(前半)


 東京は麻布、東邦星華高等女学院。
良家の子女が日々、清く正しく学園生活を営む、乙女の園。
「起立!礼!はい、おジャンでございます!」※
パチパチパチ・・・教室から拍手が湧き上がる。
二年一組の級長、宗谷雪(そうやゆき)の挨拶で一日の授業が終わる。
よく通る澄んだ声。上品な物腰。綺麗な長髪にハイカラなセーラー服が似合う、美少女。
成績優秀、品行方正な優等生の上、世話好きな優しい性格で皆から信頼されている。
そんな清楚な大和撫子な雪は、実にお嬢様らしからぬ、男子もすなるという野球なる活動をしており、打順二番・二塁手として好プレイを見せる守備の要でもあった。

「たまちゃん、ユニホームの寸法、合っていたかしら?」
「お雪か。ん・・やはり私には、ちとキツイぞ。」
宗谷雪の涼やかな笑顔に、石垣環(いしがきたまき)がムスっと応じる。
和服に袴、おかっぱの小柄な少女。人見知りで無愛想だが、愛らしい容姿はさながら、日本人形の如し。
その可憐な見た目と裏腹に、凛とした気丈な美少女。
雪と環は仲の良い幼馴染で女学院の同級生である。
そして環は、女学生野球チーム『櫻花檜(おうかかい)』の中軸三番打者・遊撃手を務める。
幼い頃から男子と伍して野球をしていたセンスは抜群、小さな体に高い運動能力を秘めている。
「あらあら。胸回りが狭かったかしら?着物だと目立たないけれど、たまちゃんて結構胸あるわよね♪」
「ぅ・・な!なにをいうのだ、お雪!」
仏頂面をかあっと紅潮させる環。(かわいいですわ、たまちゃん)と思う雪であった。
ちなみに雪は呉服屋の娘。櫻花檜のハイカラな『ゆにほーむ』は全て雪が用意していた。
「まあまあ、怒らないで、たまちゃん。寸法が合わないのはいけないわ。そうだわ、今夜、私の家に来てくれないかしら?」
「お雪の家に?今夜か?」
「そうよ。私が、たまちゃんの寸法を取り直して、直しておくから。」
「し、しかし・・・。」
「大丈夫、私に任せて♪」
「う。うむ・・・。」

という訳で、夜。石垣環は宗谷雪の部屋にいた。
嫁入り前の女子が夜中外出するのは、如何なものか?
否。『辻打ち』とかやっていた彼女たちには、へっちゃらである。※
環の服装は山吹色の着物に袴の普段着。一方、はいからさんな雪は、セーラー服だった。
「お雪、家でもセーラー服なのか?」
「ん、そういう訳でもないけれど、今夜はそんな気分なの。」
「?まぁ、いいか。」
と、環。風呂敷に包んで持参したユニホームを広げる。
「ん・・その・・・胸元が苦しいぞ。なんとかしてくれ。」
照れて口篭る環。
「うーん、たまちゃん小っちゃいから、小学生用のを用意したのだけれど。やっぱり男の子と違ってたまちゃん、女の子だものね。」
かあっ。と、極度に恥ずかしがり屋な環が赤くなるのに構わず、雪は手早くユニホームの寸法を測る。
大正も十四年が過ぎた御時世、洋服も積極的に扱っている呉服屋の娘、雪の採寸技術はかなりのものであった。
「うん、こんなものね。じゃあ次は、たまちゃん。」
「ん?なんだ?」
「たまちゃんの寸法、測らせて。」
「お雪?ひゃあっ!な、なななにをするのだ!?」
突然、抱きつかれて、声が裏返る。体が硬直してしまう。
「大丈夫、私に任せて♪何も心配はいらないわ♪」
雪は優しげだが黒い微笑みを浮かべ、環を押し倒す。
周到な事に布団が敷かれていて、環の小さな身体を受け止めていた。
「んっ!あっ!どーいうつもりだお雪っ!?」
「無駄よ。大人しくして、たまちゃん。採寸が出来ないわ。」
抵抗する環。雪の運動能力はそこそこ、運動神経は環の方が抜群に優れている。
なのだが、こうして組み伏せられては、体格差は如何ともしがたし。
「んっ!はぁっ!くっ!やぁ!やめるのだお雪っ!・・・はぁ、はあっ。はぁ。」
動揺して闇雲に暴れてもビクともせず、日々の練習で培った体力も次第に尽きていく。
やがて帯が緩み、着物がしどけなく解れ、サラシで隠していた膨らみが次第に顕わになる。
小さな身体の割に、発育が良い環の胸。和服の下に下着なぞは、ない。
「うふふ、かわいいわ。和服だと隠れてしまって勿体ないわね、たまちゃん。」
「ぅぅぅ見るなぁぁぁ!は、はっ・・はしたないではないかっ!」
恥ずかしさに目を伏せる環。だが。抗議は雪の唇でふさがれた。
「んむっ!?・・・・んむぅぅぅぅぅっ!!?」
あまりの驚きに目を見開く環。頭が真っ白になり、知らずに涙がこぼれる。
そんな幼馴染の唇を貪る、清楚な優等生。
「くちゅ、ちゅく、じゅるん。んっ♪ちゅるんっ。ふぅ・・・ん・・」
(ふふ、美味しいわ、たまちゃん♪)
恍惚の雪と裏腹に、未知の感覚に動揺する環は必死に抗うが・・
口の中で得体の知れぬモノに絡め取られ翻弄され蹂躙され、抵抗しても狡猾に絡め取られやがて、考える事もできなくなっていく。
「んっ!んんっ!んぁっ!むぐぅぅ!・・・ふぁぁぁ〜〜っ」
何も考えられぬまま、環の舌は知らずに雪の舌を求め、自ら絡み合っていた。
(ふぁぁっ、どういう・・事だ?こんな・・こんな感覚、初めてだぞ!?)
男子とでは決して得られぬ、禁断の甘い味。尤も環に、殿方との経験があるワケもなし。
経験がないのは雪とて同じなのだが、雪は書物で得た知識を元に日々練習していたのであった。
二人とも、目がとろんと虚ろにまどろんできた頃。
未熟だが激しい接吻が終わる。
清らかな女学生たちの心とカラダに異様な昂ぶりと余韻が燻っている。
「はぁ・・ふぁぁ・・・なぜ、こんな事を・・・お雪?」
「ふふっ、もちろん、たまちゃんの寸法を測るためよ♪」
「ふ、ふざけるな!測るところが違うだろーが!」
「あら、それじゃあ、これからちゃんと測らなきゃ、ねっ♪」
言うが早いか、雪の指が環のしどけた着物を手馴れた手付きで剥ぎ取ってゆく。
「あっ!なにを!?」
さすがは呉服屋の娘、着付けに精通した雪の手際は早かった。
セーラー服の少女の目に映る、脱ぎ広げられた山吹色の着物そして中で震える、愛らしい少女の裸体。
まだ幼さが残るものの、貞淑な女学生にしては、野球の厳しい練習で培われ、壮健で引き締まっている。
可憐さと、しなやかさを併せ持つ、小さな可愛い裸体。
「はぁはぁ、たまちゃん可愛いわっ!たまちゃんっ。うふふふっ♪」
「はうぅぅぅ〜〜〜〜っ」
壮絶な恥ずかしさに環は顔中真っ赤にして震える。
そんな環に、雪の劣情は否が応にも昂ぶってゆく。
「さぁ、まずは胸回りを測らなきゃ、ね。」
雪の細い指が環の膨らみにそっと触れ、撫で回す。
「あんっ!い、いやぁ!やめて・・くれぇぇぇ!」
小柄な割りに発育は良いとはいえ、雪の掌に収まる、可愛らしい双丘。
まだしこりの残るその乳房を揉み解し、舌を這わせるたび、ピク、ピクンと反応がある。
すぐに感じてしまい、乳首がツンと勃起してしまうのだった。
「っあ!?はああ!やっ、いやぁぁっ!」
ビクッ!ゾクゥ。と敏感な刺激が環を襲う。
「どう、たまちゃん。気持ちいいのかしら?」
「ふぇ?ち、違う!女同士で感じるなど、あっ、有り得んぞっ!」
「あらあら?じゃあ、これは何なのかしら?」
悪戯っぽく笑う雪の手が、すーっと下に伸び・・
「やめろ!そんなところに触るな・・・ひゃんっ!」
ビクン!秘所をなぞられ、甘い声をあげてしまう。
「ほらご覧なさい。たまちゃん、とってもキモチ良くなっているじゃない。」
「ち・・違・・・っ」
気丈な環は気を失いそうな羞恥を堪え反論するが・・
雪は環の目の前で、指に付着した透明な粘液を見せる。
「こんなに濡らしているのに。これは、たまちゃんがとってもキモチ良くなっている証拠なのよ?」
「ぅ・・・うぇ・・あ・・ぅ・・・・っ」
ただでさえ人見知りが激しく恥ずかしがり屋な女学生、それが親友の同性に、このような痴態を晒されてしまう。
もう、死んでしまいたい。だが。
「恥ずかしがらないで、たまちゃん。大丈夫よ。」
ペロン。クリッ。雪の舌と指が、環の敏感な秘所を責め立てる。
「はあぁぁぁん!ふぁ!ああんっ!雪ぃ、だめだ、そんな不潔なっ!舐めるなぁぁぁ!」
「うふふ、ココは正直なのに。ほんと強情だわ。本当はキモチ良いのでしょう?」
ピク、ピク、ビクッ!
「んっ!くっ!違ッ!ん〜〜〜〜っふぁぁぁぁっ・・・・そんな・・はずは・・・っ」
「そろそろ素直になろうよ、たまちゃん♪」
宗谷雪。強情な愛しい親友に、優しく微笑む・・・。
「・・・ん。お雪ぃ、キモチ良いのだ。私はどうしてしまったのだ!?」
「・・・!たまちゃん♪」
(ふふふ、墜ちたわっ♪)

「心配しないで、たまちゃんと私が今、信頼関係で結ばれたのよ!」
「はぁ、はぁ・・・ふぇ?」
「小梅さんと晶子さんが『夫婦(めおと)』になったのと、同じなの。」
「夫婦・・・。だがあの二人はバッテリー、私達はショートとセカンドだぞ?」
「あら、セカンドとショートは、内野守備の要なのよ?私達の絆を深める事は、朝香中学に勝つ為にも必要な事よ!」
「・・・・うぅ、心臓がドキドキするぞぉ」
「大丈夫、私に任せて!とってもキモチ良いのよ♪」
たまちゃんげっとだぜ!会心の笑みを浮かべる宗谷雪であった。
続く。


※「おジャンでございます」
大正女学生の、級長(現代でいう学級委員)の終業の挨拶。
江戸時代、火事が鎮火した合図に鳴らされた半鐘の「ジャン」から、物事の終了、授業の終了の挨拶となった(らしい)。

※二年一組
五年制、雪と環は14歳である。

※辻打ち
夜中に男子球児の投手を待ち伏せ、勝負を挑むという、淑女らしからぬお転婆な行為。


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