(第四夜)


美佐「きゃあーっ!」
咲男「いひひひ。」
美佐「えいっ!」
すぐに身をよけて女装している咲男のほうを見たが、正体が男であることに美佐はまだ気づいていない。
美佐「あなた、いったいどうしてわたしの家に、もしかしてわたしを狙っている…。」
咲男「くくくく。」
またも、とびかかろうとしてそのたびに身をよけていた。美佐は、相手が女の子であると思うと逆に攻撃することもできないでいた。
美佐「この子はきっと何者かにあやつられているんだわ。」
ここで、なんとかして目をさませる魔術を使おうとしたが、そのすきを使ってついに正面から抱きつかれてしまったのである。
美佐「きゃあ!」
咲男「くくくく。」
咲男は、美佐の首のほうに両手を伸ばしていた。どうやら美佐の背中におろしている肩ほどまである長い髪の毛を引っ張ろうとしているようである。事実、両手で部分的にわしづかみにされてしまった。
美佐「やめて、あなた、離して。」
咲男「くくくく。」
美佐「はっ。」
咲男に抱きつかれて、胸のふくらみがないことからどうやら初めて相手は男であることがわかった。こうなったら容赦はない美佐だった。
美佐「えい!」
咲男「ぎゃーっ!」
美佐は、咲男の股間を自分のひざで蹴ったのである。そして、倒れてうずくまる咲男の性器のあるあたりをまた足で何度も蹴っていた。
美佐「かわいそうだけど、こうするしかないわ。はっ。」
美佐は、相手への怒りをこめて咲男の股間をけとばしていたが、少々冷静さを欠いていたのも事実であった。咲男の身体が変身を始めたのであった。恐ろしいさそり人間の姿である。
咲男「くくくく。」
美佐「あなたは、昌子さんと同じ…。」
事実、その昌子に襲われて手下のさそり人間になっているのである。
咲男「くくくく。」
またも、咲男がとびあがって美佐に襲いかかろうとしたのであった。
美佐「あんなに蹴られて痛い思いをしたはずなのに、まだこりないの?」
ついに、美佐は呪術を使って咲男を追い出そうとしたのであった。
美佐「エコエコアザラク、エコエコザメラク…。」
咲男「ぎゃーっ!」
ついに、咲男も後退せずにはおれず、美佐の部屋から逃げ出していったのであった。
美佐「ふう…、けれど、わたしの髪の毛をわしづかみにしてきたなんて、もしかすると長い髪の毛の女の子が好きな男の子かしら。あのように長い髪の毛の女の子に女装するぐらいだし…。」
美佐が察するとおりである。

美佐の逆襲を受けてたまらず逃げ出した咲男の前に、昌子が立っていた。
昌子「さっそく痛い目にあわされたようね。ふふふふ。」
咲男「えっ?」
昌子「まあいいわ。おまえも相手が強敵だということがわかったのなら。」
昌子は、咲男が美佐にかないっこないということをもともと見計らっていたのであった。自分のことを好きになっている咲男に対して虫酸がたつほど昌子のほうは嫌っていたためで、わざと美佐のところに行かせていたのである。そのことに咲男は気づいていない。
昌子「ふふふふ、もっとおもしろいことをさせてあげる。」

そのまま昌子はまた咲男を自分の家に連れ戻し、咲男を起して咲男の伸びた髪の毛をとかしていた。そして、咲男の髪の毛を二等分してそれぞれ三つ編みを結い、典型的な女学生の三つ編み姿にしたのであった。
昌子「おほほほ。今日はわたしの代わりに学校に行くのよ。わたしの制服を着て。大きさはちょうどいいでしょうから。」
咲男「制服を着て?」
昌子「うふふふ。うれしそうね。女学生に化けられて。」
すぐに、ぎこちないながらもどうにか女学校の制服を着た咲男であった。
昌子「ほら、全身がうつっている鏡を見るといいわ。」
咲男は女学生になった自分の姿を見せられ、後ろにおろしていた二本の三つ編みにまとめているおさげ髪も前に垂らしてぼおーっとなっているのであった。
昌子「じゃあ、少し早いけど、おまえが好みにしている長い髪の毛の女の子だけ襲いにいけばいいわ。あとは女の子どうしでさそりにしていくから。そうすれば、学校じゅうの美佐以外の女の子がさそり人間になって、みんなで美佐を襲うようになるから。」

昌子の姿になりきって、ひと足早く校門に着いた咲男であった。すばやく咲男は獲物を見つけたようである。
頭に黒いヘアバンドを巻いて背中いっぱいに黒髪をおろしている、太った体型の古河小百合(こが・さゆり)をターゲットにしていたのであった。しかも、小百合がトイレに入っていくのを見計らって、ひそかに後ろについていき、便所の一室に入ったところですばやく黒髪ごと背中に抱きついたのである。

小百合「ううっ、だ、だれ?」
咲男「くくくく。」
小百合「きゃあーっ!」
咲男の恐ろしいさそりの両手首がわきの下から伸びてきて、小百合の胸をもみはじめたのであった。小百合は用足しをしようとしていたが、驚いて身動きもできなくなり、下着やスカートをはいたままおもらししてしまったのである。
咲男「いひひひ。」
小百合「ああ…。」
ついに咲男は小百合の髪の毛を片手でひとづかみにしてかきあげ、首のうなじにかみついて血をながさせたのであった。
咲男「おまえもさそりになるんだよ。」
小百合「いやっ、やめて。」
咲男「くくくく。」
いやがっているところを襲うのが余計に快感と思う咲男の攻めに小百合は抵抗もできず、がくっとなってすぐ目覚めると表情がうつろになっているのであった。
咲男「いひひひ、おまえもさそり女だ。さっそく仲間をふやすがよい。」
小百合「はい。」
小百合はたてに首をふって返事をしていた。その時に長い黒髪も背中をはうような姿により咲男は興奮しているのであった。

美佐が登校してくるより前に、もうひとりがえじきになっていた。こちらは小柄で髪の長さも肩ぐらいまでだったが、二本の三つ編みに結っていた寒川吉美(さむかわ・よしみ)であった。
吉美「きゃあーっ!」
咲男「くくくく。」
やはり、トイレに入ろうとしたところで背中から抱きつかれ、おさげ髪をそれぞれの手でわしづかみにされてうなじをかみつかれていた。がくっとなってまたすぐ起き上がり、うつろな表情で咲男のほうを向いているのであった。
咲男「いひひひ。おまえも今日からさそり女だ。さっそく新たな仲間をふやしにいくがよい。」
吉美「はい。」
そして、小百合も吉美もほかの女子生徒をまた便所に誘って毒牙にかけていたため、美佐の登校する頃にはあっという間の勢いで校内の女子生徒が次々にさそり少女になっていたのである。

美佐のクラスは、第一時限が体育の授業であった。
このために更衣室にもちろん美佐のクラス全員が着替えに行っていたが、急に外では雷雨が起って黒い雲が上空を覆い、周囲は急に真っ暗になったのである。しかも、更衣室も照明が故障してしまったため、周囲にいる人の顔もわからないようになってしまっていた。
美佐「まあ、まるで急に夜が来たように…。」
その時、周囲にいた女子生徒たちのようすがおかしくなっていた。
小百合「くくくく。」
吉美「くくくく。」
美佐「あ、あなたたちはいったい…。」
美佐に危険が迫っているのであった。


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