名もなき弱小国の、城下町とは名ばかりの小都市。

取り囲む魔の軍勢。

薄く低い城壁は7ジラーの巨体を誇る巨人オーガの一撃でたちまち砕け割れ、補修もままならずゴブリンの圧倒的物量が雪崩れ込む。

兵士たちが必死に防戦する頭上にガーゴイルが不吉な羽音を響かせ、士気を脅かす。

非力な一般弓兵が掃射するも空飛ぶ石像に弾かれ乾いた音を立てるのみ。

名もなき指揮官は的確に防御指示を飛ばすが……次第に手薄な箇所からの襲撃が増し対応が困難になっていく。

ガーゴイルは攻撃こそしないが上空から人間たちの布陣を偵察報告しており、防衛体制が筒抜けとなっていたためである。

陥落は時間の問題であり、その後は男は皆殺し、女は悉く凌辱され、魔物の子種を孕まされ苗床となるのは決定事項と思われた。

小国の兵と民たちに絶望が広がっていく。



「ふん、こんなものか……つまらんな、この世界の人間どもは」

魔軍を指揮する男が一人ごちる。

身の丈2.8ジラー(約192cm)、長身だが容姿は人間に近く、巨人族ほどの巨躯ではない。

人間換算ならば30代前半か…

隆々に鍛え抜かれた上半身を晒し、世の殆どの女が一目で惚れるような甘いマスク。

だが表情には世界の全ては己が所有物と確信している傲慢さが滲み出ている。

銀髪を無造作に靡かせ、頭部の禍々しくも見事な二本の角が男を人ならざる者と証明していた。



「ええい、なにをグズグズしておられるのか!何故、こんな小国さっさと落とさな…」

「焦るな焦るな…余は興が乗らんから待て…」

「しっ、しかし!」

やる気の無い上司に苦言を呈そうとした、5ジラー近い巨体を誇るグレーターデーモンであったが…

「…黙れ下郎。大魔王様のお言葉は全てに優先する…」

白銀の全身鎧を纏う男が悪魔の喉元に剣を突き立て魂も凍る声音で脅す。

「ヒッ…ヒィィィッ!」

ビビるグレーターデーモン。

身の丈は2.7ジラー(約185.2cm)、主君に劣らぬ偉丈夫。

齢はまだ若く20そこそこか。フルフェイスで隠されていても否応なく分かる美形の魔剣士。

その忠誠心と剣幕は凄まじく、並みの人間をゴミ同然に踏み躙ってきた大悪魔をも圧倒していた。



「…よさぬか、ヒム」

「はっ……マクシム様」

鷹揚にかぶりを振る主君の言葉に、魔剣士が剣を降ろすも殺気燻る眼光だけは消えることはない。



「ふむ、ここにもおらぬのか?余の供物に相応しき美少女は」

マクシムの関心はただそこに尽きる。

「はっ。所詮この異世界の人間など屑ばかり。強者もおらず俺も退屈ですよ」

主君に同意するヒムの関心は女には無く、ただ強者への渇望にギラついている。

「……ん?ほう、これは……まあ待てヒムよ、ようやく楽しめそうだぞ?」

異能『千眼の邪教神』で援軍の存在を察知したマクシムが不敵にほほ笑む。

「…!人間どもの援軍ですか…どうせまたゴミ共…ぬっ!?」

異能を持たぬヒムも主君に数瞬遅れではあるが、並外れた戦勘で察知、最初は侮っていたが即座に闘気を引き締める。

「げえっ!?奴らがなぜここに!」

知っているのかグレーターデーモン!?と尋ねる者は誰もいなかった。





その援軍は多勢ではなかったが、到着するや戦局を一変させる。

先鋒として拠点前を固める眼鏡をかけた理知的な美女が守備重視の堅実な剣技でレイピアを操りゴブリンを屠る。

(ほ〜、中々の美女ではないか。だが余の好みではないな〜)

(ふん、優秀な武人ではあるが俺の敵ではないな)



パァン!

仕立ての良いふりふりスカート、可愛らしい青いフードを被った美少女が東弓(シャルクァイ)を発砲しガーゴイルを撃墜。

その後両手を上げてぴょんぴょこ元気に跳ね…可憐な大声で部隊展開を補助する。

(おおっ、かなり可愛いではないか。あの笑顔は上辺だけの愛想笑いであろうが…構わぬ、あざとい美少女も余の好みだぞ)

(異世界にもシャルクァイがあるのか…というか何故跳ねている?)



更に悪魔の角を生やした小生意気な幼女が布陣、禍々しき暗黒のフィールドを展開、迂闊に踏み込んだ魔の軍勢が生命力を剥奪されバタバタと倒れていく。

(お〜!この魔族の幼女も超かわいいではないか!ツルペタで生意気そうな幼女を調教するのも余は好きだ)

(何故魔族がいるのだ?暗黒闘気の使い手と見たが俺の敵では略)



続いて巫女装束(マクシムたちの世界にも巫女はいる)の美少女が可憐に舞いながら破魔の矢を射てガーゴイルを矢継ぎ早に撃墜していく。

サラサラこぼれる栗色の長髪に映える花飾り、紅白の神聖な衣装の上からも柔らかな膨らみが見て取れる抜群のプロポーション。

清楚さと快活さそして素直な心優しさがにじみ出ている、純朴で可憐な美少女弓兵が退魔の祈りを込め弓弦を引き絞り放つたび、巫女装束に包まれた美乳がプルンと震える。

(おおっ!この小娘も超可愛い!清楚な弓巫女美少女をグチョグチョに穢してやるのも一興よな)

(神に仕えし退魔射手か、俺の敵では略)



一騎当千の美少女たちに蹴散らされながらも圧倒的物量を頼みに圧し潰さんと魔軍が進軍するが…

身の丈2ジラーにも満たないほど幼く小柄な黒髪の美少女が、小さな身の丈に似合わぬ巨砲を操る。

ドォォォン!

爆砲の轟音と共に重砲弾が放たれ、超広範囲の大軍が一挙に屠られ壊滅的打撃を被る。

8〜9歳ほどにしか見えない、あまりにも小さな体躯で健気に巨砲を撃つ少女の、腰まで垂らし一本に纏めた長い黒髪が爆風でふわりと靡き、額にかかった髪をちっちゃな手でかきわける仕草も実に微笑ましく可愛らしい。

(は…犯罪的だ!あんなちっちゃな子が健気に巨砲を使うギャップが最高だ…幼女に見えるが発育が悪いだけで年齢は思春期半ば、胸の発育は案外悪く無い…これは余の超好みだ!)

(ぬぅっ!まさかウヤンドゥルマまで実用化しているとは…異世界人の兵器技術も侮れん…だが俺の敵では略)

ちなみにウヤンドゥルマはマクシムたちの世界の画期的新兵器、砲熕兵器(ほうてんへいき。大砲)である。



ちっちゃい黒髪美少女の砲撃で穿たれた戦線を埋める間もなく、明るい赤髪を黄色いリボンで纏めた美少女魔術師が青い宝石杖から魔力弾を連打、魔軍残党が焼き払われる。

2.1ジラーほどの小柄な身体に見合わぬ発育の良い乳房が、可憐な唇から魔術を高速詠唱するたびに見習いの魔術学生服の上からも揺れる。

魔法学園の制服であろうミニスカートが魔力弾の高熱の上昇気流で捲れるたび、美少女の絶対領域がチラチラと垣間見え、覗き見るマクシムの欲情を誘う。

思春期の発育途上ながら伸びやかに育った抜群のプロポーション、魔法学園随一の優等生にして容姿も最高水準の美少女魔術師である。

(ぬぅ!この魔法少女も凄まじくレベルが高い!小柄な身体に大きめだが巨乳すぎない美乳、真面目さと快活さを兼ね備えた可憐な容姿、欠点の無い優等生美少女といったところか…これは余の超好み略)

(ほう、あの若さで高速詠唱を習得しているとは恐るべき才幹溢れる魔術師よ。成長すれば面白い敵になっただろうが現時点では俺の敵では略)







その後も謎の援軍は続々と布陣し、可愛さに比例するかのような戦闘力の前に雑魚魔物では歯が立たず掃討されていく。

悉く極上級の美少女ばかり揃えた軍勢に、ひとりの男が着陣するや、敵も味方も雰囲気が一変する。

その男はそこそこのハンサムではあったが、抜きんでた美男子という程ではない一見すると地味な男だった。

だが…その場にいるだけで、美少女たちは戦場の渦中でありながら我が家でお茶菓子を食し愛しい想い人と談笑しているかのような安らぎを感じ、背中を預けられる全幅の信頼を男に感じる。

女神アイギスの加護を受けし英雄王の末裔、そのカリスマは絶大。

英雄王が魔王を倒し、アイギスが身を挺して魔物を封じた千年戦争から千有余年の今。

アイギスの封印が弱まり復活を遂げた魔の軍勢が次々と人間の国家を蹂躙し滅ぼしていく最中、一度は亡国の憂き目を見た王子。

その後アイギスの神託と加護そして信じる仲間たちを次々と糾合し王国を奪還。

人種も種族も垣根なく同志(殆ど美少女)が膨れ上がり、今や魔王軍にとって最大級の脅威となっている。



王子の着陣と同時に、明らかに美少女たちの士気が跳ね上がる。

「ほう、彼が王子とやらか。さしずめこの世界の勇者といったところかね?」

「…くっ、奴は…つ、強いッ!どうやら俺が全力を出せる相手がいたようですな、マクシム様」

異世界に来てようやく楽しめそうだとほくそ笑む主従。

その動機は正反対ではあったが。

「だが……気に食わんな」

「はっ、全くです。マクシム様に歯向かうなど…」

「そうではない。あの小娘ども、ただひとりの例外もなく、王子とやらに身も心も捧げておる」

異能『好感度感知』で美少女たちが悉く王子のモノとなっていることを看破したマクシムは思う、余の所有物を勝手に食いおって、と。



「そして一番許せぬのは……全員『処女ではない』という事だ……余が食らうべきであった極上の処女達を…万死に値するとは思わぬか?」



桁違いの暗黒闘気が理不尽な怒りで溢れ、グレーターデーモンはおろかヒムでさえ背筋が凍る。

「…は、はっ!おっしゃる…通りです!」



元の世界で魔界最強の魔王としてほぼ全知全能なるマクシムであったが、文字通りの不可能が存在しないわけではない。

人知未踏の時空魔法を習得してはいるが、何故か『マクシム以外の者によって貫通済の非処女を、処女に戻す』ことだけは不可能である。

マクシムの性癖は、無垢なる美少女(できれば幼女)の処女膜を奪うことにあり、非処女であれば途端に価値が減ずる。

元の世界で美少女たちの処女を最初に奪った後、禁呪法の処女膜再生術で昼夜ぶっ通しで飽くほど処女貫通を愉しむのが彼の流儀であった。

王子軍には綺羅星の如くハイレベルな美少女ばかり、しかも幼女もいるというのに、けしからん事にその全ての処女は王子に捧げられてしまっている事実を看破したマクシムの失望は想像を絶するに余りあった。



「あ〜つまらん。もう良いわ……ヒムよ、そなたが出て片付けてこい。まあ、そなたが気に入った娘は好きにしても良いぞ?」

「ははっ!仰せのままに。あの王子とやらとはぜひ戦ってみたいものです。それに俺の好みの女も結構いるようですし」

「ふむ、それは良いが…王子とやらは、生かして余の前に連れてこい。あれほどの極上品の処女たちを食い荒らした報いを受けさせねばな」

「ふふふ…御意」





というわけで、ようやく出撃する主従とグレーターデーモン。

「ワシの攻撃力は分かり易く言うと5000だーっ!……アバーッ!?」

無策で突撃を敢行したグレーターデーモンは王子軍前衛をブロックする前に遠距離攻撃でハチの巣にされてあえなく敗北。

王子軍もその気になれば十分ブロック可能な猛者がいるのだが、面倒なので遠距離攻撃だけで仕留められてしまった。



「どうよ!魔王軍も壊滅して指揮官の護衛もあなた以外壊滅したわよ!」

と勝ち誇った魔法少女に杖を突き付けられたヒムは鼻で笑い…

「ふん、雑魚どもが壊滅したとて何の問題が?本来俺一人がいれば王子軍殲滅などたやすく済む事…」

ヒムは重装の鎧を解除し、悠然と戦場を踏破していく。

一見無造作な足運び、だが……王子軍の百発百中を誇る遠距離物理攻撃が一切掠りもしない。

王子の顔つきが険しくなり、遠距離配置の少女たちに撤退を指示。

入れ替わるように金髪碧眼の美少女ヒーラーや銀髪赤目の幼女司祭が布陣、直後、即座にピンクの鎧を纏った可憐な美少女重装兵が避雷針として立ち塞がる。

後衛が狙われる隙を一切見せない、完璧なる再配置が完成する。

王子の戦場全域を見通すかのような采配と、美少女たちの全幅の信頼の賜物であった。

(おお〜!正統派の金髪美少女僧侶ちゃんも最高だ……銀髪のちっちゃな幼女はドワーフ族だな?幼女のレベルも高すぎる…!それに分厚い鎧の乙女も中身は極上品ではないか)

…と後方でマクシムは感心しているだけではなく。

「見事な采配だ王子……と言いたいところだが…」



「ザ・ワールド」



ヒュン………ピキィィン!



「………っ!?」

一瞬。何が起きたのか、何をされたのか分からず王子も美少女たちも凍り付く。

前線でヒムを足止めせんと待ち構えていたヒーラーとヘビーアーマーの鉄壁の布陣が置き去りにされ…

王子の3ジラー先にヒムの凶刃が迫っていた。

「ククク、マクシム様の時空魔法には対応できまいッ!王子よその首貰い受けるッ!」



(ヒムよ、余は生け捕って来いと言ったのに…困った奴よ…)

呆れつつも部下の命令違反を咎めず苦笑いするマクシム。



「……っ!」

ギィィィン!

アイギスの神器でヒムの必殺の斬撃をからくも止める王子だが態勢を崩してしまい…

「ここまでだ王子!死ねッ!ブラッディースクライド!!!」

ヒムの奥義が放たれ、超速回転する剣気が過たず王子の心臓を貫く…



「させないわよ!マジック☆シューター!!!」

ドン!ドカッ!ドドドドド!

「なにィ!バカなッ!この超遠距離から高速魔力弾連打だと!?」

ドドドドドドドドドドドドォォン!!!

前線に王子軍の主力を引き付けつつ、マクシムの時空魔法で最後方の王子の首を狙ったヒムの背中に、超遠距離からの魔法攻撃が炸裂する。

長射程と連打を重視したためか一発一発の爆風は半減しているものの、連打される魔力弾の相乗威力は侮れず、背中に衝撃を受けよろめく。

「ぐはぁ!先程の若き魔術師か…!おのれ…!」

美少女魔術師からの支援火力を受け、王子が奇襲から立ち直りアイギスの神器でヒムの剣を弾く。

「ぐぅっ!王子…強い…!」

王子に対するヒールやリジェネの支援もあり、次第に敗色濃厚となっていくヒム。

(もう良いヒム……いったん引け…)

「ぐぬぅ、マクシム様……申し訳、ありません……王子とやら!この勝負あずけたぞ!」

「………」(こくり)

無言で頷く王子。



「そして小娘…いや若き魔術師よ!」

「な、なによ!見習いだからって、私の魔力あまく見ないでね!」

「先程の高速詠唱魔術、見事だ!魔術を研鑽し強くなる事…それが出来る者は尊敬に値する!」

「な、なによ!褒めたって、許さないんだから!」

剣士と魔術師、分野は違えと自分に打撃を加えた美少女魔術師をヒムは気に入るのだった。



「まあ、処女がいないのでは興が乗らん…グレーターテレポーテーション」

処女厨なマクシムにとっては抜群に可愛い美少女魔術師でも王子に貫通済では興味が薄い。

さっさと転移魔術を発動、ヒムを回収し悠然と撤退をはかるマクシムであったが…











「あなたが魔王軍の大将なのね?こんなに好き勝手やってくれて、撤退なんて許せないと思うの」

戦場にありながら優雅に語りかけてきた美少女。

距離は8ジラー、ヒムが王子の首を狙ったのとすれ違いに、マクシムを討たんと迫っていた。

「……ほう、そなたは……くっくっくっ、はぁーっはっはっはっ!」



狂笑するマクシム。

勇ましくも自分に紅き魔剣を突き付けたのは、15〜6歳ほどの、まさに絶世の美少女だった。

身の丈は2.1ジラーほどの小柄で華奢な身体。穢れなき白雪よりも白く透き通るような肌。

腰まで届く、ミスリル銀の如き銀色の長髪が陽光を反射しキラキラ輝き、頭にちょこんと乗せた豪奢な冠も、不吉な髑髏の髪飾りすらも、美少女の可憐さと高貴さを自然に主張する。

柄にも髑髏をあしらった真紅の魔剣の禍々しさが美少女の儚げな可憐さと調和し、幻想的な美しさを醸し出す。

どんな宝石よりも美しいアクアブルーの瞳がキッと敵を睨み、その勇ましさも吸い込まれそうな深い魅力を放っていた。

一見深窓の令嬢のような淡く儚げな美貌には、大国の統治者としての決意と正義の信念そして……愛する王子の理想の道を共に歩む者としての誇らしさがあり、彼女の美貌を輝かせていた。

夜空の星屑を編み上げたかのような漆黒のドレス、高貴なる大国の姫君でありながら上半身の露出が多い衣装からは、年相応に慎ましく膨らみかけている胸が眩しい。

…まさに、超極上級。いや、神級を超えた魔神級の可憐さ。絶世の美少女。

マクシムが見てきた、王子軍の極上級美少女たちすらも霞んでしまう程の別格の超絶美少女だった。



「美しい…!しかも、美しいだけではない……そなた、処女…であろう?」



見つけた。

いるではないか、最高級品の処女が…。

王子に身も心も捧げていはいるが、何故か純潔を失っていない処女姫が。

「クハハハハハハハッ!!!!光栄に思え。今よりそなたは余の物である!!!」


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