【ナイトメア】
人馬と西風の月13日 10:30 キルヒハイム城内



キルヒハイム城には、それを取り囲む城壁の4隅にそれぞれ立派な塔がしつらえてある。
北にはフェデリース塔。
先程の老臣たちの完全管理下で、彼らの許しなくては近づく事すら許されない。
東にはアステモン塔。
現在は用途がなく、ほとんど管理も行き届いていない寂れた場所だ。
南にはマルケール塔。
セイルとクラリネが住む。いわば、ゲルニスがセイルのために用意した飼育かごだ。
そして、西にはカスプール塔。
時々、魔術師たちが数人出入りするだけのここは魔導実験などを行うための施設で、常に異様な妖気に包まれている。

実のところ、カスプール塔内部は魔法物品の倉庫として存在しており、実験施設そのものは地下にある。
澄んだ空気をも蝕む妖気の温床となっているそこは、日の光が一切届かぬおぞましい場所だ。
あちこちに魔導器具が設置されており、その幾つかが『ブゥゥン・・』と鈍い音を上げている。
蒼い魔石で仕立てられた壁・床・天井には、怪しげな溶液や魔力そのものを運ぶプラグがびっしりと張り巡らされ、またところどころ入ったヒビの奥からは虚ろげな光が浮かび上がる。
部屋中に漂う嗅覚を失うほど強烈な匂いは香草のもの、実験台となる生き物の体液などの匂いを消すためだ。
そんな部屋の中央に、10名ほどの娘たちが蠢いていた。
娘たちは皆一様に同じ服装をしている。
全身黒尽くめ。
頭にはとんがり帽子。
ショートローブにマント。
ミニスカートのようになっているローブの裾の下、アミタイツに包まれた足と、その先にはとんがり靴。
彼女らの外見印象を一言で表すなら、『魔女』だ。 

「では、『サンプル』たちに意識を戻して」
「はい、ラピュワー様」
魔女たちの中、1人だけ異様な雰囲気を持つ娘がいた。
年の頃は他の面々より2、3歳上の18歳前後。
かけ眼鏡も手伝い、ほとんど表情のない白面に妖しく浮かぶ紅の瞳。
1本1本計ったのではないかと思うくらい、綺麗に切り揃えられているのは、艶やかな黒のボブカット。
やや細すぎる四肢は、人形のような不気味な美しさを醸し出している。
その彼女こそ、キルヒハイム1の将軍と名高いバソリー・ランカスタの妹にして、将来を有望視される若きエリート魔術師、ラピュワー・ランカスタその人であった。

――パチッ!
助手の1人が魔道装置のスイッチを入れると、先にある石壁の数箇所で小さなスパークが起こる。
そして、スパークと同時に壁の一部がブルンと跳ねる。
いや、よく見ればそれは壁ではなく、壁に貼り付けられた20名ほどの男たちだ。
とはいえ、全裸にはがされ、体毛を全て剃られ、肉体のあらゆるところにチューブが埋め込まれ、怪しげなガスを噴出すマスクをつけられている。
また、脳天からは頭蓋に穴を開けられて、そこに大きなチューブが直結し、室内別区画にドサリと横たわる別の生き物・・・不気味な『巨馬』たちの後頭部へとそれぞれ続いている。
もはや、今の彼らは人間ではなく実験動物に他ならない。
革命の日までは、正規兵としてキルヒハイムに仕えていた彼らだが、今や見るも無残な姿となっていた。

「ちょっと・・この003と015、パルスが戻ってないわよ?再度、覚醒させて」
「・・ダメです。生命パルス戻りません」
「ふむ・・・で、まだ使えるのは何体残っているの?」
「002・007・011・017・020・・・以上の5体です」
「随分減ったわね・・。これ以上は絶対減らさないように。私たちには、もう時間がないのよ」
「は・・はい」
そこで行われているのは人体実験。
いや、あえて『人体』実験と強調するまでもないほど、それが当然のごとく実験台に成り下がっている。
実験台となった兵士たちは、肉体全ての組織を魔女たちに完全に操作され、指1本自由にはならない。
意識が必要な時だけ意識を与えられ、終われば強制的に奪われる。
チューブからは次の実験に適したコンディションを作る必要最低限の薬剤や養分が供給され、排泄物は直腸に直結したチューブから自動的に吸引される。
そして、そんな彼らに哀れみの情を持つような者もいない。
こここそ、まさにこの世の魔界であった。

「ヴヴヴヴ・・・」
1人の兵士がマスクの下で低い唸り声を出す。
声に気づき、自分に視線を集める魔女たちを睨みつける。
今の彼にできる、最大限の抵抗がこれだった。
彼の名はレイ・バルフォース、元は若手のエリート騎士であった。
剣の腕は立つが少々我が強くやんちゃで、『R.I.D』のシャルキアとは毎日のように仲睦まじいケンカを繰り返していた、金髪の美青年だ。
「この011、いいコンディションね」
「ヴヴゥゥ・・・!!」
だが、捕虜となり投獄されていた時は、愛しいシャルキアの無事を祈るだけの毎日を送っていた彼も、今や魔女たちへの憎悪だけの存在となっていた。
この魔女たちを1人1人順に罵り、犯し、地獄の苦痛の中じわじわと嬲り殺せたなら、どんなに素晴らしいか。
そんな妄想だけが、彼の意識を発狂寸前で食い止める防波堤となっていた。

「さて、こちらの準備は整ったわ。では、これからサンプルにファソニールを投与。その後、脳内に性的興奮を誘発させるパルスを送り、獣欲が昂りきった瞬間を見計らいそれを搾取、パイプを通しナイトメアへと・・・」
――バン!
ラピュワーの指示の元、淡々と実験が行われていた室内に、突如大きな音が響き渡る。
それは、重い扉が勢いよく開け放たれる音だ。

「・・・お兄様?」
そこに立つのはバソリーと直轄の護衛兵2名であった。
ラピュワーは突然の兄の来訪に不思議な顔をする。
「どうなさったの?そんなに怖い顔をして?」
バソリーは一切の問いかけにも答えないまま、ツカツカと部屋の中央に向かう。
『困ります』と止めに入る助手の魔女たちを丸太のような腕の一振りで振り払い、妹の元へと歩み寄ってゆく。
「大体、お兄様?実験中はここには来ないようにと何度も・・」
「うるせぇッ!俺はその様子を見に来てやったんだよ!!」
「きゃっ」
ラピュワーの淡々とした対応は、兄の怒りに油を注ぐ結果となる。
腕力に任せて突き飛ばされ、実験用の寝台上に尻餅をつくラピュワーと、すぐ横で、それを見下ろしながらベルトの留め金を外すバソリー。
その構図が何に向かっているものなのか、うっすらと察し始めた魔女たちに動揺が走る。
「ちょっと・・何をなさるの、お兄様?査察にいらしたのではないのですか?」
「お前を犯りながら見るんだよ!お前は構わずに実験を続けろ!」
「お、お兄様、何もこんな時に・・・」
相変わらず無表情のまま、何とか酷い癇癪を起こす兄を止めようとするラピュワーだったが、すぐに『抵抗しても無駄』との答えを導き出す。
非力な人形のような妹に暴力を振るう事で、兄は苛立ちを発散する。
それはこの兄妹の間では、幼い頃から稀に起こっていた事だった。

「バソリー様、どうか今はお怒りをお納め下さい。私たちにはもう1つのミスも許されないのですっ」
「ラピュワー様がいなくては、プロジェクトが進められないのです。どうか・・」
「俺も今犯りてぇんだよ!下級の魔女どもが俺に指図するんじゃねぇ!」
その構図は、例えるならば獅子を取り囲む仔猫たち。
すっかり逆上して壇上から怒鳴り散らすバソリー相手に、魔女たちも必死だった。
「で、ではバソリー様、あのっ・・わ、私が代わりにお相手致しますからっ」
「ラピュワー様だけは困るのです。どうか、クランセ・・いえ、その者で勘弁して下さいっ」
「けっ、淫乱な牝猫共が・・・・よぉし、そんなに犯されてぇっていうんなら、望み通りにしてやるよ!」
仕方なく、苦肉の策で当たる魔女たち。
それは、一見成功したかのように見えた・・が。
「おい、お前ら、こいつらが滅茶苦茶に犯されたいっていってるぜ?」
先程から、扉の前で黒に身を包む若い魔女たちを、じっとりと視線で嘗め回していた2人の兵士たち。
バソリーは彼らに声をかけていた。
「え・・・?あ、ちっ・・ちが・・・・いやぁっ!」
次の瞬間、布のちぎれる音が響き渡る。
宙に舞い飛ぶマントの切れ端は、まるで黒い花びらのよう。
その中で、白いめしべが浅黒いおしべに汚されてゆく。

「いっいやっっ!ラピュワー様・・ラピュワー様ぁぁっ!!」
バソリーの暴虐に異を唱える度に、次々と悪化してゆく状況。
「はぁはぁ・・そんなに悦ぶなよ。これからもっとよくしてやるからよォ・・」
そもがけばもがくほど複雑に絡みつく蜘蛛の糸。
今の状態がまさにそれであった。
だが、ラピュワーは今の状況に対し、ある1つの光明を見出していた。
(そうね・・むしろ、こちらの方が実験には好都合かもしれない・・)
横目で見上げた『サンプル』たちは、皆、今までとは違う目つきでこちらを見下ろしている。
彼らのコンディションが実験にふさわしい状態に近づきつつある事が、ラピュワーの目には明白だった。

「・・仕方ないわ。指示はこのまま出すから、クランセとリザ以外は持ち場に戻りなさい」
兄の巨体にのしかかられた状態から、ほとんど取り乱す事もなく出されるラピュワーの指示。
やや動揺はしつつも、周りの魔女たちはそれに従い、持ち場に戻ってゆく。
「・・・・」
「そんな・・・ラピュワー様、私たちは・・・?」
これで寝台周りにはランカスタ兄妹と兵士2人、魔女2人、ペッティング状態で絡み合う3組のカップルだけが取り残される。
指示が下らなかった2人の魔女。
1人は、外界に出れば『標準』の範囲に収まるが、魔女たちの中では『ふっくら・おっとり』という印象が目立つ、ボリュームのある淡いグリーンの二股お下げ髪。
一言で表すなら『柔らかな肉』といった印象の魔女クランセ。
1人は、外に跳ねる先のとんがった白のショートカット、吊り上がった瞳には無邪気で悪戯な残酷さ。
一言で表すなら『生意気な小娘』といった印象の魔女リザ。
クランセは覚悟したように視線を伏せ、リザは救いを求める言葉を口にする。
「ラピュワー様!」
「リザ、これは貴方の判断ミスでしょう?あきらめなさい」
「いやですっ!助けて!どうかお願いします!・・・・私、危険日なんですッッ!!」
魔女・リザは必死に懇願するが、ラピュワーはもうそれ以上の言葉を返さない。
横で同じように慰み者となっているクランセも、哀れみの一瞥をくれるだけだ。
「へぇ〜、アンタ今日、危険日なんだ?」
「そうなんですっ!ですから・・後生ですからっ、どうか今日だけは・・!」
「じゃあよォ・・・・ヒヒヒッ・・・産まれてくる赤ん坊の名前でも考えながら、ヨガってくれや♪」
「ひっ・・・やっ・・・いやぁっ!!」
悲痛なリザの叫びも、すぐに空しく虚空を揺らすの音となっていく。
部屋中央の寝台は、普段、邪神への供物を捧げる祭壇として使われる事も多いが、今はまさに3人の魔女自体が生贄に他ならない状態となっていた。

「へっ、少しは面白くなってきたじゃねぇか・・・・ん?」
ふと、バソリーは寝台の側面に繋いである、幾つかの黒い石の腕輪を見つける。
(たしか、これは・・・)
それは、彼には見覚えのあるものだった。
以前、別の実験の査察に来た時に使われていた魔道器具だ。
その時は、エルフの娘に魔物の仔を孕ませるという内容で、この腕輪がエルフと魔物の左手首にはめられていた事を思い出す。
「おい」
バソリーは早速腕輪を1つ手に取ると、遠巻きに囲む魔女の1人に声をかける。
「これは、別に害のあるものじゃなかったよな?」
「あ、はい。それは・・ただの『計測器』ですから、害は・・・ないです、けど・・」
「・・だよな」
――カチャリ・・・・・キュィィィィン――
答えが返ってくると同時に、バソリーは自らの左手首にそれをはめる。
途端に腕輪はその魔力を開放。
一瞬、バソリーを縦に両断するように肉体の中心線を細く眩い緑光が走り、消えた。
その後一度、手をグーパーしてみて何の異常もない事を確認すると、同じ腕輪を寝台の側面から5つ外し、2つずつを兵士たちに、1つをラピュワーに投げてよこす。
「よし、お前らもつけるんだ」
まず、効果の知れない魔道器具に多少気味悪がりながらも、兵士たちがその指示に従う。
続いて、溜息をつきつつラピュワー。
クランセは頬を赤らめつつ多少躊躇していたが、兵士から腕輪を受け取り、自ら装着。
涙ながらに拒絶の意思を示すリザも、結局、兵士による力づくの腕輪取り付けには抗えなかった。
――キュィィィィィィン
――キュィィィィィィン
――キュィィィィィィン
――キュィィィィィィン
――キュィィィィィィン
5つの腕輪が次々と起動する。

「バ、バソリー様・・この腕輪は一体何なんです?」
クランセと一緒にいる方の兵士であるダーラがそう切り出す。
もう1人の兵士・マスキーノも、視線だけでその声を追う。
さすがに若く威勢のいい兵士2人も、不安を隠しきれない様子だった。
「ククク・・」
そんな部下たちを、壇上のバソリーはニタリ顔で見返す。
ラピュワーの後ろで膝立ちになると、顎をしゃくるようにして彼女に合図を送る。
それを受け、ラピュワーはすっとアミタイツを幾らかずり下ろすと四つん這いになり、真っ白な尻を突き上げ、間近まで迫るものを待った。
「おいお前ら。たしか、向こうの壁がスクリーンになってたはずだ。よく見てろ・・」

――グチュゥゥゥゥゥゥ・・・
室内に響く音。
それは、硬く反り返る硬い肉が潤いのある柔らかな肉を絞り上げる音。
今のバソリーに容赦などという言葉はなかった。
まるで当然かの如く、血の禁断を踏み越える。
相手が犯したい牝であれば、それが血縁者であろうと何であろうと気にしないのが彼だ。
そしてまた、2人の左手首にはまった腕輪も同様であった。
装着者である牡と牝の融合にのみ反応し、力を発動する。
ちょうど、レイたちの成れの果てが張り付けられている反対側の壁に、何かの映像が浮かび上がっていく――

――フィィィィィィィ・・ン

「おおおおお・・っ♪」
「ブラボォッ!こりゃ、すげぇ・・」
瞬間、ダーラとマスキーノは思わず歓声を上げていた。
壁に映ったのは、魔力が光と闇を駆使して細部まで描き出す動的映像。
それはまさに、ランカスタ兄妹の接合部の内部断面図だったのだ。
そして、リアルタイムでどんな微弱な動きも逃さずに映し出される映像の下には、常に変化し続ける幾つかの数字と、右から左へと小さな波動を流す青いラインと赤いラインが描かれている。
ダーラもマスキーノも、映像部以外のデータの指し示す意味はほとんどわからない。
ただ1つだけわかるとすれば、それがセックスのデータであるという事だけ。
だが、彼らにはそれだけでも十分だった。
狂おしいほどに性欲、いや交尾欲が掻き立てられる。
「へへ・・・」
「グヘヘヘ・・・」
縮こまる魔女たちに、ケダモノに堕ちた兵士たちが向き直る。
「・・・・・・」
「・・・いやぁ」
交尾を求める視線が、魔女たちをがんじがらめにする。
交尾を求める腕が、魔女たちを交尾を受け入れる牝の体勢に拘束する。
そして、最後に交尾を求める牡自身が、魔女たちの牝に襲い掛かって行く――

「ウオオオオオオオッッ!」
「行くぞ、オラオラッ・・!」
――パンッ・パンッ・パンッ・パンッ・パンッ・パンッ・パンッ!
「・・・くは・・・んあぅ・あぅ・あぅぅ・っ!」
「ん!あんッ!・・いや・いやですッ・・・やんっ・・やっ・やぁぁ・・・!」
そこで2つ立て続けに開始されたもの。
それは高知能に汚された生殖行為。
――フィィィィィィ・・ン
――フィィィィィィィ・・ン
壁全体を陣取るスクリーンが4分割され、そのうち3つが映像を映し出す。
激しく交わり合う牡と牝の克明な記録。
動画・グラフ・数値データ・・高度な魔法文明の結晶たる機器が、自然の行為たる牡と牝の生殖行為に、次々と不必要な解析を入れてゆく。
「・・・・・・」
「・・・・・・」
普段は実験台に使う道具だが、それが仲間たちに使われているとなると、さすがに心境も違うのだろう。
周りで作業に当たっている他の魔女たちも、皆一様に頬を赤らめ、視線を泳がせている。

「ハハハ・・どうだ、お前ら。最先端の魔法技術ってのもなかなかイカすだろう?」
「さ・・最高ッスヨ」
「こんなすごい物を作っちまうなんて、魔女サマサマすねェ♪」
男たちは笑い合いながら、各々力に任せて腰を振る。
魔界の女たちの穴を貪り、そこから糸を引いてこぼれ出す淫猥な魔液を味わい尽くす。
「目を凝らしてよぉく見るんだクランセ・・オレたちの愛の記録だぜェ」
「う・・うんっ・・・・うぅむ・・っ」
「聞いてんのか・・オラッ!返事は!?」
「あはっン!!・・・は・・・・はぃぃ・・・・」
――パンッ・パンッ・パンッ・パンッ・パンッ・パンッ・パンッ!
「なぁ、リザだっけか?さっきからアンタ、子供の名前、ちゃんと考えてんのか?」
「・・・うぅっ・・(ふるふるっ)」
「オィオィ・・産まれちまったあとでおざなりな名前つけたら、子供が可愛そうだろが」
「いやぁぁぁ・・・う・産みたくない・・・孕みたく・・ないです・・ッッ」
「ハッハッハ・・・男心をわかってねぇなぁ〜♪ヒヒッ・・嫌がる女を孕ませるから楽しいんじゃねェかよォ〜♪」
「やだぁ・・たす・・け・・誰か・・・助けて・・・・ぇ」
若い2人の魔女たちは、限りない恥辱の沼へと引きずり込まれ、喘ぎ鳴く。
破られたマントと裾の短いローブ。
交尾に必要な部分だけ引きちぎられたアミタイツと、ほとんど乱れもなく普段通り被られたとんがり帽子のギャップ。
突くほどに蠢き舞う『黒』が魔女たちの白肌を一層際立たせ、それがまた更なる獣欲を誘う。
だが、愉悦と恥辱にまみれたこの室内で、1人だけその空気にのまれていない者がいた。

「・・プラグ004〜008を停止。A−03に微電流を入れて頂戴」
あきらかに場に合わない、淡々とした声。
その声は、今、まさに兄からの激しい陵辱を受け入れているラピュワーだった。
「クッ・・・オラオラァァッ!」
――パンッ・パンッ・パンッ・パンッ・パンッ・パンッ・パンッ!
「・・ファソニールの代わりに、エクセタリン−βを30g投与・・ただし、011だけは15gでいいわ・・・・・ちょっと、皆、聞こえないの?」
「・・あっ、は、はいっ」
「エクセタリン−β、投与しますっ」
魔女たちは皆、ラピュワーの性格はよく知っていたが、これはさすがに異様な光景であった。
バソリーの巨体に蹂躙されながら、声のトーンも乱さず、冷静な思考も失わず、まるで何もしていないかの如く指示を飛ばしているのだ。
「・・おい、それは俺への挑戦状か?・・え!?そうなのか、ラピュワー!?」
部下の前で、年下の女1人満足に鳴かせられない。
それは、バソリーにとって恥辱以外のなにものでもなかった。
「別にどうとって頂いても結構ですわ。お兄様が先程おっしゃった通り、私は私でこのプロジェクトを進めねばなりませんから・・」
「ほ、ほおぅ・・・・・・面白ぇじゃねぇか・・ッ!!」
今までは自分に従順で、どんな事にも従った人形のような妹に突如噛み付かれ、せっかく発散されてきたバソリーの苛立ちは再び燃え上がってゆく。
「意識なくなるまで犯したらぁ・・!・・ウラウラウラァァァァツ!!」
「ん・・・ナイトメアA〜Eを擬似覚醒、精神パルスは+−12以内で確保」
「は、はい」
ラピュワーはもちろん自分の行動・言動が兄の機嫌を酷く損ねている事などわかっている。
そして、兄はこういうやり方の方が燃える事もよくわかっている。
むしろ、それこそが狙いだった。
このセックスは、自分やクランセ・リザたちが虐待されるようなシチュエーションのものでないと都合が悪い。
今は、サンプルたちの泥つくような欲望のエネルギーが必要。
それが合成魔獣ナイトメア誕生に不可欠なものとなるからだ。
当初は幻覚剤を使用して、サンプルたちに淫らな夢を見させる事でそのエネルギーを得ようとしていたのだが、そこに兄の登場というアクシデント。
だが、ラピュワーは即座にそれを逆手にとる。
サンプルにとっては焼け付くような憎悪の対象である自分たち。
それが凶暴な男たちに欲望のままに嬲られ、慰み者にされるという悲劇。
それこそ、サンプルの欲望に訴えかけるには最適の絵ではないか。
だから、あえてそこに飛び込むような作戦に出たのだ。
ラピュワーは常に冷静であった。

――パンッ・パンッ・パンッ・パンッ・パンッ・パンッ・パンッ!!
「オアアアァァ・・ッ!!おら!!おら鳴けッ!鳴けっつってんだよ、ラピュワァッッ!!」
既にバソリーの苛立ちは頂点に達し、その腰の動きは相手を殺そうとせんばかりの激しさ。
スクリーン上、3つの画面の中でも、映像・グラフ・数値ともにもっとも変化が激しい。
「・・・なに・やってるの・・ナイトメアDのッ・パルス・が乱れッ・・すぎてるわ・・」
だが、それに耐えるラピュワーも、また特異な体質の持ち主であった。
精神と肉体が、ほぼ切り離されているのだ。
彼女は痛覚や快楽などといった触覚により、思考力を殺がれる事がない。
だが、それは不感症というわけではなく、感覚自体はちゃんと存在する。
それが、思考力とは別区画に存在しているというだけなのだ。
その証拠に、相変わらず無表情なままの白面にも今は汗が滴り、頬は紅に染まっている。
疲労もみるみる溜まり始め、吐息も乱れて飛び飛びになってきている。
どうあれ、肉体が限界に向かっていることだけは確かだった。

「やっ・あんっ・・あんっ・は・・ぁぁ・・」
寝台の左側スクリーンのすぐ前辺りでは、M字開脚のポーズのままでダーラに抱え上げられ、ジワリジワリとまとわり突くような腰使いで突き上げられているクランセがいた。
体を収縮させ、愛らしい顔を恥じらいの色で染め上げ、ギュッと閉じた瞳には涙が滲んでいる。

「ハッ・ハァッ・ハッ・ハァッ・・・♪」
クランセを柔らかい肉を揉み回し、舐め上げ、吸い付き、彼女の全身隅々まで丹念に汚しながら、ダーラはスクリーンを食い入るように眺めていた。
魔法に対して全く知識のないダーラは、初めて都に来た田舎者さながらの好奇の眼差しを輝かせる。
最先端の魔法技術の作り出す映像は、すっかりダーラを虜にしていた。
「こりゃぁ・・たまらねェ玩具だ♪」
魔力によりスキャン・映像化された、擦れ合う2つの性器。
ゆっくり動けば、映像内の男性器も女性器をゆっくりと嬲るように押し広げる。
「ふ・・・はぁぁぁ・・」
時折激しい突きを繰り出せば、映像内の男性器もそれに従い、そのショックで女性器がピクピクッと蠕動する様まで映し出す。
「・・あンっ!」
自分とクランセの最深部におけるセックス映像。
自分の動きでコントロールできるこの映像は、他人のセックスを見るのともまた全然違う興奮を呼び起こすのだ。
となれば、映像の下のデータ部にも更なる興味が沸くのは必然の理であった。
ダーラは腰の動きを弱め、クランセの顔を肩口から覗きこむ。
「なぁ、クランセ。このひょろ長い尺取虫が這ってるようなのは何なんだ?」
「はっ・・・それは・生命パルス・・・正確には若干違うのですが、鼓動のデータ・・・青が男性、赤が女性です・・」
「最初に比べると、随分揺れが大きくなってきてるが・・じゃあこれは、要するにズッコンバッコン犯られてるうちに、魔女っ娘クランセちゃんも胸がドキドキしてきちゃった・・って事かァ?」
「そ・・そういぅ・・事・・です・・・っ」
その瞬間に乱れた赤い波に、ダーラは湧き上がるような歓喜を覚え、身震いする。
粘液質の吐息を吐く大きな口でニタァッと笑みを作ると、犬歯から犬歯へと唾液が糸を引いてちぎれた。
「ヘヘヘ・・・お前、本当に虐め甲斐満点だな。さて、次はこっちの数字の方も説明してもらうぜ?」
「・・・・・・っ」
「おい!返事はどうしたッ!?」
「ひゃっ・・は・はいぃ・・」
ダーラとクランセ。
それは、痛々しいほど鮮明な強者と弱者の構図となっていた。
「一番右の70前後を行ったり来たりしているの、これは何を表す数字なんだ?」
「・・そ、それは・・・・・っ」
「んああ!?全然聞こえねェぞ、コルァ!!」
「それは・・・それは・・・・・っ・・私の・・膣・・圧・・・ですっ」
とうとう感極まったクランセはぼろぼろと涙を流し始めるが、相手が弱くなれば弱くなるほど燃え上がるのがダーラという男だ。
「ふぅむふむ・・なぁる、これはオマ○コの締りの良さってわけかァ・・・・・んじゃ、この70前後ってのは、平均的にみてどうなのかっなァァ・・?」
自分とクランセ・・マスキーノとリザ・・バソリーとラピュワー・・。
野獣の視線が3つのスクリーンを右下端を辿って行く。
――71――――――103―――――――99。
「・・オイ」
「・・・うぅ・・っ」
「オイ・・お前、すげぇガバマンじゃねェかッ!」
「・・・・うぅぅ・・・・っっ」
「オラ!何とか言えや、ガバマン!膣圧71のガバマン魔女クランセちゃんよォォッ!!」
「・・い、いやぁぁ・・・ひぐっ・・・・お・お願い・・言わ・・ないでぇぇ・・・・っ」

そこからちょうど反対側。
――パンッ・パンッ・パンッ・パンッ・パンッ・パンッ・パンッ!
石製の椅子に腰掛け、怪しいツマミとスイッチだらけの魔道機器に向き合う魔女たちのすぐ後ろで、スクリーン前の2人のやり取りを見、歪んだ愉悦を噛み締めながらリザと繋がるマスキーノの姿があった。
「ほぉれっ・・・おうるぁッ・おうるぁッ・おうるぁッッ♪」
「いや・いやっ・・やだぁっ・・・たす・け・・ベネットぉっ・・助け・て・・・とも・・友達でしょぉぉ・・・っ!」
「・・・・・・ッ」
椅子の背もたれに手をつかされ、バックから激しい陵辱を受けているリザ。
その前に座り、機器の操作に当たっている長髪の魔女は名をベネットといい、リザの親友であった。
普段、特に仲のいい同僚が、望まぬ行為の中で強引に牝にされ、泣き叫ぶ声。
すぐ耳元でそれを聞かされ、ベネットも動揺の隠せない顔つきで震えた手を動かしている。
期せずして出来上がったこの構図は、まるでマスキーノがリザとベネット2人を同時に犯しているかのようだった。

「へぇ、2人は仲いいんだ?あれか?女同士の友情ってやつ?」
――パンッ・パンッ・パンッ・パンッ・パンッ・パンッ・パンッ!
「おぅおぅ、ベネットちゃんよぉ。さっきの聞いてたか?アンタの親友のオマ○コすげェんだぞォ〜。なんでも、この3組の中でNo,1の締りの良さらしい♪ブラボォッ♪すばらしぃぃッッ♪ハァハハハハ・・!!」
すっかり上機嫌のマスキーノは、グラリと上半身を倒し、わざわざベネットによく聞こえるように嫌らしい笑いを繰り返す。
その下では、リザの尻を掴んでいた両手が大蜘蛛のように腰元を駆け上がり、ローブの上の膨らみにたかり始めていた。
「おぉぅ、リザぁ・・すぅ〜ぐに、ここからミルクが出るようにしてやるからなァ♪」
「あんっ・は・はんっ・はんっ・・・そ・そんなの・いやぁ・・・・・許・し・・て・・お願い・・・・です・からぁ・・っ」
「なァに言ってやがるリザぁ、仲良しのベネットちゃんの前じゃねぇか。アンアン声出して、可愛いおっぱい揺らしてよぉ・・張ぁ〜り切って・イこうぜぃっっ♪」
「あぁぁ・・・」

実際はもうほとんどすべき作業はないにもかかわらず、先程からベネットの震える白い指先が、動揺からか器具の上をふらふらと行ったり来たりしている。
だが、それは動揺は動揺でも、他の魔女たちのそれとは違う穏やかでない動揺。
怒りから来る振るえだった。
(・・・リザ)
リザとは魔法学院時代からのつきあいだったベネット。
2人とも特に突出した才能などはなかったが、少々モラル意識に疎いところがあり、問題人物として院生たちから疎外されていた者同士の仲間意識からか、気が合い、すぐに無二の親友となった相手だ。
先程から我関せずを通してはいるが、その実、リザを襲う恐怖と苦痛も手に取るようにわかっていた。
――パチュンッ・パチュンッ・パチュンッ・パチュンッ!
「リザ、お前とはマジ体の相性最高だ。なぁ、俺の女になれよ。つか、結婚しちまおうぜ?毎晩ベッドで可愛がってやるからよォ♪」
「やっ・・いやよ・・・・いやぁ・・っ」
「嫌っつーてるわりに、なんだよこの大洪水は・・ヨ!俺にズボズボチ○ポぶち込まれて感じてる証拠じゃねぇかッ!」
「・・ち・・ちがッ・・」
――グチュンッ!!
「うンっ!!」
「オィオィ、リザ・・・どうせ、これからガキこさえるんだ。俺は男らしく責任とってやるっていってるんだぜ?」
「だっ・・ダメなのぉっ・・・ダメ・・やだっ・・・・絶対いやぁっ!!」
「いっつまでも、ウダウダうるせェんだよ!女が男に逆らうんじゃねェッッ!!」
「うぅぅ・・・うぅ・・・ベネッ・・トぉ・・・・」

(はぁ・・・・・はぁ・・・・・・っ)
親友への陵辱行為は更に熱を増していく。
次第に小さく息を荒げてゆくベネットの中、冷たい何かが彼女を誘う。
鼓膜より深いところで、何かが囁く。
(そうよ・・・いつもポケットの中に持ち歩いている『いいもの』があるじゃない・・・)
するりとポケットに忍び込ませた指先が、冷たい何かを掴む。
(『これ』でちょっとでも傷をつければ・・あの男はじわりじわりと心肺機能を失ってゆく・・・襲い繰る窒息に苦しみ悶え、のた打ち回る・・・・そうしたら、私はリザと2人で更にめった刺しにするわ・・・・・うふふ・・あの男の血にまみれた笑い顔が目に浮かぶよう・・・)
それは鞘におさまった特別なナイフだ。
刃にここで作り出された特別な蛇の猛毒が塗ってある――

(――死ね)
刹那。
ベネットは暗殺者さながらのすばやい動きで、振り向きざまに殺意の切っ先を走らせる。
笑いながら親友を痛めつける憎い男の首元を狙って。
――だが。

「ベネット」
「・・・うっ」
しかし実際は、ベネットはナイフを振り下ろす事ができなかった。
たった一言の呪文。
恐ろしく冷たい声が、ベネットの動きを封じていたのだ。
恐る恐る振り向いたベネットの先に、心を持たない死神のような眼差しが見えた。
陵辱の暴風雨の中でめちゃめちゃに翻弄されながらも、その視線だけはまったくそれを意に介さないようにベネットを凝視している。
彼女は・・いや、この場にいる全ての魔女たちは、この視線の持ち主の恐ろしさをよく知っていた。
たとえ同士であっても、彼女に逆らえば、いともあっさりと処分される。
死を切望したくなるほど悲惨な目にあわされるのだ。

「おぅおぅ、なんだよベネット?それで俺とやりあうんじゃなかったのかァ?」
「・・・・・・」
「どうしたよ?その可愛いナイフで俺を倒してみろや。親友、助けたいんじゃねぇのか?やらねぇんなら、俺とリザの仲を認めたって受け取るぜ、いいんだな?オイ、いいんだな?」
ベネットの手に握られたナイフの凶悪な殺傷力など露知らず、マスキーノは見せ付けるようにリザを犯しながら愚かな挑発を繰り返す。
「・・ぐ・・・!」
殺意の眼差しでマスキーノを睨みつけ、抜き放ったナイフを握り締めるベネット。
その額を、頬を、顎を、ぼたぼたと脂汗が滴り落ちる。
限界を超えた怒りと恐怖が、彼女の頭の中でギリギリの接戦を繰り広げていた。
「冷てぇやつだなぁ、オイ。オラ!オラッ!・・早くしねぇとリザん中に出すぜ?出しちまうぜぇ?ポッコリ確実のとびっきぃ〜り――濃・い・の・を・よ・♪」
「ぐ・・・ぐぅぅぅぅぅ・・!!」
妙にしつこく挑発を繰り返すマスキーノだが、彼の算段はこんな感じであった。
自分と臨戦態勢に入ったベネットを難なく押さえつけ、『不可抗力』でそのまま彼女も巻き込んでの3P。
実際は彼女のナイフの切っ先がかすっただけで死に至る、非常にハイリスクな賭けではあるのだが、それを察するほどの洞察力は彼にはない。
そして、自分の行為がベネットの命をも脅かしていることについても、また彼は察していなかった。
「ほら、そろそろイっちまうぞ?ドプッと、ドプッとよぉ。そしたら、リザは俺の仔を孕み、産むんだ。親友に見捨てられた絶望の中でな♪」
「はぁ・・・はぁ・・・・・こ、こ、ころしてや――」

「――やめて!!」
ベネットを封じる2つ目の呪文。
彼女の目の前で、リザが何かをあきらめたように笑っていた。
「ダメよベネット、ナイフを下ろして作業に戻って・・」
「・・リザ」
「冷静になって、ラピュワー様に逆らうのだけはダメ・・」
「・・・・」
2人とも大粒の涙をこぼしながら、悲しい苦笑を交し合う。
それはお互いをかばいあう、この国では類まれなる本当の友情だった。
「ごめん・・ごめんね・・・・リザ」
――カラン
瞬間、殺意を失ったナイフが床に落ちる。
その音は酷く虚しく、絶望に満ちたものとなった。

「オィオィ、リザ。いいところで邪魔すんじゃねェよ。俺がコイツの友情が本物かどうか確かめてやってるんじゃねェかヨ・・・・・んん?」
何も理解せずに、マスキーノは愚かな口上を並べたてる。
だが次の瞬間、肩越しに振り向いたリザの今までとは違う真摯な眼差しに、しばし言葉を失った。
「私・・・リザは貴方の女になります。貴方の仔もお産みします。ですから・・どうか、もうこれ以上ベネットを挑発するのはやめて下さい・・」
「お、オイオイ・・・・・こりゃ、いきなり、どういった風の吹き回しだ?いいのかよ、助けを拒んじまってもよォ・・?」
「・・貴方こそいいのですか?毎晩、自宅のベッドで私を可愛がりたいって言ってたじゃないですか。今なら――今なら、素直に従いますよ?」
繰り返された『今なら』に秘められた死の匂い。
それを無意識に生存本能が感じ取ったのか、マスキーノもそれ以上強硬姿勢をとろうとはせず、その興味を安易な喜びへと向けていた。
「へっ・・・最初からそうやって従順にしてりゃいいんだよォ・・」
リザの顎を引き寄せると、マスキーノはその唇を奪う。
それは欲望と絶望が絡み合う誓いのキスだった。

「んっ・・・で・出る・・・・ンオオオオオォォッッ!!」
「・・きゃっ!ン・・んんんんんんんんんんんん!!」
その時突然、部屋の一角から上がる2つの断末魔。
そこでなにがあったかは、すぐ横で魔道機器のスキャンが捉えていた。
ほとんどの数値が一気に上昇し、グラフには一際大きな波動が生まれる。
そしてスクリーンには、男性器の先端から何度かに分けて放たれた何かの液体が、女性器の奥底にある小さな器官の中へと流れ込んでゆく様が克明に描かれていたのだ。
「・・うっ・ホオオォォォォ・・ッ」
「・・・はぁぁぁぁぁ・・・っ」
ダーラとクランセが同じタイミングで大きな吐息を解き放ち、崩れ落ちる。
そして、逆側からも・・
「よしッ・・・・・リザ・・こっちもイク・ぞ、しっかり受け止めろォォッッ!!!!」
「はぃ・はいッ・・・ン・・ン!・うくあああああああぁぁぁ・・っっ!!」
屈強な兵士と妖艶な魔女の肢体が交わり合い、淫らな魔気が渦を巻く室内。
次々とクライマックスを迎える壮絶な生殖行為に、魔女たちはしばし見惚れる。
「ヴ!・・ヴヴヴゥゥ・・・・!!」
その中で、兵士たちのものより更に低い、呻きにも似た嬌声が上がっているのに気づいたのは、このプロジェクトの指揮官ラピュワーただ1人だった。

「・・なに・・やってる・・のッ、全機最終段階ッッ!!」
呆けて一瞬思考力を失った魔女たちに、部屋の中央から声が飛ぶ。
そして、その言葉が兄の引き金をも引いていた。
「ン・・・・・・アアアアアアアアアァァッッ!!!」
バックから豪快に止めを刺されたのだ。
――ドビュッッ・・・ドクドクドクドクドクドクドクッッ!!!!
「あっ・・・・・・あン・・・・・・・お兄・・様ぁ・・・っ」
怒りと共に限界まで膨張した欲望のたぎりが、兄の膀胱から妹の子宮へと怒涛のように流れ込む。
体力を根こそぎ奪われ、呼吸も失い、汗まみれになりながらも、背筋を逸らして肢体を震わせる妹。
普段の無表情ぶりも既になく、今のその顔にはあきらかな恍惚があるのが見てとれる。
それは、禁断の兄妹愛に他ならなかった。

     ▽     ▽     ▽     ▽     ▽

「30分したら、ナイトメアの起動チェックを行うわ。それまで、各自待機・・」
先程までの激しい性交渉もすっかり終わったあと。
室内は一応の落ち着きを取り戻していた。
ラピュワーは事前と変わらず淡々と指示を出しているが、それはもうバソリーの怒りに再び火をつけることもない。
兄の威厳を込めた渾身のファックを受けて完全に足腰が立たなくなり、自分の腕にしがみつくようにしてなんとか肢体を支える妹の姿に、優越感すら覚えている。

「サンプルは生命パルスの停止を確認したら全て処理しておいて」
また、部屋の一角で無残な姿を晒していたレイたちの成れの果ても、一様に凄絶な最期を遂げていた。
全身ミイラのように干からび、眼球は頭蓋の中に落ち、皆おぞましい断末魔の表情を作っている。
彼らはまんまと魔女の策にかかり、欲望を爆発させた瞬間、頭のプラグから脳みそごとそのエネルギーを吸い上げられたのだ。
すっかりしぼみきった男性器から滴る白濁が、彼らの得た汚れた死の物悲しさだけを湛えていた。

「しっかし、大したもんだよなぁ・・」
「そう・ですか・・?」
スクリーンの前には、先程のカップルではなくマスキーノとリザが立っていた。
マスキーノは正式に自分の女としたリザの胸を弄びながら、3つの行為の記録を見上げている。
「そういやよぉ、リザ?」
「・・なんですか?」
「この一番左の数値は何だったんだ?」
先程、行為を盛り上げる一環として、ダーラがクランセにデータの説明をさせていた。
だが、1つだけ説明されていない数値がある事をマスキーノは不思議に思っていたのだ。
その数値は、行為中は『00.00』からほぼ動かず、終わったあとにゆっくりと上がり始めたものだ。
「バソリー様のとこが『11.24』、ダーラのとこが『4.58』・・・んで、俺らのところが・・・『77.58』・・ダントツか。こりゃ、何なんだ?」
「それは・・・・・・ですね」
そこに繋がった言葉。
複雑な表情で俯いたリザの一言に、マスキーノは愉悦の笑みを浮かべる。

「胎内・・・・・・・・・・受精確率です」

そして後日、様々な欲望が交差する中で生まれた新しい合成魔獣『ナイトメア』は、無事ゲルニスに献上されたのだった。


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