No.24 丘野かおり(山田圭子)さん


 丘野かおりさんは、オイラが子供の頃最も好きだった特撮女優の1人である。
 「特撮女優」と言っては、あるいは彼女に失礼かもしれない。彼女は小学生の頃から子役としてテレビで活躍していて、そのお仕事は別に特撮番組に限られてはいなかったらしいからだ。だけど当時子供だったオイラが見ていたのは、いきおい特撮を始めとする子供番組であって、だから丘野さんというと特撮に出てくるお姉さんという印象があるんだよなあ。ゴメンナサイ。



 彼女の代表的な出演作というと、やっぱり
「ウルトラマンレオ」ということになるだろうが、オイラはこの作品での氏の役柄はあまり好きではない。その理由は後で述べるとして、まずはオイラが氏のファンになったいきさつを書いてみる。



 アニメや特撮が大好きだったオイラにとって、丘野さんはある時期から非常に馴染みの深い女優さんであった。
 レギュラー出演している番組こそあまり見あたらなかったが、仮面ライダーだとかウルトラシリーズとかに、ゲストキャラとして頻繁に出演なさっていたからだ。オイラは氏が出てくるたび、「可愛らしい人だなあ」なんてキュンとしていたのだった。



 氏のルックスは、その髪型のせいもあるが、浅丘めぐみに実によく似ていた。浅丘氏の目をちょい細くして伏し目にして扁平にしたような感じ。今にして思えばあまり美人とは言えない(重ね重ね失礼)が、清楚さという点ではとびきりであった。
 そしてその役柄に共通したイメージは「がむしゃらに暗い!」ということ。これに尽きる。
 そう、アクトレス丘野さんは、とにかくもう暗くて暗くて暗くて暗くて暗くて暗くて暗かったのだ。(^^;)彼女が出てくるだけで、「ああ、今日は暗いエピソードなんだな」と想像がつく感じ。


↑薄幸ウェーブ全開顔!



 何しろ彼女が演じる役と言えば、肉親が死んでしまって天涯孤独だとか、肉親のオツムが壊れてしまったとか、肉親が突然怪人や怪獣になってしまったとか、そんなのばっか。
 あげくやたらと誘拐されたり人質にされたり磔にされたりしちゃうのだから、もう可哀想とか同情するのも空しくなっちゃう感がある。「疑惑のデパート」などと揶揄された代議士がいたが、彼女はさしずめ「薄幸の百貨店」であろう。
 その役柄がそうさせるのか、それとも地なのかは知らないが、彼女の表情はいつも冥王星級に暗い。眉根を寄せて口をへの字に結び、グッと涙を堪えているような顔ばかりが映るのだ。たまに笑っているシーンが映ったとしても、「朗らか」などというセンスとはてんで無縁。実に寂しげで、そのまま宙に散滅してしまうのではないかという儚い風情の笑顔を、彼女は作った。
 しかるにそうしたイメージが、オイラに彼女に対する強烈な萌え心を惹起させたのは明らかだ。子供ながらに、「僕が守ってあげなくちゃ!」と強く思わせずにはいられなかったのである。と言ってその奥にあざとさを感じ取らせなかったのが、また彼女の魅力なんだよなあ。ナチュラルな暗さ(^^)と言うんですか、そういう感じ。



 さてそんな彼女が珍しくレギュラー出演の座を射止めたのが、前述の「ウルトラマンレオ」であった。
 丘野かおりという芸名を用いたのは確か本作が最初で、それまでは
山田圭子(本名らしい)という芸名を用いていた。これはオイラの想像だが、彼女としては、芸名を変えてまで取り組むことにより、それまでの暗いイメージを払拭したかったのかもしれない。
 実際役柄としてもこれまでとはちょっと趣が違い、主人公の恋人的な立場だし、仕事もスポーツクラブのトレーナーという明るい設定だった。
 しかしそこはそれ、丘野さんから不幸を取ったら丘野さんでないとばかりに、不幸はちゃ〜んと付いてきます。



 何よりまずその役名。
 
「山口百子」だぜ!
 聞いた途端に全身の毛穴が開くこの名前。日本特撮史上稀に見るオバカなネーミングである。
 初対面の人に「山口百子という役をやってます」などと自己紹介しなきゃならなかったであろう丘野氏の情けなさはいかばかりか。番組スタッフには人間らしい心というのがないのだろうか。
 またドラマ内での扱いもぞんざいで、主人公ゲンとの絡みもあまり多くなく、たまに出てきてもゲンの特訓に付き合ってボールを投げつけたりするようなシーンばっか。ほとんどその他大勢である。着ているものも仕事柄ジャージなどが多く、若い女の子らしいコケティッシュさが出せていないのは気の毒だった。冒頭書いたように、オイラがこの役をあまり好きでないというのはそれらの理由による。
 あげく丘野さん演じる「山口百子」は、凶悪な宇宙生物によって物語中盤で殺されてしまうのだが、もうこうなってくると、暗さを際限なく引き寄せてしまう丘野さんの特殊能力としか思えない。役柄も人智も越えた恐るべき薄幸パワーである。



 だもんで逆にオイラとしては、最初から暗い役を暗〜く演じている丘野さんの方がやっぱり好きですね。
 
「仮面ライダー」のイソギンジャガーの回とか「仮面ライダーV3」のプロペラカブトの回なんか最高。どちらも肉親が怪人になってしまって苦悩するという役柄で、最初から最後まで泣き顔ばかりのエピソードである。
 プロペラカブトの回なんか、「狂一」などという名前の兄がホントに狂ってしまい、その上プロペラカブトに変身までしちゃうんだからものすごい。丘野さんはこうでなくちゃよ。



 そしてあまり目立たない地味なエピソードだが、オイラが一番好きなのは、
「ウルトラマンA」の超獣カイテイガガンの回。
 丘野さんが演じるのは、タンカー船長の父親が行方不明になってしまい、幼い弟と2人でひっそり暮らしている女子高生(多分)だ。言っちゃ失礼だが、まさにドンピシャのキャスティング!(^^)
 しかも彼女、精神の平衡を失いかけている弟に、「お父さんは生きている」などとウソを言ってさらに大ダメージを与える壊れぶり。それをたしなめた主人公の北斗には、「私たちのことはほっておいてください!」と食ってかかる。うなる泣き顔!逆巻く薄幸!萌える!萌えるよ丘野さ〜ん!



 このエピソードでは、彼女の少女らしいルックスが楽しめるのもポイント高い。
 最初は高校の制服らしいブレザー(胸元にリボン)で登場し、後半はセーターと黒っぽいミニスカである。
 このミニスカがかなり短くて、そこから突き出しているゲロ太い大根足が大迫力!非常にほっそりした印象がある丘野さんだけに、そこだけ生々しい乙女の色香が感じられて超萌えっす。思わず正座させてこじ割ってみたくなりますぜ。



 こういう楚々とした印象の儚げな特撮女優さんをあまり見なくなって久しいが、オイラのような年寄りは、やっぱりそういうセンスのアクトレスが恋しいです。
 そりゃあパンツ丸見えでキックにジャンプの健康優良バカヒロインも良いですが、そればっかじゃあね。ちょっとで良いからカムバック薄幸!っすよ。

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