(4)

 「そんなに恥ずかしがらなくても大丈夫。・・・さあ、まずはこの邪魔っけなお洋服を脱いじゃおうね・・・」
 「あッ!・・・」
 男(無論男なのだろう)はその粘付く手を椿の襟元に差し込み、左右へと引きむしるように力を込めてきた。
 ブチブチと縫い目がほつれ、ボタンがちぎれ飛ぶ。
 「やめて!やめて下さいッ!」
 恥ずかしいのももちろんだが、大神との思い出の服を引き裂かれることが何より辛く、椿は悲愴な声を張り上げた。
 「破かないで!お願い、大切な服なんですッ!」
 「こんな服が?」
 男はちょっとビックリしたように言い、
 「ペラペラの既製服じゃないか。僕のお嫁さんになれば、もっと高級な物をいくらでも仕立ててあげるよ。・・いい子だから、大人しく、綺麗な裸を見せてごらん・・・」
 「あッ、ダメッ!・・・」
 哀訴も空しく、椿のワンピースは、たちまち切れ切れに引き裂かれてしまった。


 男の腕力は、とても病人のそれとは思えない。むしろ異常な怪力と言ってもよかった。
 椿とて、帝国華撃団風組のれっきとした隊員であり、それなりの戦闘訓練は受けている。しかし花組隊員のように強大な霊力を持っている訳ではないから、手足を縛められていては、何ら抵抗の術(すべ)もない。
 男の暴虐を、今の椿は、悲鳴を上げつつもただ堪えるしかなかった。
 「・・ああ・・・」
 ついに下着までもを全てむしり取られ、椿は逆Yの字に固定された身体を震わせながら、絶望的な吐息を漏らした。
 男の視線が、あの指先の感触のように、イヤらしく全身に粘り着いてくるのが感じられる。無駄とは知りつつ、少しでもその視線をかわそうとして、椿は華奢な裸身をさらに縮めるように竦ませた。


 「・・・思った通り、とても綺麗な裸だね。最近はブヨブヨと脂の乗った女の子も多いけど、君のはさしずめ、引き締まった川魚という感じかな。・・・ヘヘ、大和撫子っていうのは、やっぱりこうでなくっちゃね・・・」
 「・・ひどい・・・お願い、もう許して下さい・・・」
 顔を声のする方へとねじ向け、椿は喘ぐように言った。
 誰にも見せたことのない乙女の肌を、今、得体の知れない男に睨め回されているかと思うと、それだけで純潔を汚されてしまったかのような喪失感がわき起こってくる。堪えていた涙が、目の端にジワリと盛り上がってくるのが感じられた。


 「『許す』なんて、おかしなことを言うね。僕たちはこれから『愛し合う』んだよ。お互いの望み通りに・・・」
 「イヤです!私を帰して下さい!今日のことは誰にも言いませんから!・・・」
 「別に、誰に話したって構わないよ・・・」
 男は苦笑するような口調になって、
 「『夫婦』の睦言を吹聴するのは、まああまり趣味の良いこととは言えないけど、僕は少しも困らないし、恥ずかしくもない。もっとも、君にそんな事をする機会はないだろうけどね。・・・だって君は、この先ずっと、僕のお嫁さんとしてこの家の中だけで暮らすんだから・・・」
 「そ、そんな・・・」
  恐ろしい宣告に、まさに血の気が引いてゆく思いだった。
 男の狂気はもはや疑いがない。
 1人の人間を白昼拐かし、そのまま永遠に幽閉してしまうなどという、安物の犯罪小説めいたことも、この男ならばやりかねないと思えた。ましてその家族までが陰謀に加担しているとなれば・・・。


 (このままでは本当に、この男の慰み物にされてしまう。ああ、どうすればいいの?・・・)
 椿の絶望に追い打ちをかけるように、男の粘付く手が、今や無防備の裸身をまさぐるように愛撫してきた。
 「キャッ、いけません!」
 処女故の激しい狼狽えぶりを示す椿には構わず、男はイヤらしい手つきで、若々しい肉の張りを弄ぶ。
 やがてその手が、小ぶりではあるが形良く盛り上がった乳房をきつく握り絞ってきたとき、椿は悲痛な声を上げて身をよじった。
 「痛ッ、やめてッ!」
 「・・ああ、ゴメンゴメン・・・ちょっと乱暴にしすぎたね・・・」
 男は相変わらずののんびりした調子で言って、
 「それにしても、まだまだ硬い蕾って風情だな。・・・でも大丈夫・・・ゆっくりと時間をかけて、花を開かせてあげるからね。それに・・・ああ、そうだ・・・」
 何かを思いだしたように言い、男が身体の位置を動かす気配がした。
 (?・・・・)
 視力を奪われている不安さで、椿が思わず身を固くした瞬間、その胸元に、何かネットリとした液体が大量に塗りつけられてきた!
 「あッ!・・・」
 粘さは固めに溶いた葛(くず)に似ているが、塗られた部位から強く染み込んでくるような、異様な感覚がある。


 「な、何をしたんですかッ?」
 「大丈夫、大丈夫・・・」
 不気味さに悲鳴を上げる椿に、男はなだめすかすような調子で言った。
 「塗ったのは、別に毒なんかじゃないよ。少なくとも君にとってはね・・・」
 「・・・・・」
 「これはね、どんなにうぶな未通(おぼこ)娘でも、身体の芯から気持ちよくトロかしてくれるお薬さ。・・・つまり、とてつもなくよく効く、特製の媚薬なんだ・・・」
 「え・・・・」
 性に対して疎い椿には、その道の好き者たちが用いるアイテムについても、無論知識がない。だが男の口ぶりから、自分に塗りつけられた物が、何かひどく淫らな効果を持っていることは想像が付いた。
 「いやもう、その効き目といったらホントに素晴らしいよ。まるで魔法さ。・・・そう、文字通り、魔法の薬と言えるかもね。だって、元々この世の物ではない薬なんだから・・・」
 謎めいたことを言ってみせ、男はフフと含み笑いをした。
 「効果はアッという間に現れるよ。ホラ、どうだい?」
 「ああッ!・・・」
 再び胸元をまさぐられ、椿は背を大きく反らせながら、頓狂な悲鳴を上げた。


 男の言うように、椿の肉体には、理解しがたい異常が起こり始めていた。
 つい一瞬前まで痛みと嫌悪感しか感じられなかった男の愛撫が、今では何か、やるせないような切なさ、心地よさを伝えてくるのだ。
 (ど、どうしたの?一体これは何?・・・)
 十八才の乙女が遅ればせながら知った、甘い官能の味であった。
 粘液に包まれた薄桃色の乳首が、次第にどす黒く鬱血し、乳房を吊り上げるように高く尖ってゆく。その部分は強く熱を帯び、それが次々と周囲へ伝播して、全身にジワリと汗を浮かせてくるのが分かった。
 「ね、素晴らしいだろう?この薬さえ使えば、生娘だっていきなり天国が味わえるんだ。だから何も心配せずに初夜を楽しめばいいんだよ・・・」
 「あッ、あッ・・・」
 硬くしこった乳頭をクリクリと絞り摘まれ、椿が喘ぐように上体を仰け反らせる。硬く歯を食いしばっていても、あえかな声が噴きこぼれてしまうのをどうしようもなかった。
 「こっちの方はどうかな?・・・」
 男が言い、粘付く掌をソロソロと下腹の方へ這わせてゆく。そして・・・・。


 「あッ、ダメッ!そこは!・・・」
 男の指先が、最も恐れていた羞恥の部分を犯し始めたのを感じ、椿の唇から絶叫がほとばしった。
 淡い恥毛をサリサリと掻き分ける気配に続き、ぼってりとした指が、秘裂をなぞるように這い込んでくる。
 まるで生乾きのカサブタが剥がされるように、その部分が、ネットリと糸を引きながら口を開けてゆくのが分かった。
 「へ、へ・・・スゴイな、もうすっかりヌルヌルだァ・・・」
 「やッ、触らないでくださいッ!・・・」
 「そんなに恥ずかしがらなくてもいいんだよ。君が特にはしたないという訳じゃないんだ。このお薬にかかれば、どんな貞女だってみんなこうなるのさ。ホラ、このネバネバは、君の身体から出た分だ・・・」
 「イヤです!お願いですから、もう・・・あうッ!・・・」
 Vの字に広げた指先で、肉の門をくつろげるように割り開かれ、椿の裸身がギクッと収斂した。
 ゾクゾクするような感覚が脊髄を駆けのぼり、その切なさに堪らず腰が浮き上がる。
 自慰の経験がない椿にとって、それは快感と言うよりも、何か恐ろしい背徳の味に思えた。自分の局所が、今どんな状態になっているのか、想像しただけで死にたいような絶望感がわき起こってくる。


 (恥ずかしい!もうイヤ!・・・ああ、誰か助けに来てッ!・・・)
 涙があふれ出し、目隠しの布を重たく湿らせた。
 「・・・すっかり柔らかく花が開いたね。蜜もたっぷり出て、完全に準備完了だ・・・」
 男が言い、押し開かれた椿の双脚の間へ、身体を割り込ませるようにして覆いかぶさってきた。
 「いよいよ君と僕との結婚式だ。お互いの夢が、ついにかなう時が来たんだよ・・・」
 「あッ、ダメです!イヤーッ!・・・」
 柔襞に異物が押し当てられるのを感じ、椿は縛められた裸身を狂ったように捩って絶叫し始めた。
 大神以外に純潔を捧げたい相手がいるわけではなく、その大神とは結ばれる望みの無いことも分かっていたが、だからといって、こんな所で得体の知れない男に犯されてよいはずはない。
 だが男は椿の抵抗を事も無げに押さえ込み、とどめの体勢を伺うかのように腰の位置をずらした。


 「怖がらなくても大丈夫だよ。例え初めてでも、そのお薬が効いていれば、痛みよりも気持ちよさの方が勝るはずだ。それに、なるべくソッとしてあげるから・・・」
 「許してください!お願い、それだけはァ・・・」
 「暴れちゃダメだよ。初夜の花嫁らしく、おしとやかにしなくちゃね。・・・ほぅら、入るよ・・・」
 泣きじゃくり、弱々しく身をもがく椿の花芯に、硬く充実した男の肉体が傍若無人に押し入ってきた!
 「あーッ!・・・・」
 無垢な急所を差し貫かれた乙女の絶叫が、何とも言えない哀感を伴って、屋敷内に木霊していった・・・・。


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