No.16 野々村亜美


 今回はBBSの話題からふと思いついて、「媚・妹・Baby(ビーマイベイビー)」のヒロイン亜美ちゃんについて書こうと思うのだけれど、何しろずいぶん昔の作品であるし、オイラも取り立てて本作のファンではなかったので、以下の文章は全てあやふやな記憶に頼って書くことになる。記憶違いや勘違いでトンチンカンなことを書くかも知れないが、どうぞご容赦いただきたい。



 さて今さら言うまでもなく、「媚・妹・Baby」は、この国が世界に誇るオリジナルな文化「エロアニメ」の、実質的な祖の一つと言えるであろう。
 本作以前にも「エロアニメ」なるものは作られていたが、いわゆるアニメキャラらしいアニメキャラがエロを演じた作品としては、本作がハシリなのだ。(それ以前にもワンダーキッズ制作の
「子猫ちゃんのいる店」があったが、人気、影響力とも本作とは比較にならない)



 ストーリーはいたってシンプルで、血の繋がらない兄を想いながら1人エッチに興じる少女、亜美を、その兄が実際にハメてしまうという、テキストにしてみるとマジでただそれだけのオハナシである。
 現在の目の肥えたエロアニメファンにアピールするかどうかは大いに疑問だが、当時は「可愛いアニメキャラがエロエンタテイメントに興ずる」という、そのこと自体が大いなる価値だったのである。
 マンガとアニメで物心がつき、「女体」といえば、現実のそれよりもマンガチックな記号の方がよりリアルなモノとして刷り込まれている我ら軟弱な若者たちにとって、「アニメキャラのエロ」は、まさに待ちに待ったズリネタだったと言えよう。



 とまれ、そんなエロアニメ史上のメルクマールとしての立場はさておき、「亜美」というキャラ自体は、今思うと相当に破天荒というか、ハッキリ言って「○○○○(放送禁止用語)」じゃないのかと思ってしまうのはオイラだけでしょうか?
 その○○○○(放送禁止用語)ぶりは、本作が2作目、3作目とシリーズ化していく中で顕在化してくるのだが、誰が見たって絶対おかしいよ、この女!



 シリーズのあらすじはこうだ。
 兄妹のハメているところを目撃して驚いた母親は、兄ヒロシを海外留学へと厄介払いしてしまう。まあ母親にすれば、兄妹が局部をビームサーベルのように輝かせて獣じみた狂態を演じているのだから、そりゃあビックリするのも当然です。
 しかし母のこの、ある意味当然とも言える対処が、亜美の秘められていた変質性というか変態性というか、そういうドロドロしたモノを呼び覚ましてしまうのだった。(元から○っていたという噂もあるが)



 愛する兄と引き裂かれた寂しさに、亜美のエロエロライフは次第にヒステリックになってゆく。
 ところかまわずカキまくるわ、飲んだくれて行きずりの男とハメてしまうわ、その男のモノをくわえるわ、イカ汁を飲むわ、白目をむいて昇天するわで、もはや紛れもない色情狂なのだが、それでも結局満たされない彼女は、ついに「真実の愛(^^)」を求めて兄のいるイギリスへと旅立っちゃうのでした。(オイオイ)
 そんなデンジャラスな妹の攻勢を受けては、兄ヒロシとしては当然引いてしまいます。
 彼は別の女と婚約したりなんだりと散々逃げ回るのですが、亜美は
 「あんたが逃げ回るなら、あたしはあたしでとことん堕ちてやるからね!」
 と言わんばかりに、そこいらじゅうの男と手当たり次第に肉体関係を持ちます。実に陰湿な嫌がらせというか、ストーカー一歩手前というか、とにかく美少女のヒロインがやることとは思えませんね。



 結局根負けした兄ヒロシは亜美の元へ戻る決意をするのですが、当の亜美はヒロシを屈服させたことですっかり満足したのか、「新しい愛(^^)」を求めて彼の元から去るのでした。しかも亜美ちゃん、この間にアイドル歌手としてちゃっかりデビューまでしているのだから、もはや視聴者は開いた口が塞がりません。

(まるしー・東宝)



 どうしてこんなムチャクチャなオハナシが大ヒット作として受け入れられていたのかちょっと不思議だが、亜美というキャラが、こうした一見○○○○(放送禁止用語)のような体裁になってしまったことは、当時の事情に鑑みると、ある程度理解できなくもない。



 企画当初、本作はほとんどエロシーンのみを映像化した15分作品で、これも後に大ヒット作となる
「エスカレーション」と2作抱き合わせで販売されるはずだったという。
 しかし内容がエロばっかりという理由で当時のビデ倫のOKが出ず、仕方無しにドラマ部分を作り足して再編集し、それぞれ30分作品として発売にこぎ着けたらしい。
 もっとどぎついハードエロとかレイプシーンがバリバリアニメ化されている今では笑い話のようだが、こうした経緯によって生まれた本作の基本的フォーマット・・・「ストーリーを重視し、ハードで暴力的な官能シーンは描かない」・・・は、その後の
「くりぃむレモン」シリーズの基本方針となった。
 であるからこそ、シリーズ全体のヒロインとも言える亜美は、ああした一種異常とも言えるキャラクターになってしまったのではないのか。



 ストーリー部分を支えるためには、亜美は理性的存在でなければならない。兄に焦がれながらも、友達に性体験を云々されると真っ赤になってうつむいてしまう、純情可憐な少女を演じなければならないのだ。
 しかしエロである限りは彼女に濡れ場を演じさせなければならず、しかし作品の方針としては強姦を扱えないのであるから、勢い亜美が能動的にセックスを求めなければならない。
 清純派による、強姦抜きの果てしない濡れ場・・・このジレンマに満ちた状況を解決するためには、あの可憐な亜美ちゃんが実はニンフォマニア(色情狂)とでもして描くしかないではないか。



 そう考えると、亜美というキャラは「くりぃむレモン」というシリーズの事情そのものに陵辱されていたとも言え、心ならずも「色狂いの牝」を演じなければならない運命に身もだえする、その儚げな様子が、ファンの萌え心をはからずも直撃していたのかもしれない。



 いずれにせよ、「エロアニメ」というジャンルを確固たるものとし、今日まで連綿と続く一大スケベ文化を創造した女神様として、亜美ちゃんの名は永遠に語り継がれていくだろう。(語り継ぐなよ)

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