Simon氏・作

 「Simonの危険な本棚」のSimonさんから2005年度残暑お見舞いSSをいただきました。いかにもSimon様らしい、夢とも現ともつかない不思議な味わいの官能小説です。


はやく 逃げなきゃ

がさり 生い茂る草を掻き分けるようにして
どちらに向かえばいいのかも分からない密林の中
裸なんて、もう気にしてられない
お腹が締め付けられるような恐怖
もしかしたら、奥へと進んでいるんじゃないかって
それでも止まることも 戻ることもできない
だって……

ギィ

……あいつらの鳴き声が追いかけてくるから
泣いても誰も助けてくれない
ここ、どこなの?
がくと膝が縺れた 痛い 尖った石が足に
「もう やだぁ」
それでも立ち上がって 歩く

ギィ

聞こえちゃったから
気のせいかもしれないけど さっきよりも近くから
歩けば喉が渇く お腹も空く
ごくり
目が赤紫の実に吸い寄せられる
どこにでも生えているあの木
この森は変 これだけ歩き続けてるのに、食べられそうな実はこれ一種類
「……川…ないの?」
こんなに喉が渇いてるの
瑞々しい甘い汁気をたっぷりと含んだあの実に手を伸ばしたくなる
はぁ はぁ
だめなの あれは毒だから
目を無理やり逸らして でもそこにも、さっきのよりも大きく熟した実が揺れてる
お腹がすいてるのは我慢できるのに、どうして喉が渇くのは我慢できないんだろう
口の中に広がる甘い記憶
柔らかな果肉 噛むとぐじゅりと甘い蜜が口いっぱいに広がって
そして……

「……たべちゃだめ またおかしくなっちゃう」

どうして 足が震えてお尻がすうって浮き上がるみたいに頼りない
どうして がさ 草を踏む足が痛いのに
ぷんと鼻をつく甘い匂い に、目が眩む

ギィ ギィ

一匹じゃない鳴き声 いつの間にか囲まれてる
ざわと揺れる木々は風じゃない
ああ、そうかあいつらも分かってるんだ
待ってるんだ 私が負けちゃうのを
そして、それは正しい

……どうせ、逃げられないなら

ぷちりと枝から実をもぐ
私は正気じゃ……本当の私じゃない
きっとこの匂いに酔ってるんだ だから

くちゃ

歯を立てる溢れた濃厚な蜜がどろりとあごを伝う
ごくん 口の中から喉がふわと熱くなる じわりと広がってく

「……ぅぁ……」

めまいがして、木に寄りかかった 足元がふわふわ
くちゅり あむ ごくん
やわらかいのほとんど噛まなくても口の中でとろけて……

ギィギィ ギチチ

がさりと茂みを掻き分けて
大きな猿みたいな黒い影 でも猿じゃないの
体の表面がざわざわ あはは
きっと正気だったら悲鳴を上げちゃってた
ぬらり光りを弾く手首ほどもある蛇みたいなのが何百本も絡み合って

じょおおおおぉ

ああ、私怖いんだ またおしっこもらしちゃった

ずちゃり

こっちに来る 私は急いで手の中に残っていた実を口に押し込んだ
くあ 一度に食べ過ぎちゃったみたい熱い

「あは」

ずるずると座り込む かぱと大きく足を開いて
あそこが濡れてる くちゅ 指がぬるりと入っちゃう あ
気持ちいい 声が止まんない

「ああ……あ……」

地面に足の裏をこすり付ける
背中を木の幹に ああ むずむずする おっぱい

びちゃり

胸を揉もうとした腕が止められたぐるぐる巻きついてきた太い紐 濡れてて温かくて

ずる

「ひゃうっ!」

手首から二の腕に這い上がってくるぞわって鳥肌が立つ やだ
ぎぢゅる 足首にも ぐいと引っ張られて

「きゃあぁっ……あ……」

逆さまにひっぱり上げられた 両腕にも 逆さまになった大の字
頭が重いの 目の前にぐいって突きつけられた


……クワエロ

ゆれるそれ 太い 口に入るの? 恐る恐る口を開け――

ずぶぐぶっ

「んぶぅっ!……むぶぐ!」
……臭いっ……いや!

ぐぶっ ぬぶぐ
無理やり入ってきた 顔を振っても おぶっ 喉を突き上げられて吐きそう
夢中で歯を立てちゃった

そうしてから思い出した

どびゅぶ

口の中に溢れた あの実を何十倍も濃くしたみたいな蜜に

「ぐふっ!……んごぉっ!……」

おぼれる ごくりごくり 無理やり飲まされて 鼻にも回って苦し

ずぶ

「おごおおぉぉっ!!」

跳ね上がった だって
裂ける あそこが ごりごり

「……うぎゃあぁっ!……あがが……」

止まらない ごつり もう奥まで なのに

めり

ねじこむように 私のお腹が……焼ける

ずるずるずる

止まらない まだ入ってくる
それと一緒に

ごりり ずるずるる

喉の骨が軋む 押し広げながら 胸の奥をこじ開けて

「……ぶ……ぉご……」

手を握ったり 閉じたり それしかできない
だって私

ずぶぬぶごぶりぐぶ……ぶぢゅっ!びゅぐっ!

「……んおおおぉっ!」

お尻からとても太いのが びくんびくって暴れながら 飛び出した

ちょろろ……ちょろ……

残ってたおしっこが、お腹を伝って胸まで

「……ふぉ……ぉあぁ……」

……串刺しにされちゃった

目の前がちかちかする

ギィギィ

集まってくる
何匹も 何匹……え?
だらだらと汗があふれ出す
だって、これ……一昨日より増えて……

ざ わ

……ひぃっ!……ぁ……あ……や!……

「……ふぎゃああああぁぁぁぁぁっ!!……あがっ!……あばぶぐっ!……ぶごおぉぉっ!…………」

ぐぢゅりぬぢゅっぐぶっごぎめきぶぢゅぬぶぐぷぶりぢゅぶぢゅぬちゃ
やめてまってほんとうにしんじゃあぎゃはぁっ!あああひゃぎゃぁぁっ!










……ぴく

指 動く
それで目が覚めた
膝ががくがくするけど、それでも何とか、立ち上がる
体に染み付いた匂いに
頭を振って

「……にげ…なきゃ……」

どこへ? いつまで?……むりなのに……
ふらと足を踏み出そうとして

「……ぁ」

赤紫の実に、目が吸い寄せられる

ごくり

うそ だって、今されたばかりなのに どうして

「ど…して……こんなに喉が……」

ざわざわとゆれる森
葉擦れの音に混じって あいつらの声が

ギィ

すぐそこで、待ってる

「そんな……わたしは……」


……逃げられない……もう……





……ぐぢゅ……





Fin


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