授業が終わる…そしてHRが始まり…終わる…放課後の教室…明日から始まる祭日を挟んでの連休…ある者は連休の予定に浮き立ち仲間同士で話しをしている…彼女…虹野沙希は、帰り自宅をしながらそのようすを眺めて考えていた…ほんの数ヶ月前までは、彼女も親友の如月未緒と休みともなれば休日の予定を語り合っていたものであった…しかし…今は…
 チラリ…と沙希は未緒の方を見る…焦点の合ってない眼差し…生気の無い顔…言うならば彼女は向こうの世界…自分には理解する事ができない世界の住人になっていた…数ヶ月前の忌まわしい出来事…彼女自身が語って聞かせてくれた出来事…恋人だと信じていた人に裏切られた末に…何人もの見知らぬ男達に犯され続けた5日間…恋人だと信じていた彼も参加していたらしい凌辱の5日間…6日目の朝、家に帰ってきた未緒の姿は無惨であった…逃げようと叫んで、喉元をしめられた痣…手首にはベットにしばりつけて、もがいて血塗れになった痕…太股には垂れ流しになった大量の精液……悲劇はそれだけではなかった。
 妊娠したと判ったのは、それから2ヶ月後…そして彼女から、一切の感情は消えてしまった…
最愛の人を失うと同時に、最悪の状態に陥ってしまって…この事を詳しく知って入るのは多分、彼女の母親を別にすれば私だけ…未緒のあまりの変貌に心配したクラスメイトも、すでに呆れ…諦め…て誰も未緒の事をかまわなくなった…私も最初こそ未緒の親友として力になりたい…助けたてあげたいと努力したが…無駄だった…今の未緒のことは、よくわからない…あたしが話しかけても、反応してくれないし…ただ毎日を人形のように過ごしているだけであった…

「沙希ちゃん…」

 そんな事を考えていた私に話しかけてくる人の声…まさか…

「未緒ちゃん…?」

目の前に未緒がいた…何ヶ月ぶりだろうか?未緒の方から声をかけてくれたのは?

「沙希ちゃん…明日いいかしら…」

「明日?」

「ええ…聞いてほしいことがあるの…お願い…沙希ちゃん…家に来てくれる?」

 突然の事に一瞬、思考が停止する…でも…

「うん!いいわよ未緒ちゃん…明日ね…で、朝のほうが良いかな?」

「ええ…午前中の方が…早い方がいいわ…早い方が…」

「わかった…未緒ちゃん…今日、一緒に帰らない?」

 私の問いかけに未緒は微かに微笑む…そして言う。

「ごめんなさい…今日は図書委員会の役員会があるから…明日…忘れないでね…沙希ちゃん…」

「うん!わかったわ、明日…朝一で行くから待っていてね…未緒ちゃん…私ね、話してあげたい事が沢山あるの…だから…」

「沙希ちゃん…ありがとう…私たち友達よね?」

「そうよ、親友だもん…話そう…そして…話して…うん!」

 何故か涙が出てくる…嬉しかった…どこかに行っていた未緒ちゃんが帰ってきた…そう思った…


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