姿はちょっとクセがありいまどきのヒロインにしてはもう一つ。長髪の上に短髪のカツラをかぶったようなヘンな髪型で(マジでヘン)、開始早々ダンディーなオジサマに売春。劇中の台詞も「絶対にイヤ!なんであんたなんかにタダで触らせなきゃいけないのよ」と、何か飛んでいるが、そんな彼女の存在にはなぜか厚みがある。
18禁の実写とアニメの大きな違いは、実写は(最低限)男と女とベッドだけあればいいのに対しアニメはさらにストーリーが要るという点にある。30分間がむしゃらにただ愛し合うアニメというのは現実的に無理だろう。しかし(市販できないけど)既存の好きなアニメキャラのあられもない30分OVAなら見たい気がする。それは簡潔にいうと、キャラクターにストーリーが見出せるか否かの差だ。淫らに造られていても裸の彫刻に欲情するのは難しい。
要するにあまり意識されないが、しらけず集中して観るには土台となるストーリーが不可欠である。女の子が大勢登場するのに軽薄な印象の作品の一因はストーリーの不足にある、と思う。逆に、自分の中でストーリーを築く妄想力があれば設定の薄い作品も楽しめる。(小学生は経験がない分妄想するから保健の教科書程度でも結構テンションが上がる)
焔邑はたまに容姿が乱れる。演技もたまに流れる。だが彼女はヒロインによくある模範的美少女でなく、ただの欲求不満でもない。別に正義にも愛にも燃えていない。そのことが存在に厚みをもたせ、アニメ制作上の欠点を人間くささとして取り込んでしまう正の連鎖が生まれている。それほどリアリティーを描けていない本作で彼女に躍動感のようなものを感じられるのはそのせいだろう。
「大ヒットコミック完全アニメ化」らしいのでオリジナルやゲームのアニメ化と比べてストーリー・世界観がしっかりしている、ということも考えられる。
という訳で、そう美人でも可愛いくもないのにやたら好きだ、というのがヒロイン及びこの作品そのものに対する印象に近い。

「たいへんよくできました」「よくできました」「がんばりましょう」でいうならこれは「よくできました」級のアニメだ。それが「たいへんよくできました」級のアニメより魅力を放っているのは偶然の産物か原作コミックの力か単に筆者の嗜好にピンポイント爆撃しただけかわからないが、堂々の「抜ける度」5を送りたい。
(eternal白)


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