○聖女子学園初等部、儀式の始まり

 都内の一等地に一つのカトリック系の私立学校がある。
 この学校は、初等部から高校まであるが、家柄より、成績を重んじ、文武両道を目指す女学院であった。
 名前は、聖女子学園と言う。
 その初等部に変わった儀式が存在していた。
 その儀式とは、五角形の形をした特別な館、五法館に、六人の女子生徒を数日間、寝泊りさせるというものである。
 儀式の間は、一切外界との接触を立つ事となっており、対象になるのは、四年生以上となっている。
 儀式の始まりは、学園の始まりより古いとされ、儀式には、優秀な生徒が選ばれる事になっていた。
 そして今年の儀式の生徒は、次の六名であった。
 一人目の四年生の市子(イチコ)は、成績も優秀で先生達からの評判も高いが嫌味な感じのしない優等生。
 二人目の五年生の双葉(フタバ)は、元気で好奇心旺盛の少女だが、友達が多く同級生たちの評判が高い。
 三人目の六年生の美並(ミナミ)は、家が金持ちで高ビー、しかしそれに見たった努力をしている為、多くの後輩に尊敬されている。
 四人目の五年生の芳名(ヨシナ)は、先輩を立て、後輩の面倒も良いと評判の少女である。
 五人目の四年生の伊塚(イヅカ)は、子供っぽいが運動が得意で、関東大会に出場した事もある。
 六人目の六年生の睦月(ムツキ)は、真面目な初等部の生徒会長である。
 そんな六人の選出に、生徒も先生も、満足する物であった。
 しかし、この儀式の本当の意味を知らずに行ったこの選出が全ての間違いの始まりであった。


 五法館の中央の聖堂に案内される六名。
「ここは、普段は、誰も入ることを禁じられています」
 美少女だが、無骨な眼鏡と冷たい目付きで、相殺している睦月の言葉に、元気一杯のツインテール娘、双葉が手を上げて質問する。
「どうしてですか?」
 睦月がきつい目で睨むと双葉が怯む。
 そこを優しいお姉さま雰囲気を持つ芳名がフォローする。
「この五法館は、この儀式を行う為だけの施設だからよ」
 ショートカットで少年と見間違いそうになりそうな伊塚が首を捻る。
「何でそんなのがあるの? 僕は、解らないよ」
 小学生とは、思えないスタイルの美並が言う。
「お子様には、解らないでしょうけど、何事にも格式や、儀礼は、必要なの」
 小さくため息を吐く睦月。
「ここの他にも、五つの聖堂があり、私達の仕事は、毎日朝夕に、お祈りを捧げる事です。皆さんよろしいですね」
 頷く一同の中、一人、市子だけは、聖堂の奥に飾られていた真黒な棒を見つめていた。
「どうしたのですか?」
 芳名が心配そうに話しかけると市子は、慌てて手を振る。
「何でもありません」
 すると睦月が言う。
「それでは、お祈りは、明日の朝からです。早く起きますので、皆さんも早く就寝して下さい」
 そして、聖堂を出て行く少女達。
 ただ、市子だけは、最後にあの棒を見つめ、そして、その股間から白い液体が滴り落ちる。
「市子さん、閉めますよ!」
 睦月の声に慌てて市子も聖堂を出る。
 そして、誰も居ない筈の聖堂、市子の垂らした液体の匂いに反応するように黒い棒が震えた。
 これが、少女達を襲う、災厄の引き金であった。


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