・プロローグ
「なに、これ?」
セーラーマーズ、こと、火野レイは、自分宛てに届いた封筒の中に入っていた、一枚のディスクをしげしげと眺めた。
それは、何も書かれていないケースに入った一枚のブルーレイディスク。
封筒の裏を見ても差出人の名前は無く、こんな物が送られてくるような心当たりも彼女には全く無かった。
不審に思いつつも、レイは、とりあえずプレイヤーにディスクを挿入するが、内容リストに表示されたのは『無題』と記された映像が一本のみ。
サムネイル画面には、薄汚れた壁のようなものが映ってはいるが、そこから内容を予想する事など出来そうに無い。
なので、レイは仕方なく、その『無題』と言う映像を選んで再生ボタンを押した。
一応、怪しげなモノであった時の用心のために、ボリュームは小さく絞っておく。
しばらく黒い画面が表示された後、おそらくはハンディカムで撮影されたらしい、明らかに素人の撮影と判る映像が映し出された。
まず最初に、薄暗い部屋の壁が映され(先程のサムネイルの映像だ)、次にカメラがパンして一人の女性の姿を捕らえる。
その瞬間、レイは思わず息を呑んだ。
「え? なに? これ、セーラープルート!」
そこに映っているのは、レイと同じセーラー戦士である冥王せつなの姿、いや、既に変身しているので、セーラープルートと呼ぶべきだろうか?
だが、その彼女の酷い有様に、レイは我が目を疑った。
プルートの、セーラー戦士の所以たるセーラーコスチュームは、手袋とブーツ以外すべて剥ぎ取られていた。
彼女の両腕は後ろ手に拘束され、鎖で天井から吊るされているので、プルートはしゃがみ込んで自分の胸や尻を隠すことも出来ない。
それどころか、両脚が開脚姿勢を取らされたままの状態で、足枷によって床の金具に固定されているので、大きく拡げられた股を閉じることすら不可能だ。
ほぼ全裸状態のプルートは、カメラの前に、自らの乳房や秘部を曝け出すと言う、屈辱的な姿勢をとらされていた。
これ以上無いほどに無防備で破廉恥な姿のプルートが、その映像には映し出されていたのだ。
「何、これ? 一体どう言う事なの?」
事態の飲み込めないレイがうろたえる中、画面の中ではプルートの顔がアップになり、怒りに燃える彼女の表情がはっきりと映し出される。
柳眉を逆立て、きっ、とカメラを睨み付けるプルートの赤い瞳は、いつもの涼やかで怜悧なものとは打って変わって、激しい怒りの感情に燃えていた。
強く結ばれた口元には、しかし、一筋の血の跡が残り、身体のそこここにも、血の滲んだ擦り傷や紫色の打撲の跡が見受けられる。
そしてプルートの足元には、彼女の武器であるガーネットロッドが三本にへし折られて、無残な姿を晒して転がっていた。
態度こそ毅然としているものの、プルートが予想外の強い相手に打ち倒され、絶望的な状況に置かれていることは、レイの目にも明らかだ。
と、再び、カメラが大きく引いて、拘束されたプルートの全身を映し出す状態のまま固定された。
中学生のレイたちと違い、十分に発育しきったプルートの褐色の肉体は、画面の中からでも、十分すぎるほど強烈な色香を放っている。
「……な 何なのよ、これ……」
レイは、息をするのも忘れて、モニターに映し出される映像を食い入る様に見つめるだけであった。
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