「ふふふ、姫様の腹もだいぶ膨らんできたようだな」
ガルドが自ら与えた陵辱の結果を眺めながら、満足そうに呟く。
それはガルドの独り言であったのだが、謎の声がそれに応えた。
「そうですわね、たぶん出産の日も近いと思われますわ」
謎の声はその声音と口調から女の物と思われるのだが、不思議な事に声の主は幽霊の様に姿が見えず、ミルシェはその声に激しい恐怖を感じた。
たとえ姿が見えずともミルシェにはその声の主が何者なのか判っていた。
(まさか、今日はあの女もここに来ているの?)
その声の主はミルシェにとってガルド以上に会いたくない人物なのだが、向こうはそんなミルシェの気持ちを踏みにじるが如くその場に異常な方法で現れた。
恐怖に震えるミルシェの目の前でガルドの影がまるで風船の様に膨らみ始める。
その黒い風船は見る見るうちに形を変え、最終的には黒いローブを身に纏った小柄な人物になった。
「ミルシェ姫、お久しぶりです。」
ガルドの影から現れた黒ローブの人物は、親しげに挨拶しながら微笑んだが、それはミルシェの恐怖を更に倍増した。
「どうもミルシェ姫はセレンにまだ慣れていないようだな」
恐怖に震えるミルシェを見ながらガルドが言った。
「姫様ったらいまだに私の事を悪魔の様に思っていらっしゃるようですね」
(悪魔の様にじゃなくて、あなたは悪魔そのものよ。)
ミルシェは声に出さずに心の中でそっと悪態をついたが、セレンと呼ばれた人物がジッとこちらを見ている事に気付き、聴かれたのではないかと言う思いに捕われた。
セレンの恐ろしさを身に染みるほど知っているミルシェは、これを切っ掛けに自分への陵辱が開始されると覚悟を決めるが、ガルドとセシルの二人が何も無かったかのように喋り始めた為、少しだけ安堵した。
ただしその安堵も長くは続かない。
何故なら二人が始めた会話の内容こそ、ミルシェを更なる陵辱地獄へと引き摺り落す物であったからだ。