第13話 奇襲


 第三の関を落とされたシーゲランスでは上に下にの大騒ぎとなっていた。ヴェイス軍の強さはすでに数によるものではないこと、神竜をはじめその質の高さも図抜けていることがそのおもな原因であった。士気をくじかれたシーゲランス軍にさらにサーリア姫が敵に寝返ったという情報が流れ始めたため、もはや統制の取れない状況となっていた。そんな中、和平派が勢いを増し、国論の大勢を締めるほどとなっていた。
 「ですから、今すぐ使者を立てて・・・」
 和平派の中心であるロドリゲス公爵を中心に和平派が多数派工作を仕掛け、議会を完全に支配していた。これを押さえ込むことはもはや主戦派には不可能で、世論も含めて和平に流れが傾きつつあった。
 「だからといって魔族の軍門に下るなど、我ら人としての・・」
 主戦派の中心、フィリップ男爵は懸命に雄弁を振るうが、もはや彼の言葉を聞くものなどいなかった。議会はすでに誰を使者として差し向けるかで話が進もうとしていた。
 ところがここに来て話の流れを逆転させる人物が現れた。シーゲランス帝国第一王子ストラトスであった。彼は第五の関の責任者としてこの関を護ってきたが、議会が和平に動いたと聞きつけ駆けつけたのである。もちろん彼は主戦派であった。ヴェイスは滅ぼすべし、彼にそう思わせているのはほかならぬサーリアであった。
 「サーリアが裏切るはずがない!やつらに連れ攫われたのだ!」
 目にいれても痛くないほどかわいがっていた姫君の失踪は兄王子の目を曇らせていた。国民に人気の高い王子の言葉に人々は心動かされ、そして世論の流れをまた戦いに導くこととなってしまった。終わるはずだった戦いはまだ続く結果となってしまった。

 この結果を最も嘆いたのはサーリア本人であった。エリウスに改めて謁見した彼女はシーゲランスとの停戦を申し入れた。エリウスもサーリアを手に入れることが主目的であったため、目的を果たした今それを受け入れるつもりで準備を始めていたところだった。
 「お兄様・・・なんて愚かなことを・・・」
 サーリアは目に涙を浮べて悔しがる。これでいらない戦いを回避することは出来なくなってしまったのである。それが悔しくてならなかった。
 「エリウス様、私自ら王都に戻り、兄と父王を説得してまいります。これ以上戦いを続けることは・・・」
 「待ちなさい、サーリア。今の君が行っても話をややこしくするだけだ」
 鼻息荒く王都に戻ると宣言したサーリアであったがあっさりとエリウスにいなされてしまう。確かに今戻っても話は進むどころか、自分は偽姫として始末されかねない。ここはおとなしくしているしかなかった。代わりにエリウスは第三の関から先への進軍を取りやめ、しばらくシーゲランスの動きを見ることで落ち着いた。
 「お兄様。無茶なことはなさらないで下さい・・・」
 会議の後、心配そうに空を見上げたサーリアは兄が変な事をしてはいまいか心配になり、何事もおこらないことを願うのだった。しかしその願いは届くことはなかった。

 「水軍の状況は?」
 世論を主戦に戻したストラトスはフィリップと共に会議室に詰めて今後のことを話し合っていた。すでに和平派のロドリゲス公爵は拘束され、牢に入れられている。兵たちの士気も回復し、一気に打って出られるほどまでになっていた。そこで逆転の策をストラトスは実行に移すのだった。
 「すでに出向から3日。後二日といったところでしょうか」
 フィリップはテーブルの上に広げられた地図の上を見つめながら指で水軍の動きを示す。シーゲランスの港から出た水軍の船は、北上し、ヴェイス皇国首都、イーザスを落とすべく20隻からなる艦隊が北上をしていた。イーザスを落とし、動揺したヴェイス軍を一気に殲滅する。それがストラトスの立てた策だった。
 「奴ら闇のものを生かしておく必要などない。すべて皆殺しにしてくれる!」
 妹姫を奪われたストラトスは周りが見えないほど激昂し、熱くなっていた。そんな彼をフィリップは押し立てるのだった。もはや戦いは避けられない状況となっていた。


 ヴェイス皇国王城ダーク・ハーケン。主のいないこの城を護っているのは、二人の母親であった。今日も今日とてこの二人のお后様はおしゃべりに忙しかった。
 「ほれ、ステラ、このケーキはおいしいぞ?」
 「ステラ、こちらのチョコもおいしいですわよ?」
 愛らしいステラを小動物よろしく、二人そろってかわいがっていた。当のステラはお菓子に釣られてチョコチョコと二人の間を行ったり来たりしている。その仕草がかわいくてまたかまってしまうという寸法だった。当のステラはヒルデの膝の上でケーキを食べるのに夢中になっていた。 
 「ほっほっほっ、憂い子じゃのぉ、ステラは」
 「本当に。愛らしさがますます磨きが掛かっているようです」
 ヒルデは自分の膝の上でケーキを食べるステラの姿を目を細めて見つめ、エレナも頬についたクリームを拭ってやりながらそんなことを言う。
 「さあ、ステラ。それを食べ終わったらお勉強の時間ですよ?」
 「うーー、おべんきょう、きらい・・・」
 エレナにそう言われたステラは嫌そうな顔をして下を向いてしまう。そんなステラの頬を撫でながら、エレナは優しく話しかける。
 「ステラ、善き女王となるには必要なこと。わかりますね?」
 「はい」
 エレナの言葉にしばし考え込んだステラであったが、最後には素直に頷く。この素直さが人気の一つといってよかった。エレナは目を細めてステラの髪を撫でてやる。ステラはきょとんとした顔でエレナを見つめる。
 「ステラちゃーーーーん!!」
 大きな声を上げてヒルデたちの部屋の一人の少女が飛び込んでくる。ステラと同じくらいの年頃の少女だった。少女はステラに飛びつくと頬擦りを始める。
 「ステラちゃん、元気だった?」
 「ううっ・・・チイちゃん、苦しいの・・・」
 力任せに頬擦りをする少女にステラは苦しそうに言う。それでもチイは頬擦りをやめようとはしなかった。すりすりと何度も頬を摺り寄せる。そんなチイの後頭部を誰かが痛打する。
 「いい加減にする、チイ。ステラ様、困ってる」
 後から入ってきた白髪の少女が冷たく言い放つ。痛打された後頭部を抑えたまましゃがみこんでいたチイは涙目で殴りつけてきた髪から衣装まで真っ白な少女に食って掛かる。
 「なにすんのよぉ!ヒョウのいじめっ子!」
 「事実を言っただけ。チイは力の加減、知らなさすぎ」
 「そう言うヒョウだってわたしを殴るとき加減してくれないじゃない!!」
 「あんたの頑丈さなら痛くもないくせに」
 「痛いもん!!」
 ステラを間に挟んでチイとヒョウは言い争いを始める。二人の言い争いにステラは何がどうなっているのか分からずきょろきょろするばかりだった。ステラを無視して二人の言い争いは続く。そんな状況をのんびりと間延びした声が遮る。
 「ふたりとも〜喧嘩しちゃ、めっ!ですよ〜」
 ペースが乱される話し方にチイとヒョウの言い争いが止まる。入り口にさらに二人の少女。上から下まで真っ黒な衣装に黒髪の少女と、その後ろに隠れるようにしている抜けるような蒼い衣装に青い髪の少女がいた。二人の登場にチイはまずいといった表情を浮べる。
 「喧嘩ではありません、アン姉様。これは教育です」
 「あら、そうでしたの。教育は必要です、頑張ってね、ヒョウちゃん」
 ヒョウの方は至極まじめな顔できっぱりという。それを聞いたアンはあっさりと納得してしまう。それどころかそれを容認し、促進してくる。これ以上教育という名の暴力を振るわれてはたまらない。チイはそそくさとエレナの後ろに隠れてしまう。
 「ほほほっ、ヒョウ、そのくらいで許してあげや。チイも反省しておろう」
 ヒルデが助け舟を出すとチイはコクコクと力強く頷く。それを見てさすがのヒョウもそれ以上何もいえなくなってしまった。チイの方はホッと胸をなでおろす。
 「スイちゃん、こっち来て一緒にお菓子、食べよ?」
 青い髪の少女はアンの後ろに隠れたままでいたが、ステラにそう誘われてはにかみながらこくりと頷くと、とてとてとステラに近寄る。そしてステラからお菓子を受け取ると嬉しそうな顔でそれを口にするのだった。ステラも一緒に嬉しそうな顔をしてお菓子を頬張る。
 「して、アン。そなた、何ようでここに来た?四人そろってこの部屋に来るなど、滅多にないことであろう?」
 「ああ、忘れるところでしたわぁ。わが国の結界内に入り込んだものがおりますぅ」
 ヒルデに問われたアンは思い出したことを報告する。それを聞いたヒルデとエレナはものめずらしそうな顔をする。ヴェイス国首都・イージスは大陸から離れた島にある。そのためここに直接乗り込むには海を渡らなければならない。これまでそんな無謀なことをしてきた前例はない。そのことを感心したのだ。
 「よほど、度胸のある国のようだな。してどこの国の船じゃ?」
 「進行方向から推定して、シーゲランス帝国の海軍ではないかと・・・」
 「数はどれくらいですか?」
 「大型のガレー船で20隻ほどといった所でございます」
 アンに代わってヒョウがすらすらと報告する。それを聞いたヒルデ立ちは敵の規模を類推する。そしてどうしたものかと思案する。
 「どうする、エレナ?このまま本国に招き入れるか?」
 「それはやめた方がよろしいでしょう。奴らは闇の者を一般人であろうとも殺す種族。下手に一般人に被害が出てはエリウスが悲しみます」
 「では、いかがする?」
 「そうですわね。アン、ヒョウ、スイ。航行不能にしてらっしゃい」
 ヒルデの問いにエレナはアンたちの方を向いてきっぱりと言い切る。それを聞いたアンたちは、アンは変わらず、ヒョウは無愛想なまま、スイはオロオロとそれぞれの表情でそれを受ける。唯一話を振ってもらえなかったチイは頬を膨らませる。
 「うう!エレナ様、チイには何もさせてくれないの?」
 「チイは水が苦手でしょう?三人が取り逃がした分を担当なさい」
 エレナに諭されてチイはしぶしぶ頷く。シーゲランス迎撃のために4人の少女が駆け出してゆく。その後姿を見送ったエレナは同じく見送っていたステラのほうに視線を移す。
 「ステラはお勉強ですからね?」
 この騒ぎで勉強から逃げ出せると思い込んでいたステラは、エレナの一言に泣き出しそうな顔をしながら、しぶしぶ頷くのだった。そんなステラの仕草を見つめながら、ヒルデもエレナもころころと喉を鳴らして笑うのであった。そこには王都を攻められるかもしれないという恐れは微塵も感じられなかった。

 「船長、目的地まであとどのくらいだ?」
 「あと二時間といったところです、セリア将軍」
 進行方向をじっと見つめたまま今回の進軍の総責任を任されたセリアは船長に目的地までの時間を尋ねる。セリア自身今回の戦いの重要性をよく認識していた。第一から第三までの関を易々と突破された今、手薄となっている敵の本拠地を攻め落とすことで逆転を狙う。決して失敗は許されなかった。
 「もっともこれだけ大掛かりな進軍だ。どれほどの軍勢が残っているか・・・」
 ヴェイス軍が第一軍から第八軍まで総動員して進軍しているとの情報はセリアも聞いている。正体不明の第四軍を除けば、全軍の姿が確認されていることになる。となれば残っているのは王都の守備隊ぐらいのものだろう。
 「その程度の軍、我らの敵ではない!」
 敵の規模は分かっていないが、セリアは負ける気はしなかった。一気に進軍し攻め落としたい。逸る気持ちを抑えながらじっと進行方向を見つめていた。
 「セリア将軍!前方より接近する物体あり!」
 マストの上から見張っていた船員から報告が入る。それを聞いたセリアも前方を注視する。確かに何か二つの物体が急速にこちらに向かって飛んでくるのが見える。黒と白の鳥のように見えた。その正体を見極めようと目を細めた瞬間だった。船が大きく揺れる。
 「な、何事だ!?」
 突然のことに体勢を崩したセリアは甲板に膝をついたまま、状況を尋ねる。返事がないので自分で辺りを見回す。そこで見かけた光景にセリアか凍りつく。
 「な、な、なんだ・・・あれは・・・」
 13番艦に巻きつく蒼いうろこの蛇。いや、蛇ではない。もっと凶悪な信じがたい生物。
 「ウォ、ウォータードラゴン・・・蒼き神竜・・・」
 伝説とも言える神竜の姿にセリアはただ呆然としていた。ウォータードラゴン・スイは長い首を使ってぎりぎりと13番艦を締め上げる。メキメキと嫌な音を立てて戦隊に亀裂が走り、マストがへし折られる。13番艦の兵たちはあわてて海に飛び込み他の艦に収容されている。
 「何をしている!攻撃準備!」
 セリアはようやく正気を取り戻し、命令を下す。セリアの命令に我に帰った各艦の乗組員は、固定式のバリスタでスイを攻撃し始める。丸太のような矢が次々とスイに射掛けられるが、硬い神竜のうろこを傷付けることすら出来なず、弾き返されるだけだった。
 「セリア将軍!!前方から!!」
 スイにダメージすら与えることが出来ない状況にセリアは歯軋りして悔しがる。そんな彼女に前方から迫る物体の報告が入る。先ほど見えた鳥のことだろうか。今はそれどころではなかった。目の前の蒼き神竜を何とかしなければ、全滅の危険すらあるのだ。
 「そんなもの、あとにしろ!今は眼の前の・・・」
 「ですが・・・前方から白色と黒色の竜が・・・」
 セリアは見張りの言葉にあわてて前方を振り返る。瞬間、白色の光と、黒色の闇が目を焼く。白色のブレスは6番艦を氷付けにし、粉々の打ち砕いてしまう。黒色のブレスは、18番艦の中心辺りでとどまり、メキメキとその中に船体を、兵士たちを飲み込んでゆく。
 「氷の神竜、ブリザード・ドラゴンに、闇の神竜、ダークネス・ドラゴンだと・・・」
 伝説の神竜が一体現れただけでも驚きなのに、それが三体も自分の眼の前にいることに、セリアは眩暈がしてきた。こんな化け物がヴェイス国の首都を護っているのかと思うと恐ろしくなってきた。
 「こんな国を私たちは相手にしようというのか・・・」
 冷や汗が滴り落ち、喉がからからに渇いてくる。もうまともな指揮など取れるはずがない。いかに攻撃しようともこの神竜たちには効果がないのだ。ここでもたもたしていれば全滅させられるのは目に見えている。セリアは苦渋の決断を迫られた。
 「全艦に通達!全速でこの海域を離脱する!どれほど被害が出てもかまわぬ!敵国の首都を目指せ!!」
 神竜の相手をして被害を大きくすることは得策ではない。どれだけ多くの兵を見捨てることになろうとも敵国の首都を落とせばそれで言い。セリアはそう判断し、残った船すべてのそう伝達した。どうせ離脱することなど出来ないのだ。全艦とも前へ前へと進んでゆく。
 「すすめぇ!我々には戻ることは許されぬのだ!!」
 重い体に鞭打つように進むシーゲランス艦隊。それをそのまま見逃してくれるほど甘くはない。ヒョウの氷のブレスが、アンの超重力のブレスが、次々にシーゲランス艦を凍りつかせ、闇に飲み込んでゆく。スイも水のブレスを吐き、シーゲランス艦の横腹に穴を開けてゆく。
 「クソ、くそ、くそおおぉぉっっ!!」
 一方的な狩りに、セリアは怨嗟の雄たけびを上げる。二十隻もあった艦隊はなす術もなく神竜たちによって狩られてゆく。それから逃げる以外どうすることも出来ない自分を呪うしかなかった。そんなセリアの乗る一番艦も大きく揺れる。スイの水のブレスが直撃したのだ。
 「総員退艦!!」
 船体に大きな穴が開き、そこから水が流れ込んでくる。もはや処置の仕様がなかった。急ぎ一番艦を捨てて逃げようとしたセリアであったが、もう一度大きく船体が揺れて海に投げ出される。直後、一番艦は凍りつき砕け散る。氷のブレスに巻き込まれなかったのは運がよかったのか、この暗黒の海に投げ出されたことは運が悪かったのか、セリアには分からなかった。ただ、この圧倒的な力の差を恨むしかなかった。ここでセリアの意識は暗転する。その咲きどうなったか、彼女には分からなかった。

 「ここは・・・」
 目覚めた男は辺りを見回す。周りには神竜などいない。どうやら岸に打ち上げられているようだった。周りには他の艦などなく。唯一自分たちの艦だけがこの岸に打ち上げられたらしい。一応この艦の指揮を任されていた男は急ぎ点呼を取る。ほとんどの兵が無事なようだった。
 「これは俺たちに運が向いてきたのかもしれないな・・・」
 口うるさい将軍がいない今、手柄は自分たちのものである。一隻分の乗組員しかいないとはいえ強襲すれば、主力のいない敵の王城くらい落とすことも可能かもしれない。王城に入ってしまえばあの化け物みたいな竜とも戦うことはないだろう。
 「善は急げだ。俺たちが生き残ったことがばれる前に・・・」
 男は生き残った兵全員を集めると、ダーク・ハーケン城奇襲を提案する。他の兵もこれに乗り、残された食料と水、鎧と武器を持って進軍の準備を開始する。ちょうどそのときだった。
 「おお、聞いたとおり、いっぱいいる、いっぱいいる!」
 嬉しそうな声を上げながら一人の少女が森の中から姿を現す。まだ五歳くらいの幼い少女であったが、ダーク・ハーケン城奇襲のことを知られるわけにはいかない。一人の騎士が剣を抜き放つと、少女に近寄って行く。
 「こんなところに来た自分を恨むんだな・・・」
 勝手なことを言いながら、剣を振り上げ、少女の首めがけて振り下ろす。ガキンと鈍い音を立てて剣は少女の首のところで止まった。騎士はこの異様な少女に驚き、あわてて距離をとろうとするが、騎士の方を睨みつけた少女は遠慮なく蹴りを騎士に見舞う。
 「痛いじゃないか、このやろう!チイちゃんキック!!」
 チイの遠慮無しの蹴りに騎士の体は中を舞い、数十メートル先の3番艦の船体にたたきつけられ、そのまま動かなくなる。残されたものたちは吹き飛ばされた騎士と、吹き飛ばした少女を見比べながらなにも言えずにいた。
 「おまえら!この地の神竜、アース・ドラゴンのチイ様が相手してやる!覚悟しろ!!」
 五歳児にそんなことを言われても笑ってしまうところだが、今見た光景を見たあとでは、とてもではないが笑い話では済まされない。あわてて腰の剣を抜き放ちチイに向けて構える。しかし誰もチイに襲い掛かってゆけない。先ほどのような蹴りを喰らいたくない、それが本音だった。
 「ううっ、何で誰もかかってこないんだよぉ!!」
 焦れたチイが文句を言うがびくついて誰一人として動くことが出来ない。チイが代わりに一歩を踏み出すと一歩引く、動かなければ動かない。こう着状態にチイがついに切れる。
 「こんなのやだ!!さっさと終わらせるぅ!!」
 駄々をこねるように叫ぶと、神竜の姿に戻ってゆく。褐色のうろこを持った竜が騎士たちの前に立ちふさがる。少女がただ者ではないとは思っていた騎士たちだったが、まさか神竜だったとは夢にも思っていなかった。驚きと恐怖に蜘蛛の子を散らすように、剣を捨てて逃げ出してゆく。
 「逃げるな、ばかぁ!!」
 怒ったチイが尻尾を振るい、前足を振り回す。次々と騎士たちが巻き込まれなぎ倒されてゆく。座礁した船もチイのブレスを喰らい、石化し、崩れ落ちる。何とか生き残った騎士たちは、この圧倒的な力の差に恐怖した。主力が遠征に出ているならば楽勝だ等と思った上役たちの考えのなさに腹が立ってくる。そしてこの敗戦の罪は自分たちに着せられるのだ。
 「これ以上やってられるか!!」
 騎士たちは憤慨し、森に中に消えてゆく。母国に戻れない以上この国か他の国で新しい生き方を探すのも悪くない。これ以上あんな上役たちのために命をかけるのだけはごめんだと思いが彼らを駆り立てる。騎士たちは思い思いの方向に進んでゆく。新しい生き方を求めて・・・

 「ここ・・・は・・・」
 浜辺に打ち上げられたセリアはようやく意識を取り戻した。海に投げ出されたことまでは覚えている。どうやら奇跡的に浜辺に流されてきたようだ。幸いにも怪我は擦り傷くらいで、装備も無事のようだ。セリアは重い体を起こしてあたりの様子を伺う。周りには船の残骸が打ち上げられ、騎士、船員たちの姿も多く見受けられる。
 「ある意味うまくいったのかな?いや、逆だな・・・」
 セリアはヴェイス上陸を果たせたことを喜ぶ。同時にこれだけの人数では王都攻略など不可能に近いだろう。ならば今度はここからの脱出手段を考えなければならない。そのことを考えると溜息が出て来る。
 「まずはこのあたりの情報が欲しいところだな・・・」
 辺りを見回しながらセリアは呟く。そこで生きているものたちを起こすと、あたりの探索に乗り出すことにした。ここでとどまっていることの方が危ないからだ。
 「セリア将軍、これからどうなさるので?」
 「いつまでもここにいるわけにはいかぬだろう。何とか脱出して本国に戻る」
 本国に戻れると知った騎士たちはホッとした表情を浮べる。そのためにも本土に戻る手段を探さなければならない。セリアたちは森の木々を掻き分け、奥へ奥へと進んでゆく。ふと、セリアの耳に笑い声が聞こえてくる。まだ先のほうだが、間違いなく子供たちの笑い声であった。セリアたちは注意を腹って先へ進む。
 「リン姉ちゃん、お芋、取れたよ!こんなおっきいの!」
 手にした芋をリンに店ながら男の子は自慢げにそんなことを言ってくる。リンも周りには数人の子供がわらわらと取り巻いていた。獣人の集落から少しはなれたところに作られた畑、ここでリンは野菜を育て、その収穫に来ていた。ルンとガン、さらにはミルドといった姿もあった。
 「ミルドさん、大丈夫?」
 「え、ええ・・・こんなことするのは初めてですが・・・」
 捕虜となったミルドはガン預かりとなり、この獣人の森に連れてこられた。どんな辱めを受けることかとか不安だったミルドだったが、やらされることは家事や子供の世話といった日常の仕事ばかりだった。一時は脱走も考えたが、日々の忙しさにいつしかそんなことは忘れてしまっていた。
 「こんな生活もあるんですね・・・」
 戦いしか知らなかったミルドにとってここでの生活は新鮮で暖かいものだった。子供たちも新しくやってきた女性に最初こそ警戒していたが、いつか打ち解け、仲良くなっていた。そしていつしかここの暖かさが心地よくなっていて、戦いには戻りたくなくなっていた。それが故国を裏切ることになろうと、ミルドにはいいことだった。
 (こんな私を許して下しますよね、閣下・・・)
 今はなき想い人に心の中で謝りながら、ミルドは畑仕事を続ける。
 「さてと、今日はこんなものかな?」
 籠いっぱいになった野菜を見てリンは腰に手を当てて立ち上がる。そのときだった。子供の泣き声が響き渡る。リンたちがあわててそちらを振り向くとセリアたちが獣人の子供を抱きかかえてこちらに出てくるところだった。首筋には剣が当てられ、子供は恐怖からぽろぽろと涙を流している。
 「動くなよ、貴様ら・・・」
 セリアは子供を盾にしたままゆっくりと近寄ってくる。
 「なんだ、手前らは・・・その鎧はシーゲランスの連中みたいだが・・・」
 「その通りだ。私はシーゲランス海軍将軍、セリア=ヴェースト。この通り敗残の将だよ・・・」
 ガンの問いかけにセリアは自嘲気味に笑いながら答える。だが、一切油断はせず、ガンたちの動きに注視している。とてもではないが、子供を助け出すことなど出来そうもない。ガンたちは歯噛みしながら状況を見守るしかなかった。ガンたちが手を出せずにいることにセリアは自分たちの優位を確信する。
 「このあたりで船を手に入れられるところはないか?」
 「船ならこの先の浜辺にいくつか置いてあるよ。そいつを持っていきな!」
 ガンはイライラしたように答える。それを聴いた兵の一人がいそうで浜辺の方に戻っていく。しばらくして戻ってきた兵が手で丸を作る。それを見たセリアはにやりと笑う。帰る手段が手に入ったのだ。笑いたくもなる。
 「もういいだろう?さっさとガキを離しな!」
 「そうはいかんな。我々も手ぶらで帰るわけにはいかないのでね。第一の関を落とした敵将と裏切り者を殿下の御前に連れて行けば少しは今回の失態も許されることだろう」
 セリアはそういいながらにやりと笑う。もちろん、ガンとミルドのことを言っているのである。セリアは無造作にガンに近寄ると、左ももに手にした剣を突き立てる。鮮血が舞い、ガンは片膝をつく。獣化していない今は普通の武器でも傷付けられる。そのことをセリアは分かっているのだ。
 「お前もだ、ミルド!」
 ガンのももから剣を引き抜くと今度はミルドの肩に剣を突き立てる。セリアは反撃できないガンとミルドに次々に剣をつきたててゆく。膝をついた二人の足元には血がぽたぽたと滴り落ちていく。ガンもミルドも出血が激しいらしく息遣いが荒い。
 「この、卑怯者!正々堂々と勝負できないの?」
 見かねたリンが大声で叫ぶ。そんなリンの方をちらりと見ると、セリアは馬鹿にしたような顔で答える。
 「なにを言っている。こちらはそちらに勝っているのだ。何をしてもことらの勝手であろう?」
 「まともな勝負もしてないくせに!」
 「どうあれ我々が強者だ。弱者をどう扱おうとかってであろう?」
 セリアは優位な立場にいる自分たちに酔っていた。唯一の戦力であるこの二人を無力化した今、逆転される可能性はない。この二人を本国に連れ帰れば、ストラトスの溜飲も少しは下がることだろう。逆に自分が情けなく思っているのはリンだった。せっかく獣化出来るようになったと言うのに、まだ自在にそれをコントロールできていない。二人を助け出せるのは自分しかいないはずなのに、どうすることもできないのだ。悔しさに唇を噛み締める。
 「これが勝者の特権だ!」
 「ならばわらわが勝ったらそなたをどのように扱おうとも勝手という事じゃな?」
 突然背後から声をかけられセリアはあわてて後ろを振り向く。子供を楯にしていた騎士は倒れ、代わりに一人の美女がそこに立っている。手には獣人の子供を抱きかかえ、他の騎士たちを無視してリンたちのほうに歩いてくる。
 「きさま・・・いったい・・・」
 自分の優位が一瞬にして崩れ去ったセリアは驚きの表情を浮べる。美女は子供をリンに預けるとセリアに蔑む視線を向けて自己紹介する。
 「わらわか?わらわはヒルデ、ヒルデ=クン=ファルケン。この国の女王じゃ」
 思いもかけない大物の登場にセイアは驚愕した。それはリンたちも同じであった。ヒルデが城から出てくることなどこれまでなかったからだ。そして何より、自分たちの知るヒルデとは似ても似つかない姿を今のヒルデはしていたのだ。思わず疑問が口につく。
 「ヒルデ様、そのお姿は・・・」
 「おお、これか?これは幻体じゃ。本体の何千分の一かをここに体現しているに過ぎぬ」
 ヒルデはころころと笑いながら説明してくれる。元の強さを知っているリンたちはそれ以上問わなかったが、セリアたちは相手の大物ぶりに欲が出てきた。
 「貴方の首も持ち帰れば・・・」
 持ち上がってきた欲はもはや止まらない。セリアをはじめとする騎士たちは各々武器を構えてヒルデに襲い掛かる。ここから始まったのは一方的虐殺だった。ヒルデは手にしたムチを振るい次々に騎士たちを絡め取り、ずたずたに切り裂いてゆく。いかに攻撃を加えようとも、まるで効果はなかった。
 「くそ!なんだ、これは・・・」
 イライラしたように攻撃を加えるセリアだったが、まるでヒルデには効果がなく、苛立ちだけが募っていった。一人、また一人と部下が切り裂かれてゆく。数の優位は見る見るうちになくなってゆく。このままではまずいと思ったセリアは仕方なく撤退を指示する。ヒルデに背を向け、セリアたちは後退を始める。それを許すほどヒルデは優しくはなかった。
 「これで終わりじゃ・・・」
 指をぱちんと鳴らすと、逃げようとするセリアの周りに煙が発生する。その煙に巻き込まれたセリアたちは次々に地に倒れ付してゆく。最後まで抵抗していたセリアだったが、襲い来る眠気に抗うことは出来ず、膝をつき、地に倒れ伏すのだった。
 「みんな無事かえ?」
 「はい、ヒルデ様。しかし何故ここに?」
 「生き残った奴らがこのあたりに逃げ込んだとドクターが知らせてくれての。そいつらの捕縛を頼まれたのじゃ。今ダンは不在であろう?その代わりも兼ねて暇つぶしに来たみただけじゃ」
 ダンは先日の一件依頼修行に出てしまい不在である。ガンとミルドくらいしか戦えるものがいない以上、ヒルデの登場は渡りに船であった。
 「この人たちはどうなるのですか?」
 「しらぬ。こやつらはドクターにすべて任せる」
 ヒルデはリンの質問にそう答えると、倒れていたセリアたちを次々とどこかに移動させてゆく。すべて移動させると、最後にリンたちに挨拶すると、幻体を消滅させる。後に残されたリンたちは急ぎガンたちの怪我の治療をするのだった。

 「く・・・ここは・・・」
 目覚めたセリアが見たものは真っ暗な部屋だった。身包みはがされ、下着一枚はいていない。手で覆い隠そうにも、両手とも天井の梁から吊るされた鎖につながれ、動かすことが出来なかった。もがいて何とか逃げ出そうとするが、どうすることも出来なかった。
 「おや?もう目が覚めましたかな?ヒェッヒェッヒェッ」
 白衣を纏った怪しいジジイが薄気味悪い笑い方をしながら、ヒョコヒョコと部屋の中に入ってくる。その後ろにはヒルデの幻体を伴っている。
 「お前は、一体・・・」
 ジジイのあまりの怪しさに、セリアは思わず尋ねる。爺は笑うだけで答えようとはしない。そしてじろじろとセリアの体を観察するのだった。身をよじって隠そうとするが隠すことは出来ない。恥ずかしさに顔を赤らめていると、代わりにヒルデのほうが答えてくれる。
 「こやつはドクター。わが国で様々な研究をしている男じゃ」
 簡潔な自己紹介をすると、ドクターと呼ばれた男はもう一度不気味な笑みを浮べる。その不気味さにセリアは背筋が寒くなる。そんな男が自分に何の用があるというのだろうか。
 「ところでドクター。これから何をする気じゃ?」
 「新しい融合人間製作の実験ですわ、ヒルデ様」
 愉快そうに笑いながらドクターは答える。融合人間、つまりセツナやリューナのような魔人のことである。その言葉にヒルデは興味を示す。それを見たドクターは話を続ける。
 「これまでの融合人間の製作にはいくつもの難点がありました。それゆえに多く作ることが出来なかった」
 これまでの融合人間の製作にはクリフトと肌を合わせる必要があった。そして彼の放つ魔素を受け止め、体内で変換しなければならなかった。これには素質が必要で、これまで四人しか融合人間を作れていない。
 「そこで新たなシステムを導入して量産できる融合人間を作ろうと思いましてな」
 融合人間の量産、これまで出来なかったことを打破する実験をドクターは始めようとしているのだ。それとセリアがどのような関係があるかは分からない。しかし、ヒルデにはドクターがやろうとすることを止める気はさらさらなかった。あっさりと許可してしまう。
 「で、いかような実験なのだ?」
 「これまでと違い、融合するパーツを人間に埋め込んでおきます。こやつらの精子を卵巣に着床させ、新たな生命を生み出させるシステムでございます」
 つまりセリアを宿主として融合人間を生み出そうというのだ。
 「さて、まずはお前さんの子宮を融合人間を生むためのものに変えんとな」
 ドクターはそう言うと懐からどす黒い液体の入ったビンを取り出す。見るからに毒々しいその液体を、セリアの口に含ませ飲み干させてゆく。いかに拒否しても逃げられない。口いっぱいになった液体を飲み干すしかなかった。すべて飲み干すとすぐに体に変化が現れる。
 「はぐぅ・・・な、なんだ、これは・・・」
 全身が熱くなり、体の中から何かが変わっていくような感覚。そんな奇妙な感覚に包まれる。汗がぽたぽたと垂れ、膣口からも蜜が床に水溜りを作る。そんなセリアの変化を見てドクターは歓喜の笑みを浮べる。
 「よしよし。変化は成功のようじゃな、ヒェッヒェッヒェッ」
 「わたしに・・・なにを・・・した・・・」
 燃えるような体の熱さに耐えながらセリアは自分に起こった変化をドクターに問い詰める。外見上何か変わったところは見受けられない。しかしこの体の熱さは尋常ではない。その理由を知りたかった。問われたドクターはじっとセリアの顔を見ると問いに答え始めた。
 「お前さんの子宮を融合人間の精液を着床しやすく変質させたんじゃよ。精を放たれれば確実に妊娠するようにな。しかも複数の精を一度に取り込める」
 あまりに予想外な答えにセリアは呆然とする。つまり自分を苗床にして悪魔を作り出そうというのだ。そんなことされてはたまらない。セリアは意を決して大きく口を開けると舌を噛み切る。悪魔の実験台にされるくらいならば死んだ方がましだと思ったのだ。ボタボタと大量の血が口から滴り落ちる。
 「おまえらの・・自由には・・・させん・・・」
 「馬鹿なことを・・・そんなことをしても無駄じゃ・・・」
 自分が自害したことでドクターが焦ると思っていたセリアは予想外のドクターの冷静さにびっくりする。そしてドクターの無駄という言葉の意味をすぐに理解するのだった。 
 「なんだ・・・これは・・・」
 噛み切ったはずの舌が再生し、出血を止めてしまう。何がどうなったのか分からず、セリアは混乱してしまう。するとドクターが静かに説明を始める。
 「お前さんの体を変質させたといっただろう。今後お前さんは一切食事を取る必要もない、水を飲む必要もない、無論排泄行為も必要ない。体の新陳代謝は極限まで高められているので、今のようにいかなる怪我もすぐに治してくれる。老化も防止される。お前さんは不死となったわけじゃ。無論殺す方法は我らのみが知っておる」
 にたにたと笑いながらセリアに説明する。それはセリアを絶望の淵に突き落とす一言だった。死ぬことも出来ないまま、ただ敵兵を産む道具とされる。まさに屈辱以外の何物でもなかった。
 「殺せ・・・こんな辱め受けるくらいならいっそ・・・」
 「何故そなたの意見を聞かねばならぬ?勝者はわらわじゃ。強者が弱者をいかに扱おうと許されるのではなかったかのかえ?」
 先ほどリンたちにはなった言葉が自分に返ってきたのだ。セリアはぐうの音も出なかった。ヒルデは押し黙ったセリアを見つめながらころころと笑う。と、扉が開き一人のメイドは部屋の中に入ってくる。
 「ドクター。準備が整いました」
 「ご苦労様、ジェニー。ここにつれてきなさい」
 「畏まりました」
 ジェニーと呼ばれたメイドは手にした鎖をおもむろに引っ張る。すると部屋の外にいた男たちが部屋の中に引きずり入れられる。その顔を見たセリアは驚きを隠せなかった。その男たちは間違いなく自分と一緒に捕まった自分の部下たちだった。そしてそれ以上に驚いたのは彼らの肉体だった。
 「それは・・・いったい・・・」
 「これがキメラ・パーツですよ」
 ドクターがセリアに説明してくれる。部屋に入ってきた男たちの肉体は各々一部ずつ変化していた。腕が、脚が、体が、まるで化け物に変化したように変質してしまっている。
 「ふむ、今回はこれだけですか・・・」
 「はい。他は拒絶反応を示して自己崩壊しました」
 「そうですか、仕方ありませんね。ではとっとと始めましょう」
 ドクターがそう言うとジェニーは持っていた鎖を手放す。放された男たちはのろのろとセリアに近寄ってゆく。
 「な、なにを・・・」
 「なにを?決まっているじゃありませんか、生殖行動ですよ。貴方とのね」
 ドクターの一言が止めとなった。セリアの悲鳴が部屋中に響き渡る。しかし男たちはそれを無視してセリアに群がってくる。肉付きのよいセリの肉体に手を這わせ、性感をいじりまくる。もともとクスリによって性感が上昇していたセリアはあっという間に高みへと向かって行く。
 「うああアあっ!や、やめろ、やめろぉっ!!」
 感じたことのない快感にセリアは悶える。未知の快感は彼女にとって恐怖でしかなかった。そんな彼女の悲鳴は男たちには届かない。男たちにとって今の彼女は生殖行動を満たすための道具でしかない。張り詰めた乳首を二人がかりで舐め上げ、ヴァギナをアナルをペロペロト舐めてゆく。
 「いやぁ・・・やめて、おねがい・・・やめてぇぇっっ!!」
 号泣して懇願するが男たちは決してやめることはなかった。五人の男がセリアを取り囲み、全身を舐め回し、弄る。襲い来る快感に抗えずセリアは何度も頂点に達してしまう。
 「これ、女をイかせるのがお前らの仕事ではないぞ!とっとと挿入れぬか!」
 ドクターに命じられた男たちはセリアから体を離す。そしてもそもそと自分の性器を取り出す。セリアは朦朧とした意識でそれを見る。すぐに意識が覚醒し、泣き叫ぶ。
 「いやああっ!!なに、なんなの、それ?そんなの入らない!!」
 セリアの顔が恐怖に歪む。男たちが取り出した性器は人の倍以上の太さと長さを誇るペニスで、さらに陰茎が節くれ立っている。セリアは泣き叫んで嫌がるが男の一人がセリアの入り口にペニスを押し当てる。
 「いや・・・やめて・・・壊れる・・・壊れちゃう・・・」
 頭を振って拒絶するがそれは聞き入れてもらえなかった。ずぶりと男のペニスがセリアの膣内に侵入する。極限まで膣道を押し広げ巨大ペニスがセリアの中に入り込む。セリアは白目をむいてそれを受け入れる。あまりの激痛に気を失ったのだった。意識のないセリアを無視して男は抽送運動を開始する。
 「ほれ、後ろからも入れてやれ!そこも口も子宮に繋がっておる。着床させるならどこで射精しても大丈夫だぞ」
 ドクターに促されてもう一人がセリアのアナルにペニスを押し込む。新たな激痛がセリアの意識を覚醒させる。無べき場所にペニスを入れられたセリアは絶叫する。
 「いやあああああっっっ!!そんなところ、いやあああっっっ!!」
 号泣して悶えるが男たちはやめることはしなかった。泣き叫ぶセリアなこちにも別の男のペニスが押し込まれる。
 「んんっっ!んんんんぐぐっっ!!」
 男たちは容赦なくセリアの膣内を犯し、高みを目指す。セリアは逃げることの出来ない陵辱に涙し、もがいた。しかしどうすることも出来ないことに自分を、ここに送り込んだ王子を、国を恨んだ。恨み呪ったからといってこの陵辱劇が終わるわけではなかった。
 「ほれ、たっぷりと出してやれ!!」
 ドクターがそう言って男のお尻を蹴飛ばす。同時に男の体が大きく震え、セリアの膣内に射精する。信じられないような量の精液がセリアの体内に迸る。続いてアナルのペニスが、口の中のペニスが大きくはじけ、射精する。その大量の精液を受け止めながらセリアはこの陵辱が終わるときを待った。

 「ほれ、お前ら次行かんか、次!何度でも射精できる体になっておるんだ、腹が精液で満タンになるくらいまで出して出して出しまくらんか!!」
 ドクターの言葉を聞いた瞬間、セリアは凍りつくような思いだった。終わることのない陵辱劇、そのあとに待つ魔人降誕の儀式。これらは完全にセリアの自我を崩壊させてしまう。
 「あは、あは・・・あはははははっ・・・・」
 逃れられない陵辱に身を任せることをセリアは選んでしまう。そしてそんなセリアを男たちはいつまでも取り囲み、犯し続けるのだった・・・


 「艦隊が全滅?まことか?」
 完全な強襲であったことが絶対的勝利を信じていたストラトスにもたらされたのは自軍の完敗の方であった。20に及ぶ艦隊はすべて沈められ、送った兵はすべて殺されたとの報が入ってきている。そのほうにストラトスは愕然とした。これでまた和平派が盛り返してくることは必定だった。
 「まずい・・・まずいぞ・・・」
 せっかく主戦派が権力を握ったわずか数日でその勢いは逆転しかねない。この敗戦を知れば国民も和平に走る可能性は高い。そうなれば妹サーリアを魔人の手から取り戻せる可能性はなくなってしまう。
 「こうなれば、第五の関で奴らを殲滅してくれる・・・第四の関にいる我が密偵たちに命じろ!ヴェイス軍にちょっかいを出して進軍させるようにと!!」
 藻這うや戦うことしか頭にないストラトスは無謀な戦いに身を投じるそれが自分が護るべき民を危険に向かわせることにも気づかなかった。そんなストラトスの姿を、フィリップ男爵は薄ら笑いを浮べて見つめるのだった。


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