13『 伯爵の情事 』

 

 『 伯爵の情事 』







 大きな台形出窓から眺める景色。

 雨が降っていた。

 二週間ぶりの降雨。

 それはアルビオン公国の公都、シアルフィーの街並みであり、少女が見慣れている光景でもあった。平民の家の建物とはいえ、公国随一の富豪の御屋敷であり、彼女はそこの御令嬢と言っても過言はないだろう。

 輝くような金色の長い髪に整った顔立ちは十分に絶世の美少女と言ってよく、十四歳の誕生日を迎えるまでに、異性から告白されたことはもはや数えきれない。それは平民という身分もあって、あの『皇国の至宝』とされる皇女よりも多かったことは間違いない。



「・・・・」

 こうして天蓋付きのベッドで横たわり、景色を眺めているだけの生活から約二週間。両親は心配そうに気遣ってくれているのだろう。それも無理はない。少女にとって大事なものを失わせてしまった、と思っているのだから。

 それも両親の願いを聞き入れて・・・と。

 やや語弊があるかもしれないが、それも間違いではないだろう。確かに少女は両親の願いを聞き入れることによって、一晩の相手を・・・自らの純潔を失ったのである。

「・・・でも、本当は違うんだよ?」

 彼女は正直な気持ちを吐露する。

 相手と両親との間で彼女の純潔を捧げることが決まったのは、今から四年前のこと。彼女がまだ十歳になったときのことであり、既にそのときから彼女はその異性に想いを寄せていたのだ。

 両親が頭を下げることがなくても、彼女は喜んで従ったことだろう。

 だから、気兼ねなどしなくてもよいのだと思う。

「・・・(はぁ)」

 今、彼女が思うのは、以前より思っていたことだ。

 ――皇都フレンツェ。

 両親が生まれ育った地であり、二人が初めて出逢って結ばれた運命の場所。故に少女は以前より、皇都見学を夢見ていたのだ。

『・・・行きますか?』

 脳裏に囁かれた言葉にゆっくりと頷く。

『では、行きましょう・・・』



 だから両親の不在の隙に書置きを残して、皇都行きの相乗り馬車に乗り込んだ。ヴェンツェル皇国には皇都フレンツェを中心にして七つの公国があり、一日に数便、皇都と各公国を行き来する馬車が存在する。

「・・・・」

 少女がアルビオン公国を出るのは、いや公都シアルフィーからも初めてのこと。それだけに胸がどきどきしていた。その落ち着きのない仕草、そして着ている衣服などから世間知らずな一面を見抜かれ、割高な料金を請求されていたが、それに気付くことはない。

 御者に銀貨を手渡し、車内に着席する。

 皇国の首都行きということもあって、車内には様々な人間がいて、窓から見える景色は多様であり、その一つに一つの出来事に、少女は新鮮な驚きを禁じえなかった。





 ヴェンツェル皇国の皇都フレンツェにおける居住区の、その一角には人気の少ない一帯が存在する。そこには皇国内の上級貴族ら所有する別荘地であり、ダン・フレーム伯爵が所有する別荘もここに含まれていた。

  大侯爵だった亡き両親の遺産などもあって散財三昧のフレーム伯ではあったが、両親から受け継いだ建物それ自体は周囲の別荘と比較しても遜色ない。侯爵級の広大な敷地に立派な建造物ではあっただろう。しかもこの数日のために別荘の維持管理をする使用人には、数日をかけて徹底させ、建物の隅々にまで掃除が行き届いてもいた。



 このフレーム伯の別邸に久しく来訪者が訪れる。

 およそ彼の代になって初めてのことである。

「・・・・」

 それも見目麗しい美少女ともなれば、驚きにも値するだろう。

「遠路よく来られましたな・・・

 お待ちしておりましたぞ」

 それだけにフレーム伯は上機嫌に来客者を出迎えた。

 彼女の名前は・・・伯爵にも解からない。

 年齢は十三前後といった辺りか。輝くような金髪。瞳の色はアイスブルー。体格は小柄。そして貧相なまでの胸の具合といい、何処となくレティシア皇女やメリエル皇女の姿を彷彿させる外見ではあろう。

 つまり・・・絶世の美少女と言って過言ではない。

 形良い頭に乗せられた麦わら帽、真っ白なワンピース。上級貴族の御令嬢と言われても不思議はないほどの気品がそこにはあった。



 ・・・ほ、本当に。

 だ、大丈夫なのであろうな・・・?



 別荘に招き入れながら、来客の身体を舐めまわすように眺め、伯爵は生唾を飲み込んだ。彼に囁きかけた人物の言葉では、この美少女の身体を自由にしていい――孕ませていい、という話の内容だったのだ。

『伯爵の味方だと信じて欲しいものだが、な』

「・・・・」

 フレーム伯の思考に届けられる言葉の持ち主を、魔軍のヴァーミリオンと名乗り、彼曰く魔軍司令でもある存在であった。



 ―― 一週間前 ――

 その声はフレーム伯の私邸において伯爵に接触してきた人物であり、公爵の爵位及び宰相級の地位、そして皇女の降嫁を約束してきたのだ。無論、無償ではない。それの代償として、ヴァーミリオンと名乗る人物の指示に従う、というものであり、その最初の第一歩が――この美少女を孕ませることにあった。



 ダン・フレーム伯は今年で三十四歳となる、ヴェンツェル皇国内でも三十人といない伯爵位を持つ貴族であり、非常に豊かなまでの野心と限りなく底抜けの無能さを併せ持つ、傑出した人物ではある。

 『身の程を弁えた愚か者』とは、皇国社交界における彼の風評である。それは無能である彼自身が一番に理解していることであり、風評のそれが悪評ではなく、あくまで微笑ましく語られたのは、確かにフレームは野心家なれども、その自身の力量を――無能ぶりを自覚していられたからであろう。

 もし、この均等がどちらかにでも崩れていれば、恐らくは莫大な親の遺産を食い潰し、破産か破滅の末路を辿っていたことに疑う余地はない。そしてそれを伯自身が良く解かっているからこそ、またその絶妙なバランス感覚こそ、確かに稀有な存在でもあったかもしれない。

 体格は情けないほどに肥満したお腹があり、顔も決して褒められたものではない。「一生、嫁手に縁がないだろう」とは、ある貴族たちの証言である。当然ながら童貞であり、平民出身や娼館の娘でさえ、例え金貨を積まれても伯爵の相手は嫌、というのが実情であった。



 無人の家内――そして寝室に招き入れながら、フレームは美少女に問いかける。

「・・・な、名は・・・何と申すのだ?」

「・・・レクティです」

「れ、レクティか・・・良い響きだな」

「・・・ありがとうございます」

 幾つかの質問を重ねていく。

 彼女の名前はレクティ。年齢は十四歳。アルビオン公国の平民出身ながら富豪の娘らしく、その気品に溢れる姿勢に伯爵は浅ましいまでの視線を顔、胸、そして股間へと向けていく。

 《 ごくり・・・ 》

 そのレクティなる娘は今宵から排卵――超危険日を迎えることになる。



「改めて確認するが・・・レクティにはこの時より、私の性欲の相手をして頂く」

「・・・はい」

 頬を紅潮させながらも、彼女は頷くように肯定する。

「滞在する期間中、私の都合がつく限りに股を開き、褥を共にせよ・・・」

 小柄な美少女が頷く。

「〜〜〜〜〜」

 途端に伯爵の唇が歪んだ。

 無論、フレームは昼夜問わず、可能な限りに彼女を抱くつもりだった。三十四年間の童貞であり、レクティは紛れもない、レティシア似の美少女なのである。まして膣内に射精すれば妊娠確定ともなる。これを合意のもとで行えるともなれば、フレームでなくても飛びつくことであろう。

 まずは美少女の唇を奪った。

 《 ぶちゅ〜〜ぅ 》と、擬音が聞こえそうなほどの唇の押し付けである。長年に夢見てきたキスともあって、伯爵の接吻は兎に角にも濃厚だった。

「口を開き、私の舌を受け入れろ・・・」

「・・・(コクリ)」

 フレーム伯の舌が心地良い唇に割って入り《 ねちゃ ねちゃ 》と互いの舌を絡ませていく。その唇を重ねたまま小柄な身体を抱き締め、寝室のベッドへと誘い、少女の身体をゆっくりと押し倒した。

 どれだけの時間が経過したのか、もはや判断もつかないほどに唇を重ねたフレームは、いよいよ少女の股間へと視線を向ける。

「こ、この別荘に居る限り・・・し、下着などは不要。い、いつでも私と性交できるように・・・な」

「・・・(コクリ)」

 その要望に承諾すると、美少女は自らの手で下着を脱ぎ取った。



 こ、これが・・・お、おマンコかぁ!?



 それは綺麗なまでの割れ目だった。当然ではあろう。彼女はつい先日まで処女であり、そしてこれまでに関係した異性はたったの一人。その一人の一度きりだけなのだから。



「そこをひ、広げて・・・見せる、のだぁっ」

 昂奮の余りに舌を咬みつつ、それでも食い入るように凝視する。

「・・・・」

 《 くぱぁ〜〜 》と、広がる美少女の膣内の世界。

 はぁ・・・はぁ・・・

 この卑猥なまでの肉襞の膣内に、男の存在を受け入れ――フレームによって種付けされることを待ち望んでいる卵子ちゃんが、今にも排卵されているのだと思うだけで伯爵の逸物は、既にはち切れんばかりの状態であった。

「よ、よいな・・・」

 伯爵はスボンと下着を脱ぎ捨てて、秘所を広げるレクティの小柄な身体に迫る。

 まだ濡れ具合が足りないが、童貞であるフレームにはそのような予備知識はない。いや、持ち合わせていたとしても、こんな鼻息が荒い興奮状態ともあって我慢できようはずもなかった。

 勢いに任せて挿入を試みる。

「うごぉっ!?」

 レクティの締め付けは素晴らしいものであった。十四歳という瑞々しい身体であり、性交経験が一回だけということもあっただろう。



 こ、これが、お、おマンコ!?

 うっ、うぉぉ、す、凄い・・・



 初めての性交。

 そしてそれからもたらされる甘美な快感。

 レクティの小柄な身体を貪り尽くすような勢いで腰を突き上げ、ただひたすらに、がむしゃらなまでに快感を求めてしまったその結果・・・



 《 どぴゅっ! どく、どく・・・ 》



 十回にも及ばないうちに果ててしまっていた。

「・・・・」

 妊娠ともなる膣内射精を決行しながら、身体を一対に繋げる美少女と視線を重ねたフレームは、そこから非難めいた感情を感じ取っていた。もっともそれは彼の錯覚であり、僅か数回で果ててしまった後ろめたさがそう思わせていたのに他ならない。

「あ、安心、せい・・・こ、今晩は寝かせんぞぉ!」

 もとよりフレームはその腹積もりであったのだ。レクティの妊娠を絶対的とするために、そのもっとも危険であろう今夜を夜通しで抱き続ける予定であった。そのため全てのスケジュールを空白とし、私邸の従者や執事にも休みを与えたのである。

 ・・・その結果、三日三晩。昼夜を問わず、レクティを抱き続けることになり、この美少女の身体を独占し続けた。



 その耐久レースにも似た苦行にも、様々な成果があった。

『素晴らしいことではあるな・・・』

 『思念会話』から賛辞とねぎらいの言葉が贈られる。

「・・・・」

『伯爵にも見せて差し上げたいものだ・・・

 彼女の膣内の、伯爵と混じりあった受精卵を』



 まず、レクティの受胎が確定したのである。

 それも当然のことではあっただろう。彼女の排卵日――超危険日とされるその日からの三日間。簡単な食事と僅かな睡眠を除き、それ以外の時間を子作りだけに励んでいたのである。

 そしてもう一つ。そのレクティとフレームにも変化はあった。二人の初めての性交から明らかに、まさに画期的な変化ではあろう。

 まだ性的な経験に乏しかったはずの彼女がフレームの存在によって絶頂を極めたことであり、レクティを達せられるほどに伯爵の技巧が上がっていたのであるから。



「ずっと手元に置いておきたい・・・そんな気分だな」

 美少女の肢体を自由にできる、シュールな日々。

 それだけに正直な気持ちを吐露する。

 だが、それは叶わない望みであった。いや、思考で会話する人物――ヴァーミリオンの手にかかれば、それも不可能ではないのかもしれない。それでも伯爵は未練を断ち切るように頭を振った。

 フレームの真の望みは市井の美少女を手に入れる、まして孕ませるだけのものではない。公爵位ないし宰相の地位を得て、いずれかの皇女――理想としてはレティシア――を降嫁させることにある。

 そしてそのためにも、ヴァーミリオンの指示には従うべきだ。



「では・・・」

『では、レクティ』

 ヴァーミリオンの思念は、フレームとレクティ、その両者の思考に届けられた。初めて知ったことであったが、彼には二人の意識を同時に語りかけることができるらしい。

『三日間もの間、伯爵に抱かれることが許され、その子胤を宿し・・・身籠ることが叶ったのだ。故にその身体でしっかり奉仕することによって、伯爵との別れを惜しむがよい』

「・・・はい(こくり)」

 彼女は頷くと三日目の朝日を浴びながら、フレームの身体に身を預けるようにして股間にペニスを宛がい、自らの動きでそれを埋没させていく。

 《 ずぶっずぶっ、ずぶっ 》・・・と。

「はぁ〜〜ぁ、んっ・・・」

 この三日間でレクティの身体はフレームの肉棒の味を完全に憶えていた。若さゆえの順応力ではあろう。どのようにして受け止めれば感じるのか、どのタイミングで射精されるのか、を完全に知悉している。

「くぅっおっ・・・」

 対面座位から、いつの間にか騎乗位へと。レクティという美少女の身体に、それからもたらされる快感に、フレーム自身も気付いてはいなかった。ただ美少女が自らに腰を振り続け、受動的に快楽を受け止めるだけである。

 《 すぱぁん! すぱぁん! 》

    《 すぱぁん! すぱぁん! 》

 純白のワンピースからのぞける美少女の股間と伯爵のだらしない腹部の肉が音を発てて別荘の寝室に木霊する。

「だ、出すぞ!?」

 フレームが締まりのない口から言葉を漏らした。

 その言葉を耳にしてもレクティの腰を動かす姿勢は変わらず、射精される瞬間を理解した彼女は、その奥に深々と貫かれる体勢で受け止めていく。

 《 どくっ どくっ 》

 と、脈打つ感覚が体内から伝わる。既に受胎している子宮にまで満たされてしまいそうな、そんな夥しい限りの勢いをそのままに。





「はぁ、はぁ・・・三日間もの間。

 伯爵様には大変お世話になりました。

 本当にありがとうございました・・・」



 レクティは美少女に相応しい可憐な微笑みを湛えたまま、本来なら見向きもしないだろう人物に頭を下げた。この三日三晩。昼夜を問わずに抱かれ、排卵日――危険日とも露知らず、膣内出しをされ続けたのにも拘わらず、美少女は微笑みを湛えたまま伯爵邸を後にしていた。



 ・・・・。

 皇都フレンツェに来たときと同様、相乗り用の馬車に乗り込み、公都シアルフィーへと帰路につく。車内には既に何人もの乗客があった。彼女が伯爵から受け取ったこの四日間の報酬では、さすがに座席には座れない。それでもレクティは不満を抱くことない。

 ・・・当然だった。

「あ、あれ・・・?」

 数日の旅路を終え、公都シアルフィーの市街地に到着した馬車から降り立った辺りで、レクティは目覚めるように意識を覚醒させた。

「・・・???」

 何故に馬車に乗っていたのか、そもそも何処に行っていたのか。この十日前後の記憶がすっぽりと抜け落ちている。

 あれ・・・?

『風邪をひいていたんですよ』

 あ、そうか。と、レクティは思考に届いた言葉に頷く。

 うん、そうだ。ともう一度再確認。間違いない。

 皇都見学を夢見て、意中の異性――初めてを捧げた人物――が住む皇都フレンツェへと飛び出し、余りの興奮の余りに発熱してしまったのだ。

『初めてを――処女を捧げたんですから、仕方のないことなんですよ・・・』

「そう・・・そうだ、よね・・・」

 処女を捧げる、という――レクティにとっておよそ初めての出来事であっただけに、ヴァーミリオンの誘導を違和感なく受け取っていく。それでなくても一介の街娘にしか過ぎない彼女には、ヴァーミリオンの囁きに抗う術はない。

(/////////)

 レクティは頷きながら頬を紅潮させていく。

 あの一夜を思い出してしまったのだ。

 忘れることができるはずもない、あの素敵な一夜を。

 できる限りに優しくして貰えたのだと思う。が、初めての破瓜、ということもあって泣き出してしまったのだ。

 拒んでも良い、と言われた。

 ・・・でも拒めるはずもなかった。

 この人と両親との間で処女を捧げることは以前より決められていたこと。何よりも彼女自身が強く望んでのことでもあった。それだけに後悔なんてしていないし、何よりも決めていた異性に抱かれることが許されて、嬉しくさえもあったのだ。



 アルビオン公国でも一際大きい実家に戻ったレクティは、心配していた両親に事情を説明していく。

 ヴェンツェル皇国の首都、皇都フレンツェ。

 その地はレクティの両親が出逢い、そして二人が生まれ育った土地であり、その娘であるレクティが以前より興味を憶えていた場所でもあった。そこで相乗りの馬車に乗って皇都に赴き、そこで風邪をひいてしまったのだと。

「そ、そうなのかい・・・?」

 母親は訝るように呟き、

『大丈夫ですよ。ご安心ください』

 ・・・・。

「それじゃあ、仕方がないねぇ・・・」

 と、母親も納得する。

 そもそも十四歳という、まだ成人前で――エクリプス大陸では十五歳で成人扱いとなる――あんな重大事を迎えた、両親の言いつけに従って少女から女になる契機を迎えなければならなかったのである。

 そんな裏背景はまさに格好の的であった。

 魔軍司令の能力。その特殊技能――『思考操作』と『記憶改竄』、一定の精神レベル以上で誘導不可――を持ってすれば容易いことであった。



 それだけにレクティは知らない。

 三日三晩に抱かれ続けた人物の存在を。

 そしてその胤を宿している、自分の身体を。

 そしてそれが・・・





 フレーム伯は四日ぶりに皇宮に出仕し、静養していた期間を同僚である廷臣や所属する部署の大臣に謝罪した。もっとも無能な人物である彼に休まれても、彼に特別な仕事があったわけでもない。率直にもっと休んでいても一向に構わなかった、と本気で思われているような節もあった。

「・・・・」

 ・・・まぁ、いいさ。

 この四日間――正確には三日三晩の間に、フレームの視界は変わっていた。世界観が変わった、と言うべきかもしれない。三十四年間にも及んだ童貞を捨て、涎が出るほどの美少女の身体を自由にし、そして孕ませたのでもある。当然のことではあっただろう。

 何処かどう、というわけではなく・・・ただ少なくても、伯爵にはそれだけで十分であったのだ。



 ただどうせ抱くならば、いずれかの皇女の身体が良かったな、と思う。

 さすがに本命のレティシア皇女とは言わない。彼女似のメリエル皇女でも、フレア皇女でも良かった。ヴェンツェル皇国の皇女はいずれも超絶級の美少女揃いであり、フレームにとっては紛れもなく高嶺の花であった。

『それは申し訳ない』

 即座に思考に謝罪がきた。

『これは誰にでも通じる能力ではない。まぁ、その日の個人の状態にも左右されるが、いずれの皇女にも難しいだろう』



 ・・・・。

 実際、如何に魔軍司令ヴァーミリオンとはいえ、誰それと思考を操作し、その記憶を改竄できるというものではない。特に聡明でも知られるフレア皇女、神々に祝福されたレティシア皇女には、その可能性はない。

 状況と条件さえ揃えば、まだ彼女たちよりも幼いメリエル皇女、ユリア皇女なら不可能でもなかったが・・・ただでさえ生理的に嫌悪感を抱かれているフレーム伯なのであるのだから。


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