第一章


 「どあぁぁぁぁっっっ!!!!」
 山高く積み上げられた本が一斉に落ちてくる。逃げそこなった修二は本に押しつぶされて沈黙する。しばしの沈黙の後、修二は自分の上に落ちてきた本を掻き分けて脱出する。何とか本の山から脱出した修二は大きな溜息を漏らす。
 「まったく、なんだってこんなに本がいっぱいあるんだ・・・」
 そう言って悪態をつく修二だったが、この部屋に本がいっぱいある理由などわかっている。この部屋の持ち主の書斎なのだから仕方がない。もっともその持ち主であった祖父がこの世を去ってから数日が経っている。その整理のためにこの部屋に入ってきたのだ。が、入ってすぐそのあまりに多い蔵書の量に修ニは絶句してしまった。
 「しっかし、爺さんもよくこんなに本を集めたもんだな・・・」
 部屋いっぱいに積み上げられた本を見ながら修二は溜息をつく。この部屋の掃除などいつ終わるかわかったものではない。この屋敷の住人は自分ひとりなのだから手伝ってくれるものなどだれもいない。一人でこの部屋を整理しなければならないのだ。
 「まあ、その爺さんのお陰で遊んで暮らせるんだけどな・・・」
 発明家であった祖父が残してくれた財産は莫大なものであった。修二の両親は彼が三歳のときにこの世を去り、彼を育てた祖父もいまやいない。ほかに身内のいない修二には祖父が残してくれた一生遊んで暮らせるだけのお金がころがり込んできたのである。
 「まあ、金に困ってたわけじゃないけどな」
 修二自身も株を12歳のころからはじめ、そのころから溜めてきたお陰で遊ぶ金に困ることはなかった。遺産の管理は弁護士に任せてあるので、気楽に生活している。しばし座ったまま本の山を見つめていた修二だったが、やがて立ち上がり、本を片付けてゆく。
 「ゆっくりと片付けていけばいいか」
 床に散らばった本を棚に戻し、机の上の本も閉まってゆく。そこまでしてようやく一息ついた修二はふと、机の引き出しの中身が気になり始める。何度か出入りした事のある部屋であったが、机の引き出しだけは開けたことがなかった。一つ一つ開けて中を確かめてゆく。
 「なんだ、こっちは領収書の山、こっちは資料の走り書き・・・面白そうなものはなしか・・・」
 修二はつまらなさそうに溜息をつく。だが、一番下の引き出しだけは鍵がかけられ開けることができなかった。中身が気になった修二は鍵を探し始める。しかし、どこにも見当たらない。思い返してみてもこの引き出しの鍵のありかは思い出せなかった。
 「何の鍵だ、ここのは・・・??」
 どうしても開けることができない引き出しの存在が気にはなったが、鍵が存在しなければどうすることもできない。諦めかけた修二はふと先日送られてきた小包のことを思い出す。まだ開けずに放置してあったが、もしかすると鍵が入っているかもしれない。そう思い急いでリビングに戻る。
 「まさか・・・ね・・・」
 半信半疑で小包を開けてみる。果たして中には鍵と一枚の手紙が納められていた。鍵をポケットに仕舞い込むと、手紙を広げてみる。そこには祖父の字で自分宛のメッセージが書かれていた。それに修二は目を通してゆく。
「なになに??”お前がこの手紙を・・・”こんなのはどうでもいいか」
 修二は手紙を斜め読みしてゆく。どうでもいいような顔で読んでいたが、手紙を読み進めるにしたがって顔つきが真剣になってくる。そして手紙をすべて読み終えると、転がるように書斎に飛び込み、手にした鍵を机の引き出しに差し込む。カチリという音を立てて鍵が開く。
 「・・・・・」
 修二は息を呑んで引き出しを開ける。そしてそこに納められたものを手にすると、封を切り、それに目を通してゆく。読んでゆくにつれて口元が歪み、興奮して鼻息が荒くなってくる。そこには修二の欲望を満たしてくれるものが綴られていた。
 「爺さん、あんたはやっぱり天才だぜ・・・」
 祖父譲りの頭脳でそこに書かれていたものを読み解いた修二は嬉しそうに呟く。肩を震わせて歓喜する。その歓喜は徐々に大きくなり、最後には大声を上げて笑い出す。その狂気に満ちた笑いを聞くものは誰もいなかった。ただ、修二の笑い声だけが部屋にこだましていた。



 睦学園高等部。幼等部から大学までの一貫教育を売りにした学園で、そう生徒数は2000人を優に越える。修二も幼等部のころからここに通っていた。周りはよく知ったやつらばかりで、毎日が楽しく、同時につまらない日々でもあった。勉強も運動も修二には面白く感じられない。高いIQと卓越した運動神経を併せ持った修二には学校など来なくてもどうということのないところであった。しかし、祖父に学校には行くように約束させられていたので、仕方なく通っているのが実際のところであった。それでも友人との会話はそれなりに面白いもであったので祖父の死後、退学するということはしなかった。それでも毎日が退屈に感じられて仕方がなかった。
 (何か刺激が欲しい・・・)
 退屈な日々、それが修二の悩みであった。しかし、彼の悩みを他所に学園では何事も起こらず、ただ平和な日々が流れていた。しかしここ数日は違う。その悩みを吹き飛ばすものが手に入ったのだ。だが、実際あれがどの程度のものなのかまだわからない。結果が出るまでにはまだ時間がかかるだろう。
 「さて、どんなもんか・・・」
 「何か悩んでいるの〜〜??」
 廊下で顎に手をやりながら呻いていた修二に背後から間延びした声がかけられる。修二の知る限りこんな口調で話す人は一人しかいない。こんなところで声をかけられるのは恥ずかしくもあり、嬉しくもあった。修二は鼻の頭をかきながら声のした方向をむく。
 「何か用?アスねぇ?」
 「ううん、ないよ。修ちゃんが悩んでいるみたいだったから声かけただけ〜〜」
 修二に声をかけた主はニコニコと笑ってそう答える。修二は声の主の顔を見ながら思わず頭を抱え込んでしまう。いつものことではあるが、この人のこの掴み所のないところは苦手であった。美少女といっても差し支えのない顔立ちの少女は、小首を傾げながら修二の顔を覗き込んでくる。
 「修ちゃん、どこか悪いの??」
 「んっ?いや、大丈夫だよ・・・」
 心配そうな顔をする少女に修二は手を振って答える。すると少女は安心したのか、またにっこりと笑う。そして、えいっと修二に抱きついてくる。お腹の辺りにその身長からは考えられないような膨らみが押し付けられ、修二を興奮させる。
 「う〜〜ん。修ちゃんの抱き心地は最高だ〜〜〜」
 「だから、アスねぇ・・・学校でそれはやめてくれないかな?」
 「なんで〜〜??修ちゃんは将来わたしのお婿さんになるんだよ〜〜??」
 恥じらいもなく抱きついてくる少女を修二が注意すると、少女は不思議そうな顔で尋ねてくる。幼い頃の約束を未だに律儀に覚えていて、守ろうとしているのだ。修二自身もその約束は覚えていたし、その約束を果たすつもりでいた。だが、口でいうだけで二人の中は進んではいないのが現実であった。
 「そう思うならキスくらいさせてよ・・・」
 「ええ?だめだよ〜〜。結婚するまではキスもお預け〜〜!!」
 湊明日香はキスを要求する修二ににっこりと笑って答えると、修二から離れる。体操着の中に納められた爆乳がプルンと揺れる。その明日香が無意識にやるポーズが修二を興奮させ、股間を熱くさせる。しかし、明日香は決して修二に体を許そうとはしない。それも修二には不満であった。
 「修ちゃんには全部上げるから〜〜、我慢してね〜〜??」
 「はいはい、わかりました。我慢しますよ・・・」
 明日香の答えにそっぽを向くと、明日香はまた抱きついてくる。それが修二を興奮させるというのにまるで自覚がないらしい。しばらく抱きついていた明日香はやがて体を離す。修二から数歩離れると、くるりと振り向いてみせる。その動きにあわせてそのたわわに実った胸が妖しく揺れる。
 「じゃあ、わたし、体育だから〜〜。一緒に帰ろうね〜〜」
 そう言うと手を振って走り去ってゆく。その姿を見送りながら修二はまた溜息を漏らす。いつまでこの生殺しの生活を繰り返さなければならないのかと怒りがこみ上げてくる。その修二の背筋に冷たいものが走る。強烈な殺気が自分に向けられているのがよくわかる。
 「そこで睨んでいるバカ、出て来い・・・」
 「バカっていうな!!」
 それは出てくるや否や、修二の後頭部を思い切りぶん殴ってくる。勢いよく振り下ろされた拳は、廊下中に響くいい音を立てる。そのあまりにいい音がしたので、それは一瞬、心配そうな顔をしていたが、頭を擦る修二が大丈夫だとわかるとそっぽを向いて鼻を鳴らす。
 「いつつ・・・早紀香・・・お前、何するんだよ??」 
 「明日香姉ちゃんに色目使うからだ、この変態!!」
 「色目って、一応明日香とは・・・」
 「あたしは認めないからね、あんたとお姉ちゃんの仲なんて!!」
 修二に指を突きつけて捲くし立てる少女、湊早紀香は鼻息も荒くそう言うと、またそっぽを向いてしまう。ショートカットが似合うボーイッシュな雰囲気の早紀香は女子に非常に人気があるが、顔は可愛い部類に入る。だが、その喧嘩早い性格と手の早さから男子には敬遠されていた。それがさらに女子の人気を高めているのだが。そんな早紀香を見ながら修二は苦笑いを浮べる。昔から明日香のこととなると修二に突っかかってくる早紀香であったが、その理由はシスコンだからである。小さいころから明日香に可愛がられた早紀香は異常なほど明日香を慕っていた。だから明日香に近づく者はたとえ幼馴染みの修二であっても、容赦はしなかった。
 「相変わらずのシスコンぶりだな、おまえは・・・」
 「うっさい!!お前に言われたくない!!」
 修二がからかうと早紀香はムキになって突っかかってくる。小さいころから明日香に可愛がられていた早紀香がシスコンになるのは仕方がないが、その恋人であり、幼馴染みの自分にまで突っかかって来るのはやめて欲しい、それが修二の意見であった。
 「とにかく!!明日香姉ちゃんにこれ以上付きまとうな!!」
 早紀香はそれだけ言うと踵を返して去ってゆく。その後ろ姿を見ながら修二は喉を鳴らして笑う。もう付きまとうなといわれても、明日香の方から自分に会いに来るのだからどうしようもない。かといって明日香に修二に会うなとはいえない。姉に自分の本心を知られるのを恐れているのだ。
 「まあ、アイツはまた今度・・・な」
 もう見えなくなった早紀香に向かって修二はそう呟く。その口元が歪んでいることに気付くものはだれもいなかった。そんな修二の名前が校内放送で呼ばれる。それが聞こえると修二の顔はすぐに元通りの好青年に戻る。呼び出しは生徒会のようだった。また何かしら雑用を言いつけられるのかと思いながら修二は生徒会室へと向かう。
 「失礼しま〜〜す」
 のんきな挨拶をしながら生徒会室に入った修二は腰に手を当てたポニーテイルの美女が小柄なメガネの少女をしかりつけている光景が目に入る。美女が生徒会長で3年生の佐々菜奈々子、メガネっ娘が書記で2年生の柚木亜美であった。
 「会長、お呼びでしょうか?」
 「樹くん!○○の件、どうなっていますの??」
 「その件でしたらもう学校側に許可をもらっています。数日の内には・・・」
 奈々子の問いに修二はさらりと答える。まさかそんな事を問いただすためにここに呼び出したのかと思っているとさらに質問が飛んでくる。そのすべてを答えると、奈々子はようやく満足したように頷くと、となりで項垂れている亜美を睨みつける。
 「さすがは有能なる副会長。この子につめの垢でも飲ませたいわ!!」
 「また、なにか??」
 「重要書類を捨ててしまったっていうのよ、この子!!」 
 修二が尋ねると奈々子は今にも噛み付かんばかりに亜美を睨みつけながら答えてくれる。その怒声に亜美は首をすくめて怯えている。ドジっ娘でもある亜美の失敗はいつものことであるが、こう毎度では怒りたくなるのも頷ける。
 「で、何の書類がなくなったんで?」
 「この件と、この件の・・・」
 「それだったらパソコンにデータを保存してあります。すぐに刷りなおしますよ」
 修二は奈々子が提示した書類を生徒会室に備え付けられたパソコンからプリントアウトしてゆく。奈々子はそれに目を通しながら内容を確認してゆく。結局昼休みいっぱいいっぱいまで作業はかかってしまった。その間、亜美は言い渡された仕事を黙々とこなしてゆく。お約束でこけたりもしていたが・・・
 「うん。これでいいわ。ありがとう!」
 「会長、この貸しは大きいですよ?」
 「覚えておくわ」
 奈々子はまとめ終わった資料を振りながら亜美を伴って生徒会室から出てゆく。その後ろ姿を見送ると修二はニッと笑う。すぐさまゴソゴソと何事か準備をすると、満足したように生徒会室をあとにすると、午後の授業を受けるために教室へと向かうのだった。



 「今日はうちに帰って・・・」
 「おにいちゃ〜〜〜ん!!!」
 放課後、学園を出た修二は気だるそうに大通りを歩く。その背後から駆け寄ってきたものが勢いよく修二の背中に飛び込んでくる。毎度のことなので修二は驚きもしないでそれを受け止める。それはブラブラとぶら下がっている。
 「美紗香ちゃん、今日も元気だねぇ・・・」
 「うん。美紗香は今日も元気、元気!!」
 修二の首にぶら下がった湊美紗香は元気に答える。明日香、早紀香の妹である美紗香は一番元気娘であり、修二を本当の兄のように慕ってくれていた。修二も美紗香を本当の妹のように可愛がっていた。修二はそんな美紗香の頭を撫でると、その後ろに隠れるように自分を見つめている少女にも声をかけてやる。
 「優姫ちゃん、こんばんは」
 「こ、こんばんはです・・・」
 修二の挨拶に少女はモジモジとしながら答える。美紗香の親友である立花優姫は異常なほどおどおどした性格の少女であり、たいがい美紗香の後ろに隠れているような女の子であった。その彼女も毎日のように会う修二には挨拶をするくらいまでに離れてくれていた。
 「お兄ちゃん!一緒に帰ろう??」
 「悪い、今日はよるところがあるんだ・・・」
 「ぶぅ!!昨日もそんなこと言ってた!!」
 一緒に帰ろうと期待していた美紗香はそれが敵わないとわかると頬を膨らませてすねてしまう。そんな妹の頭を優しく撫でながら修二は何とかご機嫌を取ろうとする。そのとなりでは優姫も必死になって親友を慰めている。
 「今度、アイスおごってあげるから、な?」
 「そうだよ。美紗香ちゃん・・・お兄さんを困らせちゃダメだよ・・・」
 さすがに二人に説得された美紗香は機嫌を直してくれる。ようやく修二から離れると、優姫の手を取り、一緒に走り出す。優姫のほうは半ば引きずられるようにしながら付いて行く。そして、少し離れたところで振り向くとこれでもかというほどぶんぶんと手を振ってくる。
 「じゃあね、お兄ちゃん!!早く帰ってくるんだよ!!」
 美紗香はそう言うと修二にお辞儀をする優姫を連れてそのまま駆け出してゆく。その元気な台風を見送ると修二は街中へと歩を進めてゆく。約束の時間まではまだある。どこかで暇でもつぶそうと街へと繰り出すのだった。目的地もなくブラブラと街中を散策する。
 「って、街に来たからってすることはないんだけどね・・・ん?あれは??沙耶子さーーん!!」
 「えっ・・・??きゃっっ!!」
 することもなく街中をぶらついていた修二はふと、前を歩く美女を見つけて声をかける。声をかけられた美女は驚いたように振り向く。声をかけただけだというのにこの驚きように修二の方が驚いたが、相手の女性はすぐに気を取り直したのか、にっこりと笑ってくれる。
 「修くんか・・・いま帰り??」
 「ああ。そういう沙耶子さんは??」
 「わたしはちょっと用があって・・・」
 修二の問いに美女・湊沙耶子はもう一度にっこりと笑って答える。今年で34歳で明日香達の実母であるにもかかわらず、彼女の美しさはまるで損なわれていない。加えて明日香を上回る胸がその魅力を引き立てている。それどころか最近ではさらに美しく、妖艶になってきている。幼い頃から見知る修二ですらドキッとするほどであった。その沙耶子は買い物というわけではなさそうであった。どこかに出かける風ではあったが、余計な詮索はしないほうがいい、修二はそう思いそれ以上聞かないでおくことにする。
 「じゃあ、僕はこれで・・・」
 「夕飯は冷蔵庫に入っているから。明日香達と一緒に、ね?」
 沙耶子はそれだけ言うと街中へと消えてゆく。その後ろ姿を見送ると修二は腕時計を見る。約束の時間まであと少し、そろそろ約束の場所に行かないと遅れてしまう。修二は踵を返すと、その場をあとにし、もと来た道を戻ってゆくのだった。


 人気のなくなった部室。そこからくぐもった声が聞こえてくる。暗い部室の中では一人の少年が下半身を丸出しにしていた。そしてその下半身に一人の少女が顔を埋めている。少年のペニスを頬張り、頭を動かして扱きあげる。
 「うくっ、奈々子・・・」
 少年は苦しそうな声を上げる。ペニスには唾液が絡みつき、少女が頭を動かすたびにグチュグチュといやらしい音を奏でだす。その少女の舌使いに少年は我慢の限界を迎えそうになっていたのだ。少年がイきそうだと判断した少女は慌てて顔を離す。
 「まだ・・・まだイっちゃだめよ・・・」
 顔を赤く染めて火照った口調で佐々菜奈々子はそう訴えかける。ペニスから唾液が糸を引いているが、気にしない。手で扱きあげながらそう訴えかける。ペニスから手を離し、部室の床にお尻を突く。火照った体にひんやりとした床の感触が心地よく感じられる。
 「出すなら、こっち・・・」
 奈々子は大胆に足を広げて指でヴァギナを広げて懇願する。ねっとりと濡れたヴァギナは少年を誘惑するかのようにパクパクと口を開けたり、閉めたりしている。その艶かしい光景に少年は思わず息を飲む。興奮していることを示すようにいきり立ったペニスがビクビクと脈打つ。
 「佐田くん・・・入れて、お願い・・・」
 「奈々子・・・」
 奈々子は佐田にもう一度懇願する。その言葉に導かれるように佐田は奈々子に圧し掛かる。そしていきり立ったペニスを濡れそぼったヴァギナの押し付けると、躊躇なく膣内へと押し込む。柔らかな抵抗と共にペニスが奈々子の体の中に潜り込んでゆく。
 「奈々子の膣内・・・きつくて・・・温かい・・」
 奈々子の膣内へとペニスを押し込んだ佐田は心地良さそうな声を上げる。そして野球部の四番らしくがっちりとした体格が奈々子のほっそりとした体を包み込む。奈々子の腰をがっちりと固定すると、激しく腰を叩きつけてくる。テクニックなどまるでない、野獣のような腰使いであった。
 「うあぁぁっっ!!奈々子、奈々子!!」
 ぎちぎちと締め付ける膣内の感触に佐田は悲鳴にも似た声を上げる。気を抜いたらあっという間にイってしまいそうだった。その衝動に必死で耐えながら、奈々子を責め立てる。もっと奈々子を感じたい、奈々子を感じさせたい、その一心からであった。
 「奈々子・・・気持ち、いいか???」
 「・・・う、うん・・・」
 とろんとした表情の佐田が尋ねると、奈々子は小さく頷く。それを聞いた佐田はさらに腰の動きを激しくする。しかし、その言葉とは裏腹に、奈々子はまるで気持ち良さそうではなかった。佐田が激しく腰を動かしてもまるで反応を示さない。喘ぎ声も上げない。
 (なんで・・・どうして・・・???)
 一番困惑していたのは奈々子であった。佐田とはまだ数回しか逢瀬を重ねていないが、初めてのときには痛かったが愛を感じられたし、その後も激しいながらも快感を得ることが出来た。なのに今日は何も感じない。気持ちよくないのだ。なのに体の奥の熱さはどんどん増してゆく。
 (苦しい・・・苦しいよ・・・)
 いくら佐田が腰を使っても、ペニスで膣壁をこすりあげても、快感を得られない。体の熱さだけが増して奈々子を苦しめる。先ほどから何度もやっているのにどうしても快感をあることができないのだ。やればやるほど、つらくなる。そんな奈々子を他所に佐田の腰の動きが早くなる。
 「うぐっ・・・奈々子、そろそろ・・・」
 「膣外・・・に・・・」
 「あぐぅぅっっっ!!!」
 膣外に出すように奈々子が懇願するとほぼ同時に、佐田はペニスを引き抜く。愛液にまみれたペニスを奈々子の顔の前に突き出すと、数回扱く。すると限界を超えたペニスは激しく脈打って、先端から白い粘液を迸らせる。濡れたペニスの先端から迸った精液が容赦なく奈々子の顔に降り注ぐ。
 「んっ!!んんっっ!!」
 熱い粘液を奈々子は顔で受け止める。どろりとした粘液が顔を垂れるが、気にしない。顔に付着した粘液を指ですくい上げ、口に運ぶ。舌で指先に付着した粘液を舐め取ってゆく。その艶かしい光景を佐田は荒い息を整えながら見つめていた。やがて顔の粘液を舐め取った奈々子は佐田のペニスを啜り上げてくる。尿道に残った最後の一滴まで啜り上げてしまう。さらに舌を絡めて佐田の勢いを取り戻させようとする。まだ奈々子は満足していなかった。自分が満足しようと佐田のペニスに元気を与え、快感を求める。
 「奈々子、今日はもう、無理だよ・・・」
 奈々子の意思を感じ取った佐田はギブアップ宣言をしてくる。まだ満足していないどころか、感じてもいない奈々子は不満そうな顔をするが、佐田のそれが勢いを取り戻しそうになかった。憮然とする奈々子に佐田は情けない顔をするしかなかった。そんな気まずい沈黙と共に情事は終わりを告げる。
 「・・・奈々子・・・」
 「・・・・なに?」
 学生服を身に纏った佐田は遠慮がちに奈々子に声をかける。奈々子はブラをつけながら機嫌の悪そうな声で返事をする。奈々子の機嫌が悪い、そう感じた佐田はそれ以上声を明けられないでいた。が、このままでは埒が明かないと思い、意を決して声をかける。
 「あの・・・一緒に帰らないか??」
 「・・・ごめんなさい、まだやらなくちゃならない仕事が残っているの・・・」
 制服に着替え終えた奈々子はそれだけ云うと、佐田の返事を待たずに野球部の部室を後にする。その後ろ姿を見つめながら佐田は何も言うことができなかった。ただ、がっくりと肩を落として荷物を担ぐと部室を後にする。やるせない溜息を残して・・・
 「・・・・もう・・・我慢できない・・・」
 生徒会室へと戻る途中、奈々子は壁に寄りかかり切なそうな声を上げる。体の火照りと熱さは激しさを増し、その欲望を増大させる。そしてその欲望は止まるところを知らず、際限なく増大してくる。その欲望を堪えながら奈々子はよろよろとよろめき、生徒会室へと入ってゆく。その奈々子を誰かが迎えてくれる。
 「お盛んですね、会長??」
 生徒会長席に腰掛け、両脚を机に投げ出した修二はニヤニヤと笑いながら奈々子に声をかける。奈々子は恥ずかしそうに顔を赤く染め、俯いてしまう。体が疼いて疼いて仕方がない。足に力が入らず、その場にしゃがみ込んでしまう。火照ったからだはもう押さえ切れない。
 「あれま。佐田先輩とのセックスは腰が立たないくらい気持ちよかったですか??」
 修二はもう一度尋ねてくる。奈々子は弱々しく首を横に振る。その答えを見た修二は肩を竦めて見せる。そしてゴソゴソとビデオカメラを取り出すと、備え付けのテレビに繋いで再生を始める。そこには先ほどの佐田と奈々子の情事が移されていた。
 「まったく佐田先輩がこんなに頑張っているのに・・・もしかして会長って不感症??」 
 「ち、ちが・・・」
 「そうだよね・・・こんなにエッチだもんな・・・」
 奈々子が否定すると修二はニヤリと笑って別のテープを再生し始める。そこには裸の奈々子が激しく喘ぎ、男を求めていた。聞いていて恥ずかしくなるような隠語を大声で連呼しながら男を求める。だが、抱かれている男は佐田ではなかった。今目の前にいる修二であった。
 「あの時はすごかったよなぁ・・・僕のものをくわえ込んで放さないんだから・・・」
 「いや・・・アレは貴方が・・・」
 「薬を盛ったのは僕だけど、求めてきたのは先輩の方でしょう??」
 テレビから顔を背けた奈々子が否定すると、修二は蔑むような眼差しを奈々子に向けながらきっぱりと言い放つ。その言葉に奈々子は何も言い返すことができなかった。数日前、修二と仕事をしていた奈々子は珈琲に仕掛けられた媚薬によって興奮状態に陥った奈々子は修二を求めてしまった。修二はその一部始終をテープに収めていたのだ。それをこんな形で見せ付けられて、奈々子はただ黙ったまま項垂れていた。そんな奈々子に修二はさらに言葉を投げかける。
 「いいこと教えてあげようか、先輩?」
 「えっ??」
 「先輩は二度と快感を得ることは出来ないよ。僕以外ではね・・・」
 不思議そうな顔をする奈々子に修二は説明を始める。修二が奈々子に飲ませた媚薬はただの媚薬ではなかった。修二の祖父が最後に残した薬、”悪魔の微笑み”であった。祖父の残した処方箋からその薬を調合した修二は試しに美人で有名な生徒会長に飲ませて実験を行ったのである。結果は良好であった。
 「この薬はすごくてね。一度でも服用した相手を定期的に強烈な欲求不満に陥らせることができるんだ・・・さらにね、最初に受け入れたペニス以外では快感を得られなくなる」
 「それって・・・」
 「そう。さっき会長が佐田先輩とセックスしても感じなかったのはそう言うこと・・・」
 修二の言葉を聞いた奈々子は愕然とする。もうこの先二度と佐田と愛し合っても快感をあることができないのである。さらに定期的に欲求不満は襲ってくる。それを押さえる術は何もない。唯一つ、修二に懇願するしかないのだ。その言葉に嘘がないことは今しがたの佐田とのセックスが証明していた。
 「だから・・・佐田くんとの情事を許したの・・・?」
 「そうですよ。論より証拠。僕の言葉より信じられるでしょう?」
 顔を真っ赤に染めた奈々子が修二に問いかけると、修二ははっきりと頷く。体の火照った奈々子と交わったあと、『これは一回だけの過ち、元の生活に戻ろう。でも会長が僕を忘れられなかったら僕はここにいますよ』と修二はそのときのことを終わりにするといってくれた。だから奈々子は今日、佐田との逢瀬に応じたのである。そしてその結果は散々たるものであった。しかしそんな薬を盛られた悔しさを体の疼きが上回り、奈々子は物欲しそうな顔で修二を見上げる。
 「すごい苦しいでしょう、会長?どうして欲しいですか?」 
 「え・・・あっ・・・ああっ」
 「して欲しかったら、服従のポーズを取ってくださいよ・・・」
 切なそうな顔をする奈々子に修二は意地悪くそう言い放つ。その言葉に奈々子は困った表情を浮べる。だが、体の火照りは収まらない。すぐにでも奥をかき回して欲しい。その欲望が奈々子を捕らえ逃さない。奈々子はおずおずと立ち上がると、ショーツを脱ぎ捨てる。そしてスカートをたくし上げるとその妖しく濡れた秘部を露にすると、修二に懇願する。
 「樹くん・・・私のここを・・・グチョグチュにして・・・」
 「・・・まあ、懇願の仕方の教育はまた今度にしよう。こっちに来て舐めな!!」
 修二は奈々子の懇願に不満そうな顔をするが、すぐに気を取り直して自分の股間を指差す。それに導かれるように奈々子はふらふらと修二に近付くと、その股間を弄りだす。ベルトを外し、ジッパーを下げ、トランクスを捲りあげると、いきり立ったペニスが顔を覗かせる。その形、匂いに奈々子は息を呑む。
 「ふあっ・・・・ああああっっ・・・」
 熱い視線をペニスに向けると奈々子はそれをおいしそうに頬張る。拙いながらも舌を這わせて修二のペニスを味わう。そんな奈々子の姿を見下ろしながら修二は笑いを堪えることができなかった。普段凛とした生徒会長が、恋人がいるはずの女が自分から別の男の股間に顔を埋めている。それがおかしくてならなかった。ニヤニヤと笑いながら奈々子の舌の動きを見つめる。
 (この薬、やっぱり使えるぜ、爺さん・・・)
 修二は奈々子にペニスを舐めさせたまま心の中で狂喜する。この薬を使えば、条件さえ揃えば落とせない女は存在しないことになる。それは自分だけの楽園が作れることを意味していた。その生贄をこれから順番に見定めてゆけばいい。その手助けをしてくれる駒は最初に手に入っている。あとは順番に誘きだし、犯してゆけばいいのだ。し王すれば自分の好みの女性だけの楽園が簡単に手に入るはずである。そんなこの先のことを考えながら修二は、まずは眼の前に哀れな子羊を存分に味わおうと思うのだった。


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