1.晶の姉、桜



白無垢を着た、16歳にして花嫁になる少女がいた。

彼女の名は桜(さくら)。数年前に迎えた初潮とともに、儀式で村の女になった。



この村では、女の地位は低い。

男には絶対服従をし、男が望むことは何でもしなければいけない。

ほとんどの少女は中学校を卒業後10代で結婚し、子供をたくさん産んでいるので、外に働きに出ることもできない。



妹の晶(あきら)はそれが嫌だった。高校や大学にも通って、大人になってから仕事をして、好きな相手と結婚したかった。

そのため、晶は長い髪をポニーテールにし、動きやすいようにショートパンツをはいていた。



桜もかつてはショートヘアが似合う少女だった。しかし儀式の後は髪を伸ばすように言われ、最初は嫌々だった。

それも、いつの間に当たり前になってしまった。



「桜…」

母親は長女の未来を案じる。桜と晶には下に兄弟がいた。

晶のすぐ下の弟の優(ゆう)、優の双子の妹の愛(あい)、その下の妹の杏(あん)、末の弟の純(じゅん)。

桜の縁談が決まったのは、彼女が中学3年生の時だった。



「桜、お前は高校を受験しなくていい」

父親に桜はそう言われた。

「お父さん、どうしてですか?」

「お前は、結婚して家に入るんだ。今年で30になる光政(みつまさ)に相手が決まった」

「結婚…」

桜は自分の結婚相手である光政と話をしたことがない。紅撫子の村ではごく普通のことで、知っている人と結婚する方が稀だ。

自分が好きでもない相手と結婚する。そして、その夫の子供を身籠る。

「今日さー、放課後パフェ食べない?」

「えー、マジで?やばーい」

周りの村の少女たちが楽しく高校に通うのに、自分は夫や子供の世話に明け暮れる。

もし、紅撫子の村の女がそんな言葉遣いをしたら、口が悪いと殴られる。学校帰りに寄り道したら、まっすぐ家に帰れと怒鳴られる。

この村の女たちには、近隣の村の住人みたいに寄り道したり、女だけで遊びに行ったりする権利はないのだ。



(…何とも、皮肉だわ)

桜はそう思った。卒業式にも参加したが、女子生徒の欠席者も多かった。理由は結婚の準備などで、学業よりもこちらを優先された。



そして、桜は光政という男と結婚した。しかし…

「光政さん、やめて!」

「うるさい!お前は俺に従ってればいいんだ!」

光政は暴力をふるう男だった。桜は暴力をふるわれた。だが、結婚してから実家に帰るなんてことは許されなかった。



もし実家に帰れば、家の恥として扱われ、村八分の扱いを受ける。



光政とのセックスも激しいものだった。

乱暴にされ、膣に裂傷もできた。光政は妻のことを人間として見ていなかった。

子供を産むための道具としか考えていなかった。



桜はやがて、光政の子供を身籠った。

桜は不安になる。

(この子が女の子だったら…私みたいな人生を送ってほしくない)


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