●ひとりごと。
僕がその人に出会ったのは、あの夜のことでした。
まだ僕が、なんにも知らなくて。死んでしまいたいぐらい嫌な思いをしたあの夜に、僕は彼に会ったんです。
すっかり冬が近づいたあの日。
暗くなった空に、満月がぽっかりかかっていました。
あのころ、僕の住んでた町は、まだぜんぜん開発が進んでなくて、そこらへんに自然が残っていて、街灯もあんまりなくて。でも、あのころの僕たちは、世の中にそんな危険があるなんて、そんな悪意が自分の身にふりかかって来るだなんて、想像もできないでいたんです。
だって、町は平和で、穏やかで、僕たちは、とても幸せに暮らしていたんだから・・・。
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