蛙雷(あらい)氏・作

 蛙雷さんによる「サ○ラ大戦3」小説です。

 ちょっぴり怖いメガネっ娘、ロベリアちゃんの過去と愛・・・という感じの短編ですが、確かにさくらにバレたら血を見るでしょうな。(^^)



                 その1

欧州大戦…1914年7月28日…開戦〜1918年11月11日…終戦
文字に表すと、わずか一行にも満たない…しかし、この一行にも満たない裏には、戦死者約1000万人、負傷者約2200万人と言う恐るべき数字が織り込まれていた。

1905年11月13日に彼女…ロベリア・カルニーリは、父・カリオン・カルニーリ、母・ヒルディア・カルニーリの長女として、この世に生を受けた・・・母は5歳の春に亡くなったが、父の深い愛情の元に彼女は、すくすくと成長をして行く…しかし、彼女が九歳になった年に欧州大戦が始まった。
そして、1918年の独逸軍の春攻勢により、出征していた彼女の父は帰らぬ人となり、ロベリアは孤児となる。
まだ13歳であった…父が戦争に行く前に娘に託した言葉…
『もしも、自分に何かがあったら巴里の親戚のところに身を寄せるんだ…』
その言葉に望みを託して彼女は終戦直後の巴里にへと向かう…1919年の春であった。
しかし、戦後の混乱は残酷な形で彼女を襲う・・・頼るべき親戚は、すでにパリに存在せず、故郷に帰る術すらない(主に金銭的な理由で)14歳の娘が、パリで生きていく方法は、一つだけしか残されていなかった・・・

「ひっ!」
まだ幼さの残る少女の身体を男は責めさいなむ・・・金を払った分だけの楽しみを充分に味わい尽くす・・・それが、男の考えであった。
男ぼ乱暴な責めを彼女は耐える…男を喜ばす手段すら知らない、ある意味無知な彼女には、男の行為に対して耐える事しか出来なかった。
一夜の宿と明日のパンを得るために彼女…ロベリア・カルニーリは男に身を任せる。
身よりのない戦災孤児がパリで生きていく為には、娼婦となり男に身を任せるしか生きる術がないのである・・・

一夜の宿と明日の食事を確保するためにロベリアは男に抱かれ続ける…そして、二年の月日がたつ・・・

すでにロベリアは、有名…と言うと語弊があるが、界隈では人気の娼婦としてパリで知られるようになっていた。
ただ、それは同時に他の娼婦達の、いわれのない恨みと嫉妬を買うことになる・・・


                2


何時ものように街頭に立ち、馴染みの客を待っていたロベリアが、数人の男達に拉致されて薄汚れた倉庫に連れ込まれたのは数時間前の事であった。
ロベリアは、男達が自分を犯す理由がわからなかった・・・地回りにはキチンとショバ代を払っていた…それなりの、娼婦としての掟は守っていたはずだ…なぜ急に自分が襲われ犯されているのか…理解できなかった。
「へへへ・・・教えてやるよ・・・」
男の一人が笑いながら言う…馴染みの客を寝取られた…態度生意気だ…若さが気に入らない…ロベリアの勝気な性格が災いしたのかもしれない、何人かの娼婦達が金で雇った男達がロベリアを犯し…凌辱し…そして…
男がロベリアの長い髪を切り裂く、そして、バシュ!とライターの火をロベリア近づけて行く・・・
「雇主のリクエストでね…二目と見られない面にしてくれとよ」
ロベリアの端正な顔を焼くためにライターの炎が顔面に近づいてくる・・・

恐怖だったかもしれない…憎悪だったかもしれない・・・悲しみだったかも知れない・・・怒りだったかもしれない・・・ありとあらゆる負の感情がロベリアを支配し・・・力が解放された・・・

ロベリアの顔面に押し当てられようとしていたライターの炎が、突然に高く燃えあがったかと思うと蛇のようにうねり、男達に絡み付く!
「ひぎゃぁぁぁーーーーー!!」
炎にからみつかれた男達が死のダンスを踊る・・・不思議な事に炎は男達だけを燃やし、他には燃え移らない・・・

炭化した消し炭と化した男達の屍骸をロベリアは踏みつける・・・クシャ・・・と言う乾いた音がして消し炭が崩れ去る・・・

この日からパリを震撼させる大悪党・・・炎つかいのロベリアが現れた。


                 3


二色の肌色が白いシーツの上でもつれ合う・・・互いに唇を交わし・・・一つになり・・・二つになり・・・そして、また一つになり互いを貪りあう・・・

あのときに発動した霊力を得てからの彼女、ロベリア・カッシーニは常に一人であった。
なぜならば、一人で生きていける力を得たからである。
蔑みと裏切り、絶望と恐怖、哀しみと怒り・・・それらを知った彼女は、一人で生きていくことを自ら選んだと言える。

しかし、運命の皮肉は彼女に仲間を与える『 巴里華激団 』それが彼女が得たものであった。
そして、隊長の大神一郎と言う存在、最初に会ったとき馬鹿だと思った。
しかし、それは違っていた、奴は馬鹿ではなくて、大馬鹿だったのである。
その大馬鹿さは嫌いではなかった、それどころか妙に魅かれていくものがある…
そして、ロベリアは気がつく…否定しながらも気がついてしまう。
自分が、この大馬鹿を好きになっている事に…だから、ロベリアは言う。
からかう様に、嫌われるように…自分の本心を隠し、冗談と言う偽りの仮面を心に被せ…

「は〜い!隊長さん、一緒に・・・寝る?」
何時もの戯言、真面目な奴のことだ、怒ったような口調で『冗談はよせ!』と言うだろう・・・そう思った。
しかし、奴は真面目な顔で聞き返す。『いいのか?』と・・・私は・・・うなずいた・・・

せまいベッドの上、白いシーツの上、互いの肌が触れ合い汗が滲み出す。
ここ数年間、ロベリアは男と肌を合わせていなかった…必要がなかったから、一人でいることになれたから、男を憎んでいたから…どれもが、正解でありながら、どれもが正解ではない…
怖かったのだ、あの時…霊力を得たときに燃やした男達の姿が、脳裏にこびりついている…男に再び抱かれたら、あの時のように燃やしてしまうかもしれないと言う恐怖が、意識の底の方にある。
その恐怖を奴は…大馬鹿なこいつは、忘れさせてくれる。
服は下着も含めて自分で脱いだ、早く肌に触ってほしかった…そして、抱いてほしかった。
奴の指先が身体を伝いながら降りてくる…濡れているのを悟られるのが、なんだか悔しい…だけど、私がこんなにも濡れている事を知ってもらいたいという気持ちもある。
感じたくないが感じたい…早く受け入れたいけど、まだまだ愛撫され続けたい…声を出したいが声を出したくない…愛していると言いたいが、口にするのが悔しい…矛盾する葛藤が私を引き裂いていき、さらに激しく彼を求めながら、かれの愛撫を拒む…

「お願い…先に言って…お願い…」
何を先にっ言ってほしいのか…自分からは言えない一言…
「愛してるよ…ロベリア…」
私は、その言葉だけでいってしまった…そして二人は絶頂を迎えた。
この瞬間…ロベリアは…幸福であった…

                 余談
 
…自分の上にいるロベリアの、肌の柔らかさと汗のにおいを感じ…そして、心地よい重さを味わいながら大神は思う・・・
「ばれたら・・・さくらに殺されるだろうな・・・」
と・・・
無論のこと彼は知らない、当のさくらが巴里にへと向かっている事など…

                                      終


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