夜勤病棟 Karte. 1

 ストーリー・聖ユリアンナ病院・産婦人科に非常勤として雇われた比良坂竜二は、そこの医局長が、かつての彼の性奴隷・神宮寺成美と知り驚愕する。彼は彼女が復讐するために自分を呼んだと勘ぐった。
彼の予想とは裏腹に、彼女は彼を全く恨んでいないようなそぶりを見せ、加えて、あることを彼に依頼する。それは、特定の看護婦を上流階級の男患者に奉仕する雌奴隷に仕立て上げるというおぞましい計画であった。第1の犠牲者は、七瀬恋であった。




 ・アダルトアニメ業界において一大センセーショナルを巻き起こしたシリーズの第1作目。このシリーズが人気を博した理由はいくつも考えられる。動画のレベルが高いのは言うまでもないが、それだけではない。最も大きな要因はやはり惜しげもなく見せるスカトロ描写であろう。しかもそれはありきたりの放尿ではなく、なんと脱糞である。脱糞と聞くと、たいていの人間はひくだろう。実際、実写における脱糞シーンはグロ画像以外の何ものでもないだろう。しかし、アニメでは違う。アニメの美女が脱糞する様は全然グロくなく、むしろエロい。ともかく、良くも悪くも、脱糞シーンがあるのとないのとでは、視聴者に与えるインパクトがまるで違う。このシリーズは、平凡なセックスシーンに終始していた今までのアダルトアニメ業界に革命をもたらしたと言えるだろう。しかし、それと同時に深刻な問題をもたらした。視聴者にインパクトを与え続けるために、スカトロ描写を1つの作品に何回もそしてより過激に見せなくてはならなくなってしまったのだ。スカトロ描写はその特性ゆえに決して万人受けするわけではない。私のように評価する人間ばかりではないのだ。アダルトアニメ市場は非常に小さい。一つのことにこだわり、消費者を減らすことは製作者にとって死活問題なのである。そのために危険な冒険はできず、製作者は結局当たり障りのない平凡なセックスシーンしか描けなくなってしまう(ビデ倫等の委員会の圧力のせいでもあるだろう)。こうなると、私のようなスカトロ描写称賛主義者にとっては、アダルトアニメはもはや魅力的なものではなくなる。私にとって、スカトロ描写を超えるインパクトのある描写は未だに存在しない。もはや初めてスカトロ描写を見た時の初期衝動に似たような感覚を与えてくれるアダルトアニメは開発不能なのかもしれない。今やアダルトアニメ業界は風前の灯である。私のようにどのアダルトアニメを見ても、決して大きな感動を得ることが出来ない人間が増えたせいかもしれない。
比良坂竜二という男の存在もまたこのシリーズを際立たせる。現在アダルトアニメの主人公のほとんどが男か女か一見では分からぬような女々しいやつらばかりだ。対照的に、彼は現代の価値観ではとてもハンサムとは言えないが、良く見ればどうしてなかなか渋くて男らしい顔をしている。彼の性格は非常に冷酷無比である。実際鑑賞すれば分かるとおり、彼の鬼畜な行動は鬼畜系キャラとしてそれなり有名な臭作や鬼作のそれをはるかに上回っている。彼こそ誰もが認めるアダルトアニメ界における鬼畜王であろう。これらだけを考慮に入れてもかなり完成された鬼畜系キャラなのに、彼を演じる声優の上手さがさらに彼の魅力を際立たせる。彼の言うことのほとんどは非論理的で理に適っていないけど、声優の巧みな演技のおかげで説得力を持ってしまうから驚きだ。アダルトアニメでは男キャラがどうしてもなおざりにされてしまう傾向がある。それが間違いであることを比良坂というキャラクターは身をもって示していると言えよう。
ここまでは、この作品の長所ばかり書いてきたが、いくら名作と言えども、欠点がないわけではない。
このシリーズの最大の欠点は動画の使いまわしを多用することである。物語の間を持たすために使用する風景画等を使いまわすのならまだ許せる。しかし、エロシーンに使いまわしを多用するのはいかがなものか。確かに、使い回してしまう気持ちは分からないでもない。何しろ製作において少ない予算でやりくりをしなくてはいけないのだから。このアニメに限らず、どのアニメでも使いまわしシーンを大いに利用しているのだろう。それでは、なぜ夜勤病棟シリーズではこれほどまでに使いまわしが多いように感じてしまうのか。それは製作者が二匹目の鰌を狙い、シリーズを長く続けすぎたからであろう。シリーズの話数が多くなれば多くなるほど、使いまわしを使用する機会が増えるわけで、使いまわしが目立ってしまうのは自明の理である。私の経験からすると、シリーズ物は長く続くと確実に腐敗する。夜勤病棟シリーズは未だ続いているが、昔のような輝きはとうに消え失せ、アダルトアニメの代表としての役割をすでに終えてしまったように思われる。
Karte. 1では、このシリーズのヒロインである七瀬恋がメインキャラクターである。私は彼女が好きではない。いや、正確にいうと、私は彼女に飽きてしまっている。彼女はヒロインということもあって、全話に登場し、かつ必ずエロシーンがある。そのエロシーンは、彼女がメインキャラクターで無い時は、以前の使いまわしか全く力を入れていない手抜きがほとんどである。これでは、彼女のイメージが悪くなってしまうのは当然である。シリーズを重ねる度に出来上がっていく彼女に対する悪いイメージを一掃さえすれば、Karte. 1はシリーズの中でもなかなかの良作である。キャラ画に関しては、実はシリーズ初期が個人的に好みだったりする。比良坂の鬼畜度はKarte. 1においてそんなに高くはない。夜勤病棟の顔である脱糞描写もかなり控えめである。今後、このシリーズは脱糞シーンにより力を入れるようになるが、この段階ではまだそうするべきかどうか定まっていなかったのかもしれない。もちろん、脱糞にとことんこだわる道を選んだのは間違いなく正しかったのではないだろうか。
七瀬恋に飽きてしまった者にとっては、この作品で積極的に抜くことは正直言って難しい。しかしながら、初めて見る人にとっては、かなりのクオリティーの作品だし、アダルトアニメの輝かしい歴史をつくった第1作目であるということに敬意を評し、抜ける度を3とする。
(りぷとー)


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