第1部 「グラ滅亡」

プロローグ


 本陣の野営テントの中で二人の男…年老いた男と年若い男の二人が話しをしている…両者の顔には疲労と苦悩の影が色濃く刻まれていた。
 「足りませんな…」
 年老いた男…参謀のジェイガンが沈痛な面持ちで言う
 「そうか…」
 若い男…アリティアの王子マルスがため息混じりの声で応える…そう…何もかもが足りなかった…軍資金…武器…食料…全てのものが底を尽きかけていた。
 「それだけではありません、一般兵の間の不満も限界と感じられます」
 「判っている!…判ってはいるのだ…しかし…」
 マルスは苦渋に満ちた顔をふせる…そんなマルスをジェイガンは痛ましそうに見る。
 兵は何で戦うのか?…生まれ育った祖国のため…己の名誉のため…愛する人を守るため…様々な理由がある…しかし大半の兵はもっと単純な理由で戦う…すなわち…食うためである、飯を食わせてくれるから戦う…もしも兵に与える食料が尽き、飯を食わせられなくなれば大半の兵は、敵味方に関係無く飯を食わせてくれる陣営に流れていくのは、必然と言えた。
 戦場経験の長いジェイガンは、その事を骨身に染みている…年若いマルスとても、先の「暗黒戦争」と言われた戦役にて嫌と言うほどに骨身に染みている…一部の信頼できる家臣団と少数の義勇兵と仲間と呼べる友…それ以外の主力となる、多数の一般兵達に食わせて行く為にいかに苦労したか、戦場で陣頭に立ち戦っていても後方の事を常に気を配っていた。
 そして今…後の世に「英雄戦争」と呼ばれる戦役にて、兵に食わせる食料も買い求める軍資金も何もかもが尽きかけていた…しかも、問題はそれだけではなかった。
 ジェイガンが更に言葉を続ける…
 「兵達に…一般兵達の間に不満の声があります…何故?略奪をさせない…と…」
 兵達は食うために兵になる…死と隣り合わせの戦場往来…敵を殺し…自分が生き残り…勝利する…略奪は勝者の権利であり、それがあるから兵達は勝利を得るために戦った…しかし、マルス達のアリティア軍は一切の略奪を禁じた…味方を増やしていくため…正義を名乗るため…戦役後の事を視野に入れて…行われるはずの略奪行為の一切を禁止し、違反した兵に厳罰を持って対処した。
 それらの事により、有力な味方(有能な指揮官と味方となる国々)を多数得たものの、結果として略奪により得られる軍資金と物資が入らず、ジリ貧とも言うべき現在の状況に陥る羽目になっていた、それらとあいまって一般兵の不満の増大が重なり、アリティア軍は戦闘で勝利しながらも内部から崩壊しようとしていた。
 「現状を好転させ得る手段は一つだけです…マルス様…ご決断を…」
 ジェイガンはマルスに決断を促す…その決断とは…マルスが喘ぐように言う。
 「ジェイガン…グラを…グラにある、すべての物資と食料を我が軍の物として接収する…そして兵達に今回限りおいて、グラでの略奪を許可し全ての行為を黙認する旨を伝達してくれ…」
 「わかりました…マルス様…私の名の元にて布告を発します…」
 「まて…ジェイガン…布告は僕の名の元で発してくれ…」
 「しかし、マルス様…これは名誉な事ではありません…マルス様の偉業に傷がつきます。ここは私に名の元に発して、泥をかぶるのは自分に…マルス様は…」
 ジェイガンの言葉をマルスは遮り言う。
 「ジェイガン…決めたのは僕だ…これは生涯の汚点となるだろう…だからこそ僕は汚れなくてはならない…それが僕に出来る…贖罪…」
 「マルス様…」
 ジェイガンは一礼をして無言でテントを出て行く…後には彫像のようにたたずむマルスだけが残された…



 翌日、マルスの名の元に布告が発せられた…後の世に「グラの悲劇」と呼ばれる戦い…いや…虐殺が始まった……

「虐殺」


 それは戦闘と呼べるモノではなかった…先の「暗黒戦争」そしていまの「英雄戦争」と打ち続く戦役はグラの若者を戦場へと引き出し消耗させ、すでにまともな戦力と呼べるだけの兵士をそろえる事すら不可能であった。また援軍としてアカネイアから送られた兵も少なく、怒涛のごときアリティア軍を押し止めるのは不可能であった…



 「マルス様公認の略奪だ!好きなように暴れろ!いままでの分を取り戻すんだ!」
 アリティア軍の一般兵士達が家々に押し入り、略奪と放火をしまくり己の欲望のままに暴れまくる、逃げ惑う人々が容赦なく馬蹄に踏み潰され、斬り殺されていく…老人が生きたまま火の中に放り込まれ奇妙な舞踊を踊りながら崩れ落ちていく、幼子が鎗の穂先にかけられ球技のように槍から鎗へと渡され、腹からはみ出した内臓が千切れ飛ぶ…いかに人を残虐に殺せるか?いかに人を面白く殺せるか?それを競うかのように兵士達は人々を殺しまくる…そして、市街地の中央広場に運良く…いや不幸にも生き残った女達…が集められていた。
 ふるえながら母にしがみつく少女…脅えた瞳で、自分たちをギラツク値踏みをしている男達を見ている娘…すべてを諦めたようにうずくまる女…大きな腹を抱えこんでいる妊婦…まだ女と呼ぶには幼すぎる少女…殺戮の興奮が兵士達を野獣と化していた…欲望の宴がはじまった…兵士達の人数に対して女たちの数は少なかった…結果として一人の女に数人の男達が群がり犯す結果となる。
 「ひっ!やだ!たすけ…んぐっ!」
 集められた娘の一人に数人の兵士達が群がり犯しはじめた…衣服は引き裂かれ、あっと言う間に全裸にさせられる…まだ薄い乳房に男の手が伸び揉み上げる…小さな乳首に舌が伸び舐め上げる…口にペニスが突き込まれ舌を嬲る…淡い恥毛が引き千切られるように蹂躙される…抵抗をすれば容赦無く殴りつけられ…そして再び襲い始める・・・
 「ひぐっ…うんっんぁんん……」
 中央広場に集められた娘達が次々に兵士達に、嬲られ…犯され…凌辱される…その場で犯される娘がいる、路地に連れこまれ犯される娘がいる…



 そして、焼け残っている家の一室では、特に厳選された数人の娘が脅えふるえていた…
 「いやっ・・・おねがい・・たすけて…いやっ!!」
 好みの娘達を部屋に連れ込んだ、比較的に上級の指揮官の兵士達が娘をベッドに組敷いて思うさまに娘達を犯し始める…特にこの地区の略奪を指揮した部隊の隊長の相手として選ばれた娘は、一番の不幸と言えた…
 「いやあぁぁぁぁ――!!」
 室内に悲鳴がが木霊する娘…偶然にもこの家の住人であった…が引き裂かれた衣服の胸元を押さえ、哀願する…
 「やめてください…おねがいします…結婚するんです…だから…お願いします…助けて…勘弁してください……」
 男の目に、室内の壁にかかった婚礼衣装が目に止まる…
 「ふむ…嫁ぐのか…よし!特別に教えてやろう…男と言うものをな…くくくっっ…」
 男はそう言うと娘をベッドの上に放り出す。
 「あっ・・・あっ・・・やっ・・・」
脅えた声で絞り出すように娘が男に何か言おうとする…しかし、男はそれには答えずに娘に覆い被さる…半分引き裂かれていた衣服が完全に剥ぎ取られ、娘の穢れを知らない白い裸体が剥き出しになる。
 「ひっ!いやぃやぁぁ――あぐっ!」
 悲鳴をあげようとした娘の頬に男の拳が叩きこまれ、悲鳴が中断させられる。
 「ギャーギャー騒ぐんじゃねい!…大人しくしてたら…天国に行くような気持ちを味あわせてやるよ…もっとも、そのあと本当に天国に行く事になるだろうがな!」
 「あああ…たすけて…たすけて…カロン…」
 切れた唇から血を流しながら、娘が婚約者…数日後に結婚するはずであった男の名を呼ぶ…
 「カロンか…それが、結婚相手の男の名前か?」
 「あああ…カロン…たすけて…カロン…」
 娘は、婚約者の名を呼びつづける…そうする事によって、彼がこの場に現れるとでも言うように…
 「そのカロンと言う男…金髪で蒼い瞳…そして、ここに黒子がなかったか?」
 男が、自分の鼻の頭を指差して言う…娘は、思い出す…そう、カロンは確かに金髪で蒼い瞳を持っていた…そして、鼻の頭に黒子があった…
 「なぜ…なんで…」
 男は、笑みを浮かべる…悪鬼が笑えば、このような笑みをかたちづくるであろうと言う笑みを…
 男が、部屋の隅に置いてあった桶を引き寄せる…元からあった物ではない、男が娘をこの部屋に連れ込む時に一緒に持ってきた物であった。
 「俺はやさしい男だからな、一目会わせてやるよ…お前の愛しいカロンくんにな!」
 桶の中に腕が突っ込まれる…そしてゴロンとした丸い物を掴み出す…
 「イヤァァァーーー!!」
 掴み出されたもの…それは、生首であった…血に塗れ汚れていたが、金色の髪が見て取れる…ドロンとした死体の特有の半開きに瞳の色は蒼色であった…そして、鼻の頭には黒子があった…
 「カロン!カロン!ヤァァーーーーー!!」
 「ひひひ…お前さんを助け出そうとでもしたのかね?ほんの半刻ほど前に、この家に忍び込もうとして部下に捕まった野郎さ!首を切られる前に、ミランダ!ミランダと女の名前を叫んでいた女々しい野郎だ…お前が、ミランダなのか?」
 娘…ミランダと言う名の娘は、生首と化した婚約者を見据えたまま悲鳴を上げつづける…小さな頃からの幼馴染であったカロン…先の「暗黒戦争」で一兵士として戦争に狩り出され、そして左腕を失い帰ってきた彼…たとえどのような姿になったとしても、生きて帰ってきてくれただけで嬉しかった…そして新たな戦乱が始まった時に、片腕を失った事により戦争に再び狩り出される事が無かったのは、皮肉な幸運であった。
 このような時代だからこそ、彼と少しでも早く一緒になりたかった…そして、婚礼まであと数日と言う時に、災厄はグラ街を被い尽くす…



 男は、生首をベッドの見える位置に置く、そして泣き叫び婚約者の名をわめく様に叫んでいる娘をベッドの上に押し倒す…
 「せいぜい、あいつに見せてやんな、お前さんが女になるシーンをな!」
 男が娘の首筋に長い舌を這わせていき、乳房へと更に舌を這わせ行く…薄い胸を嬲りながら乳首を噛み千切る。
 「いぎゃぁぁーーー!」
 激痛が娘を襲う、噛み千切った乳首を唇からチョコンと出したまま男が血まみれの口元を歪める…そして、娘の上に覆い被さり口を吸う…男の口に合った乳首が大量の唾液と共に娘の口の中に移る、そして流しこまれた唾液と共に娘の喉を通過して行った…
 「ひひひ…美味いだろ?先に食わせてやったんだ…なんせ、乳首は二個あるからな…残る一つは、タップリと俺が味あわさせてもらうぜ…くききき…」
 「いやぁぁーー!!」
 食い切られた乳首から血を滴らせながら、娘がベッドから転げる様に逃げようとするが、男の手が娘の髪を掴み、ベッドの引き戻す…ブチブチと引き千切られた髪が、男の手の中にからみつき残される…まだ無事な方に乳房に男の大きく開いた口がむしゃぶりつく…そして、乳首を噛み千切る…
 「ひぎゃがっがっがぁぁーーーー!!」
 それは、すでに人の叫びでは無かった…屠殺される獣の最後の叫びであった…男は、両の乳首を噛み切られ娘を背後から犯しまくる…クチャクチャと噛み千切った乳首を乾肉のように噛締め味わいながら、乳首の無くなった乳房を揉みし抱く、血に塗れた掌を娘の顔に髪に…撫でつける…すでに娘は…正確には、かって娘であった肉袋に男は何度も射精した…



 別段、この娘が特別に不幸だったわけでは無かった…同じ家の別の部屋では、首を絞められながら犯され絶命した娘もいる…生きたまま腹を裂かれた末に、腸に精液をぶちまかれた娘もいる…家の中で…路地裏で…路上で…広場で…ありとあらゆる場所で女達は犯されいた…

第1部 了

第2部「シーマ…凌辱…」に…つづく…


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