第零話『 鑑賞倶楽部 』
( 視点・柴山 和孝 )
「・・・・」
詰めかけた誰もが、暗闇の中で息を潜めている。
会場内は満員満席の状態。
そんな真っ暗闇の中、会場の真ん中・・・中心に映し出されているのは立体映像。一世紀前の人間が見れば、それは映像ではなく実践による公演と錯覚させることだろう。
そこに手を伸ばせば、触れられそうなほどに鮮明に。
『三次元映像機器・光学用メモリードライブ』
通称、「3DLMD」
現在の電子科学技術力の日進月歩によって国内にも普及されるようになった最先端の映像機器であり、それによって映し出される映像は、紛れもない現実(過去)そのものを現出(再現)してくれる。
三次元に展開される、等身大の映像記録である。
それだけに視聴者には、再生された映像をあらゆる角度から眺めることができる(そのため、上映スクリーンは丸みを帯びた球状型となる)ようになり、一度、そこに収録された映像には、もはや修正や改竄、捏造することもできない。
まさに過去の・・・そして紛れもない、現在進行形の出来事を、この場で視聴させることができるようになっていた。
それを詰めかけた三百人近いセレブが固唾を呑んで、
黙々とただそれを見守っている光景である。
それはそれで異様なほどに。
それほどに緊張感が増幅されていた。
「・・・・」
『鑑賞倶楽部』の会員なら当然ではあろう。
倶楽部内には、暗黙の了解がある。
強姦・和姦・輪姦・酔姦・睡姦などに関わらず、
倶楽部内においては、被写体・・・女性が感じなければ、
決して性交してはならない!
ましては膣内で果ててはならない。
という絶対の掟・・・
倶楽部全体の決議によって結ばれた絶対協定が。
今現在、球状型スクリーンに映し出されている映像は、先週に初めて公開された『黒木闘気師』氏による・・・彼の経営する(高級宿泊施設の一階)『図書かふぇ』に偶然、来店してきた中学生カップルの、過去の映像である。
長い紫紺の髪の先をリボンで纏めて、独特の(一昔前に流行した)外出用モブ(ナイト)キャップには、三日月のブローチ。
ゆったりとした縦縞模様のワンピース、また服の各所には蒼と赤のリボンで纏められ、童顔にしてまるで童女を彷彿させるような低身長。
( そして・・・ )
まだ小学生では? と思わせる、全く起伏のない胸。
( これは、また・・・ )
容姿的には決して悪くはない。
いや、大半の男性が美少女と認めるだろう。
(「おまんこ指数」こそ、決して高くはないが・・・)
それは引き籠り故の運動不足のせいか?
はたまた生来の素質だったか不明だ。
それでも観賞クラスの素材としてはAランク相当だろう。
ただし・・・
( 処女、というだけで、最高級素材じゃな・・・ )
現在では戦国時代の姫君が如く、貞操観念の強い時代が再び到来してきたこともあり、今時、中学生や高校生にもなって『処女』というのも、決して珍しいものではなくなっていた。
( 時代の変革じゃ、な・・・ )
貞淑淑女の時代の再来と言い換えてもいい。
それでも初婚の初夜。その心に定めた特別な、一人の異性に捧げる、という現代少女の強い意思の表れであろう。
( そして・・・ )
それだけにそれを(強引)(未然のうち)に摘み取るという行為には、より一層の強い興奮を、その少女の初めてを奪い尽くす、という征服感を生み出していくものだった。
( ・・・・ )
なるほど、と儂は感嘆する。
確かに『黒木闘気師』氏を支持する会員は少なくない。
倶楽部創設時からの『映像提供者』の一人であり、また元々は科学者という変わり種でもあるが、一般受けする美少女を見分ける眼力といい、手際良く運ぶ手腕といい・・・
同じ『昏睡姦孕ませ系』を手掛ける一人の『映像提供者』として敬服する思いであった。
その世間一般的の美少女が、危険日の中でも絶対的に危険な時間帯。『絶対危険刻』(排卵を迎えるその直前から約二〜三時間の間)を迎えるため、注文された飲料水には『粉状の睡眠薬』、室内に散布された『昏睡系ガス』、彼女が席を外した際に『クロロホルム』を染み込ませた手巾のという三段構えの備えによって、この中学生カップルを彼(黒木闘気師)の『特別ゲストルーム』に招待させた次第であった。
彼自身が開発に携わり、倶楽部内においてのみ流通していた『昏睡系』のそれは、浅い眠りを維持させたまま、時間内は決して目覚めることはなく、人体に与える悪影響もない特別性であり、儂もこれまでに何度か利用させて貰ったものである。
こうして昏睡する彼氏の前で、彼女の身体を弄び、『昏睡姦発・妊娠直行の膣内出しレイプ』へと導かれていく。
『 あっ! あっ! 』
先にも触れたように、「3DLMD」によって映し出される映像は、実際に起きた出来事の再現であり、もしくは、同時に発生している現場である。
『 あっ! あぁっ! 』
この女子中学生は、このカラオケ店において間違いなく昏睡させられて、同じく昏睡させられた彼氏の前にて、昏睡レイプされた際の喘ぎ声をマイクで発声させられていたのだ。
(・・・媚薬も使ったかも知れんな?)
勿論、確証はない。
また倶楽部の規定にも、媚薬の禁止とはない。
儂も最悪の、最終手段として使用に踏み切ることだろう。
無論、儂のポリシーには反するが。
(まぁ感じさせられずに、空振りするよりは、な・・・)
上層部としても、必要悪というところだろうか。
だが、その媚薬を使用したかもしれない、という・・・そう断定させない手腕にこそ、この『黒木闘気師』氏の真骨頂かもしれん。
『 んっ! あぁ! んぁ! あんっ! 』
意識のない彼女はステージ上で犯され、マイクを通じて、懸命に対面側の彼氏へと語りかける。
無論、レイプである以上、男・・・『黒木闘気師』氏が膣内に果てるのは、当然の権利であろう。少女もしっかり感じておる。例えこれで彼女が妊娠しても、それは彼女の自己責任というものだ。
( まして・・・ )
客席のソファーでは意識のない彼氏の方も、彼女の絶え間ない美声(喘ぎ)に、曝け出されている股間がしっかりと明確な反応を示しており・・・
(それだけで射精しそうじゃわい)
ふむ。
・・・他の男に犯されて、感じ合っているカップルというのも、それは中々に滑稽な光景ではあろう。
ならば・・・彼女が確実に身籠ることになるその責任の所在も、カップルの二人で分かち合うべきだ。
少なくとも倶楽部の空気はそれを肯定する。
極論となるが・・・
それが強姦であろうと・・・少女は感じたのだ。
感じて(喘ぎ)声を出したのである。
そして感じた以上、それはその時点で和姦、となる。
和姦による、受精・・・受胎なのだ。
異常と思われるだろう。
だが、異常とはなんだ?
では正常な心理、正常な性交とは・・・?
確かに映像では、意識のない少女が犯されていよう。
だが、そんな男を受け入れながら、意識のない身体はしっかりと男に感じているのだ。
しっかりと声にして、受け入れたのだ!
SEXによる性交・・・生殖行為によって。
なら、我々は・・・
会員はそれを黙って見届けるべきであろう。
男と女の、その愛し合っている情景を・・・
そしてそれによって結ばれる、
新たな生命の誕生の瞬間を・・・
「・・・・」
これが『絶対危険刻』の間、続けられる。
それが『鑑賞倶楽部』にて上映される基本。
無論、『絶対危険刻』の状態で、膣内射精を受けた女性は間違いなく妊娠することだろう。
今の、その美少女のように・・・
その運命の誕生する瞬間を・・・
それを見届けるのが、『鑑賞倶楽部』の趣旨である。
ゆっくりと会場内の照明が照らされていく。
ようやく『黒木闘気師』氏、自らが実演したレイプ映像が終わりを告げたのだ。
会場では『黒木闘気師』氏の(公開しただけでも)処女孕ませ100人踏破の記念式典が行われており、老いても尚益々盛んな彼に、儂も羨望の眼差しを向けずにはいられなかった。
・・・そして。
「・・・・」
(ふむ。場内が一層、騒然としてきたな・・・)
気が付けば、立ち見する覚悟でも詰めかけるほどに、
場内の盛況さは更に増していた。
それに伴い、静粛だった会場内に僅かながら活気が戻る。
観衆の中には今の映像に満足した者もいることだろう。
だが・・・
彼らの・・・今日、駆けつけた視聴者の真の目的は、
さっきまでの少女たち、過去の映像ではなかった。
( ふん・・・ )
儂は『映像提供者』の一人として、特等席のテラスにて破顔する。
( これで儂の名声は更に高まるというものじゃ )
儂の『映像提供者』の名声は、まだ『黒木闘気師』氏を始めとする面々に遠く及ぶものではない。
だが・・・そう、遠くないうちに・・・必ず。
『 それでは三十分間の休憩を挟みまして 』
明るくなった場内にアナウンスが丁寧に、
本日のメインイベントの発表を公表する。
『 柴山和孝氏が提供されます。
本日のメインイベント・・・
ライブ映像へと参ります 』
拍手の喝采がそれに続き、
先週までに配布された写真付き資料が映し出されていく。
会場に詰めかけた会員の全員がそれを手にしており、
三十分の休憩さえ待ちきれない様子であった。
唯一の懸念は、先のアナウンスでもあったように・・・
リアルタイムにおけるライブ映像ということだろう。
無論、準備は万全であり、そのための設備は整っている。
だが、ライブ上映とは思わぬアドリブに弱い。
また予想外の(例えば被写体の外出・外泊などにより)撮影の延期となる可能性もありえることだろう。
特に後者は・・・詰めかけた会員に肩透かしを喰らわせるだけでなく、次回の排卵予定日まで撮影を延期せざるを得ない。特に今回は・・・超絶美少女の初めての排卵、という謳い文句でもあったのだから。
『超絶の美少女』・・・『斯波 深雪』(13)
その『超絶美少女』が初めて迎える排卵日。
運命の『絶対危険刻』御開帳の時間が・・・
・・・いよいよ迫りつつあった。
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