第二夜:悪魔のヘアブラシ



ホテルの一室で、雅耶が扉をあけて男を入れ、入ったあとに雅耶が扉を閉めた。狭い通路から広い部屋の片隅にあるベッドに男がすわらされた。雅耶はかばんをかたわらに置いて、前に垂れかかっていたツイン・テールの三つ編みの髪の毛を背中にはらいながら立っていた。
雅耶「おつかれさま。さっそくですが、先にお金をいただきますわ。ここで支払っていただければ、あとはどんな遊びにも応じますから。」
男「じゃあ、とりあえずどのくらい?」
雅耶「大3枚でよろしいですわ。」
男「えっ?3万円でいいんですか。」
雅耶「わたし、3という数字が好きなの。こんなふうに髪の毛を三つ編みにいつもしていますし。」
男「今日はたくさん用意してきたけど。それならお嬢さんのご希望通り、はい。」
男は雅耶に一万円札3枚をまず渡し、雅耶は受け取るとそのまますぐ制服のスカートのポケットにしまいこんだ。
雅耶「じゃあ、社長さん、なにして遊びましょうか。さっそくいっちゃいますか?」
雅耶が制服を脱ぐためにスカートのホックに手をかけようとすると男はその手をとめた。
男「ああ、お嬢さん、そんなかんたんに制服をぬいじゃだめですよ。」
雅耶「えっ?ぬがなくてよろしいんですか?」
男「私はですね、女の子の裸とかはあんまり興味がないんです。どちらかといえば、制服、特にセーラー服を着たままの姿に燃えるんです。それに、この昔の女学生らしい三つ編みの長い髪の毛がなんといっても好きであこがれました。」
男はまた、雅耶の肩ごしに背中にかかっている雅耶のかたほうの三つ編みにしている髪の毛に指をあてはじめた。
雅耶「あっ、ちょっと、髪の毛にはわたしがさわっていいというまで、さわらないでください。性感帯ですから。」
男「ああ、これはいきなり失礼しました。あなたのいちばん大切な命でしたね。でも、あとでさわらせていただけるんですね。」
雅耶「ふふふ。社長さんはやっぱり長い髪の毛がお好きなんですね。わたしが髪の毛を長くしているというだけでもともとわたしのことを選んだんですものね。」
男「そのとおりなんですよ。自分も女の子に生まれたら、あなたみたいに髪の毛を長くして三つ編みとかやってみたかったと子供の時からずっと思ってましてね。」
雅耶「男の人だって髪の毛を長くできますわ。げんに、うちの小学生の弟も腰まで髪の毛長くしてるんですよ。自分で三つ編みもできますし。」
男「えっ?弟さんで、うらやましいですね。」
男はまた雅耶の髪の毛をなでようとしたが、また今度は雅耶がその手を振り払った。
男「お嬢さん、まだいけませんか、髪の毛をさわるのは。つい、早くさわりたくなってしかたないんですが。」
雅耶「かんたんに男の人に、わたしの髪の毛はさわらせられませんわ。第一、社長さんは手を洗ってらっしゃらないようね。そうだわ。あっちにシャワーがありますから、そこでからだも洗ってください。」
男「そうですね。わかりました。」
雅耶「わたしは制服をぬがなくても、あなたは服を全部ぬいでください。このお部屋のまんなかに背中を向いて立ってますから、シャワーが終わったら、はだかになったままで後ろからわたしの背中に抱きついてください。そのとき、わたしの髪の毛にさわってもひっぱってもかまいませんから。」
男「わかりました。」
もはや、男は雅耶の奴隷のように行動しようとしていた。
男がシャワーを終えて身体をタオルでふき終え、部屋に戻ると、雅耶がさきほど言ったとおりに背筋を伸ばして背中を向けて立っていたが、二本の三つ編みの髪の毛は身体の前に垂らしていた。ラブホテルによくある特徴で、雅耶の立っていた正面には巨大な鏡もあり、男が後ろから現われるのがわかるようになっていた。
男「お嬢さん、背中から痴漢みたいに抱きついてよろしいんですね。」
雅耶「どうぞ、おたがいにみにくい顔を見るのはいやですから。」
いかにも眼鏡をかけたままの男のいやらしそうな目つきだった。裸になったままの男は雅耶の背中にとびこむようにして制服ごと抱きつき始めた。男は両腕を雅耶の各々のわきの下からこじ入れて、雅耶が前に垂らしているそれぞれの三つ編みの髪の毛のなかほどをわしづかみにして引っぱり出した。
雅耶「ううっ、うう…。」
男「いひひ…。そうだ、こいつを。」
雅耶がもだえ始めると、男は雅耶のうなじのところに顔をうずめるようにかがみ、また髪の毛をつかんだところがちょうど胸のあたりで男は髪の毛を握りつかんだまま雅耶の胸をもみ始めた。

雅耶「ああ、ああん…。」
男「気持ちよさそうだな、ひひひひ。」
男はとうとう性欲をむき出しにしてまた性器を渤起させると、その性器を雅耶のはいていた制服のスカートの上裾をひっぱってつっこませ、とうとう興奮が絶頂に達して精液も流れ出て、雅耶の下着や身体も汚し始めていた。これで、雅耶は恥部が濡れてきていると感じた。
雅耶「あん、あん…。」
男「ひひひひ、ひひひひ。」
まるで悪魔のようないやらしい笑い声で男は雅耶にささやき続けていた。雅耶のはいていたスカートから、男の興奮して出した精液も大量にじゃーっと垂れ落ちていた。いくらお金をもらって援助交際の相手をしているとはいえ、こんな行為を押し付けられてはふつう抵抗されるところだが、雅耶にはたくらみがあった、というより、雅耶にとりついている悪魔のしわざなのである。
まもなく、男の自分に対する痴態行為を映し出された鏡を見ていた雅耶の目が突然赤く光り始めた。
雅耶「くくくく。」
男に握られていた雅耶のおさげ髪が、両方ともとつぜんひとりでにその毛先が向きを変えて動きだした。それもほとんど左右対称に、まるでへびがはうようなうねり方だった。そして、その髪の毛先は、雅耶の胸をつかんだままの男の手首にひとりでに巻きついていた。
男「うっ、いっ、あっ…。」
雅耶の首の後頭部では、おさげ髪を真ん中で分けていたその分け目がカパッと割れ始めた。分け目とうなじに顔をうずめていた男の首がその割れ目に吸い込まれはじめた。
男「ああっ!」
男の方が少なくとも雅耶に比べて身長も高く、大柄なはずであるが、男の身体も小さくなり、さいごに三つ編みの髪の毛に巻かれていた手首だけが残っていて、手首から髪の毛が離れるとその手首もうなじの分け目に飲み込まれ、分け目が閉じられていった。その時に男のかけていた眼鏡もはずされて床のほうに落ちたが、ちょうど雅耶のかばんが開きかけているところに眼鏡は入っていった。
雅耶の三つ編みの髪の毛先からは、ガラガラと音をたてながらいくつもの白いかたまりが落ちてきた。実は男の骨だったのである。
雅耶「うふふふ。」
目を赤く光らせていた雅耶も元の顔に戻ったが、口を片手でおさえながら不気味に笑っていた。

自分の行動をなにも覚えていないという雅耶は、とりあえず授業も始まるというので教室に戻っていた。
次の休み時間、圭子たち3人も、悪いうわさがひろがると自分たちも援助交際をやっているだけにあまり突っ込まないようにしようと考え直していた。
圭子「さっきはごめん、雅耶の家に念のため電話して雅耶のおかあさんにきいた。きのうはずっと家にいたって言ってるから、やっぱりだれかほかの人とわたしたちが間違えたみたいね。」
江里「たしかに、みんな顔のほうがわからなかったから、髪の毛が長くて三つ編みだったらすぐ雅耶だとばかり思い込んで、悪かったわ。」
英美「このへん、似たような制服の学校多いし、長い髪の毛の子なんていくらでもいるものね。髪形はいくらでも変えられるし、わたしもやっぱり髪の毛が超長い子を見ると雅耶のことすぐ思いだしちゃう、わたしたちの思いちがいね。」
いちおう、三人にあやまられた雅耶だったが、内心はほっとできる状態ではなかった。
その日はまた別のラブホテルで中年の男が惨殺されたというニュースがテレビで流された。やはり服だけ残っていて男の骨ばかりが床にひろがり、従業員も男からたしかに代金を前払いで受け取ったがいっしょに制服を着ていた三つ編みの女学生がいたという証言がされている。しかし、警察全体でも骨を砕いてしまうほどの殺人を女子生徒がやってしまうことなどまず考えにくかった。女学生がどんな姿だったかを知る手がかりでもあればほかに誰かが関係しているのだろうと思ったが、従業員はその女学生が背中を向けていたために顔までは見られなかったという。
翌日も朝寝坊してぎりぎりで学校にかけこんだ雅耶が、トイレでまたスカートのポケットからハンカチを出そうとするとやはり前の日と同様に一万円札が3枚出てきたのである。
雅耶「いったい、またどういうこと?」
かばんのほうに今度は眼鏡などは入っていなかったが、もちろんその被害者はめがねはかけていない男だった。
学校から帰宅するたびに雅耶は自分の部屋で疲れてぐったりとなっていた。そして、いったん目がさめると夜中で、そのときお風呂に入って髪をほどいて洗ったり寝間着に着替えたりしていたが、翌朝はまた起きにくくなっていつも学校に着くのが遅くなっていた。髪の毛は夜中に乾いた後にまたいつもの三つ編みに戻しているので朝はほどいていない。夜中に髪を乾かす間には不思議と眠くならないのが、また朝になって反動で眠くなるのである。
黒井美佐は、雅耶の行動が気になりはじめたのでトイレに行った際にもようすをうかがおうとした。雅耶が便所の一室に入ってスカートのポケットから一万円札を3枚取り出したところを、となりの便室から美佐が壁をよじのぼって目撃した。
美佐「雅耶さん、あなたやっぱり…。」
雅耶「ああ、美佐さん。」
トイレを出て、美佐と雅耶がふたりきりになったところで、雅耶が美佐に悩みを話しはじめた。
雅耶「わたし、夜中になるとこのごろ変な夢を見てうなされるの。毎日、ぜんぜん見覚えのない男を部屋に誘ってお金を受け取って、その男に変なことをされそうになったところで目がさめるの。」
美佐「お金を夢のなかで受け取っているって?でも、いまどうして持ってるの?」
雅耶「わからない。なんかこわいわ。」
美佐「もしかして…。」
美佐は、雅耶の心のなかをとらえようと魔術をかけてみた。
美佐「エコエコアザラク、エコエコザメラク、はっ、やっぱりこの子には…、でも、いまのわたしの力ではこの先どうなるか、ふせぎようがないわ。」
下校時、あちらこちらでこの女子高校には携帯電話の鳴る音が、それもほとんどが雅耶と同じく、援助交際の誘いだったのである。いくら男子のいない女子学校とはいえ、こうみんな自分の若さやかわいらしさを軽く売っていいものだろうかと美佐は疑問に思い、まさか雅耶のような失礼ながらあまりかわいいとはいえないような子までも援助交際にいそしんでいるとは想像もつかなったのである。

美佐は、雅耶の帰宅していった後を少しつけてみた。
美佐「ここね、彼女の家は…。」
雅耶が家のなかに入っていったのち、美佐は雅耶の家の玄関にある表札を確認していた。「平野」のすぐ下に嗣美と書かれてどうやら父親はいないようでこの嗣美が母親で世帯主となっているようだ。そのとなりに、雅耶・尋子・吉幸とあったので雅耶が三人いる子供の長女のようである。さきほど、雅耶は自分で家のかぎをさして玄関に入っていたので、ほかに誰も帰ってないようであったが、しばらくしてその家族らしい者たちが戻ってきた。美佐はまた少し門から離れてその者たちの帰宅する様子を見ていた。買い物袋をさげていた嗣美という母親といっしょにふたりの子供たち、つまり雅耶の妹である尋子と弟の吉幸が母の買い物を手伝っていたようで、いっしょに帰宅したのであった。制服から尋子は近くの私立で女子中学校に通っている生徒のようで姉の雅耶と同じように髪の毛を腰のあたりまで長く伸ばしていたがそれぞれ耳よりやや高めの位置に黒いヘアゴムをとめたツインテールであった。姉のような三つ編みはしておらず、腰までの髪だから、膝裏まである姉の雅耶に比べると長いほうではないが、姉とは正反対にやせていて丸顔のかわいらしい少女だった。
母親の嗣美も髪をまとめて後ろに束ねていてその量も多く尻から膝裏にまで達し、年代は中年でもまるで東南アジアにいる若い美女のような後ろ姿だと美佐は一瞬思っていた。そしてもうひとりの吉幸はランドセルを背負って半ズボンをはいていたので小学生の男の子であることは間違いないとわかったが、玄関に入るときに美佐の見ているほうから見て背中を見せた際、驚くような光景を美佐は目にした。
美佐「まあ、あの子…。」
吉幸は男の子でありながら、髪の毛を女の子のように長くしていて後頭部のところに太めの黒いヘアゴムを使ってひとたばにまとめていたが、ランドセルの先にも髪が伸びていて尋子と同じように腰までとどくほどあった。吉幸は小学六年生で身長も高いほうなので髪の長さもそれだけかなりあることになり、前髪も長くしているのでボリュームもあるようである。
美佐「この家の人達はみんな髪の毛を長くしているようだわ。雅耶さんも膝まであるし…。それにしても、男の子まで…。」
事実、怪しい一家だったのである。

この数日前の夜中に、三人の子供たちの身には恐ろしいものが宿らされていたのである。
次女の尋子が、夜中になって洗面台の三面鏡の前に立ち、洗って乾かしていた自分の長い黒髪をヘアブラシですいている最中、ブラシの歯が折れてしまう事故が起きたのであった。
尋子「やだ、ヘアブラシが…。」
そこへ姉の雅耶がいつもの三つ編みの姿で現われて尋子のもとに自分の持っているヘアブラシをさしだしたのであった。
雅耶「おほほほ、尋子も髪の毛をずっと長く伸ばしているから、ヘアブラシもすりきれてしまったのよ。あたしがいつも使っている、これなら丈夫なほうだから使うといいわ。」
尋子「おねえちゃん、ありがとう。」
だが、妹にそのヘアブラシを渡した雅耶の顔が少しばかり、にやっとなる感じのような不気味な表情を見せていた。
雅耶「うふふふ…。」
雅耶の正体はやはり悪魔だったのである。いや、悪魔に乗り移られていたのか、どこかで洗脳されていたのかわからないが。
髪をとかしおえて大小のヘアピンを何本かとめ、尋子のいちばん気に入っていつもしているツイン・テールに結ってからまもなく、尋子の身体に異変が起きていた。
尋子「うっ、ううっ、苦しい…。」
雅耶「まあ、尋子ちゃん、どうしたの?」
尋子「あっ、ああっ。」
三面鏡を前にして尋子が前のめりになって倒れてしまった。ツイン・テールの髪も床にべったりと、まるでへびがはうような姿だった。
雅耶「おほほほ、うまくいったわ。さあ、立つのよ。」
雅耶が妹の頭を両手でおさえ、さらに上のほうにその手をあげると、まるでそれにまさしくあやつられているようにして尋子が顔をあげた。
雅耶「さあ、あなたもいま髪の毛をとかしたヘアブラシを持っていって、今度はママの髪をそのヘアブラシでとかすのよ。そうすればママもわたしたちの仲間になるのよ。」
尋子「はい。」
答え方もうつろになっていた尋子は、眠っていたままの母親である嗣美の身体をまずうつ伏せになるよう向けさせた。そして嗣美のポニーテールにまとめていた黒髪をひきずってまたヘアゴムをほどいて自分の手首に巻き、さきほど妹に渡されて自分の髪をすいていたヘアブラシで、嗣美の背中にひろがった髪をすきはじめたのである。しばらくして嗣美も目覚めて気づいたようである。
嗣美「うーん、はっ、尋子ったら、こんな夜中になにをしているの?」
尋子「じっとしてて、ママ。髪の毛が乱れていたから、いまきれいにとかしてあげているの。」
嗣美「ちょっと、寝ている時にいきなり、ううっ。」
尋子「うふふふ、もうこのヘアブラシから毒がまわったようだわ。」
雅耶から渡された尋子が手にしているヘアブラシは、使った者の心が悪魔になってしまうという恐ろしい道具でここにいる少女たちのように特に長い髪の毛の者に強いききめが出てくるようであった。ほどいた髪を振り乱しながら嗣美がのたうち回ったため、別の部屋で寝ていた末っ子の吉幸も背中に髪を束ねた姿のまま目覚めて出てきたのであった。
吉幸「おねえちゃんたち、なに騒いでいるの?」
嗣美「あ、なんでもないのよ。そうだわ、吉幸もちょっと。」
吉幸「え?なんの用?」
嗣美「吉幸もこのごろ髪の毛が長くなっているから、しっかりととのえないと、ほら。男の子なのにあなたも好きで髪の毛を伸ばしてるんだからしっかり手入れしなくてはね。おねえちゃんたちにいろいろ教えてもらうといいわ。」
尋子「ねえ、吉幸の髪の毛をとかすのもあたしにやらせて。」
雅耶「いいわよ。」
悪魔のヘアブラシをそのまま尋子は握りながら吉幸の背中にまわり、吉幸の一本のポニーテールに束ねていたヘアゴムを髪からはずして、渡されたヘアブラシで吉幸のボリュームのある長い黒髪をとかしはじめた。
尋子「ちょっとおとなしくしていてね。」
吉幸「うん。」
一本に束ねていた吉幸の前髪も含めた女の子も顔負けの美しい黒髪がほどかれて背中にひろがり、尋子は念をいれてその弟の黒髪をとくのであった。
尋子「うふふふ。そうだわ。ちょっと女の子っぽい髪形にしてあげる。」
尋子は不気味な笑いをうかべはじめながら、自分の髪にさしていたピンを吉幸の左右の髪のこめかみのあたりにそれぞれさした。さらに吉幸の前髪を頭のいちばんうえのところにまとめて両サイドから後ろの残りの髪を二等分して巻きつけ、きつくしめておだんごのような形にした後、巻かれたところからその前髪を三等分して一本の三つ編みに結いはじめた。吉幸の黒くて太いヘアゴムもひとつだけあったことでその毛先にヘアゴムを巻きつけてとめ、三つ編みの髪をポニーテールのように後ろに垂れさせた。
尋子「これでいいわ。ほら、鏡を見てごらん。」
姉に言われたように吉幸が鏡で、おだんごとその根元から三つ編みの髪の毛が少し見えている自分の頭を見ると、あこがれていた少女の姿を思い出してうっとりとし始めたがその直後だった。
吉幸「うっ、ううう…。」
吉幸も苦しみだしてしばらくして雅耶らと同じように前のめりになって倒れた。
尋子「うふふふふ。」
口に片手をあてながら尋子は不気味に笑い続けていた。
倒れていた吉幸が、また尋子の手招きでうつろな感じで首をあげはじめたのであった。尋子の目も赤く光りはじめて不気味な笑いを浮かべた。
尋子「くくくく。おまえも仲間になるのよ。」
吉幸「はい。」
吉幸の答え方もうつろであった。とうとう、母親を含め一家そろって悪魔化したようである。
雅耶「おほほほ。これでみんな悪魔の心になったわね。このヘアブラシの魔力がみんなのその長い髪の毛にいきわたって全身を悪の心でつつむようになり、人を狂わしたり殺したりすることもできるのよ。気に入らない者ならその人を髪の毛でしめ殺し、気に入ったら仲間にするのよ。同じヘアブラシを使わなくても、相手の使っているヘアブラシを自分の髪に使って毒を入れれば、相手もその毒が入ったヘアブラシを使ってみんなの思い通りに動かすことができるようになるのよ。」
悪魔の毒牙が次々と子どもたちに…。


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