その7


美佐は、ホテルの玄関の近くで悪の手下になっていた同級生の少女たちを目覚めさせていた。



京子「ここは、どこ?あたいたち、いままでなにをやってたんだか。」
美佐「みんな、余計なこと考えずにここから出て早く帰って。」
七絵「たしかさあ、化け物かなんかにやられてたような。」
美佐「そうよ。いま、そのこわい妖怪がここにいるのよ。」
京子「なんだ、最近転校してきた優等生か。おまえもよくばかみたいなこと言ってばかりいられるよ。」
美佐「もう、ばかだと思われてもいいですから、夜も遅くなるし…。」
七絵「あんたはどうするんだよ。」
美佐「まだ、ここに襲われている人達を助けにいかなければならないので…。」
京子「ま、いいや。からだや髪の毛もくさくなってるから、帰ろうぜ。」
七絵「そうですね、変なやつなんか相手にしたってしょうがないから。」



ようやく、少女たちがホテルの外に出ていった後、残っていると思った子供たちを探すために美佐は再び階段を登るのであった。



美佐「はっ、あそこにいるのは…。」



美佐は、少し上がったところで廊下の奥に三人の子供たちがいるのを見つけた。みな後ろを向いていて、右側にツイン・テールにしてお尻に届くぐらい髪を長くしている亜也美と、左側に一本のポニー・テールをさらに三つ編みに結っていた美玖が、その前に正座しているやはり髪の毛を長くしている者のその髪の毛をふたり でヘアブラシをすいて、さらに髪を分けて耳もとにピンク色の布製のリングをそれぞれ巻きつけ、また三つ編みを結いはじめていた。美佐が近づくと、その髪を編まれている子供がふたりの少女を手下にしている男の子、智文だったのである。



美玖「くくくく。」
亜也美「うふふふ。」
智文「くくくく。」
美佐「あなたたちは、まだ妖怪の手下に、あっ。」



美佐の身体に美玖と亜也美がとびかかり、ついにふたりに両腕と両足をおさえつけられてしまった。



美佐「あなたたち、やめて、離して。」



だが、悪魔の手先になっている少女たちの力は美佐が振りほどけるものではなく、その場に身動きできなくなっている状況で、主犯の智文も美佐に近づいてきたのである。



智文「ひっひひひ。年上のおねえさんも襲いがいがあるな。ふたりともよくやった。ちょいと、おもしろい方法をためしてみるからな。」
美佐「いったい、なにをする気なの?あっ。」



智文は、とうとう美佐のはいていた制服のスカートのホックをはずして脱がせてしまった。そして、下着もずりおろしてしまい、露骨なヘアーをむきだしにさせたのである。



美佐「やめて、ああ…。」
智文「ひひひひ。やっぱりたくさん毛がはえてるな。ヘアーに毒をしみこませると、おもしろくなりそうだな。」



智文の三つ編みに結われた左右の髪の毛が舞って、美佐のアンダーヘアーに毛先を侵入させ、股間の近くに毛先の毒針を刺させたのである。



美佐「ああっ、はあ、はあ…。」



美佐の表情がだんだんうつろになってくるのであった。







雅耶と増美が寝泊りしている部屋で、雅耶は増美の髪の毛をとかしていつもの女学生らしいおさげの三つ編みに結っていた。増美は女ものの下着を身につけた半裸の姿であった。



雅耶「うふふふ。そろそろ、美佐がやってくるわ。この髪の毛で殺してしまうチャンスよ。」
増美「わかりました。」
雅耶「わたしはおふろ場に隠れているから、いいわね。」



毒をしみこませられた美佐が、とうとう増美のいる部屋の扉を開いて入ってきたのであった。



増美「ふっふふふ。よく来たな。」
美佐「まあ、増美さん。下着姿になってるの?」
増美「そうだよ。」
美佐「よかったわ、あなたのそのおっきなおちんちん、しゃぶらせて。」
増美「えっ?」
美佐「しゃぶりたいの。増美さんに気持ちよくなってもらいたくって。」
増美「ふふふふ。そうか、じゃあ、あの世へのみやげ話にひと思いに、願いをかなえてやるか。」



増美がベッドの上にのって、両足を開き、それに首をはさまれるようにして美佐は増美の股間に顔を近づけていた。



だが、次の瞬間に思わぬことが起こった。



美佐「ぶはーっ!」
増美「う、うう…、あつい、なにこれ?」
美佐「ふふふふ。わたしを甘く見ていたわね。口のなかに火薬を含んでいたのよ。」
増美「えっ?」
美佐「その熱であなたのそのみにくいおちんちんを浴びさせたの。子供たちのわなにはわざとかかっていたのよ。あなたの居場所をつきとめるためにね。いま、子供たちも毒をとりのぞいて元の人間に戻してあげたわ。増美さん、もうあなたに仲間や手下はいない。許せないわ。」
増美「熱い、熱いよ…。」
美佐「その、男のくせに女の子ような長いおさげの髪なんかして、虫酸が余計にたつわよ。」



うずくまる増美の身体を、美佐は今度は左右から蹴りとばしていた。性行為を強制された屈辱の恨みをこめて、美佐の怒りが爆発していた。



増美「痛い、やめて、美佐さん、たいせつなお友だちだと思っていたのに…。」
美佐「ふん、わたしだっていいお友達ができて喜んでいた思いを踏みにじられた、この悔しさはあなたにはわからないでしょうね。」
増美「むむ…。」



その時、また増美の長い三つ編みの髪が両方とも舞い上がって美佐の身体に襲いかかりそうになってきたので、美佐はあわてて手でその髪を振り払い、逃げたのであった。



増美「美佐さん、待って…。」
美佐「どうやったら、あの髪の毛にある毒を取り除けるか、でも、この男はどうしたらいいか…。」



ひとまずいい方法がないかを考えるために、美佐はその部屋を抜け出したのであった。







床にはいつくばったままになっていた増美のところに、ふろ場に隠れていた雅耶が現われてきた。



雅耶「ふん、だらしないわね。しょせん、おまえはいやらしくてめめしいだけの男。好きな女にそれだけ最後にはづかしめられれば、もうこの世には未練もないでしょうね。」
増美「えっ?」
雅耶「こんどはわたしがおまえを襲う番。どうせ、生きている者は必ず死ぬことになるんだから、好きな女に殺されるのがいちばん幸せと思っておいたほうがいいわよ。」
増美「お、おまえなんかにどうして、殺されなければならないんだよ。」
雅耶「ふふふふ、ほんとうはわたしのことを好きだったからずっと学校でわたしのことをいじめてたのよ、おまえも。」
増美「や、やめろ…。」
雅耶「もう、いまさらじたばたしてもしょうがないわ。そのままの姿であの世で暮らせられるのなら、ちょうどいいわね。」
増美「うわっ。」



ついに、雅耶の床にまで届いている長い黒髪が舞い上がり、左右に分かれてうずくまったままの増美の手足や首に巻きついてきた。左右の両サイドの髪は三つ編みにしていたので、その三つ編みの髪も増美の性器にまで巻きついて増美をもだえさせたのである。そして、雅耶の胸のほうに吸い込まれたかと思うと、髪の毛にし ばられた身体が持ち上げられて逆さまになり、おさげ髪を分けている雅耶のヘアラインがかぱっと割れて増美はそのなかに吸い込まれていってしまった。



雅耶「くくくく。」
増美「ぎゃーっ!」



雅耶の後頭部に吸い込まれてしまった増美の身体は無残にも溶かされ、増美の身につけていた下着が外にやぶけて放り出され、雅耶の髪の毛先からはこなごなになった骨がいくつも重なって落ちてきていた。







ホテルを出ようとしていた美佐にも悲鳴は聞こえ、また何かあったのかと増美のいた部屋に急いで階段をかけ登って戻っていた。行き違いに、雅耶は窓から夜空に抜け出してホテルをあとにしていた。結局、雅耶は美佐と顔を合わせずにいったん宇宙に戻っていくのであった。



雅耶「ふふふふ。わたしの世の中への復讐は始まったばかり。美佐もいつか必ず殺してやるわ。」



美佐が部屋をあけると、そこには無残な骨と血の飛び散ったあとが残っているだけであった。



美佐「これは、もしかして…。」



美佐は、飛び散っていた女ものの下着の破片が増美の身につけていたものとわかった。増美が三つ編みの髪をゆわえていた黒いヘアゴムも少し残っていた髪の毛といっしょに見つかった。そして、骨のかけらには男の性器らしいものも見つかり、先ほど美佐が火薬を丸めて浴びせた熱のあとも残っていたのであった。



美佐「増美さん…。」



美佐は、学校で増美と戯れていたことを思い出してしまうと、涙が出てしかたなくなるのであった。あの時は本当に女の子らしい友だちだと思っていたからである。その正体が恐ろしい妖怪で男だったということは、美佐にはとうてい信じられなかった。



毒針髪の妖怪はこうして全滅したとはいえ、また新たな悪の手が美佐に挑もうとしているのである。



(おわり)


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