第三章 残酷夢の幕開け・引き裂かれて・・・3

 「うッ・・うッ・・・」
 恵麻里は縛められたままの身体をソファの上で弛緩させ、間欠的に襲ってくる官能の余波に小さな呻き声を上げ続けていた。
 クリスの言った通り、悪魔の媚薬ゾニアンによって、恵麻里はものの二分と経たないうちに激しい絶頂へと導かれてしまったのである。それも立て続けに二度も!・・・。
 (ああ、どうしてこんなことに!・・・・)
 噛みしめた口元から、絶望を込めた吐息がこぼれ出る。
 羞恥と屈辱、そして恐怖がないまぜとなり、頭の中はパニック寸前だった。
 他人の、それも忌まわしい敵である犯罪者の眼前で、生まれて初めて女としての快楽の高みへ追い上げられてしまったことが、恵麻里の自信とプライドをずたずたにしていたのである。
 時折突き上げてくる甘いオルガの余韻に、はだけられた胸元がピクンピクンと上下する様子が、いかにも瀕死の獲物を思わせて哀れであった。


 「どう?ステキだったでしょう?」
 クリスは寝かされた恵麻里の頭側に腰を下ろし、顔を背けてじっと涙をこらえている少女探偵の顎を巻き取るように腕を回した。
 「あ・・・」
 思わずあえぎ、身をすくませる。
 首筋に触れられただけで、その部分が再びジーンと官能の熱を持ってくるのが分かった。
 「あんなに清純ぶってすましていたくせに、気持ち良くってもがくわ喚くわ、大騒ぎだったじゃない。フフ、一皮むいてみれば、とんだ淫売娘ねェ・・・」
 「・・・・」
 「淫売」という下品な揶揄が、自尊心をザクリとえぐる。しかし浅ましく性に悶える姿を見られてしまった以上、恵麻里は言い返すことも出来ずにただうつむくしかなかった。


 「ゾニアンの威力には逆らえないってことが、これで分かったでしょう?自分じゃ腕利きのS・Tのつもりでいたのかもしれないけど、今のあなたは私たちの水槽に捕らえられた小魚も同然なのよ。これからもっと存分に、身の程っていうのを思い知らせてあげる。ゆっくりと時間をかけてね・・・」
 「あッ・・・」
 右の乳房を包むように愛撫され、恵麻里は哀れな声を上げて身体を反り返らせた。
 薄い桃色だった小さな乳首は今やどす黒く濁った血の色に変わり、その硬さとボリュームをさらにジワジワと増しつつある。クリスの掌にそこを揉みつぶすように刺激され、目のくらむような快感が体内でフラッシュのように炸裂した。
 「やッ!・・ヒあッ!・・・」
 歯を食いしばって呻きながら、恵麻里は何とか処刑吏の白い手から逃れようと身をくねらせる。


 恐ろしい魔の薬は、未だその効力を失っていないらしい。このまま淫らな愛撫に身を任せていれば、たやすくまた、あの羞恥に満ちた絶頂へと追い込まれてしまうだろう。その恐怖心が、ついに恵麻里に悲鳴に近い哀訴の声を上げさせた。
 「も、もうやめてッ!お願い、触らないでッ!」
 「何言ってるの、お楽しみはまだ始まったばかりよ。ほぉら・・・」
 指先が、濡れた乳首をクリクリとひねるようにつまみ上げてくる。その部分の神経が全てむき出しにされ、沸き立ったかのような、異様な恍惚感が走った。
 「ああッ!」
 「意地を張らずに、素直にこの快楽を楽しみなさいな。ね、恵麻里ちゃん・・・」
 「ダメッ!・・や、やめ・・・あッ、アアアアぁーッ!・・・・」
 魂切るような絶叫を上げ、恵麻里の身体がグーンと弓なりになる。
 不安の通り、押し寄せる歓喜が、もろくもまた彼女の気を爆ぜさせてしまったのだ。
 ゾニアンの猛威は、今や完全に恵麻里の若い肉体を犯し、支配して、理性によるコントロールを不能にしていた。


 「あーら、イヤだイヤだと言いながら、またイッちゃったの?まったくスケベなS・Tさんねェ・・・」
 「うァ・・・あ・・・・」
 「さっきまでの勇ましさはどうしたの?もう一度あの『汚らわしいッ!』って啖呵を切ってみせてよ」
 からかうような口調で意地悪くのぞき込むクリスを見上げながら、恵麻里は弱々しく喘いだ。
 「も、もう・・許して・・・お願い・・だか・・ら・・・」
 痺れるような疼きが、子宮の中でドロリと渦を巻いているのが分かる。すぐにでも次回のオルガへと成長しそうなその感覚が、恵麻里にはただ恐ろしかった。


 「許す?勘違いをされちゃ困るわね。私はあなたを虐めてるわけじゃない、優しく可愛がってあげているのよ。ホントは単なる獲物に過ぎないあなたに、精一杯の敬意を表してね」
 クリスは青い瞳に冷たい笑みを浮かべ、恵麻里の頬をなだめるように撫でさすった。
 「それにさっきも言った通り、お楽しみはまだ始まったばかりなの。あなたを満足な『商品』に仕上げるには、もっともっと時間をかけて調教し、身体を造り替えてあげないとね・・・」
 「そ、そんな・・・・」
 思わず声を震わせ、恵麻里は言い募った。
 「これだけ私に恥をかかせれば、もう十分でしょう?許してくれれば、もうこの『新世界準備会』からは手を引くわ。この組織の調査も、救出業務もあきらめる。だから・・・お願い・・・これ以上は・・・・」
 言葉の最後は、嗚咽に近い、絞り出すような声音に変わってゆく。
 心底からの許しを乞うたことで、恵麻里は自らの完全な敗北を認めたような気分になり、こらえていた涙が目尻からドッと溢れ出た。


 「あらあら、泣くのはまだ早いわよ。泣かなきゃならないことは、この先まだうんとあるんだから・・・」
 獲物が次第に屈服しつつあることを見て取り、クリスは満足そうに鼻を鳴らす。
 「それに、この組織から手を引くだなんて遠慮がましいことは言わなくてもいいのよ。どうぞ気の済むまで『新世界準備会』を調べてちょうだい。救出業務もあきらめずにお続けなさいな。フフ、助けてほしいのは今やあなたの方でしょうけど。・・・さて、と・・・」
 「あッ!・・・」
 まるで新たな陵辱の幕開けを告げるかのように、クリスの手が、恵麻里の前髪を留めていたヘアバンドを抜き取った。
 そしてその瞬間、恵麻里の脳裏に稲妻のように閃いたことがあった。
 (そうだわ、静音!・・・あの娘は何をしているの?)
 外された白いヘアバンドにマイクロ集音機が仕込まれていること、そしてそれを通して、パートナーの静音が自分の様子をモニターしていることを、恵麻里はようやく思い出したのだった。
 思いもかけず囚われの身となったことに動転し、今までそのことをすっかり忘れていたのだ。


 (私が敵に捕まったことは、集音機を通して分かっているはずよ!・・・ああ、早く助けに来てッ!・・・)
 恵麻里がクリスに捕らえられてから、失神していた時間を考慮しなくても、すでに20分以上が経過しているはずだ。
 静音が恵麻里の危機に気付いてすぐさま行動を開始しているのなら、そろそろこの場に救出に踏み込んできてもおかしくない時間だった。
 しかし、恵麻里は知らない。静音が深雪という少女を救うために、恵麻里のモニターを中断して、車の外へ出てしまったことを・・・。
 もっとも、たとえ知っていたとしても、今の恵麻里には、もはや一刻も早いパートナーの助けの手を求める以外に、何ら打つ手はないだろうが・・・。
 そんな恵麻里の内心を知ってか知らずか、クリスはいったんソファから立ち上がり、今度は恵麻里の脚の方向に腰を下ろした。


 「!・・・・」
 敵が自分に新たな辱めを加えようとしていることに気が付き、恵麻里は思わず身体をこわばらせる。ゾニアンの魔力に射すくめられ、今やクリスに対する敵愾心よりも、完全に恐怖心の方が勝っていたのだ。
 そして不安の通り、クリスの白い手は、縛め束ねられた恵麻里の双脚を淫靡に撫でさすり始めた。
 「あッ、イヤッ!・・・」
 「ステキな脚ねェ。18歳ならではのピチピチの張り。若いってことは羨ましいわ・・・」
 クリスの手が、閉じあわされた太股をこじ割るように這い昇ってくるのを感じ、恵麻里は一際大きな悲鳴を上げる。
 「ダメッ!・・・そこは!・・・」
 魔薬に冒されて、ひどくはしたない状態になっているらしい、自分の最も恥ずかしい部分・・・。
 それを何とか死守しようと、恵麻里は身体をくねらせるが、エクスタシーに麻痺した下半身には最早ほとんど力が入らない。あっと思う間もなく、彼女のミニスカートは腰の上まで剥き上げられてしまった。


 「まあまあ、こんなにタップリ溢れさせちゃって・・・」
 「ああ・・・・」
 絶望的な嘆息を洩らし、恵麻里は羞恥に染まった顔を仰かせた。
 こんもり盛り上がった若々しい恥丘を、ふっくらとくるんでいる純白のパンティー。
 その柔らかな布の中央部に湿った長円形のシミが拡がり、肌にピタリと張り付いて、
奥に息を潜めている亀裂の形をくっきり浮かび上がらせている。
 ゾニアンによって心ならずも溢れ出した愛の汗が、恵麻里の下着を淫らに汚していたのだった。


 「まるでオネショでもしたようよ。フフ、そんなに気持ちが良かったの?」
 あざけるように言いながら、クリスは布地の湿った部分をつまんで持ち上げた。
 淡い、頼りなげな叢が僅かに顔をのぞかせ、そこから甘い処女の香りが漂ってくる。
 「イヤッ、見ないでッ!」
 「そうはいかないわ。ここが商品の一番肝心な所じゃない。未通(さら)なのかどうかもちゃんと確かめないとね」
 「そ、そんな・・・あッ!・・・」
 クリスは恵麻里の足首を束ねているバンドに手をかけ、グイと上に持ち上げた。
 脱力しきった両脚は上体の方へとガニ股型に折り畳まれ、濡れた下腹部がアッと言う間にあからさまにされてしまう。そして魔女の白い指は、つまみ上げられた下着の隙間からまるで蛇のように這い込み、媚肉の溝をなぞるように蠢き始めた。
 チュッ・・・ヌチュッ・・チュッ・・・・
 「あくぁッ!・・・」
 脊髄を殴りつけるような暗い悦びが走り、恵麻里は悲鳴と共に身体を揺する。
 恥門の縁一杯に溜まっていた滑らかな蜜がドッとあふれ出し、差し込まれた指に沿って幾筋もキラキラと糸を引いた。


 「パックリ割れちゃってェ・・・フフ、いよいよ奥の院よ・・・」
 「お願い、許して・・・」
 自らの淫らな生理を思い知らされる屈辱で、今やほとんどしゃくりあげるようにして哀訴する恵麻里には構わず、クリスは右手の中指と人差し指で、弾力のある肉のふくらみを左右に押し開いていった。
 「見えたわよォ。・・・なんて、綺麗・・・・」
 妙にしみじみとした声で言い、クリスはその部位をじっくりと味わおうとするかのように、恵麻里の股間に顔を寄せる。
 眼下に、薄ピンク色の肉果がツヤツヤとむき出しにされていた。そしてふっくらと盛り上がった皮膜の頂付近に、小さな裂け目が、濡れてヒクヒクとその入り口を震わせている。
 恵麻里の成熟した女体が、しかし未だ無垢のままであるという、まさにその証であった。


 「感心感心・・・最近の若い娘に似合わず、安直に男と交尾(さか)ったりはしていないわけね」
 クリスはニンマリと口の端を歪め、
 「それでなくっちゃいけないわ。売られた先で性の奴隷として仕えるにしても、恥じらいと貞淑さは絶対に必要だからね。・・・『マーメイド(人魚)』・・・商品に仕立てた女の子のことを私たちはそう呼んでいるんだけれど、まさに水の妖精の様な気品が求められるのよ。わざわざ大金をつぎ込んで、街でも買えるような安物の淫売婦を欲しがる物好きはいないものね・・・」
 言いながらクリスは、狭い肉孔の縁をなぞるように指先を回す。
 「あくッ!・・・」
 異様な感触に、恵麻里は怯えきった声を上げて腰を引こうとするが、くの字に折られて上から押さえ込まれた身体はほとんど動かせない。
 あまりの惨めさに、新たな涙が止めどなく湧いて、両鬢をテラテラと光らせた。


 「でもね、売り物にするのに、このままではかえって具合が悪いわ・・・」
 クリスは笑顔のまま恵麻里にぐっと上体を寄せ、ささやくように言った。
 「マーメイドはね、買っていただいたお客様を喜ばせるための、あらゆる手管を身につけなきゃいけないの。そのためには、何はともあれ、その部分の『通り』を良くしておかなきゃ始まらないものね。分かるでしょう?・・・」
 「そんな・・・ま、まさか・・・・」
 絶望的にあえぎ、粟の立った肌を細かく震わせながら、恵麻里はクリスの白い顔を見上げる。


 勝ち誇ってクックッと忍び笑いを洩らしている美しい魔女は、いつの間にかその片手にグロテスクな物を握りしめていた。
 複雑にくびれ、ゆるく反り身になっている、バー状のアイテム・・・。
 古くからその道の楽しみのために用いられている、男根を型どった性具であった。
 もっとも形こそ旧世紀の物と変わらないが、その空色に透き通った刀身は特殊な新素材で出来ていて、女性器の中で自律的に形や硬度を変え、蠢いて、強烈な快感を導き出す仕組みになっている。いわばディルドーのハイテク版である。
 クリスはその淫らな処刑具を、捕虜の無垢な急所に無情に突き通すつもりなのだ!


 「や、やめて!・・やめてお願いッ!・・・」
 相手の恐ろしい意図を悟った恵麻里は、背中を下に、座禅を組んだようなスタイルのまま絶叫に近い声を上げて身をよじった。むき出しにされ、熱く膨れ上がった両の乳房が、ユサユサと哀しげに波を打つ。
 (こ、こんな奴等に処女を奪われるなんて・・・。う、ウソよ!これは悪夢だわ!・・・)
 恵麻里にとって、つい半時間ほど前までは、その犯罪行為を暴き、狩り出す対象でしかなかった闇の組織が、今は逆に彼女を牙にかけ、ズタズタに引き裂こうとしている!自分がはまり込んだあまりにも皮肉で無惨な運命が、とても現実の事とは思えなかった。


 「馬鹿ねェ、そんなに大げさに泣きわめくような事じゃないでしょう?たかが皮が一枚破けるだけじゃないの」
 わざと下卑た言い方をしてみせながら、クリスは手にした張り型を素早く恵麻里の濡れた恥門へとあてがった。
 「ひッ!・・・」
 肉襞をヌルリとかき分けてくる処刑具を知覚し、恵麻里は思わず怯えきった声を出す。
 「怖がらなくても大丈夫。ゾニアンがまだまだアソコを痺れさせているから、ほとんど痛くはないはずよ。むしろもう一度イッちゃうくらいイイ気持ちかもね・・・」
 「い、イヤぁッ!お願い、そ、それだけはァ!・・・」
 あえぎ、すすり上げながら恵麻里は最後の抵抗を試みるが、縛められた身体をいくら揺すっても、這い込んでくる性具をかわしようがない。寝かされたソファがギシギシと哀しい音をたてた。


 (し、静音ッ、助けに来てッ!・・・今すぐ来てくれないと、私、取り返しのつかない身体にされてしまう!・・・ああ、お願いよッ!・・・)
 藁にもすがる思いで静音に呼びかける恵麻里の心中の叫びに、クリスの押し殺した声音が、まるで死刑宣告のように覆い被さる。
 「さあいくわよ、可愛い『乙女』探偵さん・・・」
 言うと同時にクリスの手が大きく動き、弾力のある槍が一気に恵麻里の花奥を貫き破った!
 「イひぎャああああーッ!・・・」
 獣のような絶叫と共に、汗と涙にまみれた恵麻里の裸身が、ソファの上で二度、三度と大きく跳ね悶える。涙が飛沫となって、見開かれた目から無数に宙へ舞い散った。
 「これであなたは『ただの』可愛い探偵さんてわけね。ウフフフ・・・成人の瞬間をどうぞじっくりと味わいなさいな・・・・」
 引き裂かれる一瞬の激痛!・・・そしてその後に、目がくらむほどの強烈な快感がドッと膣内へ押し寄せてくるのを感じた時、狩るべき召還組織によって自らが贄と化してしまった哀れな少女探偵の意識は、絶望の暗闇に引きずり込まれるかのように果てしなく沈んでいった・・・・。


→次章を読む

→2へ戻る

→最低書庫のトップへ