エピローグ〜聖女王と聖戦士〜
ナの国ウロポロスの城。
城内に作られた“機械の館”の周辺では、数十隻にもなるオーラ・シップが並んで停泊している。
その周囲では、メカニック・マンが忙しげにたち動いている。
数日後に迫った出撃に向け、各員ともその最終チェックで立ち忙しい。
ニー・ギブンの所有するオーラ・シップ“ゼラーナ”もその一群の中にいた。
「ドルプル!エンジンの調子はどうだ!」
ニーの声が“機械の館”のあるウロポロス城の中庭で響く。
「ドワ!機材の搬入はどうなってる!」
“ゼラーナ”はナの国艦隊出撃に先んじ、明日出港予定となっている。
ナの国と同盟国であるラウの国の巨大戦艦“ゴラオン”と、アの国先発隊との戦いが始まりつつあった。“ゼラーナ”は“ゴラオン”と一足先に合流するため、明日出港することとなっていた。
「ニー、“ゼラーナ”の調子はいかがですか?」
「え?」
ニーは突然聞き覚えのある澄んだ声に呼ばれ、驚きながら振り返る。
中庭の入り口からナの女王シーラ・ラパーナが侍従を数名連れ、“ゼラーナ”に向かい歩いてくるのが目に入る。御付きのミ・フェラリオのエル・フィノとベル・アールもその上を飛んでいる。
「これは、シーラ様。このようなところまで・・・。」
ニーが恐縮しながら礼をとろうとする。女王自らこんな現場まで来るとは思いもよらず、驚き慌てていた。
「陣中見舞いです。礼は構いません。それより“ゼラーナ”はどうですか?」
シーラは形式にこだわらさせず、本題にすぐ入るようにニーを促した。
「はい。ナの国のメカニック・マンの協力の御蔭もあり、全て順調です。明日には予定通りラウの国に向け出航できます。この間の協力には心より感謝いたします。」
ニーが応える。
(ナの国では、女王が自らこのような場まで下りて来て話をするのか・・・。アの国では考えられないな・・・。)
ニーはシーラがナの国民に絶大の人気があることの一端を垣間見たような気がした。
「そうですか。予定通りに明日発てるのですね。」
シーラは整備を進めている“ゼラーナ”を見上げながら言う。
その時ニーは気付かなかったが、彼女の御付きのミ・フェラリオ、エル・フィノは一瞬シーラの表情が曇ったのを敏感に感じとった。
「オーラ・バトラーの整備はどうですか?」
シーラはニーに向き直り、質問を続ける。
「はっ。オーラ・バトラーは機械の館の中で整備を進めています。こちらもほぼ終了しております。見に行かれますか?」
ニー
は、現場重視の女王とてまさかそこまで視察には行かないだろうとは思いつつ、一応シーラに尋ねる。そうであろう、現在ナの国には無数のオーラ・バトラーが存在し、出撃に備え最終整備に入っている。これらの状況を視察していこうものなら、いくら時間があっても足りはしない。
「ええ。ここまで来ましたのですから、見ていきましょう。」
ニーの思惑とは別にシーラはすらっとそう応えた。
「シーラ様!?」
さすがにこれには侍従たちも驚いた。
ニーも後で知るのだが、ナの国もシーラの時代になるまで、王がこのように一般兵士や国民のいるところまで下りて来て言葉を交わすことなどなかったのである。シーラはそういった慣習を壊し、皆が反対するのを押し切り、出来るだけ現場の騎士や兵士たちと言葉を交わし、一般の国民の意見も出来るだけ聞けるように努力をしたらしかった。この女王の態度が、騎士や兵士たちの忠誠心を強め、また国民の人気も上がった。が、限界はあった。
「黙りなさい。聖戦士殿の働きは、今回の戦いにおいて重要な影響を与えるものです。状況がわからなくていかに大局を見ることが出来ようか!」
シーラは侍従たちにぴしゃりと言う。
「さあ、ニー。案内をお願いします。」
シーラはそういうと、さっさと機械の館の方へ歩き出してしまう。
ニーも慌ててシーラを追う。その後をパタパタと侍従たちが仕方なく付いて行く。
機械の館内部。
ショウ・ザマやマーベル・フローズンは他のオーラ・バトラーのパイロット同様にメカニック・マンたちと共に愛機の整備を行なっていた。
機体の整備の基本的な部分は当然メカニック・マンが行なっている。ただし、その機体を駆って戦うのは彼らパイロットである。自分の命を預けるその愛機の整備を行なうのは彼らの当然の義務であり、またそれを行なわなければ不安で操縦も出来なかった。
「チャム、悪いけどスパナを取ってくれないか?」
オーラ・バトラー“ビルバイン”のコクピットの奥からショウ・ザマの声が聞こえてくる。
「え〜、スパナってどこにあるのよ!?」
“ビルバイン”のコクピットのハッチに座り込み、作業中のショウに一方的に“ムダ話”をしていたミ・フェラリオのチャム・ファウが不満そうに応える。
「ほら、向こうのメカニックを置いてあるテーブルの上にでもあったろう。頼むよ、手が離せないんだ。」
ショウはコクピットの奥で何かごそごそと作業しながら言う。
「も〜、人使い荒いんだから!」
チャムは文句を言いながらも、その小さな羽を震わせ、“ビルバイン”のコクピットから飛び立ち、その向かいの机の上に頼まれた工具を取りに行く。この小さなショウの友人は、その小さな身体の為にショウの役に立てないことで密かに胸を痛めている。ただ、それでも何か役立てることがありはしないかと、作業中のショウの横に来て、ムダ話をしていたのだ。チャムの文句はただのポーズであり、彼女は一寸した事でもショウの役に立てることが嬉しいのだった。
「あった。これね・・・・・。う・・・う〜〜ん!!っと!」
スパナといっても、チャムにとっては自分の身体の大きさほどある鉄の塊である。チャムは一苦労してそれを持ち上げる。
「ふぅ〜〜〜・・・・。えっと、これをあそこまで運ぶの・・・ね・・・・・・・・。」
それは至難の業である。
チャムはスパナを抱きかかえ、“ビルバイン”の方へヨタヨタと飛び始める。
「ショ〜ウ・・・!もって・・・きた・・・・わよ!!」
チャムが大苦労の後、“ビルバイン”のコクピットの上まで飛んできた時、コクピットの中からショウが飛び出してきた。
「え?!ショウ?・・きゃ!」
ショウは、驚いてよろけるチャムの横をするっとすり抜け、“ビルバイン”から飛び降りてしまう。
「悪い!チャム、その辺に置いておいてくれ!」
ショウはそう言いつつ、機械の館の外に向かってすたすたと小走りに行ってしまう。
「ちょ!ちょっとぉぉー!ショウ!どこに行くのよーー!!」
チャムは重いスパナを持っているため、ショウを追っかけられずヨタヨタとしながら叫ぶ。
「ちょっと野暮用!悪いな、チャム!」
そのままショウはオーラ・バトラーの格納庫を出て行ってしまう。
「もう!何よ!ショウったら!!知らない!!フン!!」
チャムは、どこにそんな力があったのかはわからないが、持っていたスパナを“ビルバイン”のコクピットに投げつける。
チャムの怒りも当然である。普通の人にとってはスパナを持ってくることぐらい大したことないが、体長30cm程度のチャムにとっては、それは死ぬ思いの作業なのだから。
「チャム〜〜!!」
と、その時彼女の背後から彼女を呼ぶ声が聞こえてくる。
「ああ?!あっ、エル!ベル!!」
ショウが出て行った方と反対側の入り口より、ミ・フェラリオのエル・フィノとベル・アールが飛んで来る。
「どうしたの?こんなとこに来るなんて?」
抱き合って再会(ナの国に来てからはしょっちゅう会っているのに?)を喜びながら、チャムが聞く。チャムは彼女ら二人が常にシーラ女王の側から離れないのを知っている。そして、そのシーラ女王がわざわざオーラ・バトラーの格納庫までやってくるとはチャムには想像もできないことだったからだ。
「じんちゅ・・・なんとか・・だって!」
ベルがたどたどしく言う。赤ちゃんフェラリオのベルは、よく意味がわかっていない。
「陣中見舞いよ!まったく・・・ベルは・・・。ほら、シーラ様が来られたわ。」
エルが指差す方にシーラ女王がニーと侍従を連れ入ってくるのが見えた。
「へえ〜・・・。」
チャムはちょっと驚いている。
「シーラ様!わざわざこんなところまで!」
隣りでオーラ・バトラー“ダンバイン”整備をしていたマーベル・フローズンが、シーラの来訪を驚きつつ、コクピットから飛び降りてくる。
「マーベル。調子はいかがですか?」
シーラは優しい笑顔を浮かべながらマーベルに聞く。
「はい。“ダンバイン”は、先のラース・ワウでの戦いでかなりやられていましたが、ナの国のメカニックの方々の御蔭でもう以前の通りに修理が出来ました。これもシーラ様の御蔭です。有難うございます。」
マーベルが応える。
「いえ、“ダンバイン”のことではありません。貴方自身はもう、大丈夫ですか?」
シーラは少し小首を傾げ、マーベルの目を覗き込むようにしながら尋ねる。女王としての権威を身に付けている彼女であるが、時としてこのように年相応の少女のような仕草が現れることがある。これがまた、人々をしてシーラ女王に惹きつけられる所以かとニーは思う。
「はい。・・・もう、大丈夫です。ご心配をおかけしました。」
マーベルの脳裏に一瞬、あの時の感触・・・、夥しい数のおぞましい触手に翻弄された時のあの快美な感覚が甦った。が、彼女はその想念を打ち払い、自分に言い聞かせるかのようにシーラに答えた。
シーラはさりげなくそんなマーベルの様子を見ていた。
女として、耐えがたい陵辱を受けたマーベル・・・そして自分。しかし、その心の傷に負けてしまうようではこの戦いで生き残れないことも彼女は知っていた。
(マーベルは大丈夫だ)
シーラは彼女の様子を見てそう感じた。
(でも自分はどうか・・・)
シーラはさっと浮かび上がってきた疑念を慌てて打ち払った。
「では、これまで通り・・・いや、これまで以上の活躍を期待していいですね。」
シーラは女王の顔に戻り、聖戦士に再度尋ねる。
「はい。女王陛下の意のままに。」
シーラはマーベルの小気味いい返事に満足だった。ショウとの間柄には嫉妬を感じてしまうマーベルに関しても、聖戦士としては素晴らしい女性だとシーラは思っている。
(そのショウはどこか?)
シーラはマーベルと会話しながらも、一向に“ビルバイン”のコクピットから現れないショウの存在をいぶかしんだ。
「ショウは?」
自分からは聞くまいと思っていた言葉が、つい、シーラの唇からこぼれた。
「ん?おい、ショウはどうした?」
ニーが今さらながらショウがいないことに気付き、マーベルに聞く。
「え?“ビルバイン”の整備をしていたはずなのだけど・・・。おかしいわね。」
マーベルもショウの不在をいぶかしむ。
シーラは何か強烈な不安を感じてきた。心臓の鼓動が早くなる。が、同時にその動揺を周りの者に気付かれない様に彼女は全神経を傾け平静を装った。
「ショウならたった今外に出て行ったわよ!野暮用とか言って!!」
皆の頭上でエル等と遊んでいたチャムがニーに向かって答える。
シーラはその声を聞き、ほっと安堵する。良くないことが起きていたわけではなかった。が同時に、彼の顔を見れなかったことに寂しさを感じた。
「そう・・・・・。」
思わず、暗い顔でため息を漏らしてしまう。
「全くショウの奴。わざわざシーラ様が来られているというのに!」
ニーが呟く。ニーも、マーベルや他の誰もそのシーラの寂しげなため息には気付いていなかった。
「シーラ様、申し訳ございません。ショウには後で話をしておきます。」
ニーが謝罪をする。
「いえ、いいのです。“ゼラーナ”の方々の順調な様子を知ることが出来、安堵いたしました。明日の出航に向け、準備を怠りないように進めてください。お邪魔をしましたね。」
シーラは軽い笑みを浮かべると、踵を返し、機械の館から出て行く。
それは小気味よいほどあざやかな動作であった。
ついてきていた侍従たちが慌てて女王を追いかけていく。
「あ!シーラさまあ!待って!じゃあ、チャム、またね!」
エルもベルを伴い、慌ててシーラを追いかけていく。
「ねえ、シーラ様。」
すたすたと先を歩くシーラに追いついたエル・フィノが、彼女の耳元で囁く。
「ショウに会えなくて残念でしたね。」
シーラの顔が一瞬ピクッと動く。後ろをついてくる侍従たちにはそのシーラの様子は見えない。
「隠したって、シーラ様のことなら何でもわかるんだから。」
エルが得意そうに、でも他の者には聞こえないように小声で囁く。
「そんな風に見えますか?」
シーラは自分がそんな素振りを見せたとは思っていなかった。なのに、エル・フィノがそのようなことを言う。少し動揺していた。
「だあって、さっきも寂しそうにため息ついてたでしょ?ほかのみんなは気づいていなかったようだけど。」
エルが言う。
「そんなことはありません・・・・・。」
シーラは動揺を隠しながら、自分に言い聞かせるかのように噛み締めるように言う。
「ねぇ、シーラ様。もう少し素直になったらどうなの?」
シーラはエルがしゃべり続けるのを無視して、そのまま歩き続ける。
エルが言いたいことはわかっている。けれど、そのことは彼女自身が一番認めたくないことだった。また、そのことについて、自分の御付きの者たちにも聞かれたくなかった。たとえ彼らが“ミ・フェラリオの戯言”と気にしないとしても・・・・・・。
「そうそう!シーラ様は女王なんだから、そぉんなに会いたいなら呼びつけちゃえばいいのよ!“ショウ・ザマをこれにぃ!!”とかさ。」
エルはシーラが返事をしないことなんか気にせずに、べちゃくちゃと彼女の耳元で無責任に喋り捲る。
(言いたいことを・・・!)
最初は無視をして平静を保っていたシーラも、だんだんイライラして来る。
(それが出来るのなら、とっくにやっている!!)
「ねえねえ、何話してるの?」
赤ちゃんフェラリオのベル・アールが会話の仲間に入ろうと二人に近づき、エルに話しかける。
「もう、ベルはいいの。大人の話をしているんだから。あ、そうそう、ショウの泊っている部屋だってわかってるんだから、遊びに行けばいいじゃない!“お忍び”だとか言って。シーラ様もそんな我慢しないで、素直になればいいのよ!ねえ!」
ベルを無視して、エルはそのままシーラの耳元で喋り続ける。と・・・。
「いい加減にしなさい!!」
突然シーラが大きな声を上げる。
「ひ!」
エルが驚いて、シーラの耳元から離れる。
「う・・え・・・・・・・・・、うぇぇぇぇ〜〜んんん!!しぃぃらぁぁさぁまぁぁぁぁぁ〜〜〜ぁぁぁ!!」
びっくりしたベルが大声で泣き出す。
「シーラ様!どうなさいましたか!」
すぐ後ろを歩いていたシーラの侍従たちがシーラの脇までやってくる。
シーラがあのように大声を上げることは滅多にない。侍従たちも何事があったかと、驚きを隠せない。
エルは泣き出したベルに近づき、慰めるかのように抱きしめる。
「シーラ様ぁ!そんな大声出さなくてもいいじゃない!ほら、ベルまでびっくりしちゃったじゃないの。」
エルが文句を言いながらシーラのことを見ると、自分の方を睨んでいるシーラの姿が見える。
(シーラ様・・・・・・。)
エルはその目の中にきらりと光る涙を鋭く見出す。
「シーラ様!このフェラリオ奴が、何か無礼を!」
侍従たちがきつい目で上空にいるエルとベルを睨み続けている。
「いえ、何でもありません!戻ります。」
シーラは向き直ると、すたすたと歩き出す。
侍従たちも慌ててそのシーラを追いかける。
残されたエルはなんとなく不満であった。彼女にしてみれば、シーラの様子を心配して、彼女なりに何かしてあげたいと思っての助言だったのに、いきなりあのように怒鳴られてしまったのだ。そのエルの胸の中でベル・アールが泣き続ける。
「フン!シーラ様なんて!勝手にすれば!!ほら、ベル、いつまでも泣いてんじゃないわよ!!」
「うわぁぁぁぁーーーん!!エルが殴ったぁぁぁぁーーー!!!」
エルは自分の苛立ちをベルにぶつけ、そのまま彼女を置き去りに飛んでいってしまう。
(でも・・・・・・。)
少し気ままに空を飛び、気が静まってきたエルは思う。
(シーラ様・・・あの時・・泣いてたな・・・・・・。きっと、私の考えたことはシーラ様だって考えてたんだろうな・・・。でも、きっと出来なかっただけなんだ・・・・・・。)
エルは考える。
(女王って、全く面倒くさいのね!)
エルは、私が一肌脱がなくては駄目なんだ、と思いながら、城に向かって飛んでいく。
一方のシーラ。
彼女はエルを怒鳴りつけたことを自己嫌悪していた。
(何故あのように声を張り上げてしまったのか・・・・・・。)
歩きながらシーラは思う。彼女らしからぬ行為をしたため、侍従たちが心配なまなざしで見ているその視線を背中に感じる。
(エルの言うことが的を得ているからか?私はそんなにショウを気にしているのか?・・・・・・そう、それはわかっていることだ・・・。女王の立場を考え、自分の気持ちを偽ろうとしているのは自分が一番わかっている事ではないか・・・。だから、腹が立ったのだろう、シーラ。)
シーラは自答を続ける。
(・・・が、ショウはやはり私を避けているのか・・・・・・。ウロポロスに戻って早数日近く経つ。その間、ショウは一度も私の前に現れようとしない・・・。謁見の際も、“ビルバイン”の整備を理由に、ニー・ギブンについてこない・・・・・・。マーベルが現れても、ショウは来ない・・・・・・。何故か。)
シーラの脳裏に、ラース・ワウでの、あの出来事の記憶が甦ってくる。
卑劣な黒騎士に純潔を貫かれ、それを間近でショウに見られた!
何名もの男どもに、咥えさせられ、後ろの別の穴も貫かれ、いやな匂いのする白濁液を体の奥に浴びせかけられるのを、ショウに見られた!
「・・・汚い・・・・・・。」
シーラは思わず声を漏らしてしまう。
(・・・・・・汚い体・・・・・・。そう、こんな汚れた身体の女なぞ、見たくないわね・・・・・・。)
一方でショウはそんなことを考える男ではないともシーラは思う。しかし、現実に自分を避けていると思われる彼の行動から、シーラはどうしても彼に汚れた女と見られてるのではと感じてしまう。
(もう、私は処女王ではないのだ・・・・・・。たくさんの男どもにこの身を汚された女なのだ・・・・・・。)
絶望的な悲しみがシーラの胸の奥から湧き出してくる。
(いけない!こんなことにとらわれては!私はナの国の女王として、これから皆を戦場に率いていかなければならない身なのだ!些細なことで心を悩ましているときではない!)
そう考えても、湧き出してくる悲しみの奔流にシーラの心は流されてしまう。
(ショウも!ショウも、そう感じているのか!私を、私を汚れた女と!)
(そんなことはない!ショウはそんなことを思わない!)
(でも、ショウは私を避けている!)
(それに、私はもう、汚れた・・・・・・。誰がどんな風に誤魔化そうとも、わたしは沢山の男どもにこの身を何度も貫かれ、中で精まで放たれてしまった・・・・・・!)
「ああ・・・・・・。」
シーラの目から一筋の涙が流れ出した。
シーラは共をしている侍従たちにその涙が見られないように、顔を伏し、自室に逃げ込んだ。
「ああ・・・ショウ・・・!私は、私は!・・・・・・ああ・・・だめ・・・・・・だめよ・・・・・・・・・こんなことではとても黒きオーラに立ち向かえない・・・・・・。ショウ・・・私を・・・助けて・・・・・・。」
シーラはベッドに倒れ込み、そのまま泣き伏した・・・。
ウロポロス城の夜。
バイストン・ウェルの月、天空の海に住む深海魚の光が集まって出来た月が柔らかな光をシーラの居城に差しかける。
時刻はさして遅くない。が、警備の者以外は床についている。
ショット・ウェポンが地上の“電気”を持ち込んだことにより、最近では夜中でも城においては煌々と明かりがつくようになったものの、人々の生活習慣はそう簡単には変わらない。
電気が入り込むまでのバイストン・ウェルは、日が沈んだ後の世界は夜の闇が支配し邪悪なガロウ・ランが跋扈する妖しの世界であり、コモン人はそれを怖れ活動をしない世界であった。
それゆえに、通常は日が沈むとともにコモン人は床につくのが長い間の習慣であった。
無論、そういった人の心理を逆取り、戦時では夜襲をかけるなど、軍事・政治的に活動を全くしないというわけではなかったが・・・・・・。
地上ではまだ宵の口の時間ではあったが、ショウも与えられた部屋で横になっていた。
明日はいよいよラウの国に出航である。
戦士として、身体を休めておかなければならなかった。
(今日でこのウロポロスの城も最後か・・・。)
横になり、天井を見上げながら、ショウは思う。
その脳裏にこの城の主人、女王シーラ・ラパーナの顔が浮かび上がる。
ショウはこの城に入ってから、彼女に会っていない。彼自身が避けていたからである。
(やはり、出発の前に会っておいた方がいいか・・・いや、しかし・・・・・・。)
彼はシーラに会うのを怖れていた。
シーラのあの何もかもを全て見通すような清浄な瞳、ショウはそれを怖れていた。
(シーラ・ラパーナ)
心の中でその名をつぶやいた途端、ショウの脳裏に数日前のラース・ワウでの光景が甦ってくる。
聖女王の名に違わぬ真っ白な美しい肢体。その美しい身体を思うがままに屈曲させられ屈辱的な姿勢をさせられ続ける。悲鳴とも歓喜ともわからない声がその可憐な唇から漏れ聞こえる。
ショウは頭を振って、その淫らな妄想を打ち払う。
ショウ自身の下半身が硬く鎌を持ち上げているのに気付く。
(どうしてあの時のことが頭から離れないんだ!)
下半身を硬く滾らせた事に自己嫌悪を感じつつ、ショウは思う。
そう、彼はこういう自分を恐れていた。
シーラの前に出たとき、自分があのときの光景を思い出し、彼女の目の前で彼女の肢体を弄ぶ様な卑劣な妄想を行うこと、そしてそのことを本人であるシーラに知られること、ショウはそれを恐れ、この数日ショウはシーラを避けていた。
“情けない”とショウは自分のことを思う。
ショウは熱く滾って来る下半身を宥めながら考える。
(こんな俺のことを知ったら、シーラは俺のことを軽蔑するだろうな・・・。)
シーラの全てを浄化するようなあの瞳がショウの中で再び甦る。
(俺のことを“聖戦士”とかってくれているのに、本当の俺がこんな情けない男だと知ったら・・・。)
ショウの想像の中のシーラの表情が、凛としたものから再びとろけるような柔らかい表情に変化していく。
清らかな瞳が、艶のある濡れた瞳に変化していく。
きりっと締まった唇が、色っぽく開き、艶めかしいため息が漏れる。
(くそ!まただ・・・!!)
ショウはその淫らなシーラのイメージを懸命に振り払う。
(明日は出陣だというのに・・・!)
ショウはベッドから身体を起こし、頭を少し冷やそうと、窓に向かい歩いていく。
バイストン・ウェルの月が、柔らかな光をショウに投げかける。
カタカタッ・・・・・・。
かすかな音がショウの耳に届く。
(・・・・・・?・・・。)
窓の方から聞こえるようだった。
トントントン・・・。
ショウは目を凝らす。
(チャムか?)
窓の外に小さな影が動いているのが見える。
人の形をしているが、そのサイズは小さい。ミ・フェラリオのようだった。
その小さき妖精の如き者が、ショウの部屋の窓を一所懸命叩いていた。
(チャム、こんな遅くに・・・いや、チャムではない!?)
その者は、チャムより少し身長が高かった。
(エル・フィノ?)
ショウは窓を少し開け、その珍しい客を部屋の中に入れてやった。
「ふあ〜!!良かった!気付いてくれなかったらどうしようかと思った!」
エル・フィノが、軽く伸びをしながら、ショウの開けた窓の隙間から、彼の部屋の中に侵入してくる。
「どうしたんだ?エル?こんな夜更けに?まさか、シーラ様にまた何か!」
エルは、常にシーラの側を離れない。赤い嵐の玉の中に閉じ込められた時も、彼女はシーラの傍らにいた。そのことを知っているショウは、突然の珍客の訪問を良からぬことが起きていることを知らせに来た使者かと感じ取った。
「ううん、違うわよ。シーラ様は大丈夫。・・・う〜ん、いや・・・やっぱ、一寸大丈夫じゃないかな・・・・・・。」
エルが小首を傾げながら、言う。
「え!どういうことだ!エル!!」
エルの中途半端な言い様に、ショウが詰問する。前回の黒騎士の例がある、このウロポロスの城とて、完全に安全とはいえない、ショウはそう思っている。
「あ・・・!あは・・・!いえ〜、違うのよ!独り言、独り言!!」
エルは余計なことを口走ってしまったことを誤魔化そうとする。最もショウは、そのエルの態度から、シーラに危険な事が起こっているわけではないことを感じ取り、安心する。
「・・・・・・で、何をしに来たんだ?俺をからかいにこんな遅くにわざわざ来たのか?」
ショウが聞く。
「そんなんじゃないわよ・・・・・・・・・えっと・・・そうそう、・・・・・・実はシーラ様からの秘密の言伝を伝えに来たのよ。」
エルは途中から、急に真面目な顔になりショウに告げる。
「言伝?」
ショウが訝しげに尋ねる。
「そう、何でも、明日の出発の前にショウにどうしても伝えることがあるとかで、今から来て欲しいんだって。」
「え?今から?」
予想もしなかった突然の内容にショウは驚く。
「そう、わかったら案内してあげるから、早く支度をしてよ!」
エルはここぞとばかり偉そうにショウに言う。
「ちょ、ちょっと待てよ、エル・フィノ。こんな急に、しかもこんな時間に、いくらなんでも一寸おかしいんじゃないか?」
ショウはエルの言動に、何かおかしなものを感じていた。
「ふ〜ん、そう。シーラ様の特命を聞かないんだ。ショウは聖戦士なんでしょ?この大変な戦いの中で、そんなことをするんだ。」
「い、いや、そういうわけじゃない。が、おかしいだろ。こんな時間にシーラ様が俺を呼ぶなんて。」
ショウが答える。
確かにおかしい。しかし、本当に何か特別な命令を出す可能性がないとも言い切れない。それをその命令の性質上、他の者に聞かせないということも考えられる。そのために傍にいるエル・フィノを使いに使ってもおかしくはない。
ショウはその真偽を探るかのように、エル・フィノをじっと見る。
「で、どーするのよ?来るの?来ないの?」
エルがショウに迫る。
「わかった。すぐ支度する。」
エルはミ・フェラリオでもシーラ女王の傍にいる者だ。むやみに嘘を付くとも考えにくい。
「で、謁見の間にいくのか?」
支度をし、部屋を出たショウはエルに聞く。
「ううん。案内するから、こっちに来て。」
エルは廊下をショウを先導するように飛んでいく。
「この壁のこの辺をちょっと叩いてくれる?」
しばらく進むとエルが止まり、壁際を指して変なことを言い出した。
「壁を叩く?」
「ほら!いいから、やってよ!私じゃ力が足りないんだから!」
エルが言う。
ショウが訝りながらも壁を叩くと、その壁がドアのように開き、向こう側に秘密の通路が見えてきた。
「抜け道?」
「そうよ。さあこっち。」
エルはその抜け道の中へ飛んでいく。
ショウは何故こんな道を、と思いつつもエルに従い、中に入っていく。
「エル、どこまで行くんだ?」
「もうちょっとよ。もうすぐ着くわ。」
ショウはエルに連れられ、いくつもの抜け道を通りながら、進んでいく。
(そういえば、中世の時代は、襲われたとき襲撃者に気付かれずに逃げるために、城には沢山の抜け道を作るって何かの本で読んだけど、このバイストン・ウェルでも同じだったんだな。)
ショウはその抜け道の多さに感心しながら、エルに付いて行く。
「さあ、ここよ。」
最後の抜け道を出て、少し進んだところに、質素であるが高貴な風情のある扉の前に着いた。
いかにも貴人の私室といった感じを受ける。
「おい、エル。ここって、まさか・・・。」
「そうよ。シーラ様のお部屋よ。」
ちょっと待て、ショウは思う。いかに特命とは言え、女王の私室にこんな夜更けに訪問するなんて!
(これではまるで、夜這いではないか!)
と、思い、ショウは慌ててその想念を消そうとする。
(いかん。またシーラ様をそんな目で考える。シーラ様が、そんな下賎なことをするわけないじゃないか!)
「じゃあ、ショウ。頑張ってね!ああ、それから向こうの廊下には衛兵が立っているから見つからないようにね!」
エルはそう言い残すと、サーっと飛んでいってしまう。
「おい、エル、待てよ!」
ショウが呼ぶがエルはもういない。
(まいったな・・・。とはいっても、このまま戻るのもおかしいし、シーラ様の言伝というのも気になる。)
とは考えつつも、やはり夜中に女性の(しかも貴い身分の女性の)部屋に入るのには抵抗がある。
(ええい!ままよ!!)
ショウは心中で気合を入れつつ、扉をノックする。
「誰か?」
中から気品に満ちた透き通った声の返事が返ってくる。
「!」
その声を聴いた瞬間、ショウの身体に緊張が走る。
「ショ、ショウ・ザマです!御命に従い、参上つか、仕りました!」
ショウは自分の声が上ずるのを気恥ずかしく感じながら、答える。
「ショウ?」
室内の声も驚いた様子であった。
「少し待ちなさい。」
その声とともに、扉がそっと開く。
中からシーラ女王が顔を出す。正装姿ではなく、ピンクのガウン姿にスリッパである。人には決して見せない、無防備な服装である。
その姿を見た瞬間、ショウはエル・フィノの話が嘘だったことを理解する。
「あっ、そのっ、いやっ、これは・・・。」
ショウは言葉に詰まってしまう。
シーラはガウンの襟元を隠すように手で覆い、ショウを見ている。その首筋の白さにショウは息をのんでしまう。このガウンの下には下着程度しか着けていないのでは、そんなことを瞬間考えてしまい、ますますショウは上がっていってしまう。
シーラは周囲を見回してから、小さく、しかし鋭くショウに言う。
「入りなさい。」
「いやっ、これは、間違いですから、その・・・。」
ショウはまだしどろもどろで答える。
「衛兵に見咎められたいですか!早く入りなさい!」
そう言われて、ショウは始めて今いる自分の立場を理解する。
「あっ、はい!」
シーラはショウを部屋の中に入れ、もう一度誰にも見られていないか確認し、扉を閉める。
「ふう。これで後はシーラ様次第ね!ルン!」
エルは自分の考えが上手く行ったのに満足していた。気持ち良く夜空を飛んでみる。と、何処かから自分を呼ぶ声が聞こえてくる。
「エルー!!」
振り返るとチャム・ファウがこっちに向かって飛んでくる。
(あちゃ・・・。今一番会いたくないかも・・・。)
エルはそう思いつつ、そんなことをおくびにも出さず、チャムを迎える。
「どうしたの?チャム?」
「ねえ、ショウを探してるんだけど、見かけなかった?」
チャムが聞いてくる。
(やっぱり・・・今いいとこなのに、チャムに知られたら大失敗だわ・・・。)
「し・・・知らないわよ。部屋で休んでるんじゃないの?」
エルは何とか誤魔化してこの場を去りたいと感じる。
「それがね。ノックしても返事がないんだ・・・。明日出撃だし、ちょっと心配でね。ここんとこ一寸おかしかったし・・・。」
「おかしい?」
「うん・・・何となくだけどそんな気がするのよ。今日もシーラ様の陣中見舞いのとき、急にいなくなっちゃったし。」
「そんな〜、たまたまでしょ。私一寸急ぐから、ごめん、チャム!」
エルは早々にチャムから逃げ出す。エルは嘘が下手だった。しかも勘のいいチャム相手だと、誤魔化すのが難しいと考えた。
(チャム、ごめん。今は邪魔されたくないんだ。)
エルは夜の空を飛んでいく。
「わかりました。これは、エル・フィノの仕業なのですね。」
部屋の中で、ショウとシーラはソファーに向き合って座っていた。
部屋の中は、その主の性格を映してか、気品に満ちていた。
緊急の打ち合わせも考えてか、部屋は応接室のようになっている。奥に扉があり、そちらが寝室も含めた女王のプライベート・ルームのようであった。
「エル・フィノの戯言に乗せられ、このような時間にこのような場所に来てしまい、申し訳ございません。ただ、本当にシーラ様から特命があったらと思い・・・」
「いえ、用事があったのは本当です。」
ショウが一所懸命言い訳をしている中、シーラは突然そう切り出す。
「え?」
これには、ショウが驚く。
「ショウ、貴方は私を避けていませんでしたか?」
シーラは、ショウにやっと会えた嬉しさを隠しつつ、ずっと気になっていたことを切り出す。
「いや、そんなことは・・・。」
ショウは少し口ごもる。
「いいのです。本当のことを言ってくださって。貴方はこのウロポロスの城に着いてから、私と会う機会は何回もあった筈なのに、貴方はいつも現れませんでした。」
「はい・・・。」
「私を避けていたのですね。正直に言ってください。」
シーラはじっとショウの目を見つめる。
「それは・・・。」
ショウはシーラからの命とは言え、この質問には正直には答えられない。どう答えるべきかと考えあぐねる。
しばらく沈黙の時間が流れる。
「わかりました。」
シーラがぽつりと言う。
そのまま立ち上がり、ショウに背を向ける。
「もう、用事は済みました。下がりなさい。」
そのまま、シーラは奥の部屋の方に向かっていく。これにはショウの方が驚く。
「シ・・・シーラ様!」
ショウは条件反射的にシーラを追い、彼女の手を掴む。
「何をする!離しなさい!」
シーラが強い語気で、ショウの腕を振り払おうとする。が、ショウの手を振り払う程の力はない。
「一寸待ってください!シーラ様!それでは何だかわかりませんよ!」
シーラは怒りの表情でショウに振り返る。ショウにはシーラが何故そこまで怒っているか理解出来ない。
「あっ・・・。」
シーラのその瞳にきらりと涙が光る。
(泣いているのか・・・!!)
シーラも自分が涙を浮かべているのに気付く。そしてその涙を隠そうと顔を伏せる。が直ぐに顔をあげショウを睨む。
「はっきり言いなさい、ショウ!私が汚れた女だからだと!こんなに汚れた女なぞ見たくもない目の中の汚物と!!」
シーラは一気にまくしたてる。ショウは一瞬シーラが何を言っているのか理解できない。
「あなたも見たのでしょう!私が何人もの男たちに体を弄ばれたのを!黒騎士に体を貫かれ、精を放たれ・・・、いやそれだけではなく名も知らぬ雑兵達にも犯され、精を放たれ、男達の精にまみれていたのを!!」
シーラは堰を切ったように自分が如何に汚された身であるかを訴え始めた。感情が膨れ上がり自分でも何を言っているかわからない。
(私は何を言っているのか!)
シーラの理性がかすかにそう感じていたが、自分でそれを止めることが出来ない。感情が下痢のように流れ出し、全く歯止めが効かなくなり、ただひたすら自分の汚さを訴え続ける。
「沢山の男達の精を受け続けるだけでなく、口からも多量の精を飲まされ、精まみれにされ、そして・・・そして・・・!!」
シーラの顔は涙にまみれている。
「私は汚い・・・そうよ!汚れた女なの!汚された・・・あっ・・・。」
ショウは掴んでいたシーラの手を引き、彼女の体を引き寄せる。そして優しく彼女を抱きしめる。シーラはいきなり抱きしめられたことに困惑する。
「私は・・・私は・・・。」
ショウの腕の中で、シーラは震えながら、それでもまだ訴え続けようとする。ショウは更に強く彼女を抱きしめる。
「あ・・・はぁ・・・。」
感情の奔流がおさまってくる。シーラはショウの熱い腕の中で、静かに泣いている。身体は小刻みに震えている。
「私は・・・私は・・・。」
「もう何も言わなくていい。」
ショウはシーラを強く抱きしめながら言う。
「シーラ様は汚れていない・・・。決してそんなことはない。」
ショウはシーラをさらに強く抱きしめる。
シーラは急に体の力が抜けていくのを感じていた。憑き物がとれたかの様に感情の奔流も治まっていく。代わりにショウに抱きしめられていることに今更のように気付く。こんな風に男の人に抱きしめられるのは、シーラにとって初めての経験だった。それはとても暖かく、心を落ち着かせてくれた。
「ショウ・・・。」
シーラは顔をあげ、間近にあるショウの顔を見る。
「・・・本当に・・・本当にそう思ってくれるのか?・・・ショウ・ザマ・・・。あんな・・・あんな私を見たのに・・・。ん!むむ!!」
ショウは見上げたシーラの口をいきなりおのれの口で塞いだ。
(ショ・・・ショウ!!・・・何を!!あっああ・・・。)
シーラは最初ショウのその行為に驚いたものの自分の唇に当たるショウの優しい唇の感触に喜びを感じてしまう。そしてその喜びを感じた瞬間、身体から力が抜けていく。シーラはショウに体を預けていく。
ショウの唇が更にシーラを求めるかのように、吸われていく。シーラもそれに応えようと激しくショウの唇を吸う。
(ああ・・・ショウ・・・もっと)
ショウも自分の行動に驚きつつもシーラとの口づけを満喫していた。ショウは自分が汚されたと感じているシーラの心を慰めたかった。そのために本能的に彼女を抱きしめ、そしてその唇に口づけをした。そして口づけをした瞬間、ショウの心の中に彼女を愛おしく思う気持ちがあることに気付いた。
ショウも夢中でシーラの唇を吸っていく。
(シーラ・・・シーラ!!)
その接吻の激しさにシーラは一回唇を離す。ショウと再び目が合う。ショウのまなざしは優しげだった。
「・・・シーラ様。」
何か言おうとしたショウの言葉を止めさせ、シーラはショウに言う。
「ショウ・ザマ・・・。忘れさせてくれますか・・・?」
言ってしまってから、シーラは自分のその言葉に恥じ入ってしまう。顔が赤くなる。ショウはそんなシーラを見るのは初めてであった。何か急に距離感が狭まったように感じる。
シーラは赤くなった顔を隠すようにショウの腕の中から離れ、ショウの手を引き隣の部屋へと移動していく。
シーラはベッドの上に横になっていた。その上に覆いかぶさるようにショウがいた。
ショウの手がシーラの着ているガウンのベルトの結び目を解いていく。シーラはガウンの下は下着しかつけていなかった。
ショウはガウンの前をはだけさせると、シーラの上に体を預け再度口づけをする。シーラもそれに応える。シーラの中で歓喜の情が湧き出てくる。今、ショウに抱かれながら熱い口づけをしている。以前でシーラであればそんなことは考えもしなかったことであり、また無意識で望んでいたこととしても決して認めることは出来なかったことである。
(今、私はショウの腕の中にいる・・・。)
その想いはシーラにとり、とてもスリリングなことでもあった。
突然、ショウはシーラの口中がどうなっているか、無性に知りたくなった。ショウは本能が指し示すまま、シーラの口中に舌を侵入させる。
「…ん!……んんん!!」
シーラはショウのその行為に驚いてしまう。唇を重ねる口づけだけでも、シーラにとり未知の感覚だったのに、舌を絡ませるなど、彼女の想像外にあった。
しかし、最初こそ驚いたものの、シーラの舌に絡んでくるショウの舌の動きは、シーラは激しい快感を与えていく。
(…ああ……、ショウ…いい…!!)
シーラはその口づけの気持ち良さに酔い、自らショウの舌に自分の舌を絡めだす。
(ああ!…シーラ、いいぞ!)
ショウもその積極的なシーラの行為に驚きつつ、しかし、更に自分の舌を絡めていく。ショウ自身もその行為に凄い快感を感じていた。
(…ああ…ショウ!…もっと、もっと!!)
シーラの舌とショウの舌が激しく絡み合う。シーラは、ショウの一部が自分の中に入っている事に激しい幸福感を感じる。
(いい…ショウ!私たち…今一つになっている…。)
ショウは深い口づけを満喫すると、今度はその唇を、シーラの頬、そして首筋に移していく。
「あっ、・・・ああ!」
シーラは体の中を軽い電気が流れたように感じ、思わず声が漏れる。
ショウはシーラの首筋を愛撫しながら、右手をシーラの胸に持っていき、その可憐な乳房を覆っていた胸当てをゆっくりとはずしていく。
「ああ・・・や・・・。」
シーラは自分の胸がショウの前にあらわにされたことに恥ずかしさを感じる。ラース・ワウでショウには全裸の姿は見られているものの、やはりあらためてこうされると、恥ずかしくてたまらなかった。ショウは首筋から胸へ、その唇を動かしていく。
「あっ・・・はあ!!」
ショウが乳房を揉み解しながら、その一番敏感な突起を咥える。するとそこから電流の様な刺激がシーラの体中を走り回る。しかしそれはシーラにとり、とても気持ちのいいものであった。
「あっ・・・いい・・・。」
お腹の辺りがだんだん熱くなってきている。シーラはショウが自分の胸を愛撫していることに恥ずかしさを感じつつ、そこから溢れてくる快美な感覚に流されつつあった。ショウの手はシーラの右胸を優しく揉み解しつつ、唇を左胸の敏感な部分に這わせていく。
ショウは心の底からシーラを愛おしく感じていた。この感覚は少しショウを驚かせていた。ついこの前まで、ショウにとりシーラは少し苦手な存在であった。いつも凛としていて、ショウに自身の甘さを感じさせてしまう存在だった。憧れはあった。でもそんなことを考えてしまう自分に恥じ入ってしまっていた。そんなシーラと今こうしているのが不思議にも感じた。
しかし、今こうして、自分の愛撫に恥じ入りながらも反応しているシーラは、ショウにとってとても新鮮で愛らしかった。
ショウは更に攻撃を強くしてみる。
「・・・あっ・・・ああ!」
シーラは敏感にそのショウの愛撫に反応する。
ショウはシーラの右胸を愛撫していた手をゆっくり彼女の下半身の方に動かしていく。
「え・・・あ!・・・うう!!」
ショウの手がシーラの大事な部分を下着の上から触れる。
「あ・・・ああ、そこは・・・!」
ショウの手が優しくそこを愛撫する。シーラの体の中を新たな快美な電流が流れる。身体が熱くなってくる。
「ああ・・・そこ・・・。」
シーラはそこをもっと触って欲しいと感じる。その感じ方に恥ずかしさを感じつつ、でも本能的にショウの愛撫に合わせて腰をかすかにだが振っていく。
(ああ・・・私、何を・・・。)
シーラは恥ずかしさのためショウの顔を見ていられなくなり、顔をそむけてしまう。ショウはそんなシーラの様子に愛おしさを感じつつ、手を下着の中に侵入させていく。
「あっ・・・はは!」
ショウの手がシーラの女性に直に触れる。そこは先ほどまでのショウの愛撫により熱く濡れそぼっていた。
「ああ・・・いや・・・・・・。」
シーラの体を激しく電流が流れる。しかしそれは、彼女にとりとても気持ちの良いものであった。
(ああ・・・ショウ!もっと、もっと・・・。)
シーラのそこはショウの指をするっと招き入れる。
ショウは自分の指が引き込まれることに感動をしていた。そして指からシーラの内部の暖かさを感じる。ショウは指から伝わるその気持ち良さに更に奥までいってみたい気がする。ショウは更に奥に彼の指を入れていく。
「ああ・・・!いい・・・!そこ・・・!」
シーラの奥が更に熱く疼いてくる。ショウの手をもっと奥に誘い込みたかった。
「ああ、ショウ・・・もっと・・・もっと・・・!」
シーラは何処かで理性が自分のことを破廉恥な女だと囁いていたが、ショウにはそんな姿を見られても構わないとも思っていた。
ショウの指がシーラの中をかき回す。クチュクチュと湿った音が激しくする。
「ああ・・・いい!!」
ショウはそんなシーラを可愛いと感じる。更に激しく彼女の中をかき回す。音が激しくなる。
「ああ・・・いや・・・!恥ずかしい!」
そう云われると、ショウも更に激しく彼女を苛めたくなってくる。指を激しく動かす。
「ああ、駄目!・・・もう、もう、我慢できません・・・。ショウ・・・ショウ・・・私・・・私・・・ショウが欲しい・・・。」
はしたないと思いつつ、シーラはその言葉を口にしてしまう。
「シーラ様・・・。いいのですか?」
ショウがシーラの耳元で優しく囁く。
「ショウ・・・“様”はやめてください・・・。“シーラ”と呼んでください・・・。」
シーラは熱に浮かされたような顔で、ショウに囁く。
「わかった。シーラ。行くぞ?」
ショウはシーラの下着をゆっくり脱がす。シーラの女性がショウの前に開かれる。そこは、熱く濡れそぼり、ショウを待っていた。
ショウ自身も、もう我慢が出来ないくらい、いきり立っていた。
ゆっくりと自分のものをシーラの女性の部分にあてる。
(ああ・・・ショウ・・・早く来て・・・。)
ショウはゆっくりとシーラの中に入って行く。
「あ・・・ああ!!いい!!ショウ!!」
シーラはショウがゆっくり中に入ってくるのを感じる。それは固く熱いものであった。
(ああ・・・これが、ショウの・・・!なんて凄い!!)
シーラはそこから広がる感覚に理由もなく歓喜を感じていた。
「あああ!はあああああああああああ!!」
ショウのものがシーラの中の奥深くまで入ってくる。
「ショウ!ショウ!」
シーラは叫びながらショウの背中に手を回し、彼を抱きしめる。
一方のショウも激しい快感を感じていた。
(これが、シーラの中・・・シーラの中か!!)
それは柔らかく暖かいものであった。ショウは我慢できず腰を動かし始める。
「あ!はあああ!いい!!」
その動きに合わせるかのように、シーラが歓喜の声をあげ始める。
「いい!ショウ!もっと!もっと!!」
シーラもショウの体をきつく抱きしめながら、ショウのペースに合わせ自ら腰を動かし始める。
「シーラ、いい!いいぞ!」
ショウの動きが早くなる。シーラの動きもそれに合わせるように早く小刻みになっていく。
「ああ、ショウ!ショウ!」
シーラは今ショウと一つになっていると感じる。それはシーラにとり、これ以上というものがない程の喜びであった。
「ショウ!来て!来て!・・・私もう、いってしまう!!」
歓喜の頂点が近づいていることをシーラは感じていた。
「わかった!シーラ、行くぞ!!」
ショウは腰の動きをさらに早くする。そしてシーラの一番奥のざらっとした感覚の部分を一気に攻めたてる。
「ああ!駄目!!ショウ、ショウ!!早く!あああああ!!!」
シーラが歓喜の声をあげると同時に、シーラのそこがキュウッと収縮する。
「うっ、出る!」
激しい締めつけに、ショウのそこは爆発する。
「あ!はああああああああああ!!」
熱い奔流がシーラの中に注ぎ込まれていく。
「あああ!いいいいいいいいい・・・・・・。」
シーラは激しい歓喜を感じつつ、意識を失っていった。
シーラ・ラパーナの意識は夢を見ていた。
その中でシーラは別の人格を持つ少女となっていた。
(・・・ここは?)
周囲を見回す。周りはガロウ・ランばかりであった。シーラの意識の宿った少女の記憶がシーラの中に流れてくる。
(そうだ・・・。私はガロウ・ランに捕らわれて来たのであった。)
目の前に大きな檻があり、その中に騎士らしき男一人と強獣が向かいあっている。
ガロウ・ラン達がその貧相な騎士にヤジを飛ばしている。
生贄、そうシーラは感じ取る。ガロウ・ランが“私”を助けに来た騎士を捉え、強獣と戦わせ余興として楽しもうとしていたのだった。
「・・・ジョク・・・!?」
その少女の表層意識が、その騎士を見、呟く。
「あれが地上人かよ?グッ!グクククク!!」
ガロウ・ランの親玉が笑っていた。
その少女、アリサは認識していた。あれは地上人“ジョク”だと。胸が締め付けられる想いがした。この時アリサは自分を助けに来てくれるジョクを内心待っていたことに気付いたからだ。
シーラは自分と同一存在になっているアリサの気持ちが痛いほど分かった。自分はこのジョクと云う地上人の青年に恋しているのだと。
シーラはアリサの目を持って、その青年ジョクを見る。
(・・・あ、あああ!)
シーラがアリサの深層意識の中で呟く。
(あれは、ショウ!)
ジョクと云う青年とショウ・ザマは決して似ていたわけではない。ただ、シーラにはあれがショウの生まれ変わりだということがわかった。
(ショウが、私を助けに来ている・・・。)
シーラは嬉しかった。
次の夢は、広い洞窟の中を走っていた。
シーラの意識の宿ったその少女が前を、そしてそれを追いかけるかのように一人の青年が走る。
広い空間に出る。そこには古びたオーラ・バトラーが一体あった。
(これは、“サーバイン”!!)
シーラの意識が考える。確か“ビルバイン”の試作機でナの国で作られた機体であった。
その“サーバイン”の前に人だかりが出来ている。
「あっ、姫!」
人だかりが振り返り“私”のことに気付く。
長老らしき男が“私”に向かって話しかける。
「姫!ここは一族のもの以外は立ち入ってならぬ場所です。何故シオンを。」
シーラは一緒にいた青年の名前が“シオン”だと気づく。
シーラの心が宿った少女、レムルの記憶がシーラに流れてくる。
(そうだ、このオーラ・バトラーが私たちバランバラン一族の秘宝だったのだ。そしてこれを狙う敵に“私”と“シオン”は捕まっていたのだった。)
「つまらぬ掟に捕らわれている時ではありません。今は一人でも味方が多い方がいいはずです。」
レムルが云う。
と、その瞬間、追手が現れる。敵の攻撃が始まる。
その最中、シオンがオーラ・バトラー“サーバイン”に向かって走る。
(・・・シオン・・・、いやっ、違う!あれはショウ!!)
少女レムルの深層意識の中のシーラが叫ぶ。
“サーバイン”が動き出す。
シーラは思う。
(ショウ・・・。貴方はここでも私を守ってくれるのか・・・。)
シーラはいくつも夢の世界を飛んだ。
それが前世の記憶なのか、約束された来世なのか、はたまたただの夢に過ぎないのか。シーラには分からなかった。ただ一つ分かったことがあった。それは、どのような世界に転生しようと、ショウはいつも自分の傍らにいたことである。
シーラは暖かいぬくもりの中で目が覚めた。
「・・・ん・・・・・・んう?」
シーラはそのぬくもりの持ち主の顔を見上げるかのように、顔をあげる。
そこには優しげな笑みを浮かべるショウがいた。
「・・・ショウ・・・。私は眠ってしまっていたのですか?」
シーラが問う。
「ああ・・・少しね。可愛い寝顔だった。」
シーラは顔が紅潮するのが分かった。寝顔を見られた恥ずかしさからだ。
ショウはそんなシーラの別の側面を垣間見たかのような気がし、可愛いいと思う。
「何か夢を沢山見た気がします・・・。」
シーラは恥ずかしさをごまかすためか、そう云ってみる。
「どんな・・・?」
ショウが聞く。
「わかりません。覚えてはいないのです。ただ・・・。」
「ただ?」
シーラは顔をあげショウを見る。ショウの優しい笑顔が嬉しかった。
「あなたはいつも私の側に居てくれたような気がしました。」
シーラは逞しいショウの胸の中に顔をうずめる。
「ショウ・・・。お願いをしてもう良いですか?」
シーラは少し甘えた声を出す。自分でもこんな声を出せるのか、と感じつつ。
「ああ。」
ショウの返事は優しい。
「何かお話をしてください・・・。」
シーラはショウに甘えたかった。そんな時間を、せめて今だけでいいから持ちたかった。
その想いはショウにも分かった。
「んん・・・そうさなあ・・・・・・。地上の話が良いか?」
「はい・・・。」
「美しい話?」
「はい・・・。」
「雪の話でもしようか・・・・・・。」
朝の柔らかいオーラ光がナの国の居城ウロポロスに注がれる。
「ドワ、準備はいいか!?」
ニーの声が、オーラ・シップ“ゼラーナ”のコクピットの中でこだまする。
「ああ準備OKだ。出航するぞ!」
ドワが叫ぶ。
“ゼラーナ”が離陸を始める。
「マーベル、準備はいいか?」
オーラ・バトラー“ビルバイン”の中からショウはマーベルに無線で呼びかける。
「いいわ!先に出るわね!」
小気味の良いマーベルの返事が無線から帰ってくる。マーベルのオーラ・バトラー“ダンバイン”が機械の館からゼラーナに向かって飛びあがるのが見える。
「ねえ、ショウ?昨日は何処に行っていたの?」
“ビルバイン”のコクピットの中で、チャムがショウに聞く。
「・・・え?何のことだ、チャム。」
ショウはしらっと応える。
「とぼけないでよ!昨日ショウの部屋に行ったのよ!呼んでも出て来なかったくせに。」
チャムが顔を膨らませながら言う。
「いや、今日に備え昨夜は早く床についたけどな。何かあったのか?」
「ううん、べ〜つに!なんか心配して損しちゃった感じ・・・。」
チャムが云う。
ショウはそんなチャムの心に愛しみを感じつつも、昨日のことに想いを馳せる。
(シーラ、シーラ・ラパーナ・・・か・・・・・・。)
ショウは城壁に立つシーラの姿を見つける。
(もう、ああして会うこともないな・・・。)
ショウはシーラの想いを受けつつ、決して実ることのない恋を心の奥に大事にとっておこうと考える。
「チャム、“ビルバイン”を出すぞ!」
「行けい!ショウ!!」
ショウは“ゼラーナ”に向け“ビルバイン”を発進させる。
シーラは“ゼラーナ”と2体のオーラ・バトラーを城壁にて見送っていた。横にミ・フェラリオのエルが控えているが、今日は珍しく黙っている。
(不思議だ・・・。)
シーラは思う。
(ショウの魂が私の身体の中に入ったみたいだ。)
シーラは受胎したわけではなかった。ただ、自分の身体の中に、ショウの魂の一部が入ったかのように感じていた。
(ショウは、死んだわけではないのに・・・何故そう感じる?)
シーラは目線を飛んでいく“ビルバイン”に合わせつつ考える。
(それは、ショウと繋がることにより、互いの心も共有したからなのか。・・・フフ・・・。きっと、そうなのですね、聖戦士ショウ・ザマ。)
シーラは自分の手で心臓の辺りに触れてみる。
(ショウの心はここにある。そして、それがここにある限り、私は常に聖戦士とともにあるのだ。)
“ゼラーナ”と2機のオーラ・バトラーはもう見えない。
(私は、もう迷わない!)
シーラは決意する。
(この先何が起ころうとも、私は常に聖戦士と一緒である。であれば、恐れるものは何もない!)
「シーラ様、謁見の時間です。皆、もう“グラン・ガラン”に集まっています。」
後ろから将校らしき男が声をかけてくる。
「わかりました。すぐ参ります。」
シーラは将校に返事をし、踵を返す。そしてオーラ・シップ“グラン・ガラン”に向かって歩き出す。
(そう、もう何も恐れるものはない。黒きオーラに踊らされることも!)
シーラは鎧姿で“グラン・ガラン”に入る。広い艦橋にはナの国の主だった騎士たちがシーラの登場を待っていた。
(さあ、行きましょう。ショウ・ザマ!)
「“グラン・ガラン”発進!」
シーラの曇りなき心を表すような凛とした声が“グラン・ガラン”内に響き渡る。
バイストン・ウェルの物語を覚えている者は幸せである。
心豊かであろうから・・・。
私たちはその記憶を記されてこの地上に生まれて来たにもかかわらず、思い出すことの出来ない性(さが)を持たされたから・・・。
それゆえに、ミ・フェラリオが伝える次の物語を伝えよう・・・。
完
◎ 登場人物紹介
○ アリサ・ルフト
富野由悠季監督の小説「オーラバトラー戦記」のヒロイン。
アの国王、ドレイク・ルフトの娘。但し、ルーザ・ルフトの娘ではなく先妻アリシア・ルフトの娘である。(ルーザはアリシアの死後ドレイクと結婚、後妻となる。)
聖戦士ジョクに好意を持っている。
○ ジョク(本名、城毅)
富野由悠季監督の小説「オーラバトラー戦記」の主人公。
日本人。ドレイク・ルフトの領土アの国に落ちた地上人。オーラバトラー“カットグラ”で戦い、聖戦士の称号をも持つ。
○ レムル・ジルフォード
OVA「Aura Batter Dunbine」のヒロイン。
聖戦士ダンバインの世界から700年後のバイストン・ウェルを舞台にした作品。
バランバラン族の姫。狩人のシオンに好意を持っている。
リムル・ルフトの転生した少女と設定ではなっているが、このSSではシーラ・ラパーナの転生と設定し直している。
○ シオン・ザバ
OVA「Aura Batter Dunbine」の主人公。
バランバラン族と親しい狩人。ショウ・ザマの転生。
◎ 用語説明
☆ オーラ・バトラー“サーバイン”
OVA「Aura Batter Dunbine」に登場する主人公メカ。バランバラン族の秘宝の正体。このSSではナの国が“ビルバイン”を設計する際の試作機として作ったオーラ・バトラーと設定を作り直している。
→戻る
→黒きオーラ力のトップへ
|