○前日
私の名前は、ヒトミ。
四月から五年生になる女子小学生です。
そんな私だが、実は、あまり勉強が得意じゃない。
三学期の成績表を見たお母さんが一言。
「明日から塾だからね」
その一言で私の春休みは、塾の合宿でつぶれる事になった。
今日は、明日からの一週間の合宿の為の説明会なのです。
そして、私は、地域でも有名な塾のビルに入っていく。
待機室には、先に私より小さなショートカットの子が居た。
「お姉さんも、この塾に入るの?」
親しげに話しかけて来たその子は、私より一つしたで、今度四年になる子で、アイちゃんと言うらしい。
「僕ってサッカーが好きで毎日、友達とやってたんだけど、それじゃ駄目だって、ここに入る事になっちゃったの」
余り塾に入るって実感が無いみたい。
「塾に入るとサッカーが出来なくなっちゃうよ」
私の言葉にその事実に気付いたのか、アイちゃんが驚く。
「それは、困る!」
思わず苦笑してしまう。
そんな時、少し大人びた人が入ってきた。
「面倒」
ため息を吐いたその人は、ルイさんといって今度六年になるらしい。
「うちの親が、私立中学に入れさせようと、成績上げろって言われてここに来たのよ」
「私立中学なんて大変なんですね」
私の言葉にルイさんは、頷いて言う。
「ところで、あんたは、ここの噂は、聞いてる?」
私が首を横に振るとルイさんが教えてくれる。
「結構有名みたい。なんでもここに入れる生徒は、かなり限定されているけど、入った生徒は、皆学力が格段あがったって話よ」
「本当ですか?」
私の言葉にルイさんが頷く。
「だから、うちの親もここを選んだって自慢げに言ってたもの」
アイちゃんは、手を上げていう。
「僕もそう言われた!」
「ヒトミは、違うの?」
ルイさんの質問に私は、頬を掻きながら言う。
「私の親は、料金で選んだって言ってました」
苦笑するルイさん。
そんな話をしている間に一人の男性の先生がやって来た。
「皆さん、初めまして。私は、君達の担当になる、トシオです。君達は、明日から一週間、入塾の為の特殊合宿に参加して頂きます」
するとアイちゃんが手を上げる。
「場所は、何処なの?」
それに対してトシオ先生は、笑顔で言う。
「着いてのお楽しみです」
答えになっていないのが気に入らないのか、ヒトミさんが不機嫌そうに言う。
「そこって携帯は、通じるの?」
「残念ですが、合宿の目的上、参加期間中に外部と連絡は、出来ません。ご家族には、了解を頂いております」
トシオ先生の答えに明らかに嫌そうな顔をするヒトミさん。
最後に私が手を上げた。
「あのー、費用とかは、どの位かかるのですか?」
トシオ先生が満面の笑顔で答える。
「全て塾の施設なので、費用は、皆さんの事前に通知した月謝で十分なのです。安心してください」
そして最後にトシオ先生が言う。
「着替えと筆記用具以外に必要な物は、ありませんが、体力を使う合宿なので、今夜は、十分に睡眠をとっておいてください」
そのまま解散になるのであった。
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