(5)

 「あッ・・んンッ・・あッ・・・」
 かすれた喘ぎ声が、高く低く室内に響いている。
 椿は3度目の交わりを男に強いられ、縛められた裸身を哀しげに波打たせ続けていた。
 これも媚薬の作用なのか、男のタフネスぶりは、病人というのが全く信じられないほどである。
 ほとんど休むことなしに身体を繋がらせながら、しかし男の肉体は、ますますそのボリュームと硬度を増してくるようにすら思われた。
 そして媚薬の恐るべき効果は、椿もまた存分に思い知らされていた。
 淫靡な熱は今や完全に全身を支配し、上気した肌に玉の汗を噴き出させ続けている。
 突き割られたばかりの肉の小鉢からもすでに痛みは消え、代わって目眩くような官能が渦を巻いていた。


 (・・どうしてこんな・・・私の身体・・一体どうなってしまうの?・・うッ、イヤッ!・・・)
 純潔を奪われた絶望感とは裏腹に、自らの局所は熱い樹液を溢れさせ、悦びに震えながら、顔も知らない相手の肉体を迎え入れている。自身の身体の裏切りが情けなく、恥ずかしくて、涙が後から後から湧き出てくるのをとどめようもなかった。
 「うぅ、またイクよ、椿ちゃん・・・」
 「やッ!もうやめて!・・・ああ、お願いです!・・・」
 「ホラ、出るよォ・・・」
 感極まった声で言い、男が腰を震わせる。
 「ああッ!・・・」
 汚れた果汁が体内に熱くぶちまけられたのを感じ、椿は悲愴な声と共に頭を仰のかせた。
 白い喉元がヒクヒクと震え、やがて押し殺したような嗚咽が、食いしばった歯の奥から嫋々と洩れだしてくる・・・。


 「うううッ・・うッ、うッ、うッ、うッ・・・・」
 帝都を護る華撃団隊員としての誇りも意地も、今の椿からは根こそぎ奪い尽くされていた。
 だが、それも無理はない。
 理不尽に拐かされ、無垢な身体を陵辱という形でこじ開けられたばかりか、男の放出したものを、二度、三度と、その花壺一杯に受け止めさせられたのだ。
 しかも行為の最中、薬の作用とは言え、心ならずも、女としての高みへと追い上げられてしまった我が身への嫌悪と絶望・・・・。
 (・・もうダメ・・・。例えここから逃げ出せたとしても、こんな穢れた身体にされてしまっては・・・。ああ、大神さん・・・)
 このまま死んでしまいたいという自暴自棄な気持ちが、胸の中を黒々と満たしていた。


 「少し疲れたね。休憩しようか・・・」
 男は、椿の打ちひしがれた胸中などまるで知らぬげに言い、ほうと息をつきながら身体を起こした。
 「う・・・」
 体液にまみれたものがズルリと引き抜かれ、その瞬間の摩擦に椿が呻き声を洩らす。
 「思った通り、君の身体は素晴らしかったよ・・・」
 男は、汗に濡れ、瀕死の獣のように震えている椿の裸身を、愛おしげに撫でさすりながら言った。
 「小柄だから、あの部分の造りも華奢で狭くて、それが堪らない。当たった先にキュッとまとわりついてくる感じも最高だよ・・・」
 下卑た寸評に、椿は目隠しされた顔を思わず背けて、
 「・・もう・・許して下さい・・・私を帰して・・・」
 「帰すって?どうして?・・・」
 男は戸惑った様子で言い、
 「君はもう、僕のお嫁さんなんだよ。今の君の家はここなんだ。何処にも帰る必要なんかないんだよ。それに・・・」
 ヌルヌルした指先が、未だオルガの余韻に痺れている秘裂を、無遠慮にこじり割ってくる。
 「あうッ!・・・」
 「僕との『契り』で、君のここも、すごく気持ちが良くなっただろう?あんなに嬉しそうな声を出していたものね。・・・これからもずっと、僕が気持ちよくしてあげる。・・あのお薬だって、まだまだ残っているしね。二人でもっと気持ちよくなろうよ・・・」
 「そ、そんな・・・」
 本当に永遠の俘囚とならなければならないのかと狼狽えながらも、椿は男の言葉に、強く反駁することが出来なかった。
 いきさつはどうあれ、淫らな欲望に打ち負かされた自分が、幾度となく、喜悦まじりの声を上げてしまったことも事実だったからである。


 「・・・そうそう、いつまでも花嫁を縛めたままでは申し訳ないな。そろそろ手足の縄を解いてあげても良い頃だね・・・」
 男は意外なことを言い、実際に椿の縛めを外し始めた。
 もう完全に椿が観念したと思ったのか、それとも口調そのままに脳天気な気性の男なのか、いずれにしても、椿にとっては、逃げ出すための千載一遇のチャンスだと思えた。
 が、しかし・・・。
 (?・・・・)
 縄が解かれ終わったことを感じ、まず何はなくとも、脚をすぼめて恥部を覆い隠そうとした椿は、それが全く思い通りにならないことに気が付いて愕然とした。
 いや、脚だけではない。
 腕も上方に高く伸ばされたままでほとんど動かせず、鬱陶しい目隠しを取り払うこともかなわない。
 もはや縛り付ける枷もないのに、逆Yの字に押し開かれた椿の裸身は、未だ全く本人の自由にはならないのである。


 「しばらくは、身動きをしようとしても無駄だよ・・・」
 男が、狼狽えきった椿の心中を見透かしたかのように言った。
 「さっきのお薬はね、使い慣れるまでは、人の運動神経を極端に麻痺させてしまうんだ。あまりに気持ち良くって、身体中痺れちゃうワケだね・・・」
 「・・・・・」
 「今でこそ何ともないけど、僕も最初に使ったときには、丸一日起き上がることも出来なかったよ。ママが手伝ってくれなかったら、オシッコだって出来なかったくらいさ。・・・ああ、心配しなくても大丈夫、君の下の世話は僕がやってあげるよ。オシッコでもウンコでも、言い付けてくれればすぐにね・・・」
 「そ、そんなこと・・・」
 恐ろしい宣告を聞き、椿の全身に悪寒が走った。
 排泄の始末を、見も知らぬ男に任せなければならないなど、考えただけでも死んでしまいたくなるような恥辱である。処女を奪われた上に、一体どうして、そのような辱めまでを受けなければならないのか・・・。
 「・・・もうイヤ・・・お願い、堪忍して下さい・・・」
 震え、しゃくり上げるようにして、椿が再び哀訴を始めた時・・・。
 ギィーッ・・・・。
 扉の重く軋む音が響き、澱んでいた室内の空気が微かに動くのが分かった。
 誰か別の人物が、部屋に入ってきたらしい・・・。


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