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「…ここは…魔界!?」
かどわかされた妹を取り戻すべく、異界召喚士の残した転送魔法陣に身を投じたクローディアは愕然とする。
天に太陽はなく、常闇に怪しく光る苔や奇怪な茸で薄暗く照らされる荒廃した世界。
空気はジメジメと濁り、異形の植物が発する胞子や微かに異臭を放つ薄い霧が立ち込める。
「っ…からだが…重い…ちから、抜け…る……こんな濃密な瘴気、初めてだ…」
ふらぁ…がくんっ。
「くっ…!」
急激に四肢が脱力し膝を屈しかけるも、グッと持ち堪えるクローディア。
魔族の領域たる魔界には常に瘴気と呼ばれる有毒の霧が立ち込め、人間など魔界適応を持たぬ種族が晒されれば生命力を奪われる。
並みの人間では踏み入る事が困難な魔境であり、人類側が防衛戦に徹しざるを得ない要因である。
常人であれば5分と持たず倒れ伏すであろう瘴気だが、銀月の加護を持つ勇者クローディアは悪影響を軽減できる。
しかし魔界適応を持たぬ生身の肉体では悪影響を完全には排除できない。
「…っ…それでもボクは…引くわけにはいかないッ!」
強靭な意志と鍛え抜かれた身体で歯を食いしばり決然と進んでいく。
地理も分からぬ完全な敵地で孤立無援、瘴気で息が上がるも、慎重に周囲の気配を探る。
姿は確認できないが、無数の大群が虎視眈々と襲撃の機を狙っている殺気を、勇者の戦勘で察するクローディア。
敵の罠は明白。何時どこから攻撃されるか分からぬ極度の緊張と、大切な妹を案じる焦りが、クローディアの肉体と精神を疲弊させていく。
「聖装衣を解放すれば、瘴気なんて効かないけれど…」
銀月の加護を受けし聖装衣を纏えば完全な魔界適応を得られるのだが。
自らに与えられし神器の性質を知悉しているクローディアは逡巡する。
エリス救出の目途が立たぬ今、聖装衣を解放しても、いざ強敵に遭遇したら…
「…いや、だめだ。時間切れになってしまう。エリスを見つけるまで温存しないと」
くらっ…
「っ…意識…が…」
瘴気で目が霞みぼやける意識を気丈な意志で保ち、方針を練る。
「負けちゃ…だめだ…考えなきゃ……」
普段ならば、飛竜で戦地に駆けつけ着衣を脱ぎ捨て聖装衣を解放するのがクローディアの必勝戦術であったが。
「いつ、敵が襲ってくるか全然分からない…軍団長クラスの魔族と戦うには、すぐに聖装衣を解放できなきゃ…」
完全なる敵地で包囲監視され続け、奇襲され放題な絶対不利な状況で、襲撃されてから全ての着衣を脱ぐ猶予はあるまい。
クローディアは立ち止まり、僅かな逡巡の後…
とさっ…はらり…
戦場帰りから着たままだったレザーアーマーも、全ての下着も靴も脱ぎ捨てていく。
美少女勇者の、一糸纏わぬ美しい裸体が、仄暗く淀んだ魔界の燐光に照らされ、そのしなやかで美しい肢体と胸のふくらみを映し出した。
勇者姫の超人的な五感は、姿を見せず虎視眈々と獲物を狙う魔族の悪意と、彼女が脱いだ時から下劣さを増す無数の視線を全身に感じている。
姿を見せぬ卑劣な視姦。激しい羞恥に思わず剣を持つ手で形の良い乳房を隠そうとしたが。
「っ…恥ずかしいなんて、言ってられないッ!エリスを助ける為ッ!ボクは全力を出せなきゃ!」
クローディアはすぐに臨戦態勢を取り全裸で走り出すのだった。
「はぁっ…はっ…あぅ…くっ、なんだかボクの身体…熱い…胸が…あそこも…ジンジンする…」
全裸で全力疾走を始めてすぐ、身体に異変を感じるクローディア。
ジン…ジン…うず…うずっ…ぞくっ…
「…っ!」
一糸纏わぬ無防備な白い柔肌に直に瘴霧が纏わり付き、疲労で力が抜けつつあるクローディアには、走って前の風が強く触れてくるためか、まるで水飴のようにねっとりと重く感じられる。
瘴霧が柔肌特に胸の谷間や乳首、下腹部の敏感な箇所をぞくりと撫でる度、ジン…ジン…とむず痒さと、身体の芯から蕩け痺れるような甘い刺激がクローディアの意識を蝕み始めていた。
それでも決して歩みを止めないクローディアは、乳首がプクッと勃起してしまっている事に気付かない。
もし彼女が革鎧を着たままであれば、ツンと尖ってしまった乳首が着衣と擦れて堪え難い快感に気付けたであろう。
聖装衣の即時解放の為に全裸となった選択は吉か凶か。
身体の異変を堪えてクローディアが瘴気の森を走り抜け、開けた広場に足を踏み入れた瞬間。
魔族の大群に包囲されていた。
「ギャギャギャ!勇者姫キタ!全裸ダ…犯シタイ…」
人間の雌を凌辱し孕ませ数を増やす醜悪な小鬼ゴブリンどもが喚く。
「ゲヘヘヘ犯せ犯せーっ!」
豚面の筋骨隆々な怪物オークどもの巨根が怒張している。
「グフフ!流石は異界召喚士殿の策通りよ!いかな銀月の勇者姫といえど、生身それも裸で魔界の瘴気を浴び続けては最早抵抗はできまい」
ニヤリと嗤う指揮官のオークキング。
「ヒキキ!いや何、ワシはただ少しお膳立てをしたまでですぞ、オークキング殿」
「っ!?君は…!」
「ウヒヒ!愚かな小娘よのぉ勇者姫よ。たかが妹一人の為にわざわざ窮地に陥ってくれるとはキーッヒッヒッ!」
妹を攫った張本人を睨みつけ、クローディアが叫ぶ。
「ようやく見つけたよ…エリスを…ボクの大切な妹を返せッッ異界召喚士ッッッ!!!」
絶対不利な状況で不撓不屈の勇者姫クローディアの戦いが始まった。
「ギャギャーッ!相手は瘴気でフラフラの小娘一人!一斉に襲い犯してくれるわーっ!」
ゴブリンや下級オークどもが、瘴気に侵され疲労困憊な美少女勇者に襲い掛かった。
「っ…勇者を…舐めるなあッ!!」
シュシュシュ!ヒュヒュヒュュゥゥン!
超高速の白刃がきらめき、一瞬で数十匹の下級魔族の首が乱れ飛ぶ。
クローディアは銀月の神器の資格者なだけでなく、類稀なる剣才と、幼少より過酷な鍛錬を欠かさぬ努力により、17歳の若さにして剣聖の域に達している。
彼女の剣技は音速を超えるに留まらず、長き伝統を誇る帝国式剣術の基本形に忠実で、美しく洗練された型を変幻自在に繰り出す。
美しく伸ばした赤い長髪が剣風で僅かに靡き、華奢にしてしなやかなに鍛えられた裸体にふわりと落ちる刹那。
聖装衣を纏わずあまつさえ衣服すら脱ぎ捨てている、疲弊し切った少女一人と侮っていた魔族どもは驚愕と焦りを抱いて次々と骸を晒していった。
「ギャギャ…話が違うぞ!聖装衣使ってないのに強過ぎる化け物かっ!?」
だが。
「はぁっ…はっ…はぁっ…」
次第にクローディアの息が上がり、健康的に発育した美乳がぷるんと震える度に、敏感な箇所に受ける刺激で力と集中力が掻き乱れていく。
「はっ…はぁっ…はぅっ…乳首の疼きが、酷くなってる…!?」
ジン…ジン…むく…ぷくっ。形の良い乳房に桜色の突起。
「はぁっ…はあっ…うっ…んっ…ぁ…」
うず…うず…ジン…ぞくっ…ビクッ!
「あんっ!?」
思わず股間に手が伸びそうになり、我慢しきれずモジモジと股を閉じる。
「っ!痺れる…ッ……熱い…ボクの身体、どうして…?」
戸惑うクローディア。
皇女として健やかに育ち、妹を護ると決意した日から鍛錬に明け暮れていたクローディアは性知識が乏しく、自分の身体に起きている異変と未知の刺激に不安を募らせる。
「キヒヒ!ようやく痺れ茸の胞子と、ワシが特別に調合した媚薬瘴霧が効いてきたようじゃのぉ」
「っ…どういう、事っ!?」
戸惑い睨みつけるクローディアに異界召喚士が得意げに解説する。
「キ
ヒ!普通の魔界の瘴気は人間には有害じゃが、麻痺や媚薬の効果なぞ無いわい。特にお主は加護に守られし勇者、この程度で効かぬのは分かっておった。故に!お主を転移させた森にワシが品種改良した痺れ薬を放出する魔界茸と、ワシが調合した媚薬を瘴気の霧に混ぜたのじゃあっ!」
「び…やく?…ボクの身体に…何をしたの…ッ!?」
「ヒヒッ、皇女勇者サマはお強いがちと純真過ぎじゃのぉ。分かり易く説明すると…お主の身体は淫乱になっておるのよキヒヒヒ!」
「なっ…!」
流石にクローディアも怨敵の言葉の意味を悟り…羞恥で思わず胸を庇う。
しかし、身体が痺れて腕が上がらず、健やかに発育した両の乳房を下劣な魔族共の視姦から隠すことはできなかった。
「ヒヒヒ諦めろ勇者姫よ!お主はこれからワシらの慰み物じゃあっ!お主の可愛い妹姫共々なぁゲヒヒヒ!」
「くっ…卑劣なッ!エリスを…大切な妹を助けるまでッ!ボクは…決して負けないッ!」
甘く痺れ蕩けるように力が抜ける裸身を気力だけで突き動かし、決死の死闘を続けるクローディアだったが。
白い柔肌は疲労と甘美な微熱で薄桜色に染まり、魔の快楽と疲労で微熱を帯び汗と瘴気で滲む裸身に赤い長髪が張り付き、剣を振り敵の襲撃を躱す度に痺れ媚薬霧が乳房をねっとりと撫でる甘美に蕩ける感触に苛まれる。
ジン…ジン…うずっ…ピクッ…ゾクッッ…!
「くっ!?ああっ…だめっ…乳首っ…疼いちゃ…だめぇ!からだ…が…痺れ……っ…」
キュン!キュン…と甘く痺れる刺激が乳首から全身を伝わった瞬間。
くらっ…がくっ。激しい眩暈で一瞬気を失いかけ、腕が痙攣して剣先が下がり、足がもつれてしまう。
その隙を逃さず魔族の大群が容赦なくクローディアを襲うが、必死に体勢を立て直し応戦する。
「はぁっ…んはぁ…あうっ…まだ…勝機は…あるッ!」
紅玉の瞳に不屈の闘志を込め、甘く痺れる身体を気力のみで動かし尚も戦い続ける。
クローディアの勝機それは銀月の聖装衣である。
発動さえすれば如何なる邪毒も解除し以降一切彼女を冒す事能わず。
だが。
(だめ…今は…まだ…ッ)
絶体絶命にも関わらず未だ切り札使用を堪える。
(まだ…エリスが何処にいるか分からない…今、聖装衣を使えば確かにこいつらは倒せる…けど…)
敵は眼前の異界召喚士だけではあるまい。
神器を温存してエリスを見つけ出し、然る後に開放して一気に状況を打開する、それが銀月の勇者姫の作戦だった。
刻一刻と痺れていく身体。全方位から襲い来る魔族の攻撃を見切り、最小限の動きで倒していく。
だが。
「くぅっ…だめ……もう…身体が…動かな…」
「グヘヘヘ!最早限界のようだなぁ勇者姫よ!」
ガシッ!
身体が痺れ意識が散漫になった隙を付かれ、クローディアの華奢な裸体がオークキングの剛腕に羽交い絞めにされてしまった。
「あぐぅっ!しまっ…」
「ゲヒヒヒ!手こずらせおって!だが最早その痺れた身体では抵抗できまい?勇者姫ぇ!」
下卑た醜悪な豚面で哄笑するオークキング。
ぐったりとうなだれ、無防備な裸体を敵に預けるクローディア。
超極上級美少女勇者をついに凌辱できる悦びに下劣な魔族どもは歓喜で湧く。
勝利を確信した魔族どもの無数の腕が美少女の裸体に群がるが…
「くぅっ!こんな事で…ボクが…銀月の勇者がッ!!」
「グヘ?」
「負けるかあぁぁッッッ!!!」
ザクッ!
クローディアの剣先が、自らの太腿を刺し、白く滑らかな柔肌から鮮血が滲む。
激痛で強引に淫靡な痺れから意識を逸らした瞬間。
「動けえッ!ボクの身体ッ…はあああああッ!!!!」
「なっなにぃぃっ!?」
ザンッ!ゴロン。
オークキングの首が落ちた。
「はあああああッ!!!!」
最後の気力を振り絞り魔の快楽を堪え、裂帛の気迫で剣を振るクローディア。
リーダー格を討たれ動揺する下級魔族共を蹴散らし、痺れている勇者姫の震える剣先が異界召喚士を捉える。
「はぁっ…はぁっ…ボクの勝ちだッ!さあ…早く…エリスを返せッ!!」
「ヒッ…ヒヒッ!待て待て待て!ワシの負けじゃ!お主の妹は返してやろうほれ、そこじゃよ」
両手を上げ降参の構えを取る異界召喚士が指さした先に…
「……おねえさま…わたし…待ってたの…」
「っ!エリス!!」
探し求めていた最愛の妹がいた。
クローディアは痺れて殆ど動かない身体に鞭打ち、エリスに駆け寄る。
足が上がらず、摺り足になりながら歩むクローディアの元に、エリスの方からとてとてと近付いてくる。
「おねえさま…わたし…待ってたの…」
「エリス!ごめんね…ボクが油断したから…怪我は無い!?酷い事されてない!?」
「おねえさま…わたし…待ってたの…」
妹の小さな身体をぎゅっと抱きしめるクローディア。
「おねえさま…わたし…待ってたの…」
「…?エリス…?」
妹と目が合う。
その碧い瞳は虚ろだった。
「さあ、帰ろうエリス。ボクは……もう二度と君を危険な目に遭わせたりしない」
「おねえさま…わたし…待ってたの…」
「はぁっ…はぁっ…あくぅっ…からだ…痺れて…もう…意識…が…っ…エリス…ボクに…掴まってて…」
「おねえさま…わたし…待ってたの…」
既に限界を遥か超えて不撓不屈の決意のみ残された今のクローディアには、妹の異変に気付く余裕は無い。
「最後の力を…お願い…あと少しだけ…動いて…ボクの身体ッ!」
銀月の聖装衣・神罰執行形態……解……
チクッ…
「……ぇ?」
エリスの幼い指先の小さな棘がクローディアのツンと勃起した乳首に刺さった瞬間。
「…エリ…ス………?」
ぐにぁっ…………がくっ…どさっ。
痺れ薬と媚薬に蝕まれ限界を超えた身体で薄皮一枚で保っていたクローディアの意識が暗転し、暗黒の眠りに堕ちてしまった。
「キヒヒヒ!さしもの勇者姫も、特製の超強力痺れ呪毒を直接乳首に注入されては一溜りもあるまい!
ようやったのぉ……我が新たなる弟子、エリスよ!!」
「………はい、師匠。わたし、異界召喚士様のために…おねえさまを……あっ…ああ…いやっ…わたし…なんてことっ…いやあぁぁっ…!?」
「ほう、この幼さでワシの精神支配にまだ抗うか。これは前の馬鹿弟子に匹敵する逸材やも知れぬぞい」
この世界に転生する以前の記憶を思い出しほくそ笑む異界召喚士。
「さぁて、散々手を焼いたが、銀月の勇者姫は我が手中に堕ちたわ!これでワシの魔族軍での地位も安泰!そして勇者姫の身体を実験対象に元の世界に帰る実験ができるわい…憎き王子めへの復讐もそうじゃが…その前に…出でよ、ローパー!」
召喚魔術で一つ目の筒状胴体に無数の痺れ触手蠢く異界の魔物ローパーを召喚する異界召喚士。
最愛の妹に不意を打たれ、卑劣な敵の眼前で痺れ小刻みに痙攣する美しい裸体を晒し昏々と眠るクローディア。
召喚主の指示に、痺れ薬で無防備に眠らされた全裸の美少女を触手で持ち上げ、異界門創造で開けられた歪空間に運んでいくローパー。
持ち上げられた裸体は四肢がだらりと垂れ下がり、首がかくんと後ろに反って赤い長髪が散り、可憐な美貌と美しい胸のふくらみが魔界の天を仰ぐ。
シリル帝国第一皇女にして、銀月の加護を受けし勇者姫クローディアは囚われた。
卑劣なる異界の策士の掌中に堕ちた皇女姉妹の凌辱の日々が始まる。
つづく。
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