第12話


 「そのままの意味だよ。君が大小森をどこかに逃がしたんだろう?買春倶楽部、女性斡旋担当・佐々菜奈々子」
 修二のその冷ややかな言葉に奈々子は完全に硬直し何も答えられずにいた。ダラダラと汗があふれ出し、喉がからからに渇いてゆくのがわかる。何か言ってごまかそうとしているのに、修二の目に体が竦んでしまい、何も言葉を返すことができなかった。ただ、修二を見つめてガタガタと震えていることしかできなかった。そんな怯える奈々子を見つめながら修二は冷静に言葉を続ける。
 「何も咎めたり、君をどうこうしようとは思っていないよ」
 「・・・あの・・・いつから・・・気付いて・・・」
 「う〜〜ん、なんとなくそうじゃないかと感じていたのは大木が出てきた頃かな?」
 おずおずと奈々子が尋ねると修二は口元に笑みを浮べたまま答える。それほど前から自分の事に気付かれていたとは奈々子も思いもしなかった。しかも、大木の名前が出ていたくらいで自分が買春倶楽部の関係者であると察せられるとは思わなかった。何故それだけのことで自分の正体がばれたのかが奈々子には疑問でしょうがなかった。
 「教えてあげようか?何で君の事に気付いたか?」
 「はい・・・何故ですか?」
 「まず買春倶楽部には女性を統括するものがいるんじゃないか?と最初の報告から感じていた」
 修二は疑問の表情を浮べる奈々子に説明を始める。修二が最初に買春倶楽部の存在を知ったとき、その資料で目に付いたのは所属する女性の中に睦月学園の生徒が多いことであった。そこから修二は買春倶楽部に女性を統括するものの存在を、そしてそれがこの学校の生徒である可能性を疑っていた。だがそのことは奈々子たちには伏せていた。正直、まだ確証があったわけではなかったから。
 「ちょうどそこで大木の一件が起こった・・・」
 「でも、それで何故わたしを・・・」
 「大木が一人で出てきたことさ。あの時堺崎早苗が潜入取材する情報はやつらには詳しく流していないはずだった」
 「・・・・・・・・」
 「本来なら半信半疑のやつらは、内海か誰かと大木が一緒に出てくると踏んでいたんだよ」
 なのにその場に現れたのは大木一人であった。そのことが修二に自分たちの中に奴らの協力者がいることを実感させた。亜美は自分と奈々子に心酔していてそんな事をするはずがない。アリアとマリアは芸能活動で学校をちょくちょく休んでいる。そんな事をしている余裕があるはずがない。優姫は論外。ならば答えは一人しかいなかった。その人物が大木と直接接触し、早苗のことを伝え、始末を依頼した。そう考えれば辻褄が合うのだ。
 「あの・・・わたしは・・・」
 「わかっている。お前は僕を裏切ってはいない。買春倶楽部を壊滅させようとしていたのは間違いないよ」
 「ありがとうございます・・・」
 「でも、ボクが復讐を果たしたら捨てられるかもしれない、その恐怖から大小森を逃がしたんだね?」
 「・・・・・・はい・・・」
 修二の問い詰めに奈々子は観念して頷く。修二がすべての復讐を果たしたら自分達の元を去ってしまうかもしれない。そのことを考えると奈々子は夜も眠れないほどであった。修二に捨てられないためにはどうすればいいのか。考えに考え抜いた奈々子が行き着いた答えは単純なものだった。修二に復讐を果たさせなければいい。最も簡単な方法は復讐の対象が眼の前から居なくなればいいのだ。そこで奈々子は大小森に今度命を狙われるのは大小森であると脅し、逃げるように仕向けたのである。大小森に復讐を果たすことができず、彼を探している間は修二は自分達を捨てることはない。そう考えて・・・
 「申し訳・・・ありません・・・」
 がっくりと項垂れた奈々子はそれ以上何も言うことはできなかった。このことがばれた以上、修二に捨てられる、そう覚悟していた。しかし、修二は何も言わずに奈々子を指差す。そして指を動かし、何かを命令する。すると奈々子はその指の動きに操られるように制服を脱ぎ始める。上着を脱ぎ捨てスカートを脱ぐ。上品なシルクの下着姿になると、さらに修二の指の動きに従うようにその下着も脱ぎ捨ててゆく。形のいいバストと綺麗に切りそろえられた陰毛が露になるがそれを隠そうともしないで直立不動のまま修二を潤んだ瞳で見つめる。ガラスのような透き通った肌をした奈々子の肢体をしばし観賞した修二はクイクイッと指を動かして自分のそばまで来るように指示する。
 「・・・・・」
 奈々子は無言のまま引き寄せられるように修二のそばに歩み寄る。奈々子が手の届くところまで歩み寄ると、修二は彼女の裸をまじまじと見つめる。毛穴の中まで見透かされるような視線に奈々子は顔を真っ赤にさせるが、それでも体を隠そうとはせず、修二の視線に自分の裸を晒す。肌に絡みつくような視線に奈々子は体の奥底から熱くなるのを感じ、呼吸が荒くなってゆくのを感じる。体の表面にはうっすらと汗が浮かび、キラキラと輝きを放つ。そんな奈々子に修二は言葉を投げかける。
 「でも僕はそんな命令はしていないよ?どうも君は僕の命令は聞けないみたいだね?」
 「そ、そんなつもりは・・・ただご主人様が・・」
 あくまで冷たい口調で奈々子を問い詰めると、奈々子は涙ながらに弁解する。自分が修二の命令の背いたのは彼に捨てられたくなかったからだ、いつまでも自分のそばにいて欲しかったからだと必死になって弁明する。それを聞いていた修二だったがその答えは冷ややかなものだった。
 「誰がそんな事をしろと言った?誰がお前達を捨てると言った?」
 「え・・・あ・・・ああ・・・」
 「それに買春倶楽部のことに恨みがあると分かったとき何故最初に自分のことを名乗り出なかった?」
 心の奥底まで凍りつくような口調で修二は奈々子を問い詰める。その問いに奈々子は怯えるばかりで答えることはできなかった。もっとも修二はその答えをなんとなくわかっていた。今回と同じく、自分が買春倶楽部の関係者とばれたら捨てられるかもしれないという恐怖から名乗り出られなかったと推測していた。それでもここで許してしまったら奈々子のためにならない。だから修二は心を鬼にして奈々子を問い詰める。そして問い詰めながら隠し持っていた鎖を取り出す。
 「ご主人様の命令が聞けない奴隷には再教育が必要みたいだね?」
 「あああ・・・お許し下さい・・・」
 修二が取り出した鎖を見た奈々子は怯えた表情を浮べる。夜の学校での散歩。あの恥ずかしい行為をまたさせられるかもしれないという恐怖に震え上がる。同時に心の奥底ではその恥ずかしさに胸躍らせ、体を火照らせる。修二は奈々子に首輪をつけると、四つん這いになるように命じる。奈々子は命じられるままに四つん這いになり、修二の足元に擦り寄る。その奈々子を無視するように修二は鎖を引っ張って生徒会室から出てゆく。奈々子は全裸のまま四つん這いで廊下に引きずり出される。誰かに遭うかもしれない恐怖と、学校内を全裸でつれまわされる快感に奈々子は恍惚の表情を浮べながら、修二のあとについてゆく。幸い学校内にはもうだれも残っていないらしく、奈々子は誰に遭うことも、見咎められることもなく修二の目的地まで着くことが出来た。
 「ここ・・・は・・・」
 「お前のクラスだよ、奈々子」
 連れてこられた場所を見上げる奈々子に修二はそっと囁き答える。そして呆然としたまま教室を見つめる奈々子を教室内へと引きずり込む。教室内には誰もおらず、奈々子はホッと胸をなでおろす。そんな奈々子を無視して修二は教壇に向かうと、その上に乗るように奈々子に命じる。奈々子が顔を赤らめて教壇の上に座ると、修二は持っていたロープで彼女の手足を固定してゆく。ちょうど生徒の方に両足を大きく広げ、ヴァギナを前回にする格好で奈々子を縛り上げると、修二は椅子に腰掛け奈々子の痴態をじっと見つめる。
 「う〜〜ん、綺麗なオブジェだな・・・このまま教室に飾っておこうか?」
 「え・・・あ・・・やだ・・・」
 「じゃあ、一時間ぐらいしたら迎えに来るからね」
 「待って、待ってください、ご主人様!ご主人様!!!」
 教室から出てゆこうとする修二を奈々子は慌てて呼び止める。しかし修二はその声を無視してさっさと教室から出て行ってしまう。教室に残された奈々子は恐怖に顔面蒼白になる。いつ誰がここに戻ってくるかわからない。教室の前を通るかわからない。そのときどうなるだろうか?男子生徒ならそのまま慰み者にされるかもしれない。教師なら退学もありうる。色々な考えが頭を過ぎり、奈々子を恐怖の闇へと貶めてゆく。
 (いや・・・誰も、誰も来ないで・・・)
 ガタガタと震えながら必死になってそう願う奈々子は物音一つにも敏感になってしまう。誰か来たかもしれない、誰かに見られたかもしれない。その言いようのない恐怖が奈々子の心を徐々に徐々に壊してゆく。自分の息を呑む音にすら恐怖し、震え上がる。そんな奈々子の耳に人の歩く音が近付いてくるのが聞こえる。 
 (そんな・・・来ないで・・・来ないで・・・)
 徐々に近付いてくる足音に奈々子はここまで来ないことを、自分を見つけないことだけを願い、身動きひとつとらないでじっと息を潜める。やがて足音は遠くへと遠退いてゆくと奈々子は安堵の息を漏らす。その後、幸いにも一時間、誰も教室に近付くことはなかった。その一時間は奈々子にとって例えようのない恐怖の一時間であった。
 「どうだった、奈々子?放置された感覚は?」
 「申し訳ありません・・・ご主人様・・・二度と、二度とご主人様の命を違えることはしませんから・・・」
 教室に戻ってきた修二が奈々子に尋ねると、恐怖にやつれた奈々子は青い顔をして何度も何度もそう答える。これでもう二度と自分の命令を違えるようなことはしないだろう。修二はそう考えながら奈々子の体を嬲りにかかる。ヴァギナに手を伸ばし、そこを指でなぞりあげる。
 「怖がっていたわりにここは輪姦されるかもしれない期待に潤みまくっているな?」
 「そんなこと・・・」
 「生徒会長の公開輪姦。じっくりと見学させてもらうぞ?」
 「わたしに触っていいのはご主人様だけです!だから、だから・・・」
 修二の指はグショグショに濡れ、糸を引く。その指を見ながら修二はこのまま誰かに奈々子を抱かせようかと提案してくる。その言葉に奈々子は潤んだ瞳で修二に許しを請う。そんな奈々子を冷ややかに見下ろしながら修二は答えようとはしなかった。時折ちらりちらりと教室の外に視線を移す。その行動に教室の外に誰かいるのではないかという不安に駆られた奈々子はガタガタと震えだし、修二に擦り寄る。
 「本当に申し訳ありませんでした。もう二度と、ご主人様のお言葉を違えるようなことはしません。だから」
 「その言葉に嘘はないね?」
 「はい・・・わたしにできることはすべてご主人様に捧げます」
 奈々子のその宣誓に修二は満足そうに頷く。そして奈々子の両手両脚を開放すると、床に降ろし、彼女の眼前にペニスを突き出す。暗に『舐めろ、ご奉仕しろ』という命令に奈々子は嬉しそうにペニスに手を伸ばし擦りあげる。奈々子の指の動きに誘われるようにペニスはその勢いを増し、太く、硬くなってゆく。
 「あむっっ・・・んんんっっ・・・」
 奈々子は硬くなったペニスを口に頬張り、口全体と舌を使って奉仕し始める。口をすぼめて、舌を絡めてペニス全体を擦り上げ、舐めあげる。手で擦りあげたり、鈴口を綺麗に舐め上げたり、玉袋を優しく捏ね上げることも忘れない。奈々子の丹念な愛撫に修二のペニスは大きく勃起し、今にも暴発しそうなほど怒張する。
 「よし、奈々子、こっちに来い!」
 ペニスの準備が整うと修二は奈々子の口からペニスを引き抜き、鎖を引っ張って場所を移動する。ご奉仕を途中で打ち切られた奈々子は不満そうな顔をするが、修二に逆らうことなくあとに着いて行く。
 「この上に寝ろ」
 「・・・・この机は・・・」
 「知っているだろう?佐田先輩の机さ」
 修二はニヤニヤ笑いながら机の上にうつ伏せに寝るように指示する。何故そんな事をするのかわからなかったが、奈々子は命令どおり佐田の机の上にうつ伏せになる。すると修二はその両手を机の足に縛り付け、逃げられないようにする。何をするつもりなのかと思っていると、修二は奈々子の後ろに廻り、そのかわいらしく震えるお尻を鷲掴みにし、左右に広げる。柔肉が左右に広がり、奈々子のヴァギナが、アナルが露になる。
 「あの・・・なにを・・・」
 「こっちの初めてをもらおうと思ってな」
 奈々子が怯えた表情を浮べると修二はお尻に顔を埋めてくる。ヴァギナよりも少し上の不浄の穴。そのしわを一本一本確かめるように舐めあげる。やがて舌先に刺激された菊門はヒクヒクと戦慄き口を開いてゆく。そんなところを舐められるとは思っていなかった奈々子は悲鳴を上げて、激しく体を揺すって抵抗する。
 「だめ、だめです。そんなところ、汚い・・・」
 「ボクにすべてを捧げる、あれは嘘だったのかい?」
 「そ・・・それは・・・」
 激しく嫌がる奈々子だったが、修二にそう言われてはそれ以上何も言い返すことは出来なかった。モジモジとして入るが、抵抗する気はなくなったと見て取った修二はもう一度お尻に顔を近づけてアナルを丹念に舐め始める。チロチロと舐めてやるだけで奈々子の全身はぶるぶると震え、全身から汗が噴出してくる。対してアナルは修二の愛撫を喜ぶかのようにヒクヒクと口を開け閉めし始める。
 「ここの処女はボクが頂く、文句はないね?」
 「・・・・・」
 修二の冷ややかな言葉に奈々子はただ黙ったまま俯き、頷くことしかできなかった。修二は指をぺろりと舐めると、ゆっくりと奈々子のアナルに射し込んでゆく。強烈な圧迫感が指を外に押し出そうとする。その抵抗に抗うように修二は指を奥へ奥へと押し込んで行く。
 「ひぐっ・・・うううぅぅぅっ!!」
 徐々にお尻の中の入ってくる指の感触に奈々子は全身を強張らせてこらえる。体中にびっしりと吹く出した汗は珠のように肌を伝い、机へと滴り落ちる。そんな屈辱と痛み、快感に耐える奈々子を見下ろしながら修二は指をどんどん奥へと押し込んでゆく。第一関節、第二関節と、入り込んだ指はすべて奈々子のお尻に飲み込まれる。
 「うん。中々の締まり具合だ・・・感度の方はどうかな?」 
 「ふぎゅっっ!!う・・・動かさない・・・で・・・」
 お尻の中に入り込んだ指がうにうにと動き始めると、奈々子は涙目になって頭を振る。異物の侵入に痛みを覚えながらもその奥から込み上げてくる快感を抑ええることが出来ないでいた。しかし、奈々子の体は彼女の意思とは裏腹に指の動きに正直に答えていた。腸液があふれ出し、その指の動きを助ける。
 「ふぅっ、ふぅっ、ふぅっ・・・」
 「ふむ。かなり慣れて来たみたいだな。じゃあ・・・」
 修二の指の動きに奈々子は苦しそうな息遣いで必死になって耐える。修二はアナルの感触を確かめると指を引き抜き、いきり立ち準備の整ったペニスに唾液を塗し、滑りを浴すると、ヒクヒクと物欲しそうに呼吸する穴に宛がう。そして一拍置いて強烈な激痛が奈々子の全身を駆け抜ける。
 「ふぐぅぅぅっっ!!あああっっ!!!」
 「もっと力を抜け、奈々子!でないと痛い思いをするぞ!!?」
 アナルから入り込んだそれは腸壁を限界まで押し広げ、中へ中へと入ってゆこうとする。その引き裂かれるような激痛に奈々子は激しく頭を振って悶えるが、両手を縛られていては逃げることもできない。修二から力を抜くように命令されるが、痛みの方が意識を支配してしまって、上手く体の力を抜くことができなかった。
 「うぐっ!!さ、裂ける・・・裂けてしまいます・・・」
 「二度もこんな痛い思いをするとは思わなかっただろう?しかもまったく同じ場所で・・・」
 引き裂かれるような激痛に奈々子が上ずった声を上げて悶えると、修二はそっと奈々子の耳元で囁いてくる。その言葉に奈々子の顔色が真っ青になる。もう数ヶ月も前の話、この教室、この机の上で奈々子は佐田に処女を捧げていた。そのときの話を何故修二が知っているのか、わからなかった。
 「何でって顔しているな?あの時ボクが廊下から覗いていた事、気付かなかった?」
 「・・・・!!」
 「『痛い、痛い』って泣き叫んでいたよね?そのときの痛みと同じだろう?」 
 「あっ・・・ああああっっっ・・・」
 「お前はようやく初めてをご主人様に捧げたんだ。佐田のあんなへニャチンでは味わえない快感だろう?」
 呆然とする奈々子を笑みを浮べた顔で見下ろしながら修二は一気に腰を押し進める。プチプチと腸内の肉を引き裂いてペニスが奈々子の中に納まりきる。キュウキュウと収縮する腸壁の感触を味わいながら修二はさらにペニスを大きく勃起させる。締めつけらっるだけの感触に我慢できなくなった修二は激痛に震える奈々子を他所に力強く腰を動かし始める。
 「ふふ、いいぞ、奈々子。いい締め付けだ!」
 「ふぐぅぅっ!!痛い、痛い・・・」
 修二は気持ち良さそうに腰を振るが、奈々子のほうはその引き裂かれんばかりの激痛に上ずった声を上げて悶える。修二の一突き、一突きに涎をたらし、だらしなく顔をゆがめて悶える。修二は体を折り曲げ奈々子の体に重なるようにしながら腰を動かしてゆく。
 「気持ちいいよ、奈々子。これでお前は完全にボクのものだ・・・」
 「では・・・お許しいただけるので??」
 「ああ。お前の忠誠、確かに受け取った」
 修二は奈々子の両手を開放すると、その手に自分の手を重ねるようにして囁きかける。その言葉に奈々子は嬉しそうに答える。ようやく修二に許されたという想いが奈々子の中に広がってゆく。修二は小さく頷くと、奈々子を抱きかかえたまま椅子に座り、下からアナルを貫き、あまった手で奈々子のトロトロに濡れたヴァギナをかき回す。
 「ふあぁぁっっ・・・気持ち・・・いい・・・」
 「これからもボクのためだけに働いてくれるね?奈々子?」
 「はひ・・・わたしのすべてはご主人様のためだけに・・・」
 修二の愛撫に奈々子は蕩けそうな表情を浮べて快楽に浸りきる。そんな奈々子に修二は改めて忠誠を求める。奈々子は何度も頷きながら修二に永遠の忠誠を誓う。そして自ら修二にキスを求める。長く、熱いキス。それは悪魔との新しい契約の口付け、それを奈々子は嫌がることなく、自ら率先して求める。たとえそれが地獄に落ちる行為だと知っていても・・・



 「そんな・・・では、お姉様が裏切り者だったのですか???」
 修二からの言葉に亜美は絶句する。まさかの話に他の一同も声がなかった。今この場に奈々子はいない。修二の攻めに疲れ果て、今は優姫と一緒に眠っているはずだ。その間に修二は他の面々を呼び出し、こうして奈々子のしてきたことを話して聞かせたのである。その話を聞いて一番驚いたのは亜美であった。まさか奈々子が自分を、修二を裏切っているとは思いもしなかったからだ。
 「まあ、ボクの事を思ってのことだし、忠誠も誓い直したからね」
 「問題にしないというんですか?甘いですよ、先輩!!」
 この一件はこれ以上問題視しないと宣言する修二にマリアは頬を膨らませて抗議する。修二に絶対の忠誠を誓っているなら一切の裏切り行為は許すべきでないというのが彼女の意見であった。アリアや瞳も同意見らしく、頷いている。そんなマリアを手で制しながら修二は言葉を続ける。
 「奈々子がこれ以上ボク達を裏切ることはありえない。お仕置きもしたしね。それよりも問題なのは・・・」
 「消えた大小森、そして彼を逃がす算段を立てた方・・・ですね?」
 修二の言葉に冷静に答えたのはアリアだった。アリアの言葉に修二黙ったまま頷く。こちらは奈々子の意識が回復すれば逃げ込んだ場所はわかるだろう。今すぐ父親に断罪を下さずに済んだ為か、瞳はホッとした表情を浮べていた。それよりも修二にとって気になるのは大小森を逃がす算段を立てたほうである。
 「奈々子の進言を受けてすぐさま行動を起こせるような人物、そしてそれなりの権力がある人物と見るべきか」
 これまで仕入れてきた情報を修二は頭の中でフル回転察せて黒幕の正体を推察する。他にも奈々子とそれなりの繋がりがある人物、警察にも顔の効く人物、色々な顔が垣間見える。そのことを頭に置きながら、その正体を推測してゆく。しばし考え込んでいた修二は目を細めながらその正体に当たりを付ける。
 「あの・・・ご主人様・・・」
 ようやく眠りから覚めた奈々子が修二たちのいる部屋に遠慮がちに入ってくる。裏切り行為をしていた負い目があるのだろう。そんな奈々子に部屋の中に入るように促すと、修二は真正面から彼女を見据えて問いかける。
 「奈々子、大小森はどこに隠れている?」
 「・・・ロスの郊外に・・・」
 修二の問いかけに奈々子は素直に答える。その言葉におそらく嘘はないと感じた修二は大小森の始末はすこし先にしようと考える。瞳にあまい大小森のことだから自分から瞳をロスに呼び出す可能性は高い。そのときに瞳に始末をつけさせればいい。大小森の件についてはこれ以上考える必要はないと修二は判断する。
 「あの、ご主人様。一つご報告がありました・・・」
 遠慮がちに亜美が口を挟んでくる。何事かと修二が顔を向けると、亜美は急遽、数人の女子高生がこれまでと同じホテルに集まるらしい情報を入手したことを伝える。それを聞いた修二は奈々子のほうを見るが、彼女は首を横に振る。買春倶楽部とは関係ないものかとも思ったが、亜美が入手した女子高生の名前は奈々子がよく知る娘達であった。
 「どういうこと?会長が知らないなんて・・・」
 「誰かが会長を無視して生徒を呼び出した。そう考えるのが・・・」
 アリアとマリアの言葉に修二も同意する。今回の宴は奈々子を無視して進められていることは間違いない。下手をするとこちらの正体がばれた可能性もある。しかし、奈々子が裏切り者だと相手が知っているとは考え難い。相手から見れば自分など奈々子の遊び相手ぐらいにしか見えないはずである。そうなると奈々子に連絡がつかず、代役にそれを任せたと考えるのが妥当だろう。修二はしばし考え込むと、奈々子に問いただす。
 「奈々子、お前の仕事を代行できる人物は誰だ?それから会とのつなぎ役は?」
 「えっと、代役は五上院桜、繋ぎは・・・皇カナさんが・・・」
 奈々子の話を聞いた修二はフムと鼻を鳴らす。五上院桜は修二もよく知っている。旧華族のお姫様で、奈々子と仲がいい上級生である。しかし、古風な出で立ちと世間知らずな一面を有していて、とても買春倶楽部の管理などしているとは思えない。すると奈々子が口を挟んでくる。
 「桜はわたしがしていることがなんなのか知らないんです・・・」
 「知らない?それでよく代行が・・・」
 「もしものときはわたしの代わりにこれをするように伝えてありましたから。たぶんその通りに・・・」
 奈々子の話を聞いた修二は納得がいった顔をする。おそらく繋ぎ役の皇は奈々子の調教中に連絡をよこしたため連絡が取れず、やむなく桜に女子生徒の紹介を依頼したのであろう。つまり、敵にはまだこちらの正体はばれていないという考えは間違っていないだろう。。ならば計画を急ぐ必要性はない。
 「五上院桜、か・・・旧華族連中に顔を利かせるのに使えそうだな・・・」
 「まさか、ご主人様・・・桜を・・・」
 「いけないか?ボクのやることを否定するのか?」
 修二の言葉に奈々子が青い顔をすると、修二は彼女を睨みつけながら低く抑えた声で問いかける。大切な友人である桜を自分と同じ目に合わせることが奈々子には忍びなかった。しかし、同時に桜を自分と同じ色に染めたいというサディスティックな欲望も頭を擡げてくる。結局、奈々子にはそれを否定する権利はない。すぐに引き下がる。そんな奈々子を見ながら、桜をどのようにして自分のものにするかを考えていた修二は先ほど思い描いた答えが気になり始める。
 「そうだ、奈々子。聞きたいことがある・・・」
 「なんでしょうか?」
 「買春倶楽部の真の黒幕、それはお前の叔父、金城烈・・・だね?」
 修二の言葉に奈々子は絶句する。。視線を修二から逸らして俯いたまま黙り込んでしまう。その態度は修二の言葉が正しいことを意味していた。自分の考えが当たりであったことに修二はにやりと笑う。金城烈の名前を聞いたアリアたちはお互いの顔を見合わせてその名前を思い出す。
 「金城烈って、元国会議員の、ですか??」
 「そうだ。バックには佐々菜グループ。彼の経営していたホテルが○×ホテル、秘書の名前は皇カナ・・・」
 修二の言葉によってすべての点が一本に繋がってゆく。奈々子が自分が管理する女子高生に売春をさせていることを知った金城は奈々子と提携することで買春倶楽部を結成、大物代議士や企業家、警察関係者などに女子高生を紹介することでその権力を拡大させていった。その舞台となったのが自分の経営していたホテル。自分の秘書の一人を繋ぎ役にしていたことがその証拠だろう。そして内海たちはその職業柄から金城と他の客とのパイプ役を果たしていたに違いない。そうやって権力者に取り入り、さらにその勢力を伸ばしてきたのだろう。さらにその権力を駆使して佐々菜グループ内での発言力もつけてきているようだ。
 「女子高生が騒ぎ立ててもマスコミは封殺、警察は動かない。この件が表に出ることはないはずだった・・・」
 だが、湊沙耶子の死が金城にとっては致命的だった。この件とまるで関わることのないはずだった修二を舞台の上に上げることとなり、修二にその手足をもがれていったのである。もっとも金城にしてみれば、自分の企業家としての命を断つかも知れない者達の死は渡りに船だったに違いない。
 「ご主人様、叔父様に・・・叔父様に手を出したら危ないです!」
 「権力者だから、かい?」
 「はい・・・将来はお父様に代わってお爺様の跡を継ぐかもとさえ言われています」
 そんな男と修二がやりあったら、修二の命が危ない。奈々子はそう感じていた。だから必死になって修二が金城に手を出すことを留めようとし、これまでもその正体を知りながら教えようとはしなかったのである。しかし、奈々子の言葉を聞いても修二はくすくすと笑っているだけだった。
 「そうだね。すぐに手を出したらボク如き、簡単につぶされるだろう・・・」
 「では・・・」
 「そのためにお前達を従え、桜を仲間にしようとしているんだ。数年先を見据えてね」
 修二が金城に手を出さないと知り奈々子はホッとした表情を浮べる。しかし、修二の計画はさらに先にまで達していた。奈々子たちを自分の奴隷としたのは眼の前の復讐のためだけではない。その先に隠れている人物の正体をさらけ出し、彼女たちの助けを借りて対抗する力を付けるためであった。そのために必要な戦力を自分の元に引きずりこんだのである。『悪魔の微笑』を使って従順な下僕として。
 「いいかい、奈々子・・・ボクは必ず金城を裁く、ボクのこの手でね・・・」
 心配そうな顔をする奈々子にそう宣言する修二の表情は冷酷なものであった。その思わず見も凍りつくような表情を見た奈々子は頷くことしかできなかった。最後の敵を見据えて修二の計画が動き始める。だが、修二はその先に待ち構える不幸と、永遠の別れをこのときはまだ知る由もなかった。


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