13(完結)

「安心してイッていいぜ? なにせ、あの動態カメラのデータは出まわるものじゃあないからな」
 その言葉を聞いた瞬間、エミリーの中で何かのスイッチが押されたように反応が変わる。データが出まわるのがよほど怖かったのだろう。それが男たちの卑劣な罠かもしれないと疑うことすらできず、エミリーは快楽の絶頂へと上り詰めていく。
「はあっあっああっあっ……だめっ──こんなコトっ──」
 女の身悶えはさらに激しく、力を得た男たちの手はさらにいやらしく、拘束された女体を這いまわる。あの『口』が乳房をなめしゃぶり、乳首をころがしていた。脇腹をつねられ、なで上げられていた。
「あ……ううん……ぬふっ」
 男がエミリーの顎に手をそえ、唇を重ねるが、もはやエミリーはそれを拒否できなかっら。小鼻がかわいらしくふくらみ、荒い呼吸をカバーしている。唇からの快感はまるで顔が溶けてしまうのではないかと思われた。
「むぐ……んんっ……」
 もはやエミリーは唇がふさがれたことすらも意識していない。新たな快楽が増えただけだった。経験の足りない彼女は舌をからめとられ、巧妙なテクニックに追いつめられるだけだ。男はついにエミリーを屈服させたという征服感を示すかのようにその唇を、歯茎を、舌をなめしゃぶり、しごきたてるのだ。
 この状態で舌をなめしゃぶられるのは、ひどい屈辱だったが、そう警告する理性はもはや主導権を失っている。まさに手強い女を屈服させつつある男達の陵辱からその身を守る術はなかった。
「んんっ……くっん──っ」
 身体のほうもすでにどうにもならないところまで追い込まれていた。巧みに抜き挿しされる張り型と拡張棒は、それぞれが身体の中心を貫かれているような圧倒的な感覚を快楽中枢に叩きこむ。彼女の脳は意志にかかわりなく、快楽器官にさらに快楽を貪るように信号を送ってしまうのだ。
「へへっ……刑事さん、いよいよだぜっ」
 ヒトの、女の生殖の、快楽の本能。それが理性を上回る瞬間が近付いていた。すでに拒否の意志は彼女の心の中にしか存在しない。縛められたままの腕も、男たちの手の中で揺れる乳房も、恥ずかしい姿勢に持ち上げられてしまった長い足も、そして女の身体の中心もが、彼女の理性、誇り、意志に関わりなく快楽を貪ることに専念しているのだ。
「あああっ、いやあっ……ああんっ……いや、いやああっ」
 開放された唇から漏れるのは、もはや弱々しい拒否のことばのみ。だが、それすらも甘い響きを隠せない。抵抗力を失った女の肉体の中心で最も神経の集中した快楽突起を擦られるた瞬間、ギリギリまでこらえていた快楽が爆発した。
「あああっ、ひあっん──んああああああああ──っ」
 ガクガクと震える女体の中心では牝肉がおどろくべき収縮を見せて人工の男根をしめ付けている。その断続的な激しい締め付けとともに大量の淫蜜があふれ、ライトの光の中にぬめりをおびながらもキラキラと光っていた。
「あおおおおっ、だめっ……もう、もうだめえっ」
 女が絶頂に達している瞬間すらも男たちは容赦なく快楽神経を刺激し続ける。アヌスをかきまわす拡張棒が指ではじかれて直腸の中まで貫く振動を与え、こわばる体の中で乳房の先端では乳首が吸われながら甘噛みされている。女の絶頂をより深く、より長くするための男たちの手管だった。
「ああっ……いやっ……こんな、こんな続けてっ……」
 さらに続けて女体を嬲り、快楽をあおっていく男たちの手。敏感になったまま弛緩を許されない快楽神経。全身の快楽器官はその限界までの刺激を、悪魔的な男たちの技巧を虜囚の精神に切れ目のない肉悦を送りつづける。
「へへへっ……ちょっとばかり、キツイかもしれないがな」
「刑事さんがどこまで耐えられるか、期待してるぜ」
 その男たちの声も、半ばは届いていない。真っ赤に充血した秘肉をうごめかせ、悦楽の中に身体を揺らすのも、もはや意識してのことではない。拡張棒が少しずつ太いものになっているのも、乳首を強くひねりつぶされているのも、苦痛なのか快楽なのかわからなくなっている。
「あああ……また……このままじゃ、わたしっ……んんっ」
 うわごとのようにつぶやく女刑事と唇を重ねた男は、つややかな髪を撫でながら、ねっとりと潤んだ瞳の女に問いかける。
「このままじゃ、どうなんだ?」
 すでに女の身体を制圧した自信を覗かせながらの男の問いかけ。女体はライトに照らされたまま、倉庫の中に白く浮かび上がっていた。白い肌に、黒いのは髪と、恥丘をかざる茂み。赤いのはその身体の中心の快楽の泉だ。鮮やかなコントラストを見せる女の身体が、全てをさらした恥ずかしい姿勢のまま悶える。
「ああっ……恥ずかしいっ……そんなっ」
 ペロリと耳を舐められた女の身体が硬直した。
「いってみろよ。……さあ」
 白濁した意識の中、男の声は抗いがたい強制力を持っていた。女の中でたまっていた悲鳴が、快楽への指向が溢れ出してきているのだ。
「このままじゃ、このままじゃ……イッちゃうっ、イッちゃうのおっ」
 男達が目を見合わせニヤリと笑う。すでに抵抗のかけらも見えなくなった女体の快楽のバルブが開かれる。乳首が、ヴァギナが、アヌスが。脇腹が、耳が。男たちの技巧を尽くした手管で刺激され、背筋を官能の柱が貫いていく。
「ああっ……だめっ、だめなのにっ……あああああ──あっ」
 今度の快感の沸騰は早かった。快感の温度が下がらないうちに、悦楽の炎がかきたてられるのだから、当然といえば当然だ。肉門から迸るように淫蜜を吐き出しながら、エミリーの身体がガクガクと震え、途切れながらも高いく長い嬌声がほとばしった。
 押し寄せる快楽の前に何度も踏みとどまろうとしながらも、女捜査官の意識は肉悦の奔流に呑み込まれ、そのうねりの中にに沈んでいくのだった。
 男たちの責めが一息ついた時には、エミリーの瞳は力を失っていた。続けざまの強制的な快楽の沸騰にその意識も意地も蒸発してしまったかのように、力なくうなだれた顔には緊張感がなくなっていた。
「へっ、へへへ……どうだ、刑事さんよお」
 髪をつかまれても、もう抵抗はない。鈍い、怜悧な女刑事のものとは思えないぼんやりとした表情がシャープな顔を覆っている。
「あう……いやあ……もう、もうやめて……」
 満足そうに男の一人が女体をまさぐると、囚人の顔を明らかな恐怖が彩った。敏感な小突起にかすかに触れると、いやいやをしながら、腰を揺らして逃げようとするが、足首と上半身を拘束された身ではそれも適わぬことだった。
「ひいいっ」
 男の指が微妙に動くだけで牝肉は激しく収縮し、蜜液を吐き出した。軽くイッてしまったのだ。放心したようによだれをたらし、涙を浮かべたままエミリーは身体を痙攣させていた。
 のそり、と圧倒的な重量感を感じさせながら、巨漢が立ちあがった。
「……ボ、ボス?」
 カーツはつまらなそうにエミリーを見下ろすと、男たちに下がれというしぐさをしてみせる。ゴキゴキと関節を鳴らすそのしぐさも圧倒的な存在感を示していた。
「それくらいにしておけや。その女は上玉だ。壊すわけにはいかねえ」
 カーツは自ら女の縛めを解き、大事そうに抱え込んだ。意識も朦朧としているらしいエミリーは何の動きも示さない。巨漢の腕の中では長身のエミリーもか弱い少女ほどの大きさにしか見えなかった。
 巨漢の手が濡れタオルを握り、動く気配のない女の身体を清めていく。その無骨な手には似合わぬほどの丁寧さだった。巨漢の手が清涼飲料水のボトルを開けてエミリーの口にあてがうと、女はコクコクと音をたてて飲み干していく。
「さて、エミリー。これからが本番なんだぜ」
 まるで子供のように水を飲んだエミリーの表情がかすかに動いた。巨漢は腰から小さな筒状のものを取り出しながら女刑事にかたりかける。かすかな音とともに、ガス式注射器が薬品を女刑事の体内に送り込む。女体がかすかにふるえたが、抵抗はもはやなかった。
「教えておいてやる。あの動態カメラはな、『彼』のものさ。お前の悶えくるう様子は組織の首領に直通だったってわけさ」
「……!」
 女捜査官の呼吸が一瞬止まったのを、巨漢は見逃さない。
「心配するな。お前は本当にいい女だ。大事に扱ってやる」
 巨漢の目の前で、エミリーの大きな目から涙が零れ落ちた。
 ──全て見られていたのか。あの、憎むべき男に──。
 ──両親の仇に。この身の全ての憎悪と憤怒の対象たるあの男に──!
 エミリーの瞳に悲痛な光が宿った。世界で最も弱みを見せたくない相手だった。彼女の最後の目標であるあの男に、あの恥ずかしい格好を、肉悦に意識をとばされてよがり狂っているさまを、全てを見られていたのだ。
「う……くっ……」
 巨漢の腕の中で、力を奪われ、誇りをうち砕かれた女の身体がうごめく。その動きは弱々しく、カーツの太い腕の中ではもはや小動物のようだ。
 ブルブルと、小刻みに女の身体が震えている。ぼんやりした表情に弱々しい、切なげな表情が浮かんだ。途切れることなく零れ落ちる涙。
「安心しろや。大事に、慎重に調教を進めてやる。壊したりなんかしねえ」
 男の声に身体の奥がヒクヒクと甘く収縮するのを、エミリーは底無しの無力感の中で感じていた。腿と秘部の間が暖かい液体で湿っていく。男の手がそこを拭うと、男を求めるかのように肉門がうごめいた。
 ──いやだっ。こんな、こんなあっ──。
 すでに肉体とその精神の間の乖離はあまりにも大きいものになっていた。心とは裏腹に喉からは甘い声がもれ、意志とはかかわりなしに男を求めている。
「ああ、ん……」
 楽しそうに、そして丁寧に女の身体を清めながら、憎むべき巨漢は屈服した肉体をまさぐり続ける。立ちあがろう、這いあがろうとする精神を奈落に引きずりこもうとする快楽をふり払いながらエミリーは目に力をこめる。
「そうだ、エミリー。おまえはこんなことで堕ちたりしねえ。明日になれば、また立ちあがってくるんだろうな。だが、そこがいい。それだからおまえは最高なんだ」
「か──勝手なことをっ」
 エミリーの瞳に力がこもった。誇りを、魂を傷つけられた手負いの獣の怒りに燃える瞳だった。だが、それさえも男たちにはもはや届かない。
「ふん──。立ちあがってくるその一度ごとに色地獄に落としてやる。何度でもな」
 歯をくいしばる女の胸に巨漢の無骨な手がふれた。ショートボブの有能な、クールな女の顔はもはや真っ赤にそまり、苦しげにゆがめられた眉も、可愛らしくあえぐ小鼻も、押し寄せる快楽に震えている。
 もはやその怒りも、力も悔し涙をたたえた目にしか感じられない。

「くくくっ。明日からは、その身体にさらに磨きをかけてやる」
 一際大粒の涙がこぼれた瞬間、牝肉が大きく収縮して、淫ら蜜をしぼり出した。その己の身体の感触すらもが甘いさざめきを伴っていた。
「あふうっ……んん……っ」
 己を裏切った肉体は、なおも満ち足りぬように女刑事の官能を揺さぶり続ける。戦い続けようとする精神に、守りを崩され孤立しながらも抗う心の城砦に快楽の信号がさらにしみ込んでいくのだった……。

            (終わり)


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