第11話
薄暗い部屋の中、修二は表情を曇らせていた。その原因となったニュースが今彼の目の前につけられたテレビから流れてきていた。その内容は”世紀の大虐殺!!”だの、”婚約者の首を抱いた悪女”だのの見出しが踊り、色々な情報、時には推論が伝えられる。そのほとんどがおとなしい彼女がどうしてという内容のものであった。
「まさか、こうなるとはな・・・」
「でも、何故彼女はこんなことを?」
修二の呟きに奈々子は不思議そうな顔をする。自分たちの前から姿を消した麗美が何故内海たちの元に向かったのか、なぜ彼等を殺したのか、それが疑問でならなかった。少なくとも奈々子の目にはもう麗美には冷静な判断をする力は残されていなかったはずだった。なのに期せずして麗美は修二たちの思惑通りに内海たちを始末してくれたのである。
「これは推論でしかないけど、彼女の中ではまだ内海たちを信じたい思いがあったんじゃないかな?」
「信じたい思い?」
「ああ。内海たちは買春なんてしない、するはずがない。その想いがわずかな意識を残していた」
修二は推論を奈々子たちに説明する。もちろんこれが本当にそうであったかどうかなどわからない。しかし、そう考えれば麗美が警察に助けを求めないで内海たちがいたホテルに向かったことも納得がいく。自分が信じたものが正しかったことを証明してもらいたい、もしくは自分の目で修二たちの言葉が嘘であったことを確認したい、ただその一心でホテルに向かったのだろう。
「でも、そこで繰り広げられていたのは・・・」
「見ず知らずの女との狂宴・・・最後の一本が切れても仕方がないね・・・」
修二は肩をすくめる。最後の心の拠り所を無残に踏みにじられ、正気を失った麗美が凶行に走る、それは誰にも明らかなことであった。そしてそれを止めることはできなかったし、殺された内海と浅沼は自業自得だったとしか言えない。もっともそこまで追い詰めたのは自分達だったが、後悔も、罪の意識もない。麗美にはそれをされるだけの罪を隠し持っていたのだし、内海たちは麗美に隠して買春倶楽部を続けてきたのだから完全に自業自得である。唯一の救いは内海達と狂宴を演じていた女性たちに被害がなかったことである。怪我人の報告は出ていないので無事逃げおおせたのだろう。
「そして最後の一本が切れた彼女は・・・」
「どこから持ち出したかは知らないけど、鉈で父親と内海を殺害、内海の頭を抱きかかえたままその死体としていたらしい・・・」
修二の言葉に奈々子たちは眉をしかめる。どうにも麗美の心情が理解できないからだ。理解できないし、する気もない。浅沼麗美という女は男運がなかった、相手を殺さなければ自分への愛を維持できない弱い存在でしかなかった、ただそれだけの認識であった。
「でも、本当に驚きましたよね。こんなことになるなんて・・・」
「浅沼麗美は独占欲の強い女だったらしいからな。こうなる可能性はゼロじゃなかっただろうが・・・」
それでも、この結末にはここにいる誰もが驚きを隠せなかった。しかし、もし自分たちが手を下さなかったとしても内海が買春倶楽部に手を染め、他の女に手を出していることを麗美が知ったとしたら、これに似た事件が起こった可能性は高いと修二は感じていた。彼と婚約するために他の女を始末したほどの女なのだから、嫉妬に駆られた彼女が買春倶楽部に所属する女達を生贄にした可能性も否定できない。どちらにしろ、警察がこれ以上買春倶楽部のことに介入してくる可能性がない以上、これが最善だったのかもしれないと修二は納得することにする。
「それで浅沼麗美はどうなったの?」
「精神鑑定を受けることになるそうです。まあ、まず黒でしょうけど・・・」
マリアが今後の麗美の行く末について問いかけると、亜美は特に興味なさそうな口調で答える。一番麗美に恨みを持っていたはずの彼女がもうこの一件への興味がなくなっていた。麗美は精神病院に入院、二度と表には出てくることはない。そして真実は闇の中。自分たちのことも表に出ることはないだろう。
「後のことは警察に任せて、こっちは次のターゲットに移ろうと思うんだけど・・・」
「?ご主人様、何か気になることでも?」
「ああ。前にも言ったけど、奴らの後ろ楯、それを掴むことができるかもしれないと思ってね」
修二の言葉に奈々子たちは目を丸くする。これまで大木と思っていた彼らの後ろ楯がそうではないと感じたのはアリアたちの母親がなくなったのがきっかけであった。しかし、浅沼たちがその後ろ楯と接触している痕跡が見つからず、その人物はいまだ特定できずにいた。それを特定できるというならこれほどの朗報はない。
「それで先輩。その後ろ楯って・・・」
「まだ正体はまだ断定できない。ただ、あのホテルに強い影響力を持つものじゃないかと思ってね」
「買春倶楽部が主催されるホテル・・・ですか?」
「ああ。一階丸々借り切るなんて、ホテルに影響力を持ったものでなくちゃできないはずだ」
修二の言葉に奈々子たちも納得する。それだけの影響力を持った人物となれば、あのホテルのオーナーかその関係者ということになる。どちらにしろ、その数を絞り込むことはできる。あとは買春倶楽部のメンバーと接触があった人物か、大木が所属していた組に親しい人物がいまだ表に顔を出さない親玉ということになる。
「奈々子、調べておいてくれるかい?」
「畏まりました。明日中には調べがつくようにします」
「頼む。じゃあ、その前に最後の一人を狩る下準備だ」
奈々子が頭を下げると、修二は大きく頷き、話題を変える。ここから先は最後に残った一人、大小森総氏を始末する方策を話し合うのが主題だった。そしてそのターゲットを狩るための下準備についてまず話し合いがもたれる。下準備の標的については奈々子に一任してあったので彼女が報告を始める。
「今回の大小森を始末するに当たってのターゲット候補は二名です」
奈々子に代わって資料を修二に手渡しながら亜美はテレビ画面を別の映像に切り替える。切り替わった画面にはレオタード姿でリボンを片手に華麗に踊る少女の姿が映し出される。新体操には詳しくはない修二だったが、その少女の演技が上手いことだけはよくわかった。
「これが一人目。大小森の娘、彩崎瞳です」
「彩崎?大小森ではないのか?」
「母親が大小森と離婚、母方に引き取られたそうです」
亜美の報告を聞いた修二はなるほどと納得する。同時に大小森の浮気癖が昔からのことであったことも認識したが、そのことは敢えて口にはしなかった。いまは彩崎瞳のことに集中すればいい。画面に映る少女は12.3歳と幼い顔立ちをした少女であった。手足もまだ伸びきらず、その演技にダイナミックさが感じられない。しかし、それ以上に修二の目を引くものがあった。その一点には奈々子たちの視線も集中している。ただし、その目つきは無意識のうちに凶悪なものになっている。ただ、そのことに誰も気付いていない。
「・・・・・・・大きい・・・」
そのレオタードの中に押し込まれたたわわに実った巨大な果実は少女が飛んだり跳ねたりするたびに大きく上下にタプタプと音を立てて動く。その果実を見た修二は思わずそう漏らす。その感想を聞いた奈々子たちの肩がピクリと震える。同時にその部屋に立ち込める空気がぴしりと音を立てて凍りつくそれを感じ取った修二はそれ以上何も言うことができない。凍りついたままどうすることもできずにいた。
「・・・報告を続けてもよろしいでしょうか?」
「ど、どうぞ・・・」
絶対零度にまで冷え切った亜美の言葉に修二は苦笑いを浮べて頷く。その間にも画面上では瞳が華麗に舞う。その動きに合わせてはちきれんばかりに揺れる胸がどうしても目を引く。その修二の視線に気づいてか、奈々子、アリア、マリアは修二の腕を抓ってくる。
「ふぐっっ!!」
「どうかなさいましたか、ご主人様??」
「いや、なんでもない・・・続けて・・・」
何をされたのか知っているくせに亜美はそ知らぬ顔で尋ねてくる。当の奈々子たちはそっぽを向いてしまっていた。下手なことを言って奈々子たちを怒らせるのはまずいと思った修二は苦笑いを浮べて亜美に続けるように促す。亜美はそのまま報告書を読み上げてゆく。
「歳は12歳、中学一年です。身長は135cm、体重は・・・スリーサイズは上から88.55.82です・・・」
スリーサイズを読み上げるときの亜美のこめかみには青筋が浮かび上がっていた。他の三人のこめかみにも同様のものが浮かび上がっていた。まだ中学一年で88のE、しかもまだ成長中とあれば、彼女より胸の小さな四人(ちなみに奈々子、亜美、アリア、マリアの胸は84のC、78のA、80のB、80のB)に殺意が芽生えても致し方ないのではと修二は思ってしまう。このまま成長を続ければ間違いなくメートルクラスになることだろう。もっともそれは新体操をする彼女にとっていいこととはいえないようだが。
「それはさておき・・・もう一人の紹介に移ってもよろしいでしょうか?」
「ああ。頼むよ・・・」
これ以上瞳の話をするのは危険と思った修二は次のターゲットの報告を聞くことにする。すると画面が切り替わり、若い女性が映し出される。エプロンをして、忙しそうに動き回る。その下腹部は大きく膨らみ、そこに新たな命が宿っていることを示していた。
「彼女は大小森まこと、大小森の後妻です。見てのとおり妊娠6ヶ月に入ったところです」
「後妻か・・・もしかしてできちゃった婚?」
やや空気が和らいだところで修二が尋ねると、亜美は無言のままうなずく。どうやら一回の肉体関係のはずがずるずると続いてしまい、孕ませてしまったらしい。どうも大小森は本気でまことを愛してしまったらしく、子供を身篭ったと知るとすぐに入籍したらしい。予想外のことに修二は思わず吹き出してしまう。
「愛している?彼女が大事?よくそんな子勝手なことがいえたものだ・・・」
笑いながらも修二も目は笑ってはいない。闇に囚われた眼差しで画面を睨みつけながら修二は新たな復讐のプランを練り上げてゆく。親権は母親が持っているとはいえ、瞳も月に何回かは大小森とあっているらしい。つまり、娘は大切に思っているということである。ならばどちらも復讐の道具にするにはふさわしいといえる。
「・・・・・・となると、先のことを考えると瞳、か・・・」
何のキャリアもないまことよりも、将来のビジョンが明確になっている瞳を落とした方が修二の将来の野望の手足になってくれる。そう考えてのことであったが、どうも他の四人にはご不満が大きいようである。ピシリと張り詰めた空気が部屋を支配する。その重い空気の中、修二は溜息を漏らす。
「彼女を選んだのは使えると踏んだからだ。お前達を蔑ろにする気は毛頭ない。安心しろ」
この先もお前達を変わらず愛してやるとの宣言に奈々子たちの表情がようやく緩む。緊迫した空気がようやく軽くなり、修二はホッと胸をなでおろす。しかし、ターゲットを選んだだけでまだなにも決まってはいない。どうやって瞳を自分の下に来させるか、どうやって大小森とまことを引き離し、始末するか。その計画を頭の中で描いてゆく。
「まあ、まずは本人に会ってみてからでもいいか・・・」
修二はポツリとそう漏らす。彼の手に握られた瞳のプロフィールの欄には”睦学園中等部一年”と書かれていた。
放課後の睦月学園。新体操部の練習場は体育館の一角にあり、中高一緒に練習をしている。色とりどりのレオタードに身を包んだ少女達が、リボンやボール、クラブなどを使って華麗に舞う。修二はその練習の様子を奈々子と一緒に生徒会活動と称して見学に来ていた。
「で、彩崎瞳はどこだ?」
「あそこで踊っています、ご主人様・・・」
他の人に聞こえないような声で話しながら修二は奈々子に指摘された方に視線を移す。そこでは確かに瞳が美しく舞っていた。その演技力は廻りの先輩達も見惚れるほど華麗ですばらしいものであった。その美しさは他の倶楽部の男たちの視線も釘付けにする。もちろん、その視線が不純なところに集中するのはいた仕方がないことであった。瞳がジャンプしたり、体を捻ったりするたびに、その大きなバストはプルプルと別の生き物ように震え、男の下心をくすぐる。皆が皆瞳の演技(または胸)に注目する。そんな中、修二は別のものに視線が向かっていた。
「奈々子、なんだ?あの奇怪な生き物は・・・」
修二の視線を奪ったのは踊る瞳のそばで演技指導をする男であった。身長2メートルを越す長身に筋骨隆々とした肉体、その肉体を黒のレオタードで包み込み、瞳に声をかけている。どう見てもこの場にふさわしくない男ではあるが、誰もそれを注意していない。
「彩崎!なんだ、その演技は!!?もっとこう、自分を見てもらう演技をしろ!!」
男は体育館中に響くような怒声を発して瞳を叱責する。同時にポーズを決めて上腕筋をヒクつかせて自らもアピールする。その暑苦しさと来たら、まるでヒーターの効いた部屋にくさやの鍋物でも持ってきたようなものだった。その光景に修二は眉を顰める。
「あれは新体操部のコーチで筋肉歩宇瑠(すじにくほうる)先生です」
「コーチ??あれで教師なのか???」
奈々子の口から出た予想外の言葉に修二は驚きを隠せなかった。あんな筋肉フェチが教師、しかも新体操部のコーチなど誰が信じることができるだろうか。奈々子の言葉に嘘はないことは修二にはよくわかっているが、どうにも納得のできないものだあった。
「はい。大変優秀な方でご兄弟皆教師だそうです」
「・・・あんなのが他にもいるのか??」
「はい。上から歩宇瑠、華宇瑠(かうる)、緋宇瑠(ぴうる)、智宇瑠(ちうる)という名前だそうです」
そんな奈々子の言葉に修二は眩暈を覚える。こんな暑苦しいのがほかに三人もいるとは。それがもし一同に会して筋肉祭りなど開催することを想像して修二は思わず震え上がってしまう。もっとも今はあんな筋肉フェチのことなどどうでもいい。ターゲットは悪魔で彩崎瞳なのだから。
「それで本当に彼女を仲間にするおつもりで?」
「ああ。ああいう将来有望な少女を仲間にしておくに越した事はない」
音楽に合わせて踊り続ける瞳の姿を見つめながら修二は色々なことを頭の中で思い描いていた。その修二の横顔を見つめながら奈々子は少し不満げな表情を浮べていたが、修二がそれに気づくことはなかった。そして修二は言葉どおりに瞳を落す行動に出る。総ては己の復讐のために・・・
「もっと足を広げて、こう肉体美を見せるように!!」
放課後の体育館、一人居残り練習をする瞳に歩宇瑠の怒声が響きわたる。その指示に従って踊りをさらに磨いてゆく。その大きな胸が魅力的に揺れる姿がさらにその魅力を醸し出す。その動きを見つめながら歩宇瑠は満足そうに頷き、足元に置かれたドリンクをズズッと飲み干してゆく。
「う〜〜ん、今日のは少しプロテインが少なかったかな?」
眉を顰めながら歩宇瑠は首を傾げる。残りを飲み干すと、また瞳の踊りに目を戻す。じっと瞳の動きを見つめていたが、徐々にその目が血走ってゆく。フンフンと鼻息が荒くなる。瞳の胸に視線が集中し、股間に血液が集中してゆく。時間を追うごとにその流れは速くなり、さらに興奮してゆく。やがてその我慢は限界を超える。
「もう、我慢できん!!!!」
興奮しきった歩宇瑠は着ていた物を引き裂いてその鍛え上げた肉体を外気に晒す。歩宇瑠の絶叫に動きを止めた瞳はそれを見て悲鳴を上げる。鍛え上げられた肉体がヒクヒクと戦慄く。上腕筋が、腹筋が、大腿筋がピクピクと蠢く。それといっしょに股間で大きく膨らんだものが血管を浮かび上がらせて天を向いていた。
「いやぁぁぁぁ!!!」
「その大きく膨らんだ胸筋・・・もう辛抱堪らん!!」
悲鳴を上げて逃げ出そうとする瞳に歩宇瑠は飛び掛ると瞳を押し倒し、彼女に圧し掛かる。その胸元を下げ、大きなその胸を剥き出しにすると、それで自分のペニスを挟み込んで擦り上げ始める。柔らかくも弾力のある感触を楽しみながら歩宇瑠は激しく腰を動かし始める。
「いやっっ!!やめて、やめてください!!」
「気持ちいい、気持ちいいぞ〜〜!!!」
瞳の大きな胸の感触を楽しみながら歩宇瑠は涙目になって腰を振る。瞳はいやいやと首を振りながら悲鳴を上げるが、歩宇瑠に圧し掛かられては逃げられない。肉棒を包み込む柔らかな感触に一気に登りつめてゆく。ヒクヒクと先端が戦慄くと、思い切り先端から白濁の粘液が迸る。顔に降り注ぐ粘液に瞳は思わず顔を顰める。
「う・・・ううう・・・」
「まだ、まだ・・・物足りない・・・」
射精を終えた歩宇瑠はまだまだ物足りないとばかりに勢いの衰えないペニスを瞳に見せ付けるようにしながら絶叫する。その衰えを知らない猛々しいものを怯えた目で見つめながら瞳はただただ涙を流して震えることしかできなかった。鼻息の荒い歩宇瑠の視線はいまだ自分の胸に集中している。
「今度はこの素晴らしい胸筋を・・・」
歩宇瑠は絶叫しながら瞳の胸を鷲掴みにしてペニスを押し付けてくる。今度は何をされるのかと怯えた瞳は思わず目を閉じ、身を竦ませる。しかし、歩宇瑠の絶叫は途中で途絶え、瞳を押さえつけていた力が急になくなる。恐る恐る瞳が目を開けると、目の前にいたはずの歩宇瑠は姿を消し、上級生らしき少年が困った顔をして立っていた。
「まったく・・・何を考えているんだか?君、大丈夫?」
「ふえっ・・・ふえええええんんんんっっ!!怖かった、怖かったよ〜〜」
気を失った歩宇瑠を一瞥すると修二は瞳に手を差し伸べる。そんな修二をしばし呆然と見つめていた瞳だったが、やがて落ち着いてきたのか、ボロボロと大粒の涙を流し、修二に抱きついて泣き始める。そんな瞳を優しく抱きとめ、そっとその背中を撫でて落ち着かせようとする。ただその顔にはうっすらと笑みが浮かんでいることに瞳が気づくことはなかった。
「少しは落ち着いたかい?」
「・・・・・はい・・・」
泣き続ける瞳を落ち着かせようと修二は彼女を生徒会室まで連れてきていた。室内には奈々子と亜美もいたが、何か作業中らしく修二にちらりと視線を送っただけですぐに作業に戻ってしまっていた。その二人を無視するように修二は瞳を椅子に座らせると、お茶を準備して瞳に差し出す。それを受け取った瞳はちびりちびりそれを飲み干してゆく。恐怖から喉はからからに渇いていて、熱いお茶が喉に沁み渡る。同時にようやく心も落ち着いてきて、自分を助けてくれた人の顔を仰ぎ見る。生徒会の懐刀として有名な修二のことは瞳もよく知っていた。そんな先輩に抱きついて泣いた自分が急に恥ずかしくなって瞳は顔を真っ赤に染め上げて俯いてしまう。
「あの・・・コーチはどうしちゃったんでしょう??」
「僕の見立てだけど、彼が飲んでいたドリンクに興奮作用のあるものが含まれていたんじゃないかな?」
「それじゃあ、コーチは悪くないんですね?」
「まあ、謹慎はあるかもしれないけど、君が彼を訴えなければこの件はなかったことにできるよ?」
修二個人としてはあんな筋肉フェチ出て行ってもらいたいところであったが、瞳はどうもあの筋肉馬鹿がお気に入りらしくこの件は口外しないと言い出した。それならそれでもいいと修二はこれ以上口を挟まない。下手に話を進めてあのドリンクに興奮剤を忍ばせたのが自分だとばれる危険性を排除したかったからだ。
「それで、ちょうど君に話しておきたいことがあってね・・・」
「な、なんでしょう??」
「話とは君の父親についてだ・・・」
「お父さん?お父さんが何かしたんですか??」
突然父親の話を切り出された瞳は驚いた表情を浮べて身を乗り出してくる。その様子から修二は瞳が極度のファザコンでないかと推測した。幼い頃に離婚した両親、その後母親とともに暮らしてきたが、別れたあとも父親は瞳を可愛がってくれた。そのいい思い出だけが瞳の中で父親を美化しているのかもしれない。
(なら、それをぶち壊してやるのが一番だな・・・)
瞳の持つ信頼、愛情をぶち壊しにするのが最良と察した修二そのまま話を進めることにする。自分が理想とする父親の本当の姿を見たとき瞳はどんな顔をするだろうか。そのことを想像すると、修二の股間はどんどん熱くなってくる。しかし、ここで暴走するわけにはいかない。暴走しそうなのをグッと堪える。
「実はこのようなものを入手してね・・・」
修二は映像を映し出す準備し始める。修二は瞳に注意を払いながらさりげなく入り口のドアを閉め、鍵をかける。この生徒会室の鍵は先の工事のときに特殊なものに取り替えられ、中から鍵をかけた場合、修二と奈々子の二人が持つカードキーを使わなければ外からも中からもドアを開けることができないものになっていた。父親の話を切り出された瞳には修二がドアの鍵を掛けたことに気づく余裕などなく、修二は悠々と鍵を掛けるのだった。
「あの・・・お父さんがどうかしたんですか??」
「まずはこの映像を見ていてください」
身を乗り出して問い詰めてくる瞳に修二は冷静に映像を再生し始める。瞳の目の前に設置された大画面に映像が映し出される。それはいつものように沙耶子と男達の狂宴であった。裸の男女がもつれ合い、股間と股間を激しくぶつけ合う。男は狂ったように腰を動かし、女は壊れたように喘ぐ光景に瞳は顔を真っ赤にして俯いてしまう。
「あの・・・これ・・・」
「ほら、この方です」
父親の話で呼び出されたはずなのに男女の淫行の映像を見せられた瞳は混乱しきっていた。修二はその瞳に説明するように画面を止めてみるように促してくる。恐る恐る顔を上げた瞳の目に一人の男が跳び込んでくる。女を背後から抱きすくめ激しく腰を叩きつける男は目元を仮面で隠しているが、その輪郭には非常に見覚えがあった。
「え・・・あっ・・・」
「ボクが言いたいこと、お判りになりました?」
「おと・・・う・・・さん・・・」
大好きな父親の凶行に瞳はわなわなと震えてその画面を見つめる。泣き叫ぶ女を逃がすまいと羽交い絞めにして激しく腰を叩きつける。肉と肉のぶつかり合う音、女の嫌がりながらも漏れてくる喘ぎ声、それらがいやでも瞳の耳に届いてくる。そしてそれが狂った宴であることを瞳に教えてくれる。やがて感極まった男は女に腰を力いっぱい叩きつけて震え上がる。ややあって男のペニスが女から引き抜かれ、女の膣からはどろりとした白い液体が滴り落ちてくる。それがなんなのか、どういうことなのか、瞳にもいやが上にもよくわかっていた。
「どうしてこんな事・・・」
「男ですからね、分からなくはないんですが・・・相手を死に追いやるのは行き過ぎではないかと」
「!!なくなったんですか、この人・・・」
「ええ。自殺です。ちなみにこの女性はボクにとって母親代わりの方でした」
呆然とする瞳に修二は事実を告げる。修二の言葉に瞳はまた衝撃を受ける。その自殺した女性が修二の母親代わりだったと知ってはその衝撃の大きさは何倍にも膨れ上がる。その衝撃に呆然とする瞳の背後に回りこんだ修二は、後ろから瞳を抱きすくめ、その耳元でそっと囁く。
「だから僕はすべてを裁く・・・この一件に関わったものったいすべてを・・・」
その闇の奥底から響いてくるような声に瞳は恐怖し、慌てて逃げだそうとする。修二を押しのけ、ドアまで走り逃げ出そうとするが、鍵の掛かったドアはびくともしなかった。ならばと窓に走るが、オートロックされた窓もまたびくともせず、瞳の逃げ場を失わせていた。
「いや・・・なんで・・・」
「君に自分の父親を裁いて欲しいんだ・・・そのために必要なことだよ・・・」
逃げられないと悟った瞳は恐怖のあまりその場にへたり込んでしまう。そして恐怖に怯えた眼差しで修二を見つめ何故自分がこんな目に遭わなければならないのかと問いかけてくる。すると修二は澄ました顔で答えると、左右に控えていた奈々子と亜美に準備をするように促す。促された奈々子と亜美は薄紫色のレオタードを手に瞳に迫る。
「やっ・・・先輩たち、やめてっ・・・」
「本当に大きな胸・・・何を食べたらこんな大きくなるのかしら・・・」
「本当ですね、お姉様・・・こんなのでご主人様を誘惑して・・・」
涙目で訴えかけてくる瞳を無視して奈々子と亜美は瞳の制服をその肢体から引き剥がしてゆく。シャツを引き剥がされると瞳は悲鳴を上げて逃げ出そうとする。しかし、奈々子はそれを許さず、あっという間に押さえ込み、その瞳の象徴とも言うべき大きな胸を隠したブラに手を伸ばす。すぐにはブラを引き剥がさずにそのブラに画された大きな肉の塊の感触を確かめるように揉み廻す。その絶妙なタッチに瞳の口からは甘い声が漏れる。その間にレオタードを手にした亜美はスカートを、パンティを引き剥がし、レオタードの着せてゆく。
「ご主人様、準備、出来ました」
ブラをはがしてレオタードを着せると、奈々子は瞳を立たせ、修二の方に押しやる。よろめいた瞳は修二の胸の中に飛び込む。普段着ているものよりもやや小さめのそれは肉付きのよい瞳の肢体をより強調し、その大きなバストをさらに大きく見せていた。裏地も外してあるため乳首がくっきりと浮かび上がり、その胸の形をくっきりと浮かび上がらせている。そのため、瞳が少し動くだけでその大きな胸はフルフルと揺れ、男心をくすぐる。
「やだ・・・やめてください・・・」
「そうは言っても、体は男を欲して熱くなってきているだろう?」
わずかに残った力で抵抗を続ける瞳だったが、修二はそう冷たく言い放つ。確かに瞳の体は先ほどからどんどん熱さを増し、息苦しさを感じていた。その息苦しさがさらに瞳から抵抗する力を奪う。修二はそんな瞳を抱きすくめると、その大きく震えるバストに顔を埋める。
「今から満足させてやる・・・」
修二はそう宣言すると、瞳の返事も聞かないで彼女の胸をレオタードの上から舐め始める。薄紫色のレオタードの上からでもわかるほど張り詰めた乳首を避けるように、その周りから丹念に嘗め回してゆく。その下の動きから逃れようと腰をくねらせもがく瞳だったが、力が入らないのではただ悶えているようにしか見えなかった。
「ふふっ、もうこんなに乳首を充血させて。レオタードの上からでもはっきりと形がわかるぞ?」
「いわないで・・・ください・・・」
レオタードの一部がぷっくりと膨らんだ場所を指先で擦ると、瞳は切なそうな声を上げて悶える。そんな彼女の姿を堪能しつつ、修二はその大きく膨らんだ乳首をレオタードごと口に汲む。舌先で転がし、軽く歯を立て、音を立てて啜り上げる。そんな修二の愛撫の瞳は全身を震わせて悶える。
「くふぅぅっ・・・そんな・・・だめ・・・」
「ふ〜〜ん?その割にここはビショビショじゃないか?」
「ひゃんっっ!!」
乳首の愛撫に瞳が甘い声でやめるように訴えかけると、修二は指先を瞳の股間に移す。そこはすでにレオタードにシミを作るほどに濡れていた。うっすらと浮かんだシミにできた縦筋を修二が指先でなぞると、瞳は悲鳴を上げて体を震わせる。慌てて腰をくねらせて逃げようとするが、修二は彼女を押さえ込みそれを許さない。
「気持ちいいのカナ?さらに濡れてきた。なら、今度は直接触ってあげよう」
「やっ・・・だめ・・・・」
修二の言葉に瞳は腕の力を最大限に使って彼を押しのけようとするが、まるで無駄な足掻きでしかなかった。レオタードの裾から入り込んだ修二の指先はしっとりと濡れた瞳のヴァギナへと難なく到達する。指先でくすぐるように撫で上げると、今度は陰唇を指で挟み込むようにして擦りあげる。
「ふぐっ!あんんっっ!!」
体を駆け巡る快感に瞳は切なげな声を上げる。その声をもっと聞きたいとばかりに修二は愛液を纏い濡れた指をゆっくりと瞳のヴァギナの中に押し込んでゆく。暖かくも濡れたそこがねっとりと入り込んできた指を包み込む。修二はゆっくりと指を動かして瞳が喜びそうな箇所を探してゆく。
「ふうぅっ・・・んんっっ!!ああああっっっ!!」
「ここと・・・ここかな?」
「ひゃんっっ!!そこ、だめです!!」
瞳の反応から彼女の喜ぶ箇所を読み取った修二はそこを重点的に攻めてゆく。その指の動きに瞳は全身を震わせて悶える。修二の指が瞳の感じる場所をかき回すたびに奥から溢れ出してきた愛液が修二の指を濡らし、かき回された愛液は空気を含んでクチュクチュといやらしい音を奏でだす。その音と膣内を悪鬼回す指の感触に瞳はどんどん登りつめてゆく。その瞬間を悟られまいと顔を手で覆い隠し、必死になって声を殺そうとうする。やがて大きな波が瞳を捕らえ、押し流してゆく。その瞬間、瞳の体は大きく飛び跳ねる。
「ほら、もうこんなにビショビショ。派手にイったもんなぁ・・・」
「うっ・・あああっっ・・・」
「これならもう準備はいいみたいだね?」
ヒクヒクと痙攣する膣から指を引き抜くと、修二はその濡れそぼった指を瞳に見せ付ける。手首までとろとろに濡れそぼった指先を見た瞳は自分がイったことを修二に悟られたことを知り、顔を真っ赤に染め上げる。恥ずかしさに震える瞳を他所に、修二は指に付着した愛液をぺろりと舐め取ると、次の行動に移ることを宣言する。
「えっ?あっ・・・!!」
「どうする?このまま入れて欲しい?それとも自分で舐めて入れやすくする?」
顔を上げた瞳の目に修二のイチモツが飛び込んでくる。大きく膨らんだそれはヒクヒクと戦慄き、別の生き物のように瞳の目には映った。これが自分の中に入ってくることは瞳にもよくわかっている。そして初めてのときはとても痛いことも。その痛みから逃れるためにどうしたらいいかもわかっていた。だからといってそれを易々と実行に移せるわけではない。瞳はそのビクビクを震えるものから目を背け項垂れてしまう。
「そっか・・・ならこのまま挿入れようか・・・」
「え・・・いや・・・助けて・・・」
行動を起こさない瞳に修二は次に移ることを宣告する。その言葉に修二の愛撫によって麻痺していた恐怖がまた頭を擡げてくる。今部屋から逃げられないことはわかっている。わかっていても反射的に体が修二から逃げ出していた。だが、修二もそれを許すほど馬鹿ではない。瞳の足を軽く払いバランスを崩す。
「あぐっ!」
バランスを崩した瞳はよろけて窓に激突する。そこを追い討ちをかけるように修二が肩を押さえ込む。窓に押さえつけられる格好のまま瞳はまたも逃げ場を失ってしまう。修二は瞳の足を掴むと垂直に開き、股の間に体を押し付ける。体の柔らかい彼女だからこそできる体勢のまま、瞳の体の中心に熱く滾ったものを押し付ける。そしてそれの存在を瞳に教えるように何度もこすり付ける。布越しに硬く熱いものを感じ、瞳は悲鳴を上げて逃げ出そうとするが、片足立ちの上、窓の体を押さえつけられては逃げることもできない。
「やっ、やっ・・・・たす・・・けて・・・おとう・・・さん・・・」
「ほら、これで終わりだ・・・」
修二がレオタードの股絹をずらし、逞しく勃起したものの先端を宛がうと、瞳は涙ながらに許しを請い、ここにはいない父親に助けを求める。しかし、修二は冷酷な言葉を瞳の耳元で囁き、一気に腰を押し進める。潤っているとはいえ、まだ一度として男など受け入れたことのない瞳の膣道を修二のペニスが引き裂いてゆく。
「ふぐっっっ!!ああああっっっ!!!いた・・・い・・・いたいよぉ・・・」
プチプチと膣壁を引き裂く激痛に瞳が滂沱の涙を流して痛がる。しかし、それで修二がやめるはずもなく、逆にグイグイと腰を押し進めてくる。収縮した膣道を無理矢理押し広げながら修二のペニスが瞳の奥を目指す。やがてもっとも固い場所が修二の行く手を遮る。その感触を先端で確かめるようにしながら修二は一度動きを止める。
「スポーツ選手は激しい運動で処女膜を失くすって言うけど、君はどうやら無事だったみたいだね?」
「え・・・あ・・・あああ・・・」
「まあ、それがよかったのか、悪かったのかは別だけど、ね!!」
修二が腰に力を込めて突き進むと、ぷつんと何かが切れる感触とともにペニスが瞳の一番奥まで到達する。ペニスを受け入れたヴァギナは破瓜の証を滴らせて瞳が女になったことを証明する。処女を引き裂かれた激痛に瞳は言葉もなく、ただボロボロと涙をこぼして震えるしかなかった。
「んっ?痛かったかい?それは悪かったね・・・」
修二は涙する瞳を労わるようにペニスの収まった腰を動かそうとはせず、瞳の痛みが収まるまで彼女の体を愛撫する。胸元を掴むと一気のそれを引き降ろす。戒めから解放された瞳の特大の胸は大きく揺れながら外気に晒される。その胸を丹念に優しく揉みあげ、その硬くしこった乳首を指先で転がして愛撫する。
「くふっ・・・んんんっ・・・そこ、だめ・・・」
「気持ちいいかい?そんな君を窓の外のみんなも見ているよ」
修二の愛撫に瞳は甘い声を漏らし始める。引き裂かれた膣の痛みはいつしか薄れ、修二が腰を動かしても気にならないほどにまでなっていた。修二とのセックスに瞳が嵌り始めたところで修二は彼女の耳元でそっと囁く。その言葉に瞳が窓の外に目を移すと、運動部の生徒だろうか、まだ何人かグランドに残っているのが見える。下手に顔を上げたりしたら、胸を丸出しの自分が見られるかもしれない。その恐怖に瞳の表情がまた青くなる。
「いや・・・やめてください・・・」
「なにを言っているんだい?君のそのデカパイをみんなに見てもらおうよ」
クスクスと笑いながら修二は瞳の胸を窓に押し付ける。大きく形のいい瞳の胸は窓に押し付けられ形を変える。見られるかもしれない恐怖に瞳は悲鳴を上げて許しを請う。もちろん、この窓には特殊な加工が施されていて、外から中の様子を窺うことはできない。しかし、瞳がそんな事を知る由もなかった。泣いて許しを請う瞳の様子に修二はここぞとばかりに攻勢に出る。ここで一気に落すつもりで瞳に囁きかける。
「君のそんな痴態見たら、友達みんないなくなるだろうね・・・」
「いや・・・そんなの・・・」
「それどころか、お母さんも、お父さんも君を見捨てるかも・・・」
「え・・・見捨て・・・られる・・・」
修二の言葉に瞳は呆然となる。幼い頃の両親の離婚が瞳の心に何かしらの影響を与えていると踏んでいた修二はその瞳の反応に自分の考えが正しかったことを感じ取りほくそえむ。瞳の心を完全に自分のものとするのはここしかないと踏み、さらに言葉を続ける。
「でも僕は君を捨てない。そして君を満足させられるのはボクだけだ・・・」
「せん・・・ぱい・・・だけ・・・」
「そうだ。君の体はもうボク以外では快楽を得ることが出来ない。そしてボクが君を捨てることはない」
修二は優しく瞳に語り掛ける。みんなに捨てられる、その恐怖に怯えた瞳にはその言葉は優しく、暖かく聞こえた。瞳の心が傾きだしたことを察した修二はここぞとばかりに畳み掛ける。優しく腰を抱き、髪をなで、優しいキスを首筋に刻み込む。いつしか瞳の心は自分を犯すこの男に啓蒙しつつあった。
「せんぱ・・・い・・・」
「『修二様』と言ってごらん?そして君が僕を欲するならキスを求めてごらん?」
「修二様・・・」
修二の言葉に暗示をかけられたように瞳はトロンとした表情を浮べる。そして自ら修二にキスを求めてくる。それが悪魔との契約の証となるキスとわかっていながら瞳は求めずに入られなかった。修二は瞳が完全の落ちたことを確信し、瞳と唇を重ね合わせる。あとは瞳の体を思う存分、堪能すればいい。そして大小森をおびき出し、瞳に始末をさせればいい。修二は瞳を抱きしめながら先のことを思い描き、ニタリと笑みを浮かべるのだった。まだ夜は始まったばかりである。修二は今宵はこの肉付きのいい肉体を思う存分堪能するのだった。
瞳を仲間に引き込んでから数日後。修二の元にある情報がもたらされる。それは大小森が妻まことと一緒に姿を消したというものであった。瞳が完全に堕ち、あとは大小森を始末するだけと思っていた矢先の出来事であった。計画が崩れると思った亜美は慌ててそのことを修二に伝えに来た。しかし、それを聞いた修二は驚くことなく、ふむと短く唸るだけであった。しばし考え込んだ修二は亜美に話しかける。
「亜美、大小森がどこに行ったか、探し出せるか?」
「できなくはないと思いますが・・・かなり難しそうですね」
「わずかでもいい。どこに逃げ出したかを探し出して欲しい」
修二の頼みに亜美は『わかりました』と答えると生徒会室から出てゆく。今日はアリアもマリアも瞳もいない。もちろん優姫もいない。奈々子と二人きりになった修二は何も話そうとはせず、正面からじっと奈々子を見つめる。ただ部屋には沈黙だけが支配していた。その重苦しい沈黙に耐え切れなくなた奈々子が修二に声を掛ける。
「あの・・・お茶でも・・・」
「それはいいよ。で、大小森はどこに逃げたんだい?」
そそくさとお茶の準備をしようとする奈々子に修二は冷たく問い詰める。その問いに奈々子はぴたりと動きを止める。全身が硬直し、息遣いがどんどん荒くなってゆく。強張った表情まま笑顔を作って修二に振り返ると、奈々子は何故そんな事を聞くのかと問い返す。
「・・・どういう意味でしょうか、それは・・・」
しかし、修二はその問いかけに平然とした顔で、そしてすべてを射抜くような眼差しで奈々子を見つめながら、きっぱりと言い放つ。
「そのままの意味だよ。君が大小森をどこかに逃がしたんだろう?買春倶楽部、女性斡旋担当・佐々菜奈々子」
→進む
→戻る
→悪魔の微笑みのトップへ
|