完全平和主義を掲げるサンクキングダムは今まさに巨大な現実に飲み込まれようとしていた。
 OZのモビルドール部隊による攻撃は圧倒的な物量をもって行われた。
 ヒイロのエピオン、カトルのサンドロックと二体のガンダムがあるとは言えこの物量差、さらに王国の守備隊はほとんどが既に旧式となったリーオー、エアリーズ、トーラスである。
 「だが、我々が負けるわけにはいかない、リリーナ様をお守りせねば・・・」
 ノインの操る白いトーラスのビームキャノンは上空から敵モビルドールを的確に貫こうとする。
 しかしビルゴに搭載されたプラネイトディフェンサーは易々とそれを弾き返した。
 「ちっ、やはりトーラスのビームでは無理か、せめてガンダムほどのビームがあれば・・・」
 ノインは舌打ちしトーラスを変形させると森の中へと着陸した。
 目の前に現れたビルゴをビームサーベルで切り捨てると森の外へと出た。
 広い平原にサンドロックの白い機体が一機、それを取り囲むようにビルゴの黒い機体、おびただしい数だ。その姿はまるで黒い壁のようだった。
 サンドロックのシールドが眩い閃光を放つ。目くらましがMDに効果があるかはわからないがそのまま両手に構えたヒートショーテルで背後のビルゴ2機を立て続けに切り伏せる。 「これで・・・31機。」
 トーラスの出現を感知したMDビルゴは約半数をトーラスに向けた。
 一斉にビームキャノンを構えるビルゴ。ビルゴのビームキャノンはウィングのバスターライフルにも匹敵する威力を持つ。トーラスのチタン装甲ではかすっただけでもその被害は計り知れない。
 一拍置いてトーラスは変形し、放物線を描いてビルゴに突進する。
 地上のトーラスに対して放たれたビームは森を薙ぎ払いその地形を変えていく。
 ビルゴの目の前に着陸したトーラスはビームサーベルを抜き放ち立て続けに3体のビルゴを斬り捨てた。
 「カトル、無事か?」
 サンドロックと背を合わせるように立ち、通信を入れる。
 「はい、まだやれます。ここは僕に任せてください。」
 カトルは目の前のビルゴに斬りかかり、返す刃でさらに隣の機体を斬り捨てる。
 「すまない、頼む。」
 トーラスは再び変形し、上空から戦場の様子を伺った。
 ビルゴの黒い機体が40機ほど塊になり、その中心にビルゴとは違う赤色の機体、エピオンだ。
 「戦略レベル、ターゲット確認。排除開始」
 ゼロシステムに接続したヒイロにはビルゴの動きの先の先までが見通せる。
 エピオンは巨大なヒートロッドを振り回し、ビルゴの壁を薙ぎ払っている。適当に振り回しているように見えるが、エピオンの持つ高熱の鞭は確実にビルゴの動きに対し先回りし、黒い機体を両断していく。
 圧倒的な強さを見せるエピオンに対しビルゴは数で戦いを挑む。しかしエピオンに向かう機体はすべてヒイロによって破壊されていった。
 「ターゲットクリア。周囲に敵影なし。索敵を開始する。」
 手近なビルゴをすべて片付けたエピオンは次の敵を探し飛び立った。
 「ヒイロには心配無用のようだな。あれは・・・マグアナックか?」
 眼下に苦戦を強いられるマグアナックの小隊が見えた。

 マグアナックはもともとが砂漠戦を想定した機体である。その上ガンダムやビルゴに比べれば明らかに性能も低く、迫り来るビルゴの前になす術も無いといった様相だ。
 トーラスはマグアナック隊の脇に降り立ち、援護に回る。
 ビルゴはすぐさまトーラスに火線を集中させる。マグアナックなど眼中に無いようだ。ビームの雨をかわしたトーラスはビームサーベルを抜き放ちビルゴと対峙する。
 3体のビルゴを斬り捨てたところで酷使されたトーラスのビームサーベルのエネルギーが尽きた。
 なす術なく立ち尽くすトーラスにビルゴのビームキャノンが向けられる。
 フル出力ならばトーラスなど跡形も無く蒸発してしまうほどのビームの雨はトーラスをかすめ、背後のマグアナックをなぎ倒す。
 大気圏内ということで多少威力は弱まっているがその威力は凄まじい。
 間近にビームを受けたトーラスは各所で小爆発を起こし、完全に機能を停止してしまった。
 衝撃でフロントパネルに頭を打ち付けたノインはそのまま意識を失ってしまう。ビルゴはトーラスが停止したのを感知するとトーラスに向けているビームキャノンをおろした。指揮官機からの停止信号と指令に従いトーラスを拿捕し退却するビルゴ。
 後に残ったのは殆ど原型を留めないまでに無残に破壊されたマグアナックだけだった。


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