プロローグ           


 この世の中、需要があれば、それに対しての供給が存在する…無論、金額的な折り合いがついたのならばの話しではあるが…
 
薄暗いビルの廊下を男が一人歩いている、ごく普通のサラリーマンを思わせる男は手にビデオテープを持っている、そして重厚な創りのドアの前にくると、ノックをした。
「お客様…テープを持ってまいりました」
「ああ…入ってくれ…」
 ドアの向こうから声がする…どこか非人間的な冷徹な声であった…テープを持った男がドアを開け室内に入っていく…室内には黒眼鏡をかけた男が一人、黒檀のデスクに広げられているファイルから視線を外して入ってきた男を見て、顎で室内に置かれているビデオデッキを示す。男は持ってきたビデオテープをビデオデッキに入れると再生ボタンを押し、テレビのスイッチを入れる…テレビの画面に画像が映し出され始める…



 テレビの画面には、学校帰りと思しき少女達の姿が映し出されている、その下校途中の少女達を画面は追いつづけていく…現代風なコギャル風の少女と三つ編みのおっとりとしている少女…ヘアバンドをした長い髪を風になびかせて歩いてる少女…片方の目を独特の髪型で隠している少女…ポニーテールを揺らしながら元気よく小走りに走る少女…コアラを連想させるような奇妙な髪型の少女…何人もの少女達が画面に現れては画面から遠ざかっていく…。
 誰も自分達がビデオに映されていることに気がついてないようであった…そんな中、画面の中に一人の少女が映し出される…その少女は隣にいる男子生徒と何事かを微笑を浮かべ、話しをしながら歩いている…二つに分け、その先端を黄色いリボンで結んだ髪が揺れる…眼鏡の奥の瞳が優しげな色を浮かべて男子生徒見ている…



 男がビデオを巻き戻して箱に仕舞い、デスクの前の男に手渡す。
「以上が今日のメニューでございます…お気に入りになりました女はおりましたでしょうか?お客様…」
 男が黒眼鏡を外してデスクの上に広げられてるファイル…今までビデオに映し出されていた少女たちのプロフィールが掲載されているファイルと添えられてる写真を見ながら答える。
「ふ…む…この女…男と歩いていた女だな…気に入ったね…何時ものように頼めるかな?」
 つい…と開いたファイルを指し示しながら、男に手渡す。手渡された男がファイルの中身を確認する。
「ファイル・ナンバー7…如月未緒…で、ございますね?」
 男が横柄に頷く…ファイルを手渡された男が軽く会釈をして部屋を出て行く、出て行く男を見ながら呟く…
「久しぶりに、楽しめそうだな…楽しみなことだ…」


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