|
３
王国に対するモビルドールの侵攻はなお続いていた。
カトルはエピオン、トーラスに通信を入れたものの返事が無い事に焦りを感じていた。
（あの２人がやられるはずは無い、今はここを守る事に集中しないと・・・）
その頃ヒイロはゼロに取り込まれていた。ゼロに支配され、エピオンのパーツの一部と化し、ひたすらに敵を倒していた。カトルの呼びかけに答えられる状態ではない。
「俺の邪魔を・・・するな！」
ヒートロッドをビームソードに持ち替え、手当たり次第にビルゴを斬り伏せていく。
突如サンドロックのコックピットに警報が鳴り響いた。上空からの接近物を検知したのだ。
「上？！」
モニターの視点を切り替え、様子を伺うと上空から一機のＨＬＶが降下してくるのが見えた。カトルがそれを視界に収めるのとほぼ同時にＨＬＶは閃光を放ち爆発した。
中から現れたのは２体のＭＳだった。悪魔のようなフォルムを持つ黒いガンダム、それとは対照的な重厚な赤いガンダム。カトルも良く知っている機体だ。
「さあて、それじゃいっちょいきますか。」
黒いガンダムのパイロットはおどけたように呟くと悪魔の羽を思わせるアクティブクロークを展開し、ビルゴの群れの中心に降り立った。
もう一体はそのまま弾丸の雨を降らせながら地上に降下し、スクラップと化したビルゴの山を築いていく。
「人形などに構っている暇は無い。」
地上に降りたトロワはヘビーアームズのバーニアを最大に吹かしリリーナのいる建物へ向かった。
「ＯＫ、ここは俺たちに任しときな。」
デュオはビームサイズを抜き放ち構える。
「さあ！ぶっ壊されたい奴から順番にかかって来な、なんなら全部まとめてでもいいぜ！」
ビルゴは攻撃目標をデスサイズヘルに定めた。
３機が突撃してくる、相手の攻撃を軽くかわしたデスサイズヘルは振り向きざまにビルゴの背中を切り裂いた。さらに迫り来るビルゴに対し左腕に装着したバスターシールドをねじり込む。
「とっとといっちまいな！」
デュオが咆えると同時にビルゴは爆発を起こした。噴煙の中から姿を現したデスサイズヘルは目標を見失ったビルゴを次々と斬り捨てていく。
再びサンドロックの頭上に警報が鳴る。カトルは頭上をジャンプしていく機体を見つけた。
数十機のビルゴに護衛されるように学園へ向かう赤い機体、メリクリウスだ。その動きは明らかにＭＤの機械的な動きとは違う。
カトルはあのメリクリウスが指揮官機であると直感した。ヒートショーテルを構え、ジャンプして斬りつけるも周囲のビルゴに妨害され阻まれてしまった。
「トロワ！今そっちにメリクリウスが、きっとあれが指揮官機だよ！」
「了解した。」
短く答えるとカトルの示した方向にビームガトリングを構える。
トロワの視界にビルゴの編隊が侵入してきた。
「邪魔だ。」
ヘビーアームズの両腕から大量のビームの弾丸が放たれビルゴを粉砕する。プラネイトディフェンサーを展開する間もなく5機のビルゴが機体に多数の穴をあけられ爆発した。
反撃に備え構えを取るヘビーアームズの横をＭＤの群れが駆け抜けた。
「抜かれた？」
振り向きざまに放ったマイクロミサイルもビルゴのビームキャノンにかき消されてしまう。
「人形使いが前線に出るとは、何を企んでいる？」
学園に程近い広場には腕を組み仁王立ちするＭＳがあった。
「ふん、やはり狙いはリリーナか。相変わらず汚い戦いをする連中だ。」
ナタクのコックピットに座る五飛は同じように腕を組み不快感を隠そうともせずに吐き捨てた。
アルトロンのドラゴンハングが伸び、空中のビルゴを的確に捉えた。龍の顎に捕らえられた人形はあっけなく爆発を起こす。
１３機で編隊を組んでいたビルゴのうち5機がアルトロンに向かってきた。
「人形ごときが！」
光の三叉戟を抜き、先頭のビルゴを叩き斬るアルトロン、残りのビルゴは五飛の行く手を阻むように壁を作る。明らかに時間稼ぎだろう。
両腕のドラゴンハングを伸ばし、瞬く間に４機を粉砕しメリクリウスの後を追おうとするアルトロンの背部バックパックをビームが襲った。アルトロンの背後の森には１０体のヴァイエイト、メリクリウスが隠れていた。
「貴様ら上等だ！人形ふぜいが俺を怒らせるとはな！」
五飛は激高し、ＭＤに向かって突進した。
メリクリウスの右腕が理事長室の窓ガラスを突き破った。
衝撃に吹き飛ばされ壁に叩きつけられるリリーナ。
メリクリウスのコックピットから何かが投げ込まれ、瞬く間に部屋の中にガスが充満した。
ガスマスクをしたパイロットは寝息をたてるリリーナを抱えると再びメリクリウスに乗り込む。いつの間にか隠し持っていたガスマスクを装着していた金髪の少女、ドロシー・カタロニアもその後に続いた。
五飛と交戦中のメリクリウスのうち５機を呼び戻し護衛につけると再びもと来た道を戻り、待機させていたＳＳＴＰに搭乗し、目的の場所へと向かった。
→次へ
→前へ
→堕した女王のトップへ
|
