第一話 予感
それは有る激突から始まった。
神宮寺忠盛は創立記念日で高校が休みになり、
為す事も無く朝の街をうろついていた。
「書店は閉まってやがるし・・・」
角を曲がったその時。
「きゃっ」
「うわっ」
「す、すみません」
忠盛とセーラー服の少女が衝突した。
「い、いや、何とも無いよ」
「・・・」
少女は足早に去った。
顔を見せまいと、伏せて走り抜けていく。
・・・地面に学生証を残して。
「落し物か?何処の誰だ?美人かな?」
神宮寺は拾って色々見回した。
交番なんかに届けるつもりはさらさら無い。
「これが持ち主か?ん?」
だがそれはただの美人以上だった。
「これは・・・!」
〜〜〜
「そりゃ俺だって暇だよ」
軽いリーゼントの頭をいじりながら、和田勇はカーペットに転がった。
ここは神宮寺の自宅である。
「でも何があったんだよ」
「待てよ、田中が来たら言うから」
神宮寺だけこの日が休みだから、父親は普段通り出勤し、
母親は電車に乗って都心まで買い物に行ってしまった。
「遅えな」
「来たぞ」
外で自転車の止まる音がする。
田中義獄がインターホンを押す前に、神宮寺は窓から声を出した。
「上がれよ!ドア開いてるから!閉めてけよ!」
「ふぁあ」
あくびしながら、田中も神宮寺の家に入った。
階段を上がり、二階の神宮寺の部屋に入った所で神宮寺が手を叩いた。
「暇人三人組揃ったな」
「おい、何で呼んだんだよ」
「金太郎電鉄でもやるのか」
「違う、違う」
神宮寺はポケットから拾った学生証を取り出した。
「何だ、うちの高校じゃないな」
「拾ったのか?」
「そうだ・・・で」
急に窓の方へ行きカーテンを閉め、また部屋のドアも閉めた。
「良いか、今から見せるのは・・・」
神宮寺の目付きが急に変わった。
それに反応し、田中と和田の目付きも変わる。
「・・・何か特別なんだな」
「ああ、見ろよ」
「これは・・・」
美少女アイドルで有名な、松田湯来子の学生証だ。
長く伸ばされた黒髪、円らな瞳、筋の通った鼻・・・
「おおっ」
「何でこんな物を拾ったんだ」
「朝、こいつとぶつかって、落としてったんだよ」
「マニアに売れば凄い高値になるぞ!」
神宮寺は溜息をついた。
「・・・バカだなあ」
「え?」
「俺達はいつもいつも・・・なあ?」
「・・・ああ、だが今度はどうだか」
「やるだけやろうじゃないか、一生の思い出だ」
三人は肩を寄せ合い、作戦を立て始めた。
「この高校は児童公園の西側の向こうのアレか」
「お嬢様学校だろう、警備はどうなんだろう」
・・・
〜〜〜
それはレーダーの反応に始まった。
戦闘狩猟種族出身バリコーン。
地球では誰が呼んだか通称サイコ。
彼は山の中でまた少女を犯していた。
ピンク色の髪の毛、破られたブラウスにスカート。
「アアアアッ!」
「フハハハ!」
辺りに散乱する変な形の手鏡やステッキ、殺された小動物。
彼女は世間一般で言う所の魔法少女だった。
「や、やめてっ、ま、魔法の力がぁ」
「・・・!」
エクトプラズムの様に少女から色のついた気が抜けていく。
「あああああ・・・」
「フウッ」
サイコは触手で少女の口を押さえたが、気は構わず抜けていった。
「ホーウ」
それでもサイコはあまり気にしなかった。
違う星に来れば違う現象なんて当たり前に起きるのだ。
「いやあっ・・・ああ!ああ!」
胸を触手に嘗め回され、股間は既にサイコの陰茎で広げられてしまっていた。
「グウウウウウッ!」
サイコが少女の頭を強靭な両手で押さえた。
少女は強烈な痛みと、意識の歪みを感じ、悶える。
そしてサイコからは精子が放たれたのだ。
「う・・・!」
「フウッ」
最後の緊張の瞬間、サイコは力加減を誤り、少女の頭を変な方向に曲げてしまった。
少女は白目を向いて青ざめて行く。
「オッオーウ」
しかしねじ曲げた当人は罪の意識があまり無かった。
サイコは頭をかきながら、頭の向きを元に戻したが、少女はピクリとしない。
そう言えばこんな事をする奇術師がサイコの母星にも来ていた。
この星の住民はそんな技を会得しているのか・・・しかし少女は蘇らない。
「フンッ」
仕方なく、サイコは棒状に固められた、黄色のチョークの様な薬品を持ち出し、砕いて水に溶かした。
するとブクブク泡を立て始め・・・特製の容器でなければ溶けてしまうほどの酸になったのだ。
そして容器から液体を少女に掛けた。
ジュウッと言う音を立てて、少女やその下の地面が解けていく。
後から見ればとても不自然な地形に見えるだろうが、サイコは気にしなかった。
その後サイコは散乱している物も酸に放り込み、小動物は食べたが不味くて吐き出してしまった。
「ウウム」
エアバイクに乗り、ステルスプロテクターを身に付け、町に出る。
この辺りは来たばかりだ。
「・・・?」
エネルギーレーダーが反応している。
沢山の小さな点の中に、大きな点が一つ・・・
サイコは出来るだけ上空に上り、レーダーの指す場所を見た。
私立の女子高がある。
「・・・ホウ」
インターセプターの高エネルギー光線ではあの建物は破壊出来るだろうか?
完全装備で乗り込んで、大きな力をもつ女性以外を殺してしまおうか?
しかしどれも目立ってしまう。
サイコはあまり大っぴらに目だつのは嫌だった。
「フウム」
サイコは一旦、誰も居ないビルの屋上に着陸し、ログを取った。
一体、この大きなエネルギーは誰が持っているのだろう?
それを見極めなければいけない。
〜〜〜
そして彼女は顔面蒼白だった。
「無い・・・無いわ!」
「どうしたのです、湯来子さん」
「学生証が・・・」
「まあ、落し物?」
「え、ええ」
何処に落としたのだろう。
変な人に拾われたらどうしよう。
「ああ・・・だからちゃんとパパに送り迎えして欲しかったのに」
今朝は、いつもは車で送り迎えする父親に急用があり、またタクシーを呼ぶ程の時間も無かった為、
彼女は一人で急いで学校に登校したのだ。
幸い、週刊誌のパパラッチなどには会わなかった様だったが・・・
クラスの片隅で、学生証を無くし、面倒なことにならないだろうかと不安に駆られながら、
彼女は一時限、二時限と過ごして行った。
三時限目の前の休み時間に、学生証を落とした事をプロデューサーに公衆電話で告げた。
しかしプロデューサーもあまり気には止めなかった。
「大丈夫だよ、後で警察に届けられるさ」
「で、でも・・・」
「今は学校に集中しなさい、明日からは歌のレッスンが有るからね」
一方的に電話は切られた。
「もう・・・」
学生証は三人組に、実体把握はサイコに。
だが当人は未だに気付いていないのだ。
(続く)
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