○プロローグ


 あたしの名前は、荷桐野(ニギリノ)梅(ウメ)、友達からは、バイちゃんって呼ばれてる。
 何処にでもいる小学五年生です。
 そんなあたしの一日を説明するね。

 あたしの一日は、お寝坊な兄を起こすことから始まる。
「竹(チク)兄、朝だよ、起きて!」
 あたしの声にも全然起きない、大きな体のが、あたしの兄、荷桐野竹(タケ)、高校生。
「もー仕方ないな」
 あたしは、竹兄にフライングボディープレスを食らわせる。
「何しやがる、ワンパク弟!」
「違うもん! バイは、女の子だもん!」
 あたしが反論すると竹兄は、あたしの胸を触りながら言う。
「小学生五年になっても殆ど膨らんでない胸じゃ説得力無いな」
 ヤレヤレって顔をする竹兄。
 あたしは、頬を膨らませて言う。
「少しは、膨らんできたもん!」
 その時、あたしは、お尻に違和感を覚えた。
 その部分を見ると、竹兄のおチンチンが立っていた。
「竹兄の変態!」
 あたしは、枕で竹兄を叩く。
「男の朝の生理現象だ!」
 あたしは、ベッドから降りるとアッカンベーをして竹兄の部屋を出た。
 そして、トーストを焼いて朝食にする。
 あたしが食べ終えた頃に竹兄も制服に着替えて、欠伸をしながら降りてくる。
「トーストは、焼いといたよ! あたしは、先に行くね」
「車に気をつけろよ!」
 竹兄に手を振りながらあたしは、家を出た。


 何時も通り誰も居ない教室に入る。
 そして、花瓶の水を取り替えていると担任の牧野(マキノ)太志(フトシ)先生が来る。
「牧野先生、おはようございます!」
 少しぽっちゃり系だが、生徒の事を考える人気がある先生。
「荷桐野は、いつも偉いな」
 優しくあたしの頭を撫でてくれる牧野先生は、あたしも大好きだ。


 昼休みは、あたしは、何時も親友で、牧野先生の娘、牧野穂素(ホソ)と一緒に食べる。
「バイちゃん、今日も可愛いです」
「そんな、ホソちゃんだって、凄く綺麗だよ」
 そうなのだ、ホソちゃんは、凄く綺麗な黒い髪を伸ばし、まるで日本人形みたいに綺麗な自慢の親友なのだ。
 ホソちゃんと楽しいお昼休みをあたしは、過ごす。


 放課後、あたしは、クラスメイトの男子と一緒にサッカーをする。
「決まれ、サイクロン!」
 一度スピンをかけたボールでドライブシュートを撃つ。
「ペナルティーエリア外からシュートは、決まらないぜ!」
 巨体の男子、オトロくんがそれを弾く。
「まだまだだな、バイ!」
 そういって、鼻に絆創膏をつけたクラス一の元気者、エービくんが、ボールをゲットする。
 激しい、ボールの奪い合い。
「こっちだ」
 細身で少し美形な、ヒイラメくんにパスが渡ると、物凄いテクニックでどんどん抜いて、最後にエービくんがパスを受ける。
「食らえ、雷獣シュート!」
 ボールがゴールネットに突き刺さった。
「絶対に取り返すからね!」
 あたしが宣言するとエービくんは、高笑いをして言う。
「俺とヒイラメのゴールデンコンビには、誰も勝てないさ!」
 そんな楽しい放課後も直ぐに終る。


 下校し家の門をくぐると、犬のガリがあたしを押し倒し、顔を舐めてくる。
「もう、まだ制服なんだから止めてよ」
 ガリは、あたしが、幼稚園の時に拾った雑種の犬だ。
 拾った時は、本当に小さく、ガリガリだったからガリって名前をつけたのに、今では、あたしより大きくなっている。
 ガリは、あたしに良くなついていて、学校から帰ってくるとこうやってじゃれて来る。
 可愛い愛犬だ。


 家に入ると、お父さん、荷桐野松(マツ)がエプロン姿で居た。
「お帰りなさい、バイさん」
「お父さん、仕事終わったの?」
 あたしが抱きつくと少し困った顔をしてお父さんが言う。
「すいません、もう少し伸びそうですので、一度帰ってきただけなんです、明日には、また向こうに戻らないといけません」
「えー」
 正直がっかりした。
「でも、今日は、居られるんでしょ?」
「はい、夕飯は、期待してください」
 お父さんの言葉にあたしが、嬉しくなる。
 お父さんは、考古学者で、地方にある遺跡の研究でよく家を空けていた。
 今回も、出雲の山奥にある遺跡を調べている。


「ごちそうさま、本当に美味しかった!」
 あたしが言うとお父さんは、微笑みながら言う。
「お風呂が温まっていますよ」
 あたしは、お父さんの事を上目遣いで見てお願いする。
「お父さんと一緒に入りたい」
「やっぱ、弟だな。その年で父親と風呂に入りたがる娘なんて、居ないもんな」
 意地悪な事を言う竹兄を無視してあたしは、お父さんを見るとお父さんは、笑顔で答えてくれる。
「良いですよ」
「やったー」


「肩までつかるのですよ」
「はーい」
 お父さんと二人湯船に浸かっていると幸せな気分になれる。
「お父さん、いまは、どんな遺跡を調べているの?」
 お父さんの事を知りたくて質問するとお父さんが答えてくれる。
「古い古い遺跡です。悪い蛇を封じた物らしいですね。その蛇は、六つの禁断より生まれた者らしく、六芒星と呼ばれる物で封印しているらしいのです」
 お父さんは、タイルに上下逆さまの三角形を描いてくれる。
「何か、漫画とかで見た事ある形だよ?」
 あたしの質問にお父さんが頷く。
「ええ、海外では、ヘキサグラムと呼ばれる物で、神聖な物と言われています」
「それで、その調査ってまだ長く続くの?」
 心配になって聞くとお父さんが微笑みながら答えてくれた。
「大丈夫です。今回持って帰ってきた本が本命で、明日からの調査は、確認作業みたいな物ですから。ただ、一度解散する事になりますから、確りとやらないといけないので、暫く家を空ける事になってしまいます」
 悲しそうな顔をするお父さんにあたしが笑顔で答える。
「大丈夫だよ、この家は、あたしが護るもん!」
 お父さんは、あたしの頭を優しく撫でながら言う。
「それは、安心です」
 こうして、その日は、お父さんと同じベッドで眠った。


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