1■夜の大宮大走査線
夜の大宮に銃声が響く。ちらほらと看板になる店もみうけられる深夜のことである。ヤクザ絡みの銃撃事件を心配するよりも、無節操な若者が遊ぶ花火だと思いこむ迷惑顔の酔客の方が多かった。
「指宿(いぶすき)、こっちだ!」
「はいっ、後生掛(ごしょがけ)先輩!」
細い路地を浴衣姿のオンナが二人走り抜けていく。頭に乗せられた手拭い、乱れた襟元、大きく割れた裾から覗く脚が、夜目にも白くなまめかしい。しかし、手には硝煙の立ちのぼる短機関銃が握られている。姿勢を低くして物陰から物陰へと走る姿には緊張が満ちていた。
指宿と後生掛は、日本内閣直属の「温泉Gメン」のエージェントである。日本の温泉を守る目的で秘密裏に行動している温泉Gメンの敵、秘密結社「YUZAME」が大宮近郊の特殊浴場に悪の手を伸ばしていることを知り、極秘で調査に来ていたのである。
二人は目標の特殊浴場へ、ソープ嬢に偽装して潜入を試みた。
「それじゃあ、私をお客さんだと思って接客してみて。んふ、二人でやってもらえる?」
オカマ言葉でしゃべる髭ダルマの店長が、スケベ椅子にどっかと全裸で腰掛けて言った。
「はあーい。指宿、初めてですけど、はりきっていきまーす。あ、私のことは「いぶ」って呼んで下さいね」
えらく手慣れた様子で、指宿は液体ソープを手に取り泡立てる。
「御生掛、お世話させていただきます」
二人が浴衣を脱ぎ、定番の泡踊り、それもサンドイッチで……、をしようとすると店長は慌てていった。
「いえ、身体は洗わなくて良いの。そう、オチンチンだけサービスして」
「えー、せっかくはりきったのになあ」
「そうです、身体を洗った方が気持ち良いですよ」
スケベ椅子の溝にブラ下がる店長の一物を握りしめた指宿が、両手に泡立つスポンジをもった御生掛に目配せをした。
「そおーれ! 洗っちまえー!」
二人は、店長の全身をこすり立てた。
「うぎゃあ! 何をするの! 垢が、垢が落ちるぅ〜!」
店長の爪の間、首筋の汚れ、なによりも耳の後ろにたまった垢によって、二人は「YUZAME」の存在を確信した。こするたびに店長の身体から黒い垢がボロボロと落ちる。
「やめてぇ! 仕事柄チンチンだけはしょうがないけど、身体の垢はやめてぇ!」
「きちゃなーい!」
「ばっちいな、もう!」
店長の悲鳴に、店の奥からゾロゾロと垢臭いYUZAME戦闘員が飛び出してくる。そして、二人との銃撃戦が開始されたのだ……。
いつしか夜の大宮に、散発的に響いていた銃声がやんでいた。警察関係者を含む多くの人々は、迷惑な若者たちが河岸を変えて、余所に遊びに行ったのだろうとしか思っていない。
「やっと巻いたかな!? 指宿、大丈夫か?」
長身の後生掛は、顎に伝わる汗をぬぐいながら、肩で息をしている後輩に声をかけた。
「はーい、大丈夫です。でも、汗でベトベト、気持ちわるーい」
余裕すら見せる指宿に、後生掛はあきれながらもホッと安堵のため息をつく。そういえば自分自身の身体も汗に濡れている。それよりも手に染みついた硝煙の匂いの方が気になった。
「朝風呂にはちょっと早いな!? ん、あそこで一風呂浴びていくか」
後生掛は24時間営業の健康ランドをネオンを見つけた。ネオンによると沸かし直しでも天然温泉らしい。
「わーい、先輩、グッドアイディア! いぶも賛成でーす!」
はしゃぐ後輩を連れて、後生掛は健康ランドの派手なノレンをくぐった。
2■■健康ランドの罠
「なんだ、これ。温泉じゃないよ」
湯船に身体を沈めた後生掛は文句を言った。温泉Gメンの絶対温泉感覚を引き合いに出すまでもない。汲み上げた地下水にしかすぎないものを温泉と詐称しているのだ。YUZAMEの件が一段落したら温泉Gメンとして追求してやる。しかし今は……。
「やっぱり風呂は良い」
後生掛は、熱い湯のなかで思い切り長い手脚をのばす。プリプリと胸や太ももが弾力を取り戻していく気がする。
チャポン!
「やっぱ、一仕事の後は、一風呂ですよね」
どうやら、指宿も同意見らしい。
「よし、百まで数えたら出ようか」
「はい! じゃあ、いーち、にーい……」
二人は十まで数えることができなかった。広い湯船と洗い場に、もっとも似つかわしくないYUZAMEの戦闘員に囲まれてしまったのだ。
「お二人とも、そのままでどーぞ。お風呂好きなんでしょ?」
現れたのは、YUZAME三大幹部の一人、厚化粧の女性幹部フロイラン・カオルだった。
「お楽しみはこれからよ」
白塗りの表情に乏しい顔の、真っ赤な唇がニッと笑いの形をつくった……。
「ガボガボガボッ!」
冷水に顔を突っ込まれ、後生掛は薄らいでいた意識を取り戻した。意識を失うまで高温のサウナで蒸し上げられ、直後、水風呂に叩き込まれたのである。しこたま水を飲んだ頃、ようやく水中に押さえつけられた顔を引き上げられた。
「いい加減に、温泉Gメンの基地の場所、吐いたら?」
水を滴らせている後生掛に、カオルが顔を近づけて言う。厚化粧のオシロイと、香水の匂いの下に、隠しがたく漂う体臭がツンと鼻を突く。
「お風呂入ってないでしょ。……臭いんだよ、アンタ」
弱々しく、それでも強気に後生掛が答えると、カオルは指宿に目線を移す。
「やめてーっ、やだーっ!」
指宿は個人用のマッサージジャグジーに全裸で縛り付けられ、四方八方からのシャワー責めにあっていた。手に手にシャワーを握ったYUZAME戦闘員が、思い思いに冷水や熱湯のシャワーを、身動きできない指宿の顔ばかりでなく、乳房や股間にもてあそぶように浴びせているのだ。シャワーの水流をぶつけられる度に、指宿のプックリと小柄ながら豊かに実った乳房がプルプルと揺れる。
「きゃあーっ、やめてようっ! よしてっ!」
シャワーの水流が股間に集中され、指宿のまろやかな秘肉がめくれ返されていた。興奮したYUZAME戦闘員は、いっそう指宿の股間責めに集中した。
「次は、あんなお遊びじゃなくて、YUZAMEの「不健康グッズ」を使うことになるわ。それは、おなじオンナとして忍びないじゃない?」
カオルの口元にチロチロと蛇のような舌が覗き、自分自身の赤い唇を舐め回す。
「オマタ用のガスマスクよ。面白いでしょ?」
カオルが持ち出したのは、クラッシックかつ重厚なガスマスクだった。ただ、その内側の口にあたる部分、マウスピースの部分からは黒々と節くれ立ったディルドーが生えている。
「頭にかぶせて、アレをフェラしてもらうこともできるんだけど、オンナの子のオマタにはめちゃう方が面白いのよ、コレ」
後生掛と指宿の二人に、ディルドー付きのガスマスクが「穿か」される。両脚をM字型に押さえつけられ、ディルドーの先端が、柔肉をかき分け二人の女孔に沈みはじめた。
「うくっ! くうっ!」
「いや、いや、いやあっ!」
唇を噛み締めて耐える後生掛、力の限りあらがう指宿。そんな二人のオンナの中心に、ズブリズブリとディルドーが沈み込んでいく。ご丁寧にも、ガスマスクの覗き穴から、その様子は丸見えになっているのだ。
「は、恥ずかしいよう〜」
指宿が情けない鳴き声を上げる。やがて二人の股間にピッタリと収まったガスマスクは、マスクに付属したベルトで腰部に固定された。外見は股間をお面で隠したハダカ踊りのダンサーである。しかし図太いディルドーで胎内を貫かれた二人は、その重苦しい下腹の鈍痛に、脂汗を浮かべていた。
「おほほ、お似合いですこと!」
こっけいにすら見える二人に、カオルは大声で笑う。後生掛と指宿は、抱き合う格好で身体を組み合わされ、お互いの背中に回した手首を手錠で固定された。四つの豊かな肉球がぶつかり合い、窮屈そうにこすれ合う。
「い、指宿。あんまり動かないで」
「……せ、先輩こそ」
互いの乳首がこすれて、うかつにも甘い電気が走ってしまう。
「じゃあ、はじめちゃうわよ〜」
モン、モン、ムォ〜ン。ブブブ、ブィ〜ン!
カオルがリモコンのスイッチを入れると、二人の「なか」でディルドーがうねりはじめた。大きく小さく、リズミカルに、時には激しく……。
「うぉぉーっ! ち、ちきしょうっ!」
「先輩、ダメです。コレすごい〜っ!」
二人の腰は、いつの間にか大きくグラインドをはじめていた。尻を突きだし、横に振り立て、股間を鋭く突きだし、お互いの股間にはめられたガスマスクをぶつけ合う。
「先輩の乳首、すごく立ってる。いぶ、感じちゃうっ!」
四つのバストが汗をしぶかせて、二人の身体の間の狭い空間で激しくせめぎ合っていた。
プリン、プリンッ!
快感から逃れようと身をよじると、押しつけ合う乳肉から、新たな快感が発生してしまう。
「はああ〜っ!」
二人が同時に啼いた。勃起したお互いの乳首が触れあい、絡み合うようにそれぞれを強く押したのだ。もう立っていられなくなった二人は、タイルの床に倒れ込んだ。
「イイ線いってるみたいね。おほほ!」
床に倒れた二人は、お互いに身体を押しつけ合い、強烈な快感をむさぼっていた。
「指宿、いぶ、いぶーっ!」
「先輩、せんぱいっ、せんぱーいっ!」
二人の胎内で暴れるディルドーは、いっそう激しく動きを早めていく。二人の周りにYUZAME戦闘員が集まり、全員が股間から垢にまみれた一物を取り出した。
「用意、かまえーっ!」
カオルが命ずると、戦闘員が自分の一物をしごきはじめる。後生掛と指宿は、その中心で、オルガスムスへの階段をしだいに登り詰めていった。
「先輩、ダメ! イク! いぶ、地獄に堕ちるーっ!」
「ち、ちくしょう。ダメだ、い、イクッ!」
「くはああっ! あああっ! あ! あ! あ! あ! あっ!」
二人が達するのと同時にカオルが戦闘員に号令を掛けた。
「撃てーっ!」
ドピュ、ドピュドピュ! ドピュ!!
二人の身体に、戦闘員の一物が吐き出した白濁液が降りかかる。
ビシャ、ビシャビシャ!
全身に降りかかる大量の青臭い精液にも、二人はグッタリと抱き合ったままだった。股間のガスマスク内には多量の愛液が溢れ出て、のぞき窓の部分に溜まっていた。
「一度の銃殺じゃあ、終わらないのがYUZAMEの不健康コースなのよ」
カオルはニィーッと白塗りの顔に残酷な笑いを浮かべると、リモコンのスイッチを入れ、ガスマスクのディルドーを再起動する。
ブ、ブブブブィ〜ン。
二人の胎内で、ディルドーが微振動を開始した。
おしまい
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