プロローグ
虫の音が静かに響く夜道。
秋に差し掛かったとは言え、まだ暖かい。
街頭の少ない林道を二人の男が歩く。
「ずいぶん涼しくなりましたかね、最近は」
片方の男が扇子でぽんぽんと肩を叩きながら、一人ごちる。
「しかし、大丈夫ですかねぇ?寮を抜け出したりして」
「ま、短時間だ。それに、虫の音に耳を傾けるぐらいの風流は、許されてもいいと思わんか?」
「規則破りは規則破りでしょうに」
扇子の男に「規則破り」と言われ、もう一方の男は「くくく」と押し殺した声で笑った。
と、パキっと小枝が踏まれる音がして、二人は足を止めた。
「見回り?」と扇子の男が小さく声をかける。「まさか」と応えるが、もう一方の男にも、にわかに緊張が走った。
二人ともいつでも走り出せるように身構えながら、音の下方向へ眼を向けた。
あはは――
はは――
闇の中から聞こえる女性の声。
次の瞬間二人は声を失った。
闇の中から現れたのは、白濁液にまみれ、壊れた笑みを浮かべる女性の姿だった。
股間からは、ごぼごぼと黄色味を帯びた精液が太ももを伝って足元に流れる。
「あは…あはは…」
「うぇっ…」
扇子の男は、その女性の異様な笑顔と、彼女の体に染み付いた異臭にむせ返った。
「運ぶぞ!」
「ええっ!?」
一方の男が女性に駆け寄ると、扇子の男は悲鳴に似た声を上げた。明らかに拒否のそれだった。
|