夜勤病棟 Karte.8

 ストーリー・刑事たちは新城礼美の張り込みを続けていた。ある日、彼女は彼女の罪を彼らに分からしめる重要な証拠物件を不用意にゴミ捨て場に捨ててしまった。彼らはそれを見逃さなかった。彼女は一気に危機的状況に陥った。一方、児玉ひかるは比良坂の調教の成果により見事なまでの淫乱女に成り果てていた。彼女は誰に命ぜられるまでもなく一人静かにマスターベーションにふけっていた。彼女はそのとき一体何を回想していたのであろうか?




 ・このアニメのストーリーの骨組は、駄作Karte. 7とほとんど変わらない。Karte. 7は七瀬及び新城のコラボレーションと必要以上に精緻に描かれていた刑事たちの活躍から構成されていた。このアニメは児玉と新城のコラボレーションから成る。(それでも、でしゃばり七瀬はやはりわずかに登場する。)うっとうしい刑事たちの活躍は相変わらずである。このアニメのストーリー展開において、新城のエロシーンが始まったと思ったら、とたんに場面が変わり、児玉のエロシーンが始まったりする。もちろん、
その間に刑事たちが大いに手腕を振るうサスペンスドラマばり(と製作者は自画自賛しているのであろう)のシーンが挿入される。このように目まぐるしくシーンが変わり、このアニメのストーリー展開は落ち着かず、まとまっていない。なぜ製作者はストーリー展開を傑作Karte. 6のかたち、すなわち、比良坂と彼の餌食になった女との回想シーンが大部分を占め、刑事たちはそれを聴くのみの役に徹する、にしなかったのか、私は疑問である。
このアニメは一人の刑事が、新城が住む女子寮の外で張り込みを続けているところから始まる。新城は明くる朝、比良坂が彼女に度々よこした彼女の羞恥プレーを収めたビデオテープを寮のゴミ捨て場に捨てる。私が思うに、彼女の行為は愚の骨頂である。彼女は気付いていたはずである、刑事たちが彼女をマークしていることを。それにも関わらず、彼女は彼女と比良坂の関係を明確に示すテープを軽はずみに捨ててしまった。彼女は恐れたのかもしれない、この事件の真相が明確になるにつれ、いずれ彼女の部屋が家宅捜索されるのを。私はその恐れを十分に理解できる。だから、彼女がテープを捨て去る行為に出たまでは良かった。問題はこの後である。彼女はテープを部分的に破壊したが、もし修理されさえすれば、再生され得る状態で彼女はそれらを捨ててしまったのだ。彼女は正直まぬけであり、とても20代で婦長に上り詰めた切れ者とは思えない。秘密裏に彼女がテープを再生できなくする方法はいくつかあったはずだ。もちろん、刑事たちはその行為に対して彼女に疑いをもつだろう。それでもやはり、致命的な証拠物件が刑事たちの手に渡るよりは断然ましであった。新城は比良坂にもてあそばれ、あるい
は刑事たちの張り込みに対する恐怖心から、まともな判断のできない狂人になってしまったのだろうか?ストーリー中で彼女の理不尽な行為を説明する箇所はどこにもない。
刑事たちは、彼らが喉から手を出すくらい欲した証拠物件を手に入れ、得意げになった。それから私が見たくも無い彼らの活躍が始まる。彼らは‘壊れかけの’テープを鑑賞する。テレビに映し出される淫事が一つの立派なエロシーンを形成する。このシーンの重大な欠陥はひとえに前述の‘壊れかけの’という単語に収束される。このシーンの画像は荒く、汚い。製作者はきっと‘壊れかけの’テープにより再生される映像を首尾よく再現したつもりなのだろう。この演出はエロさにとってマイナスの効果しかもたない。どの視聴者でも鮮明で綺麗なエロ画像を望むにちがいない。製作者はエロアニメ鑑賞者のこの素朴な願いを完全に無視し、彼らはサスペンスドラマの一演出を完成させることに熱狂的になる愚行にでてしまった。この演出法は実は後のシーンでもう1回見られる。そのシーンは、脱糞で有名な夜勤病棟シリーズでも2回しかない食糞シーンである。製作者はこの貴重で、すばらしいワンシーンを前述のくだらない演出により見づらく、汚くして台無しにしてしまった。
新城のわいせつビデオを見ている刑事たちの態度は私を憤慨させる。一般的なエロアニメのキャラクターならば、そのシーンに辟易しつつも性的な魅力に翻弄され、なんとも言えない複雑な心境になるはずである。ところが、いかつい警部と若い刑事はエロにまるで無関心であるかのように証拠探しに熱中する。一方で、女刑事はまるで汚らわしいものでも見たかのように手で口を覆い、一目散に部屋から退出する。彼らのこの機械的で冷酷な態度は一体何だ?エロアニメはファンタジーである。エロアニメのキャラクターは現実よりもはるかに性欲に対して純粋(清いという意味ではなく、うしろめたさがないという意味で私は用いた。)でなければならないと私は思う。だから、彼らのエロ描写に対して一歩引いたような態度を私は許せなかった。
所変わって、児玉のシーンが始まる。しばらく刑事たちは出てこず、彼女の回想シーンがそのままエロシーンとなる。Karte. 6以降のシリーズ全体を通して、ストーリー展開をこのような形にすればどれだけ良かったかと私は思う。私の理想とする展開はこうだ。Karte. 5で比良坂は神宮寺と心中する。刑事事件は彼らの死とともに闇に葬り去られる。Karte. 6以降で、比良坂の犠牲になった4人の看護婦はそれぞれ自宅でも良い、あるいは彼の墓前でも良い、彼との忌まわしき(と彼女たちが思っているかどうかは
知らないが、)思い出を回想していく。こういう展開にすれば、ストーリーが迷走することはなかったと思うし、七瀬が殺人者になることはなかった。そして何よりもうざったい刑事がこんなにも出てくることはなかったと私は思う。
さて、今回のメインキャラクターである児玉(新城はあくまでも脇役として扱われていると私は思う。)はとてつもなくぞんざいなキャラクターになっていた。私はKarte. 4に好評価を与えた。それは、私が児玉の性格に好感を持ったからでもある。彼女は普段非常に無邪気である。一方で、彼女の妹に対しては母性豊かな母親のように振る舞う。そして比良坂の狂気を前にして、彼女は驚きすくみあがり、すぐに彼の従順な雌奴隷となる。穢れを知らない純粋な乙女の人生が一人の狂人により破滅させられる悲劇をKarte. 4は巧みに表現してみせた。これぞ陵辱物の真骨頂であると私は思う。それに比べて、今作品の児玉の性格は一体何だ?彼女は比良坂に対して常に反抗的で、彼女のあらゆる言動は現行女学生それそのものである。今作品のラスト、おそらくクライマックスであろう部分で彼女は女子高校生のコスプレをする。服装、顔つき及び体つきはロリで良い。(むしろ、ロリの方が良い。)しかしながら、性格までロリ(正確には、現行女学生)にする必要はないと私は思う。そして、なによりも私が違和感をもったのは、児玉が比良坂のどのような行為に対しても反抗的なところである。彼女はいつからそのように気丈、悪く言えば、自分の置かれた状況が分からぬきちがいになったのか?彼女はKarte. 4の彼女とはまるで別人である。そして私はそのような彼女を好かない。
児玉のエロシーンが終わると、ストーリーは突如、新城がうざったい刑事たちに取り調べをされている場面に移行する。彼女は彼らに追い詰められ、気がおかしくなったのか、あるいは彼女と比良坂の関係になんの事件性もないことを必死に弁解しようとしたのか、彼らが要求もしていない比良坂との淫行話をだらだらと語り始める。その内容は彼女が彼に水泳場で犬のように扱われるというものだった。この時、夜勤病棟シリーズはもうネタ切れだと私は思った。次のクライマックスシーン、児玉のセーラー服コスプレにも言えることだが、比良坂の行為が全然医者らしくないのである。これら2つのエロシーンの演出法はジャンルを問わず、他のエロアニメでも使われそうだ。夜勤病棟シリーズの醍醐味は夜な夜な診療所で比良坂が医療器具を用い、人体実験を行うことにあったはずだ。この確固たるスタンスはKarte. 5で揺らぎ始め、Karte. 7以降でどうにかなってしまった。
もう一つ、この水泳場シーンについて私はつっこみたい。比良坂と新城の異常な行為に対して周りの人々は気にも留めない。これはいくらなんでもおかしいのではないか?少なくとも水泳場の職員は彼らに注意を勧告するかあるいは彼らの行為を警察に通報するだろう。製作者はもっとシナリオを練り込むべきだったのだ。これではエロさよりも滑稽さがより際立ってしまう。夜勤病棟シリーズはそこいらの無名のエロアニメとは立場が違う。製作者は下手な作品を量産して、夜勤病棟というブランド商品の価値を傷つけて欲しくないと私は思う。
新城が逮捕された後、刑事たちは七瀬による比良坂殺害の真相についての手がかりがなくなったと落胆する。私はこれについても疑問を投げかけざるをえない。なぜ彼らは比良坂の殺人未遂後、自ら首を掻き切って死んだ神宮寺方面からこの事件を捜索しようとしないのか?彼女が金持ちに性的な奉仕をする看護婦を創設しようとしたこと、そのために彼女は比良坂を利用したこと、その犠牲者に七瀬が含まれていたことを刑事たちが発見すれば、今回の事件はすぐさま解決されるにちがいない。それなのに、どうして刑事たちは重箱の隅をつつくような仕方でこの事件を解決しようとしているのか?比良坂の餌食になった看護婦たちは確かに重要な参考人だ。しかし、彼女たちは彼の真の目的を彼により知らされていないはずだ。だから刑事たちは彼女たちにいくら問いただしても、事の真相を理解できるはずがない。刑事たちのこの不可解な行動は、なんらかの権威が彼らに働きかけたことが想定されなければ、到底説明され得ない。権威は事件が拡大するのを恐れて、刑事たちの捜査を限定したのかもしれない。そして比良坂をただのレイプ魔に仕立て上げようとしたのかもしれない。これは私の推測であり、全く根拠
の無いことである。
七瀬は比良坂の犠牲になった女として新城の他に児玉と藤沢の名を手がかりが無くなった刑事たちに打ち明ける。そして児玉が警察署に呼び出される。彼女の取調べが始まる前に、七瀬が嘔吐するシーンが挿入される。私はそれを連日の取調べにより肉体的にも精神的にも疲れ果てた彼女が胃衰弱を患ったのだろうとみなした。しかし、私の予想に反して彼女の嘔吐の原因は胃衰弱ではなかった。それはKarte.9で言及される。すなわち、このシーンはKarte. 9以降の重要な伏線なのである。
取調べのために呼ばれた児玉は拘束中の七瀬に偶然出会う。児玉は七瀬に対して憎しみの視線を向ける。彼女はその理由を刑事に問われると、はっきりと「私は比良坂先生を愛していたから。」と答える。
彼女の返答について私は理解に苦しむ。七瀬についても言えることだが、どのように彼女たちは彼を愛するに至ったのか?どうして彼女たちは彼女たちを実験台としてしか扱わない彼を愛することができようか?彼女たちは彼に脅迫され、そして彼の狂気に怯え、仕方なく彼に彼女たちの体を捧げていたのではなかったのか?だから、児玉は刑事たちにこう答えるのが真っ当だ。「七瀬さんが比良坂先生を殺したことにより私が勤めている病院の評判が悪くなり、下手をするとつぶれてしまうかもしれないから。
」あるいは「私が関わった事件が大きな刑事問題になってしまったことにより、それが私の妹、あいに知られてしまうのは時間の問題だから。」彼女がこのように言ってくれたのなら、彼女が七瀬を恨む理由を私は十分に理解できたはずだ。七瀬と児玉のラブストーリーめいた「私は比良坂先生を愛している。」という半ば偽善的な発言よりも新城の「私は比良坂先生とセックスを楽しんでいただけ。」という発言のほうがよっぽど適切に私は聞こえる。
このアニメのストーリー展開は、前で長く述べたように、ほとんど貶すところしか見つけられない。しかし、このアニメにも大いに賞賛すべきところはある。そしてそれは今までの欠点を全て帳消しにしてしまうくらいの威力がある。このアニメは脱糞シーンがやたら多い。全夜勤病棟シリーズの中でも最も多い。脱糞の瞬間が描かれていないものまでカウントすると、なんとその数は5つである。5つの脱糞シーンのうち2つはスカトロ描写の中でも比較的インパクトの強い食糞描写で構成されている。脱糞描写を含むアニメはこの後急激に鳴りを潜める。そして現在において、私が見る限り、それは完全に消滅してしまったとさえ言えるだろう。脱糞描写を含むアニメの最期の煌き、私は評価しないでいられようか。
よって、私はこのアニメの抜ける度を5とする。
(りぷとー)


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