0_勇太


 そこは、中世の城の様な場所だった。
 そこで僕は、おぞましい触手を生やし、悠然と笑みを浮かべる大男と対峙していた。
「お前の野望もここまでだ! 淫堕の魔王!」
 僕は、大男にそうつげて手に持った玉を突きつける。
 大男は、悔しげに言う。
「まさか、愛情などに負けるとは、思いもしなかったぞ」
「本当の愛の強さを理解できなかったのがお前の敗因だ!」
 僕は、更に玉に力を籠めると大男が苦しげにしてその姿を薄らいでいく。
「良いだろう。今回は、勇者、お前とお前を愛する六人の聖女の愛に負けを認めてやろう。しかし、覚えておくが良い。私は、必ず蘇り、その愛でお前達も淫らな世界に堕落させてやると」
 大男は、僕の持つ玉の吸い込まれ行った。
 僕は、安堵の息を吐くと、周りから六人の女性が集まってくる。
「勇者様、お見事です」
 僕は、微笑み返す。
「いいや、全ては、皆が僕を真に愛してくれたからだよ」
「勇者様!」
 皆が僕に抱きついてくる。


 そこで僕は、目を覚ました。
「お兄ちゃん、朝だよ!」
 そういって僕を起こしに来たのは、ツインテールの小学生の妹、夢美(ムミ)だった。
 兄馬鹿と言われるかもしれないが元気で生半可なチャイドルよりも可愛い。
「おはよう、それと起こしてくれたありがとう」
 僕が微笑むと陸美も嬉しそうに挨拶してくる。
「うん、おはよう」
 僕は、ベッドから起き上がり先程の夢を思い出す。
「またあの夢か。昔読んだ本に似たような話があったかな?」
 僕の名前は、鋭由(エイユ)勇太(ユウタ)、両親と今の妹との四人家族の何処にでもいる男子中学生。
 小さな頃から何度も観る夢に首を傾げながら制服に着替え、リビングに向う。
「おはよう、夢(ユメ)」
 そう挨拶してくるロングのストレートの女性は、お母さん、名前は、慈美(イツミ)。
「おはよう。お母さん。お父さんは?」
 するとお母さんは、クスクス笑う。
「相変わらず、急な出張だって飛んでいっちゃった」
 鋭由(エイユ)家の父親の勇治(ユウジ)は、商社マンで今日みたいに突然、長期出張に行ってしまう事がある。
「お父さんも大変だね」
「そうね、だから私達家族が支えてあげないとね」
 お母さんの言葉に僕が頷く。
「うん、力仕事だったら任せてよ」
 力瘤を作って見せるが夢美が笑う。
「ちっちゃな力瘤!」
「うるさい! これでも力は、ある方なんだぞ!」
 そんな朝食を終えて僕は、家の玄関を出ると丁度、マンションの隣のドアが開く。
 出てきたポニーテールの明るく優しさを振りまく女子に向って僕は、挨拶する。
「和恵(カズエ)ちゃん、おはよう」
「勇くんもおはよう」
 笑顔で挨拶を返してくれる。
 和恵ちゃんとは、隣同士って事もあり、所謂幼馴染だ。
 だけどこの頃、その関係にも少し変化が訪れてきている。
「勇太君、おはよう」
 そう声を掛けてくる朗らかな雰囲気をもつオジサンは、和恵ちゃんのお父さん、藍田(アイダ)誠司(セイジ)さんは、元スポーツ選手、現役を引退した今、地域ボランティア活動をしている。
「おはようございます」
 頭を下げる僕に藍田オジサンが微笑む。
「そうだ、今度の日曜のボランティアには、君も来るんだよね?」
「はい!」
 元気に応える僕。
 藍田オジサンのボランティア活動を見て、僕もボランティア活動を始めた。
 中学でも、ボランティア部に入っている。
「君達みたいな若い子がボランティア活動に興味を持ってくれてるのは、嬉しい事だよ。頑張って」
「がんばります」
 ガッツポーズをする僕を見て和恵ちゃんがクスクスと笑う。
「何かおかしかったかな?」
 僕の疑問に和恵ちゃんが笑いながら僕の手元を指差す。
「だってゴミ袋もったままガッツポーズをとってるんだもん」
「あ!」
 言われてから気付いた、正直、かなりみっともない状況だった。


 僕がゴミ捨て場でゴミを捨てていると後ろから声を掛けられた。
「鋭由くん、家の手伝いなんて偉いわね」
 振り返るとそこには、長い髪を纏めた大人の女性、学校のクラス担任で、ボランティア部の顧問の植野(ウエノ)美貴(ミキ)先生が居た。
「いえ、そんな大した事では、ないです」
 否定する僕に植野先生が首を横に振る。
「小さくても良いの、何かをするって事が大切なの。それは、ボランティアでも一緒よ。覚えておいてね」
「はい、確りと覚えておきます!」
 僕が大きな声で返事をしてしまう。
「朝から大きな声を出さないで下さい、私のマンションの品が下がりますわ」
 そう注意されてしまった。
 声の方を見ると、金髪の巻き毛のハーフ、このマンションのオーナーの娘さんでボランティア部の仲間でもあるフォーリー=エルモンデさんがいた。
「エルモンデさん、気をつけるよ」
 僕の応えにエルモンデさんが近づいてきて指を突きつけてくる。
「フォーリーと呼びなさいと何度も言っているでしょう! 勇太!」
「ご、ごめんエ……」
 睨まれたので慌てて良い直す。
「フォーリー」
 するとフォーリーが尋ねてくる。
「ところで、ヨンは、元気?」
「ああ、元気だよ。今日だって元気にご飯を食べてた。これ以上大きくなってどうするつもりなんだろう」
 因みにヨンとは、うちで飼っている大型の室内犬の事だ。
「そう、なら良いのよ」
 満足そうに頷いてから、去っていくフォーリー。
 そんな姿を見て、植野先生がクスクスと笑ってる。
「あのーあまり笑われると……」
 上目遣いで言うと植野先生が手を合わせて謝罪してくる。
「ごめんなさいね。でも鋭由くんを笑った訳じゃないのよ」
「僕じゃない? だったらなんで?」
 それに対して植野先生がフォーリーが去っていった方を見て言う。
「エルモンデさんは、ゴミ捨ては、清掃業者の人がやってくれるのに、何故か此処に居たの。この意味が解る?」
「えーと解りません」
 僕が正直に答えると植野先生が愉しげに笑う。
「鋭由くんのそういう素朴なところ、先生大好きよ」
 植野先生に好きって言われて胸がドキドキしてしまう。
 そして、僕がマンションの玄関に行くと和恵ちゃんが待っていた。
「遅かったね? どうかしたの?」
「植野先生とフォーリーに会ったんだよ」
 僕の答えると和恵ちゃんが歩き出してしまう。
「僕、何か気にいらない事を言った?」
「別に言って無いよ」
 つんけんとした言葉、幼馴染としての経験でこれは、怒ってる解る。
「怒らせたんだよしたら謝るよ」
「だから別にって言ってるよ!」
 珍しく声を荒げる和恵ちゃん。
 そんな時、また後ろから声が掛かる。
「通学中に大きな声で口喧嘩をしては、学校の品位が疑われますので止めて下さい」
「御免なさい、小川(オガワ)さん」
 和恵ちゃんが謝るので僕も振り返り、綺麗な黒髪を三つ編みにし、眼鏡した小川双葉(フタバ)に頭を下げる。
「気をつけるよ、委員長」
「その呼び方、あまり好きじゃないんだけど鋭由さん」
 軽く睨みながらも、そのまま通り過ぎていく。
「でも委員長って雰囲気なんだよな」
 僕の呟きに和恵ちゃんも頷く。
 学校に着くと、がっしりとした体型の親友、鳥尾(トリオ)優斗(ユウト)が声を掛けてくる。
「勇太、また嫁さんと登校か?」
 僕は、顔を真っ赤にして反論する。
「優斗、和恵ちゃんとは、家が隣同士で……」
 優斗は、顔を近づけてきてニヤリと笑って言う。
「でも好きなんだろう?」
「それは……」
 口篭る僕を見てクラスの男子が一斉にはやし立てる。
「リア充爆発しろ!」
「だから……」
 僕の反論は、聞き入れられる事は、無い。
 そんなクラスメイト達だが、僕は、嫌いじゃない。
 放課後、ボランティア部の部室に行く。
「鋭由、次のボランティアの予定だがな」
 先輩達は、真面目で、真剣に取り組んでいる。
 そんな先輩達と一緒にボランティア活動が出来る事がうれしく思っている。
 下校時、僕は、今朝の夢の話を和恵ちゃんにする。
「またその夢みたの?」
「そうなんだ、小さい頃から見てるんだけど、なんなんだろう?」
 僕の呟きに和恵ちゃんがクスクス笑う。
「でも、勇君が勇者なんてイメージ沸かないな」
「酷いな、僕だって男だぞ」
 口を膨らませる僕に和恵ちゃんが言う。
「だけど、もってるのが剣で無くて玉って言うのが勇君らしいかも」
「そうなんだよな、何で魔王を倒すのに剣じゃなく玉なんだろう?」
 首を傾げる僕に和恵ちゃんが言う。
「それにしても、六人もの女人に愛されてるなんて浮気者だよね」
 責める様な視線に僕は、戸惑う。
「だからあれは、あくまで夢の話であって……」
 そんな話をしているうちにマンションについてしまう。
「管理人さん、ご苦労様です」
 和恵ちゃんは、玄関ロビーを掃除していた管理人さんに挨拶するので、僕もする。
「ご苦労様です」
 しかし、管理人さんは、あからさまに背を向けて無視してくる。
 通り過ぎた所で和恵ちゃんが言う。
「勇君、管理人さんに嫌われているね?」
 和恵ちゃんの言うとおり、僕は、管理人さんに小さい頃から良い印象をもたれていないみたいだ。
「何か小さいときに迷惑でも掛けたのかな?」
 僕が首を傾げていると和恵ちゃんが怪訝そうな顔をする。
「どうしたの?」
 和恵ちゃんは、郵便受けから一枚のDVDを取り出す。
「こんなのが入っていたの? 何かしら?」
「もしかしておじさんの元ファンからのプレゼントかもしれないね」
 僕がそんな予想をすると和恵ちゃんが困った顔をする。
「お父さん、来週の月曜日まで帰って来れないって言ってた」
「そうなるとそれまでは、謎のままか……」
 僕の呟きに和恵ちゃんは、少し悩んでから僕の顔を見てくる。
「一緒に観てみない?」
「人の物を勝手に観たら駄目だよ!」
 慌てる僕に対して和恵ちゃんは、歩きながら言う。
「まだお父さんにって決まった訳じゃないよ。もしかしたらあたし宛の物かもよ?」
「身に覚えが無いんだよね?」
 僕の指摘に微笑む和恵ちゃん。
「うん。だから観た事は、お父さんに秘密。あたし、勇君と秘密を共有したいな」
「ぼ、僕と」
 上擦った僕の応えに和恵ちゃんが頷く。
「そう、勇君と」
 思わず沈黙したまま僕達は、エレベーターに乗る。
 不思議な沈黙が続き、エレベーターが止まってドアが開いた所で僕が覚悟を決める。
「僕も和恵ちゃんと秘密を共有したい!」
 和恵ちゃんは、顔を隠して俯く。
「そんなに大きな声で言われると恥かしいよ」
「ご、ごめん!」
 そんなやりとりをしながら僕達は、和恵ちゃんの家に入っていく。
「おじゃまします」
「いらっしゃい」
 和恵ちゃんにまねかれ、小さい頃から何度と無く入ったリビングに入っていく。
「着替えてくるから、ちょっと待っててね」
「うん」
 返事をすると和恵ちゃんは、僕を残して自分の部屋に着替えに向う。
 戻ってきた和恵ちゃんは、部屋着なのか肩の所に下着が見えてしまうようなラフな格好だ。
「お待たせ。麦茶で良いよね?」
「……うん」
 見惚れていた所為で慌てて返事をする僕の前に和恵ちゃんが麦茶を置く。
「それじゃあ、観ましょう」
 そしてDVDが再生される。
 映っていたのは、このマンションだった。
「これって隣のクラスの女子だよ」
 和恵ちゃんの言うとおり、撮影されている女子は、隣のクラスの女子だった。
 その隣にも見覚えがないがうちの制服を着た男子が居た。
『先輩、今日、うちは、誰も居ないんです』
『それって……、OKって事だよね』
 恥かしそうな言葉に男子が問い掛けると女子が顔を赤くして頷いた。
「もしかしてこれって……」
 戸惑う僕達が鑑賞する中、二人は、ゆっくりと初体験を行うのであった。
「えーとこれって大人の人が見るエッチなDVD?」
 和恵ちゃんが懐疑的に言うのも理解できた。
「でも、あまりそういうのとは、違うね。なんというか……」
 言葉を濁らす僕。
「……少し羨ましい。あたしもこんな初体験をしてみたい」
 そう言って俯く和恵ちゃん。
 画面の中の女子は、涙を流していた。
『痛かった?』
 男子が聞くと女子が少し辛そうになりながらも嬉しそうに告げる。
『ううん。先輩と一つに成れて嬉しいの』
 こういう所がなんかそういうDVDと違うなって思える所だ。
 幸せそうな二人を映しながらDVDが終わり、奇妙な沈黙が流れる。
「えーと、DVDも終わった様だし、帰ろうかな」
 立ち上がろうとした僕に対して俯いていた和恵ちゃんが上目遣いで呟く。
「勇君、うちも誰も居ないよ」
「それって……」
 唾を飲み込む僕から恥かしそうに顔を背ける和恵ちゃん。


 久しぶりに入った和恵ちゃんの部屋は、前とは、匂いが違う気がした。
 服を脱いでベッドに横になる和恵ちゃん。
「恥かしいからあんまり見ないで」
 顔を手で隠して恥かしがる和恵ちゃん。
 その裸身は、今まで見たどんなそれよりもピュアで美しかった。
「綺麗だよ和恵ちゃん」
 そう言う僕のアレは、カチカチに勃起していた。
「もう、勇君の馬鹿」
 そういって僕の顔を見てくる和恵ちゃんに僕は、キスをした。
 ファーストキスでは、無い。
 小さい頃から何度かキスをしている。
 でも、その時のキスは、特別だったと思う。
 そして僕は、勃起したあれを和恵ちゃんの割れ目に当てる。
「本当に僕で良いんだよね?」
「勇君じゃないと嫌だよ」
 和恵ちゃんの答えに僕は、腰を入れる。
「痛い!」
 和恵ちゃんの顔が苦痛に歪む。
「大丈夫!」
 すぐさま抜こうとする僕に和恵ちゃんが縋るように言う。
「抜かないで! 初めてって痛いの当たり前だよ。さっきのでもそうだったでしょ?」
「無理して無いよね?」
 僕が確認すると和恵ちゃんは、あの女子と同じ様に微笑む。
「痛いのは、確かだけど、あたしも嬉しい。勇君と初体験出来るんだから」
「和恵ちゃん!」
 その言葉に僕は、止まらなくなってしまった。
 和恵ちゃんの中は、凄かった。
 僕だって男の子だ、オナニーくらいした事がある。
 だけどそんなのとは、全くの別物。
 柔らかく、暖かな和恵ちゃんの物が僕のアレを優しく包み込むと、同時に入り口の所が痛いくらいに締め付けてくる。
 アレを動かす度に味わったことの無いような快感が僕を襲う。
 アレを全部入れ終える。
「和恵ちゃん?」
 和恵ちゃんは、泣いていた。
「和恵ちゃん無理をしたら駄目だよ」
 不安を抱える僕に和恵ちゃんが首を横に振る。
「違うよ、本当に嬉しいから涙が出てるの。だから動いて良いよ」
 そんな事を言われたら腰が動いてしまう。
 何度か腰を前後させただけでもう限界が迫っていた。
「和恵ちゃん、僕、もう限界だよ!」
「我慢しなくても良いから」
 和恵ちゃんの優しい言葉に甘えた僕は、和恵ちゃんの中で射精してしまった。
 その射精は、天国に昇る様に気持ちよかった。
 射精が終わりアレを引き抜いて脱力する僕。
 暫く二人で並んで横になっていた。
「勇君、そろそろ帰らないと」
「そうだよね」
 渋々起き上がり僕は、シーツに出来た赤い染みをみてしまう。
「この染みを落すのは、大変そう」
 タオルを体に巻きながら何処か嬉しそうにそういう和恵ちゃんが愛しかった。
「和恵ちゃん、大好きだよ」
 顔を近づける僕に和恵ちゃんが目を瞑って言う。
「あたしもだよ勇君」
 そして僕達は、長いキスをした。


 その夜、興奮して眠れず、夜風を浴びようとロビーに行くと管理人さんが居た。
「こんばんわ」
 また無視されると思いながらも挨拶すると管理人さんは、僕の方を向いて笑顔で告げる。
「こんばんわ。幸せそうで何よりです」
「は、はい」
 予想外なリアクションに対応に困ったが適当な笑みでその場を離れる。
「管理人さんのあんな風に笑えるんだ……」
 初めてみた管理人さんの笑顔に僕は、違和感を覚えた。
「あの笑顔何処かで……」
 脳裏に夢の中に出てきた魔王の笑顔が過ぎる。
「そうだあの笑顔と一緒だ」
 首を傾げる僕。
「それじゃあ、夢に出てきた魔王って管理人さんのイメージだったのか? そういえば女の人達も和恵ちゃん達に似てた様なって、それって僕が管理人さんを魔王に仕立てて、皆とチヤホヤされたいって願望があるって事!」
 自分の夢が物凄く恥かしい物だと気付いてしまった僕は、それを忘れようと夜道を全力に走り回ってお巡りさんに怒られるのであった。


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