深夜の横浜外人墓地、舞織達春日四姉妹は、アッヒェンバッハ姉妹に辛くも勝利した。
「これ程の念動力の使い手とは……。”緋目の人形遣い”の名は伊達ではありませんね」
四姉妹の実質的リーダーである舞織は、吹き出た額の汗と付着した砂埃を拭き払い、そう感想を漏らした。それを聞いて、倒れていたアッヒェンバッハ姉妹…端的に言えばリーゼロッテと彼女が姉と言い張る人形なのだが…を代表して、リーゼロッテが憎々し気に口を開いた。
「うるさい。私をどうするつもり?」
リーゼロッテは、弱冠10才の身でありながら、その聖霊力を駆使し、裏稼業を生業として孤独に生きてきた。端的に言えば、暗殺稼業である(実際には”精神的に殺す”事をしてきた様だが)。その為、世界各国の聖霊庁から最重要危険人物として指名手配されていた。無論、ここ日本の聖霊庁も例外ではない。そして、春日四姉妹は日本聖霊庁お抱えの”協力者”である(正確には非正規臨時職員的存在)。つまり、ここでリーゼロッテを捕縛しないといけない訳であるが…しかし。
「どうもしません。ただ、これからは真っ直ぐに歩んで、その力、正しく使ってください」
舞織は武器である独楽を仕舞い込むと、リーゼロッテに微笑みかけてそう言った。
「…いいのか?舞織」
舞織の姉・鼓音が問い掛ける。日本聖霊庁からはリーゼロッテ捕縛の命は受けていない
…いや、ひょっとしたら彼女が来日した事すら掴んでいないかもしれない。しかし、今ここで彼女を逃がしてしまう事が知れては、各国聖霊庁から突き上げられた日本聖霊庁が舞織を糾弾するかもしれない。そう心配しての事だ。しかし、舞織は首を横に振って微笑み返した。言葉はいらなかった。
「…………………………大きなお世話」
リーゼロッテはムクリと起き上がると、大きなトランクを持ってフラフラと歩き始めた。
そして一旦立ち止まり、舞織達の方に振り向いて、ポツリと言い放った。
「…………貸しなんて気持ち悪い」
後日、とある聖女の活躍により東京上空に現れた謎の城と魔方陣は何処かへと消え去った。
そして春日四姉妹は、その後始末…この騒動によって現れた次元の歪みへの対処…に連日駆り出されていた。そんな折りだった。日本聖霊庁にてこんな会話がなされていたのは…。
「…では、”緋目の人形遣い”がミルドレッド=アヴァロンの手引きによって来日していたと?」
よくあるオフィスビルの会議室…の様に見える一室。ただ1つ違うのは、窓が全く無い事である。
詳しい場所は明かせないが、ここで、日本聖霊庁は今回の事件の対策本部を置いていた。中央にて立っている一人の女性を見つめる壮年の女性達。各国聖霊庁は基本、ほぼ女性だけで組織されている。
そして、壮年の女性達はその重鎮、中央の女性は春日姉妹担当職員の一人である。彼女は、今回の事件の全容を知りたい日本聖霊庁の意向で、春日姉妹サイドの情報を客観的に知る者として、その活動の一部始終を報告させられているのだ。
「はい。そして”緋目の人形遣い”は大道寺博士に襲いかかった後日、春日姉妹と交戦しました」
「それで、どちらが勝ったんだね?」
「春日姉妹です。しかし、事もあろうに春日舞織の独断によって”緋目の人形遣い”は開放、後逃走。彼女は相手がかのリーゼロッテ=アッヒェンバッハと知った上で見逃したのです!」
ざわざわと、日本聖霊庁の重鎮達が騒ぐ。無理も無い。世界規模で指名手配されている”緋目の人形遣い”リーゼロッテが英国聖霊庁元長官ミルドレッドに雇われて来日した、いや、させてしまったというだけでも失態だというのに、よりにもよって日本古来よりの聖霊事件のエキスパート、春日一門の当代による失態(もしくは裏切り行為)が明るみになったのだから。
「決定的証拠を掴めなかった為、本日まで状況証拠による証拠固めをせざるを得ず、報告に時間が掛かってしまいましたが…提出させていただいた資料で、十中八九容疑は固められると思います」
「ご苦労。春日一門当代・春日舞織を連行、尋問する。この提案に賛成の者は挙手を」
…その提案は満場一致で可決した。
翌日。数日振りに美苑女学院に現れた舞織であったが、久方振りの級友達との再会は、聖霊庁からの緊急の呼び出しによって遮られる事となった。
「えぇ〜、まおりん今日も仕事なの?せっかくまおりんのお茶が飲めると思ったのに」
「ごめんなさいね、はぁとちゃん。この埋め合わせは必ずするから…」
「はぁと、無理言って舞織を困らせないの。…舞織、無理、しないでね」
「ありがとうございます、冴姫さん。春日舞織、行って参ります」
更衣室で手早く巫女装束に着替え、早足で校門前の車に向かう舞織。しかし、姉や妹達の姿が見えないのに車のドアが閉められ、ロックを掛けられた事に不信感を抱いた。舞織は顔見知りの春日家担当職員に詳しい話を聞いてみる事にした。
「あの、姉さんや小糸、小唄は…?」
「次元の歪みは千年守様とそのお付きの者が対処しています。本日は貴女一人に用があるのです」
「私一人に…?いかなる御要件でしょうか」
「我々はただ、貴女を本部に連れて来る様に、との指示を受けただけです。質問は聖霊庁に着いてから、担当の者にお願いします」
その後車が発車し、美苑女学院を遠く離れて行く。舞織はなんとか情報を得ようと何度も職員に問い掛けてみるものの、聖霊庁管轄の建物に着くまで、私は詳しい話を聞いていないの一点張りだった。流石にここまで来ると、舞織には一つの引っ掛かる事柄があった。”緋目の人形遣い”、リーゼロッテを見逃した事であろうと…。
東京某所、一見箱物の建物に見えるビルの某階へと連れて来られた舞織。ここからでないと、地下にある日本聖霊庁のオフィスへの直通エレベーターが使えないのだ。春日家担当職員は場を離れ、舞織ですら1・2度顔を合わせただけの(はずの)職員が代わりを引き継いだ。おそらくは彼女が今回の呼び出しの担当職員の一人なのだろう。舞織は、その職員から今回の件について聞いてみる事にした。
「あの、今回はいかなる御要件で私だけが呼ばれたのでしょうか?」
「とりあえずエレベーターに乗って下さい。お話はそれからにしましょう。…おそらく、必要無いと思われますが」
「それはどういう意味でしょうか」
「……来ましたね。どうぞ中へ。お話はそれからです」
舞織は渋々とエレベーターに乗り込む。そして職員も乗り込み、扉を閉めると、まるでパスワードを入力するかの様にコントロールパネルのボタンをいくつも押した。こうする事で秘密の地下オフィスに辿り着けるのだ。足元で何かが開く音がし、エレベーターが動き始めると、職員は口を開いた。
「まず、ご学友との憩いの一時を邪魔する様な真似をして申し訳ございません」
「いえ、聖霊庁よりの呼び出しとあらば。…それで、本日”私だけが呼び出された理由は”?」
舞織は少し、語気が荒くなった事に気付いて、いけない、いかなる時も冷静さを保たないと、と思った。しかし、語気が荒くなった事など職員は気にする事も無く、その予想された答えを紡いだ。
「…”緋目の人形遣い”リーゼロッテ=アッヒェンバッハ…ご存知ですね?」
「……えぇ。その名は。それで?」
「その”緋目の人形遣い”が、先日のミルドレッド事件に深く関わっているとの情報を得まして…そして春日舞織、貴女と接触したとの未確認情報も同時に入って来たのです」
「接触…ですか。そうですね、ひょっとしたらどこかですれ違う事もあったかもしれません。ですが、私はその”緋目の人形遣い”の顔を知りませんので、わからずに見過ごしてしまったかもしれませんね」
「そうですね。…朱い瞳に、強大な聖霊力。それだけの情報では、わからないかもしれません」
…そう言うと職員は、徐ろに舞織の背後に回った。そして、殺気を感じた舞織が身構えたその瞬間
プシュッ
舞織の首筋に1本の細い注射が突き刺された。職員はその中の薬液を舞織の体内に注入していく。
「あ、あ…ぁ」
「…特製の自白剤です。これでもう、貴女は我々の操り人形です」
瞳が輝きを失い、四肢から力が抜け、どさっと床に崩れ堕ちる舞織。その姿を、職員は冷たい瞳で静かに見つめていた…。
「う、うぅ…」
「………」
窓の無い会議室。その中央に用意された椅子に、舞織は拘束されていた。そして身動きの取れない彼女の身体を、3人の若い聖霊庁職員がまさぐっている。その周りには、無言で痴態を見つめる聖霊庁重役達の姿。舞織は朦朧とした意識の中、その自由の利かない身体を精一杯よじり、愛撫から逃れようとしていた。が、その抵抗は無意味な物と化していた…。
と、その様子を見ていた重役の一人がスッ…と手を上げる。少し頬を赤らめつつも愛撫を繰り返していた職員達はその手を止め、重役が口を開くのを待った。
「そろそろ教えてくれはしないかね、春日舞織。君は”緋目の人形遣い”と接触、交戦。そしてこれを一度は拘束するも開放し、逃がした。そうだね?」
「う…あ、ぁ…」
愛撫を止められた舞織は、顔を耳まで赤らめ、瞳は焦点を失い潤み、口の端から涎を垂らすという無惨な様相を呈していた。
「あ…わ、わた、し…は…なにひと…つ、間違…った、こ…となんて…」
「その返事は、認める…という事だね?」
「ぅ…あ、あんな…小…さな、子…を、国際…しめ…い手配、する、なんて…絶対、間違って…ます」
「君の意見を聞いているのではない。本当かと聞いているのだ」
ぶんぶんと、首を横に振る舞織。それが今の彼女にできる抵抗…だが。
「…続けろ」
「はい」
3人の職員による愛撫という名の拷問が再開される。一人は耳を甘噛みし、息を吹きかけ、瞼を舐める。
そして時々その唇を吸い上げ、口を開かせ、舌を絡ませ、唾液をたっぷりと飲ませていく。舞織はイヤイヤをし、何とか口を離そうとするが、頭を抱えられ、ゴクリ、ゴクリと唾を飲み下さされる。
一人は舞織の背後から、その中学生の物とは思えない豊満な乳房を巫女装束の上から、そして襦袢の中から揉みしだく。ブラジャーのホックは巫女装束の中で外され、くしゃくしゃにされてしまった。そして、その布地の感触すら、舞織の乳房を責め立てる道具となった。
最後の一人は袴を捲り上げ、股間の秘裂を指と舌で責め立てる。自白剤と愛撫の効果、そして舞織の経験の無さが災いしてか、ショーツは汗と唾、愛液によってしとどに濡れ、まるでお漏らしをしたかの様になっていた。
「う、うぅ…ぅ〜〜〜〜〜っ!!!」
プシャアァァァァ…
…訂正。たった今、舞織は耐え切れなくなり本当にお漏らしをしてしまった。股間を舐め責めていた職員はその小便を口に含むと、舞織にキス責めをしていた職員を離れさせ、小便を含んだ口を…
「ぷはっ!はぁ…はぁ、は、あ…い、イヤ…イヤ……んーっ!!!」
舞織の口に合わせ、その口内に中身を注ぎ込む。舞織も抵抗し、息を吐く事で何とか小便の侵入を拒もうとするが、はっきり言って意味は無かった。僅かな量だけが口の端から漏れ、大半は容赦なく喉の奥へと注ぎ込まれて行く…。こうなったらもう、舞織は飲み込むしか無い。
「う、う、うぅ…」
ゴク…ン
涙を零し、自分の小便を飲み込んでいく舞織。その間も乳房、秘裂への愛撫は止む事は無い。ビクン、ビクンと舞織の身体が激しく痙攣する。絶頂が近いのだろう。と、そこでまた重役の一人がスッ…と手を上げ、愛撫をやめさせる。
「…どうだね、春日舞織。これ以上強情を張るというのなら、君の姉妹にも同じ目に遭ってもらわないといけなくなる…私達としても、その様な真似は出来る限りはしたくない。真実を、話してくれるね?」
「はぁ、はぁ、はぁ…は…は……」
『どんな話が聞きたいの?』
突如、会議室に響きわたる感情を感じない少女の声。騒然となる職員達。
「何だ、この声は?!」
「侵入者!?馬鹿な!!」
『慌てて探す事は無いよ。今、姿を見せるから』
パチッ…
突如、室内の照明が落とされた。そして数秒後、非常用電源が入る。と、明るくなった室内には…!
「…久しぶりだね、春日一門当代。借りを作ったままだと気分が悪いから、来たよ」
「り…リーゼロッテ、さん…」
「ひぃっ!!ひ、ひ、”緋目の人形遣い”!!」
少女の声の正体は、舞織のすぐ傍にいた。”緋目の人形遣い”リーゼロッテ=アッヒェンバッハ。
「邪魔」
リーゼロッテは手にしたトランクを大きく一回転させ、舞織を責めていた職員達を壁に吹っ飛ばす。
「セキュリティが甘いね、日本聖霊庁の建物は。機械に頼りすぎるからこうなる」
「まさか…ガードを全て突破してきたと言うのか!?」
リーゼロッテは何も答えない。その代わりに、ボソリと呟く。
「我が血に宿る盟約よ、形を成せ」
そして親指の腹を犬歯で傷付け、血を一滴床に垂らす。
「ギーァ、血の契約を行使する。あいつら、壊しちゃえ」
意識を失いかけた舞織が最後に感じた感触は、自分の拘束が解かれる感触。そして聞いたのは…
「か、影が…影が!ぎゃあああああああああ!!!!」
「舞織、おい、舞織!!」
「「おねえちゃん、大丈夫?!」」
…舞織が目を覚ますと、そこは自分の部屋だった。そして心配そうに見つめる姉妹の顔。
「姉さん…小糸…小唄…?」
「やっと気付いたか。お前が家の前で倒れていた時はビックリしたぞ」
「家の前…?うっ、頭、痛い…」
「おねえちゃん、暑さでやられたんだよ」
「今日は東京で最高気温を記録したんだって」
「暑さ…で?……本当に?」
「舞織、今日は私が夕食と弁当の準備をするから、お前はゆっくり休んでいるんだ。そうだ、何か食べたい物とかはあるか?」
「はーい、パスター!」
「私はかやくごはん!」
「ふたりには聞いてない。舞織、遠慮しなくてもいいんだぞ?」
軽い頭痛を抱え、舞織は何か大切な事を思い出さないといけないと思っていた。だが、それが何か、頭の中でモヤがかかった様な気がして思い出せないでいた。大切な、大切な何かが…。
「これで借りは返したよ、春日一門当代。…お姉ちゃんの手料理、食べたいな…」
終わり
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