第14話 宿願


 シーゲランス軍を撃退したヴェイス皇国、ダーク・ハーケン城。ここに第二軍団大将軍であるフィラデラが呼び出されていた。女王ヒルダじきじきのお召しであった。断ることも出来ず、フィラデラは急ぎここダーク・ハーケン城に戻ってきていた。
 「ヒルデ様。フィラデラ=ビー、お召しに従い参上しました!」
 恭しくお辞儀をしてフィラデラは昼で立ちの部屋に入ってゆく。入った瞬間、フィラデラは眉をしかめる。中では五人の少女が輪になってお菓子を食べ、果汁水を飲んでいたのである。思いもかけない光景にフィラデラは少し不安に駆られるのだった。
 「おお、フィラ、よう参った。近こう寄れ」
 ヒルデに促されたフィラデラは奥に進み出る。ヒルデとエレナの足元でお菓子を食べていたのはステラ、チイ、スイ、ヒョウ、アンの五人であった。その姿を認めたフィラデラはますます不安に駆られる。だからといってこのまま出てゆくわけにはいかない。仕方なくヒルデの元に歩み寄る。
 「ヒルデ様、いかなる御用向きでございましょうか?」
 ヒルデとエレナの前に立ち、子供たちには視線を向けないようにしながらヒルデに問いかける。するとチイがフィラデラにまとわりついてくる。
 「ああ、フィら姉ちゃんだ!ねえ、遊んで、遊んで?」
 相変わらず遠慮のない行動だが、一応気にしないで頭を撫でてやる。
 「今忙しいから、あとでね」
 「ええ?そんなぁ・・・」
 文句を言うチイの頭を音がしそうなくらいの勢いでヒョウがぶん殴る。頭を抱えてしゃがみこむチイを無視してヒョウはフィラデラに頭を下げる。
 「無作法な妹がすみません、フィラ姉様」
 あくまで冷静なヒョウと、頭を抱えたまま蹲っているチイを見比べながらフィラデラはクスリと笑みを浮べる。そしてヒョウの髪を撫でてやると、今度はその場のしゃがみこんで、しゃがみこんだままのチイの頭を撫でてやる。
 「いたかった、チイ?」 
 「うん・・・」
 チイに尋ねると、涙目のチイはフィラデラにすがりついてくる。そんなチイを冷ややかな眼差しで見下ろしながらヒョウはぽつりと言ってくる。
 「さして痛くもないくせに・・・」
 「痛いものは痛いもん!ヒョウちゃんのばかぁ!!」
 あくまで冷たく扱うヒョウに対してチイは大声で怒鳴ると、フィラデラの胸の中に顔をうずめてピィピィ泣き出すのだった。そんなチイの頭を撫でながらフィラデラはため息を一つつく。
 「チイもそんなに泣かないの。ヒョウ、もう少し妹は大切にしなさい」
 「ですが・・・」
 「い・い・わ・ね?」
 「・・・・・はい」
 フィラデラの言葉に食い下がろうとしたヒョウだったが、笑顔で念を押されてはさすがにそれ以上食い下がるわけにはいかない。おとなしく頷くしかなかった。そんなヒョウを優しく見つめながら、チイを立ち上がらせると、フィラデラはヒルデのほうへ向き直る。
 「ヒルデ様、いかような御用向きで?」
 「うむ、そなたにいくつか頼みたいことがあっての。一つがこの子達をエリウスのところに連れて行ってもらいたいのじゃ」
 「・・・・・はぁ?」
 ヒルデの言葉にフィラデラは思わず聞き返してしまう。この子達とは言うまでもなくチイたち神竜4体のことである。それをエリウスのところへ連れて行けと言われたのだ。その訳を聴きたかった。ただでさえエンたちに手を焼いている状況で、チイたちまで加わったら胃に穴が開きかねない。
 「先日、シーゲランス軍がこの辺りまで攻めてきての。それをこの子達が見事撃退したのじゃ」
 「はあ・・・・」
 シーゲランス海軍がこの海域まで迫ったことはフィラデラも知っていた。もっともその戦力では王城にまでは至れないと判断し、大げさな対応は取らずにいたのだ。案の定チイたちによって敵軍は全滅させられたようだった。
 「その褒美が何がいいか聞いたところ、エリウスのところに遊びに行きたいと言い出しての。そこでそなたを呼び出したのじゃ」
 ヒルデの言葉を聞いたフィラデラは頭を抱えたくなってきた。だからといってダメだというわけにもいかず、しかたなく無言のまま頷くのだった。いつから自分はこの子達の保護者になったのだろうと思いながらため息をつくフィラデラであった。
 「もう一つは新しい実験体を実戦で試してもらいたいのじゃ」
 「新しい実験体?」
 「詳しくはドクターのところで聞いてくるといい。それだけじゃ」
 ヒルデの話が終わるとフィラデラは一礼し、チイたちに出かける準備をしておくように命じると、足早にドクターの元へと急ぐ。どんな実験体を預けられるのか不安ではあったが、急ぎ戻ることを優先することにした。 

 「ドクター、入るぞ!」
 フィラデラはノックをするとドクターの実験室につかつかと入ってゆく。いつもならば返事があるまで待っているフィラデラであったが、ここのドクターは実験に夢中だと返事を返してこないことが多い。そのためいつしかノックだけして無断で入室する癖がついてしまっていた。
 「これは、フィラデラ様・・・」
 部屋に入るとジェニーが恭しくお辞儀をして出迎えてくれる。フィラデラも挨拶をすると、ドクターに用件があることを伝えると、彼女はフィラデラをドクターのもとに案内してくれる。奥に進むとドクターがじっと何かを見つめて立っているのが見えた。
 「ドクター、ヒルデ様に言付かってきたが、何用だ?」
 「おお、フィラデラ様。実は新しい実験体が完成しましてな」
 「それは聞いている。それでそれはどこに?」
 「これですわい」
 ドクターはそう言うと目の前のものを指差す。そこには大きく腹を膨らませた女性が床に寝かされていた。首輪をつけ鎖で繋がれ逃げることは出来ない。もっともその目はうつろで正気とは思えない表情をしていた。
 「こいつは?」
 「先日わが国に攻め込んできた敵将、セリアなんたらとかいう女ですわ。こいつをヒルデ様の許可を頂いて、新型の融合人間の実験台にしました」
 「新型の融合人間?」
 初めて聞く言葉にフィラデラは思わず聞き返してしまう。そしてすぐに聞き返したことを後悔するが、すでに遅かった。ドクターは嬉々として説明を始める。
 「これまではクリフト様が性交し、その中でも素質あるものと出なければ誕生しませんでした。しかし今度の新型はもともとの人間の体の一部を改造し、これを女性体の中に精を出すことで統合させる事によって、新しい融合人間を生み出させます」
 ドクターの説明が途切れたところでフィラデラはあわてて言葉を遮ろうとするがドクターの説明は止まらない。泣く泣く説明を聞かされることとなるのだった。
 「この新型は特異型と違い、量産性に優れています。また因子の組み方で各々得意とする分野に特化することが可能です。欠点は特異型のような特殊な武具を持っていないことでしょうか。もっとも人間相手でしたらこの新型でも楽勝ですがな」
 説明し終えたドクターはけらけら笑いだす。そんなドクターをうんざりした眼差しで見つめながらフィラデラは視線をセリアのほうに向ける。完全に精神が崩壊したセリアはだらしなく涎をたらしたままうつろな表情をしている。哀れではあるが、これも敗残兵の定めとフィラデラは割り切ることにした。
 「それでその新型はどこに?」
 「そろそろ生まれるはず・・・」
 ドクターに新型の居場所を尋ねるとそんなことをドクターは言ってくる。ちょうどそのときセリアのおなかが大きく動き破水する。ぽたぽたと垂れる水と共に大きな頭が膣口からのぞく。あわててジェニーが生まれてくる赤ん坊をキャッチする。その姿は蟻であった。それも二足歩行型の・・・
 「これが新型・・・しかし赤子では戦争に連れてゆけぬぞ?」
 「大丈夫でございます。明日には言葉を解し、動けるようになるでしょう。一週間もすれば成人並の体格になっているはずです」
 その言葉にフィラデラは素直に感心した。受胎、出産までに一週間、成人し、戦力になるまでにさらに一週間、都合二週間で戦力を確保できることになる。妖魔のように爆発的に増えるということはないが、質の高い戦力が確保できるということになる。
 「動けるようになりましたら基本的戦い方をお教え下さい。基本的部分が欠落しておりますゆえ」
 「分かった。預かっていこう。他に何かいうことは?」
 「そうですなぁ・・・できれば実験をするうえで、母体になる女性をあと数人、パーツとなる男を十数人送っていただけるとありがたいのですが・・・」
 ドクターは遠慮がちにお願いしてくる。いわば人体実験に使える人間を集めて来いと言うのである。さすがにそれは気が引けるらしい。もちろん、倫理観からではなく、エリウスに遠慮してのことである。
 「まあ、若様のことですから我輩の実験のことなど当にお見通しのことと思いますが・・・」
 「まあ、そうであろうな・・・わかった。抵抗を続ける敵兵がいたらこちらに送る様に手はずを取っておく。ただそんなに数多く送れはせんぞ?」
 フィラデラの了承にドクターは満足そうに頷く。フィラデラは布にくるまれた赤ん坊をジェニーから受け取ると、実験室を辞し、ヒルデの元へと戻る。四体の神竜と共にエリウスのところに帰らなければならない。フィラデラが部屋に入ると、四体は思い思いの荷物を持ち、フィラデラの到着を待っていた。
 「あ、フィラ姉ちゃん!はやく、はやく!!」
 フィラデラの姿を見止めたチイがせかすように駆け寄ってくる。その背中には必要以上に大きな荷物を背負っている。何をこんなにもっていくのかとあきれ返りながら、フィラデラはチイを制し、ヒルデたちに挨拶をする。
 「それではヒルデ様、エレナ様。これにて失礼します」
 「おお、ご苦労じゃったな。そうじゃ、フィラデラ。そなたにご褒美を用意してある。受け取っておくれ」
 挨拶をするとヒルデはそう言って一枚の羊皮紙をフィラデラに渡す。それは封蝋してあって中を読むことが出来なかった。フィラデラが不思議そうな顔をしているとヒルデが言葉を続ける。
 「それをエリウスに見せればフィラの欲しいものが手に入るはずじゃ」
 つまりこれをエリウスに渡せといわれたフィラは納得してそれを懐にしまう。正直欲しいものなどないのだが、くれるというのならもらっておこうと考えたのだ。フィラデラは四体の神竜を傍に招き寄せ、呪文を唱えると、ダーク・ハーケン城を後にするのであった。その姿を見送ってヒルデとエレナはくすくすと笑い始める。
 「アレを見たらフィラのやつめ、驚くぞ?」
 「まったく素直でない子を素直にさせるのは苦労しますわ。ところで、姉様。ステラはいずこに?」
 「はて、そういえば先ほどから姿が見えぬが・・・」
 消えたステラのことを話し合う二人はまるで気づいていなかった。ステラがすでにこの城から姿を消している一大事に・・・

 「エリウス様、ただいま戻りましてございます」
 ダーク・ハーケン城より戻ったフィラデラは即刻四体の神竜を連れてエリウスに謁見する。魔天宮で雑務に追われていたエリウスは即座に謁見を許す。
 「エリウスーー!!久しぶりーー!!」
 「・・・エリウス様・・・久しぶりなの・・・」
 「エリウス様、久しぶりです・・・」
 「まあ、まあ、エリウス様」
 思い思いのことばで四体はエリウスに駆け寄ってゆく。そんな四体をエリウスはそれぞれの名前と呼んで頭を撫でながら労をねぎらってやる。四体ともはにかんだ笑顔を浮べて喜ぶのだった。
 「奥で、エンたちが休んでいるはずだ。行ってごらん」
 エリウスがそう言うとチイが起こった顔をする。
 「やだ!あいつらチイたちを置いて自分たちだけエリウスのところに行っちゃたんだから!」
 ぷんすか怒ってそんなことをいう。そんなチイを宥めるエリウスの目にチイの背負った大きな荷物が目に留まる。他の三体よりはるかに大きい。
 「チイ、一体何を持ってきたんだい?」
 気になったエリウスが尋ねると、チイは少し困った顔をする。どう答えていいものかとオロオロしていると、荷物がもそもそと動き始める。さすがにそうなってはごまかすことが出来ない。慎重に荷物を床に下ろすと、口を開ける。すると中から一人の少女が顔をのぞかせる。
 「ぷはあ・・・苦しかったの・・・あっ、エリウスだぁ!!」
 顔をのぞかせたステラは嬉しそうに袋の中から飛び出すと、エリウスの膝の上に飛び乗る。思いもかけない珍客の登場にエリウスはあっけに取られていた。フィラデラを始めその場にいたチイを除く全員があっけに取られる。
 「ス、ステラ?君、どうしてここに?」
 「毎日お勉強でつまらないの!レオナ姉様もアリス姉様も会いに来てくれないし・・・」
 そこまで言うとステラは寂しそうに顔を伏せる。まだ幼い彼女にとって肉親に会えないことは寂しいことだったに違いない。そう思うとエリウスは彼女の頭を撫でてやる。
 「いいよ。3日だけ滞在を許そう。あとでレオナとアリスのところに連れて行ってあげる。その代わり、おとなしくしているんだよ?いいね?」
 エリウスの言葉にステラは満面の笑みを浮べて何度も頷き、彼に抱きついて彼の胸に頬擦りする。そんなステラの頭を撫でてやりながらエリウスはさてどうしたものかと思案した。ステラを前線までつれて行くよりも、アリスたちをこちらに呼び寄せた方がステラの身も安全ではないだろうか。そう思ったエリウスは二人をこちらに招くことに決める。
 (あとでアリスたちを呼んで来ないと・・・)
 そんなことを思っているところに昼寝からおきてきたエンたちが部屋に入ってくる。部屋に入るなり、チイたちの顔を見止めたエンたちは非常に気まずそうな顔をする。彼女たちを置き去りにしてエリウスについて来たことに負い目があるのだ。七体の間に気まずい雰囲気が流れる。
 「七人ともここで喧嘩は認めませんよ!やるなら他の部屋にしなさい!」
 気まずい雰囲気を打ち破るようにフィラデラが七体の神竜に言葉をかける。そして手をたたいてキールを呼び出すと空き部屋へと案内させるのだった。そのときのキールの情けない顔をエリウスはかわいそうにと思いながら見送るのだった。
 「さてと・・・フィラ、今回ほこれで全部かい?」
 「はい。あとヒルデ様からこれを預かってきております」
 フィラデラはそう言うと懐にしまってあった封書を取り出しエリウスに手渡す。エリウスは怪訝そうな顔つきでそれを受け取ると、封を切って中身を確認する。中身を読んだエリウスは思わず噴出す。
 「フィラ、本気でこれ・・・ほしいの・・・?」
 「?何のことか分かりませんが、下さるものでしたら・・・」
 フィラデラの返事を聞いたエリウスはしばし考え込み、こくりと頷いた。
 「わかった。では第二軍団大将軍フィラデラ=ビー。そなたにシーゲランス帝国第五の関攻略を命じる。見事攻略の暁にはここにある褒美を取らせよう。いいな?」
 褒美の正体は分からないもののエリウスに第五の関攻略を命じられた以上攻略するつもりでいた。フィラデラはもう一度こくりと頷く。それを確認したエリウスはステラを連れて部屋を辞す。シーゲランス帝国との新たな戦いが始まろうとしているのだった。


 シーゲランス帝国第四の関。キクリス川に建てられたこの関はカルラ将軍が護る関として有名だった。帝国屈指の剣の使い手として有名な彼女を慕う兵は多く、関の護りは完璧とまで言われていた。
 「ヴェイス軍が進撃を再開した?それは本当か?」
 カルラの元に届けられた報は驚くべきものだった。ここ2週間ほど第三の関に陣取ったまま動くことのなかったヴェイス軍が動いたというのだ。サーリアが敵国に言ったという噂はカルラの耳にも届いていた。聡明な彼女が何の考えもなしにそのようなことをするはずがないとカルラは考え、その考えはある結論を導き出していた。
 (姫様の和平工作を無になさるとは・・・何をお考えなのですか王子!!)
 カルラは内心腹立たしくて仕方がなかった。間違いなくサーリアは和平のために敵軍に向かったと彼女は推測していた。その証拠に彼女がヴェイス軍について以来、ヴェイス軍の進軍は止まったままだった。これは間違いなくサーリアの和平工作がうまくいった証拠だった。
 (それが動き出したということは、水軍の動きが察知されたか・・・いや、あるいは・・・)
 水面下にシーゲランス水軍が動いたとの情報はカルラの元にも入ってきている。今回の進軍となんら関係がないとは言い切れない。水軍を止めるための進軍か、あるいはその報復行動。状況からみて後者である可能性のほうが高かった。そうなればヴェイス軍がこの関を突破して王都を目指すことは間違いなかった。
 (どうあっても戦いは避けられぬか・・・)
 停戦中に敵に進軍されたとあってはヴェイス軍の進軍は止まることはないだろう。そうなれば自分たちとの戦いは避けることが出来ないはずである。サーリアの努力を無駄にする進軍を提唱したストラトス王子にカルラは内心反発していた。
 (彼の国は無益な殺生はしていないというのに・・・)
 これまでフライゼルト、セルビジュと二国がヴェイスに攻め込まれているが、どちらからも逃げ出してくる人々の数が少なかった。内情を探りに向かった密偵からは国民がヴェイス軍の駐留を歓迎していたとの報告も入ってきている。それらからも彼らが無益なことはしないことは明らかだった。
 (ならばあのまま停戦してしまえば、無駄な犠牲を出さなくてすんだものを)
 カルラにはそれが残念でならなかった。彼女は帝国が存続し、無駄な犠牲が出ないことが最良の策だと思っていた。だが、中央の取った策は犠牲を出してでも、人間としてのプライドを護ろうとするものだった。カルラには王子たちの考えが理解できなかった。
 (いまさらどうこう言っても始まらない。如何なることがあろうともここは通さない)
 例え敵にサーリアがいたとしてもカルラは全力で戦うつもりでいた。それが帝国に忠誠を誓ったものの勤めであると思っている。もしまた停戦の機会があるならば、それに乗ってもいいとは思っている。しかし、その可能性は低いと言わざるを得ない。
 (あの王子が停戦に同意するはずがないか・・・)
 自分の甘い考えにカルラは自嘲気味に笑うと、愛用の剣を手に取る。いつまでも思いをはせて散るわけにはいかない。ヴェイス軍が進軍しているのは紛れもない事実なのだ。そしてそれを阻止するのが自分の仕事なのだ。カルラは思いを新たに剣を腰に差し、防衛の手立てを考えるのだった。

 ヴェイス軍が第四の関、キクリス川対岸に到着したのはそれから二日後のことだった。その場に陣を敷き、相手の動きを探る。しかし第四の関は静まり返ったまま、何の応対も見せようとはしない。先陣を任されたレオナは馬に跨ったままじっと第四の関を見つめる。
 「すでに逃げ出してしまったのでは?」
 レオナのとなりにセツナの後ろのしがみついたシェーナが尋ねてくる。単独で馬に乗れない彼女たちは護衛役のセツナたちの馬に一緒に乗ってきていた。そんなシェーナの意見にレオナは首を静かに振る。
 「いいえ。まだ関内部にいるわね。こちらが打って出るのを待っているのよ。カルラ将軍はそういう方」
 もう一度関の方に視線を戻したレオナは静かにそう言う。かつて第一の関を任されていた頃のカルラとは何度か手合わせをしたことがある。敵対関係にあったストラヴァイドとシーゲランスではあったが、大きな戦争は起こったことがない。間に挟んだサーナリアを介して時折交渉をするくらいの関係だった。
 「あの方は実直で昔かたぎの忠誠心厚い騎士。護るべき関を捨てて逃げ出すような方ではない」
 その交渉の席で何度か顔をあわせているレオナはカルラと何度か剣を交えたことがある。もちろん決闘などではなく、練習といった意味合いでのものだったが・・・
 (あの当時の私はカルラ将軍にも負けないと思い込んでいたからな・・・)
 周りから”姫将軍”などと囃し立てられていた当時のレオナには、カルラが手を抜いていてくれたことを見抜く技量は持ち合わせていなかった。もちろん今のレオナにはあの当時の自分とカルラの実力の違いがよく分かる。智と勇を併せ持つ名将とは彼女のことを言うのだろう。実力の違いに気づいて以来、レオナにはカルラに対するある種の敬意が芽生えていた。もちろん、”姫巫女”として覚醒した今の自分ならば互角以上に戦えると思っている。
 「一度でいい。あの方と真剣に剣を交えてみたい・・・」
 レオナは切にそれを願った。そんなレオナの願いとは裏腹に、第四の関は静まり返り、まるで無人のようだった。だが、レオナにはそれがカルラの張った罠のように思えてならなかった。迂闊に動けば何かこちらに被害が出る。そんないやな予感に苛まれていた。
 「人はいますね。ですが全員息を殺して、気配を殺しています」
 どうしたものかと思い悩むレオナの横にセツナが立つ。セツナは関の仲から立つわずかな人の気配を読み取っていた。レオナにはそれが分からないが、セツナがそう言うのならば間違いはないだろう。
 「何が狙いなのですか・・・」
 カルラの狙いが読めず、レオナはイライラする。そんなレオナにセツナはそっと声をかける。
 「レオナ様。気を落ち着けて。イライラすれば相手の策にはまりますぞ!」
 レオナはそういわれてはっとする。こうやって相手の集中を切らすこともカルラの策の一つに組み込まれているのではないだろうか。レオナは一つ大きく深呼吸をすると視線を関から河の方に移す。そこでふとあることに気づいた。川の水の流れが少ないことに。
 「セツナ殿。確か先日雨が降ったばかりでしたね?」
 「はい。二日ほど強く降っておりました」
 レオナの言葉をセツナが肯定する。二日も降り続いたのならいくらなんでもこの流れはおかしすぎる。そこでレオナは上流の方に視線をやる。川は森の中に入り、ここからではどうなっているか分からない。
 「なるほど。そういうことですか・・・」
 ようやくカルラのたてた策を読んだレオナは笑みを浮べる。すぐさまリューナを呼び寄せる。
 「リューナ殿。妖魔500を率いて迂回して川の上流を探ってきてください。おそらくシーゲランス兵が堰を築いて川の流れを堰き止めているはず。そこを押さえていただきたい」
 「畏まりました!」
 レオナに命じられたリューナはゴブリン500匹を率いて川から離れた地点から上流を目指す。果たしてレオナの読みどおり、三キロほど上流にシーゲランス兵が堰を築き、川の流れを堰き止めていた。
 「我々がキクリス川を渡りだしたら堰を切って押し流す算段だったというわけか・・・」
 リューナはカルラのたてた策に感心しつつも、ゴブリンたちを率いて堰を護るシーゲランス軍に襲い掛かる。将軍級の兵力のない守備隊などリューナたちの敵ではなく、あっさりとそこを制圧してしまう。制圧を終えたリューナは火を起こさせ、狼煙を上げさせる。
 「リューナが堰を制圧したようですね」
 「ああ。よし、全軍進軍開始!!」
 リューナからの狼煙を見たレオナは進軍を再開する。関の中ではヴェリス軍が動いたことで動きがあわただしくなる。ヴェイス軍が移動を再開したと聞いたカルラは自ら外に出てその様子を伺う。
 「カルラ将軍、すぐさま堰を・・・」
 「いや、無駄だな・・・すでに堰は奴らに制圧されたようだ・・・」
 カルラは森の中から上がる狼煙に気づき、そう判断した。川を渡るヴェイス軍を水で押し流す策はこれでは使えない。だが、他にも篭城の策は用意されている。すぐさまカルラは気持ちを切り替えて部下たちに命令する。
 「弓兵隊、二列に並んで一斉射撃!敵に反撃の暇を与えるな!!」
カルラは弓兵に射撃を命じる。無数の矢が川を渡り終えたヴェイス軍に降り注ぐ。レオナとてそれを予想していなかったわけではない。すぐさま防御策を発する。
 「楯をかざして矢を防げ!狙いを定めた矢ではない、頭上にかざせば十分防げるものだ!!」
 レオナの指示通り、妖魔たちは手にした楯を頭上にかざして降り注ぐ矢の雨を受け止める。それをみたカルラは矢を射掛けさせたまま、次の策に移る。カタパルトを関内部の広場に陣取らせると、ヴェイス軍めがけて巨大な石を放り投げる。楯で視界を隠していた妖魔は対応が遅れ、落ちてきた石に押しつぶされてゆく。
 「やはりそう来ましたか・・・よし、このまま一気に関に取り付け!そこには石は飛んでこない!!」
 レオナはそう命じるといち早く馬を走らせ、関の壁に取り付く。そして馬の背に乗ると一気に跳躍して関を乗り越える。そのあとを、シェーナとフィリアを抱えたセツナとエリザベートが続く。跳躍力のないアンナはそのまま大槌を振るって関の扉を打ち破る。
 「くっ、こちらの策が読まれたか・・・敵がなだれ込んで来るぞ!応戦せよ!!」
 カルラの号令の元、正門をくぐってなだれ込んできた妖魔たちを槍部隊が迎え撃つ。数で勝る妖魔たちであったが、狭い扉をうまく使われ数の有利を生かせずにいた。その状況を覆したのが壁を乗り越えたレオナたちだった。武器を手に次々に敵を打ち倒してゆく。
 「我が”楯の巫女姫”の名において皆を護りたまえ!」
 シェーナの言霊がセツナたちに守りの力を与える。”楯”の力はいかなる力も遮り、セツナたちに防御の動作を取らせない。セツナとアンナは弓兵を打ち倒してゆく。
 「我が”竪琴の巫女姫”の名において漲る力の音を奏でん!」
 ナリアが神具たる竪琴を取り出し、曲を奏でる。妖魔たちに力が漲り、前線で持ちこたえていた槍部隊を押し返す。たちまち劣勢を強いられたシーゲランス軍は、その力の源たるシェーナとナリアに襲い掛かる。が、それは彼女たちを護るエリザベートによって阻止される。
 「くっ、ここまでか・・・」
 自身は襲い来る妖魔を次々と打ち倒してゆくが、周りの配下たちは次々に討ち取られてゆく。その様子をどうすることも出来ず、苦々しく見つめながらカルラはこの関の放棄を決断する。いつまでもまだ大丈夫などといって入られない。被害が拡大する前に撤退させなければならない。カルラは右手の指輪を外すと、口付けをし天高く放り上げる。強烈な光があたりに広がる。
 「被害が拡大する前に撤退ですか?さすが、知将と恐れられたカルラ将軍。見事です」
 突然背後から声をかけられたカルラは一瞬反応を示すが、聞き覚えのある声に、全てを理解し、笑みを浮べる。剣を握りなおすと、後ろを振り向く。
 「余計な束縛から解放されたようですね、レオナ姫・・・いまの貴方はまさに”姫将軍”の名にふさわしい」
 カルラは背後に佇むレオナに満面の笑みを向ける。
 「その名はもう必要ありません。私は”剣の巫女姫”。それ以外ではありません」
 「そうですか・・・貴方が・・・私の策を読まれたのも貴方様ですね?」
 カルラの問いにレオナは小さく頷く。それを見たカルラは嬉しく思う反面、寂しさも、悔しさも感じていた。かつてあったレオナは”姫将軍”の名に負けて自分を押しつぶしてしまっていた。そんな彼女の才を高く買っていたカルラはそれを不幸に思っていた。
 (回りの期待が重過ぎるのだ・・・それが彼女の才を台無しにしている・・・)
 もし彼女がその才能を発揮できる状況になったならば、彼女は期待の将軍と呼ばれることになるだろうとも思っていた。そのときが来るのをカルラは、どこか心待ちにしていた反面、来て欲しくないとも思っていた。
 「今その才能に目覚めた彼女がいる・・・か。これも運命か・・・」
 今のレオナと戦える喜びに、カルラは心躍らせた。もはや帝国を護ることはかなわない。ならば一武人として、彼女と相対したかった。それは彼女も望んでいることだろう。剣を正眼に構え、レオナを見つめる。レオナもそれに答え自身の剣を向く。
 「シーゲランス帝国軍将軍・カルラ=ヴォス、参る!!」
 「創世神ヴェイグサスが”剣の巫女姫”レオナ=シーン=ストラヴァイド、いざ!!」
 お互いの剣が火花を散らして激突する。二人は心躍る戦いをいつまでも堪能していた。お互いの技術の、力の、スピードの全てを込めて剣を交える。剣を閃かせ、剣をかわし、また剣を交える。その戦いはまるでお互い舞っているようにも見えた。その美しさに敵も味方も戦うのをやめて二人の戦いに見入っていた。
 「もっと、早くしなければ私には当たりませんよ!」 
 「では、これでどうですか?」
 カルラは時折レオナを挑発するように彼女に言葉を投げかける。それはカルラからレオナに何かを残そうとする戦いのようにも思えた。レオナは内心最後のときが来ないことを祈っていた。カルラとの戦いをいつまでも堪能していたかった。だが、時はそれを許してはくれなかった。
 「せいやあああ!!」
 レオナの気合を込めた一撃をカルラは剣で受け止めようとする。だが、その剣をレオナの一撃が打ち砕く。剣を打ち砕いた一撃は止まらず、そのままカルラの肩口に食い込んでゆく。肩口から胸元へ、致命傷となる一撃がカルラに見舞われる。
 「見事・・・です・・・レオナ姫・・・」
 カルラは笑みを浮べてそのまま仰向けに倒れる。満足のいく戦いが出来たこと、心に開いた穴を埋められる戦いが出来たこと。それがカルラを満足させる。彼女の笑みはそれを意味していた。
 「カルラ将軍・・・」
 「レオナ・・・姫・・・貴方の・・・勝ちです・・・」
 苦しそうに息を吐き出しながらカルラは呻く。そんなカルラを涙目で見つめながらレオナは頷く。出来ることならば、この憧れの女将軍を殺したくなかった。いつまでも自分の憧れであって欲しかった。だが、それは許されることではなく、お互いの信念の元ではどうすることも出来ないものだった。
 「そんな・・・悲しい顔を・・・なさらないで・・・」
 カルラは苦しそうに息を吐き出しながらも、レオナにまっすぐ向くように促す。レオナはそれを感じ取り、涙を拭うと剣を高々と掲げると宣言する。
 「敵将・カルラ=ヴォス、レオナ=シーン=ストラヴァイドが討ち取った!!」
 その宣言が戦いの終わりを告げた。妖魔たちは逃げる兵の追撃をやめ、最後まで抵抗していたシーゲランス兵も降参し、投降する。第四の関の戦いはここに集結した。
 「カルラ将軍!!」
 エリウスとアリスと共に遅れて関に入ってきたサーリアは横たわるカルラの姿を見止めると、あわてて駆け寄ってくる。そんなサーリアの姿を見たカルラはまた笑みを浮べる。
 「姫様・・・よくご無事で・・・」
 「はい・・・私も、ファランも、ゴルザド将軍も皆良くしていただいています」
 「そうですか・・・それはよかった・・・それから申し訳ありません・・・ストラトス王子を止めること、適いませんで・・・」
 カルラの言葉にサーリアは表情を曇らせる。目の曇った兄の愚行のせいで多くの兵が死に今もカルラを失おうとしている。それがサーリアには悲しかった。どうにか戦いを収めたかったが、それはかなわない。せめて被害が最小ですむことを祈るしか彼女には出来なかった。
 「カルラ、どうか傷を・・・」
 傷を癒すことをサーリアは望む。致命傷ではあるが、今ならばアリスの力でまだ癒すことも出来るだろう。サーリアはそれを望んだが、だがカルラが静かに首を左右に振り答えた。
 「このまま逝く事をお許し下さい・・・この身は帝国に捧げたもの。いかなる理由があろうとも、侵略に加担したくはございません・・・」
 頑ななカルラの態度にサーリアは涙するしかなかった。おそらく彼女の意志を曲げることは誰にも出来ないだろう。ここは彼女の意思を尊重するべきだと思う反面、彼女ほどの人間を失うことをサーリアはひどく悼んだ。目を閉じ最期のときを待つカルラにレオナが歩み寄る。
 「カルラ将軍・・・私は・・・」
 「・・・いいのです、レオナ姫・・・これも運命・・・最期に戦えたのが本当の貴方でよかった・・・」
 そのカルラの言葉がレオナの心に深く刻み込まれる。肩を震わせ、それ以上何もいえない。そんなレオナの肩をそっと抱きしめながら、エリウスもカルラの顔を覗き込む。
 「カルラ将軍・・・何か望むものはないですか?」
 「エリウス公・・・ですか・・・できることなら・・・この国を・・・」
 「わかっています。戦いをやめていただければそれ以上は何もしない。約束しよう・・・」
 エリウスの言葉を聞いたカルラは満足そうな顔になる。もうその目には何も映っていない。
 「この魂、貴方様の下に・・・ヴェイグサ・・・ズ・・・神・・・」
 「汝の魂、いかなるものにも犯させぬ。安らかに眠れ・・・」
 エリウスの言葉を聞いたカルラはそのまま静かに息を引き取った。体から生気が失われてゆくカルラに背を向け、レオナはエリウスの胸の中で声を殺してなくしかなかった。殺したくない相手を殺さなければならない。それが戦争。分かっているつもりでいた。だが実際にその現場に遭遇したレオナにはこの状況は痛々しいものでしかなかった。レオナはエリウスの腕の中でいつまでも声を上げずに泣き続けるのだった。

 戦いが終わり、第四の関を制圧したヴェイス軍はそこに軍を駐留させ、次の戦いに備えていた。エリウスも天幕を張り、そこを寝所としていた。寝所ではレオナはエリウスの胸の中でまだ泣いていた。とめどなく流れ落ちる涙を止めることが出来ないまま、ただエリウスの胸の中で嗚咽するのだった。
 「私は・・・私は・・・」
 言葉に出来ない気持ちを何とか言葉にしようとしながらレオナは必死になる。この思いを言葉に出来れば楽になれる。それは分かっているのだが、どうすることもできない。エリスはそんなレオナの髪を優しく撫でると、そっと口付けをする。
 「無理に言葉にする必要はないよ。これから先も大切なものを失うこともあるだろう。でもね・・・」
 「・・・・・」
 唇を離したエリウスの言葉にレオナは耳を傾ける。エリウスは優しい笑みを浮べてレオナに一言だけ伝える。
 「僕はいつまでも君たちの傍にいる。それを忘れないで・・・」
 そんなエリウスの言葉がレオナの心に染み渡る。彼のやさしく温かい言葉は彼女には嬉しく、変えがたいものだった。エリウスはもう一度レオナにキスをすると簡易ベッドの上に寝かしつける。そっと服の上から胸を弄る。
 「んっ・・・あふっ・・・」
 優しく撫で回すだけでレオナの口から甘い声が溢れ出す。エリウスは片手で胸を弄びながら、もう片手でボタンを外し、胸元をはだけさせる。白く張りのある胸が戒めを解かれ、勢いよく飛び出してくる。エリウスは今度はじかに胸を弄る。柔らかな感触が手の平に感じられる。
 「あふんっ・・・エリウス様・・・そこ・・・ああああっ!」
 柔らかな胸を揉み、桜色の乳首に口付けをする。唇で挟み込むようにしながら、舌先で乳首の先端を転がしてやる。ヒクヒクと反応を示した乳首は徐々に硬さを帯びてくる。乳首が硬く勃起したのを確認しながらエリウスは摘んだり、啜ったりする。
 「あくっ・・・そこ・・・あああっ、あっ、あっ、い・・・ああああんっ!」
 断続的に襲い来る快感にレオナは頭を振ってもだえる。高みへ高みへと押し上げられる感覚に酔いしれながらレオナはエリウスを抱きしめる。エリウスもレオナの胸を弄びながら、乳首を重点的に攻めてゆく。
 「ひんっ!ひんっ!エリウス様・・・もっと・・・もっとぉ!!」
 レオナは悶えながらもエリウスを求める。そんなレオナの胸を弄りながらエリウスの片手は下へと延びてゆく。淡い陰毛を掻き分けて濡れ始めた割れ目へと指が到達すると、レオナの体はピクリと反応を示す。縦筋を指先でなぞってやると蜜があふれ出し、陰唇も開き始める。
 「いいの、レオナ?」
 耳元で囁くとレオナはエリウスにすがりついたまま小さく頷く。エリウスはそれ以上何も言わずに中指を奥へと侵入させる。蜜に濡れたそこはすんなりと中指を奥へと飲み込んでゆく。膣内に入った指でレオナの喜ぶ箇所をそこかしこ掻き分けてゆく。
 「あうんっ・・・エリウス様・・・そこ・・・」
 顔を真っ赤に染め上げながらレオナは感じる場所をエリウスに教えてくる。そこを重点的に攻めながらエリウスはレオナと自分の体の位置を入れ替える。ちょうどレオナが自分の上に跨るような格好をさせると、開いたもう片手でレオナのお尻を弄る。お尻の柔肉の弾力をひとしきり味わうと、そのまま指先で菊門にそっと触れる。
 「エリウス様!そこは!!」
 強い口調でレオナは拒絶の意思を示すがエリウスはそれを許さなかった。膣から指を抜き蜜で濡れた指を代わりに菊門に押し込んでゆく。異物の挿入にレオナの体はがたがたと震えだす。蜜に濡れた中指でもなかなか奥に進んでは行かない。それでも円を描くような動きに、徐々に緊張もほぐれ、指を奥へと飲み込んでゆく。
 「エリウス様・・・そんなところを・・・」
 涙目になって訴えるが、エリウスは無言のまま指を動かす。その度に体を駆け巡る快感がレオナを喘がせる。中指でアナルを刺激しながらエリウスは猛ったペニスをレオナのヴァギナに宛がう。
 「いくよ、レオナ・・・」
 エリウスの言葉にレオナは小さく頷く。エリウスが腰を浮かすと、蜜に濡れた膣はペニスをすんなりと受け入れる。エリウスはそのままゆっくりと腰を上下に動かし始める。
 「はうっ!あっ、あんっ、ああっ!エリウス・・・さまー・・・」
 頭を振り腰をくねらせながらレオナはエリウスの動きを受け入れる。そんなレオンのアナルは緊張がほぐれ指の動きをすんなりと受け入れている。
 「そろそろいいみたいだね・・・」
 エリウスはそう言うとヴァギナからペニスを引き抜くとレオナのしたから体を動かし彼女の背後に回りこむ。行為の途中で引き抜かれたレオナは少し不満そうな顔をしていた。そんなレオナにエリウスはにこりと笑って見せる。
 「大丈夫、すぐに気持ちよくしてあげるから・・・」
 エリウスは下腹部に手を当て、そこを弄る。むくむくと盛り上がり、もう一本のペニスが顔を覗かせる。エリウスは大きくなった二本のペニスをレオナのに箇所の入り口に宛がう。ヴァギナとアナルの二箇所に・・・
 「え、エリウス様!!」
 悲鳴に近い声を上げるレオナだったが、それを無視してエリウスの寮ペニスがレオナの2箇所を同時に貫いてゆく。一箇所だけでもきついのに、二箇所同時では引きちぎられんばかりの締め付けてペニスを絞り上げてくる。その強烈な締め付けに耐えながらエリウスは激しく腰を動かし始める。
 「ひぐっ!い・・・いた・・・やめ・・・て・・・エリウス様・・・いた・・・い・・・」
 アナルを肉棒で貫かれた激しい痛みにレオナは体を震わせて訴える。だが、蟻薄はまるで聞こえないかのようにレオナを攻め立てる。何度も何度も襲い来る激痛であったが、いつしかそれ以外の感覚が混ざり始める。ゴリゴリと引く壁を隔てて二本のペニスが自分の中を蠢いているのが分かる。


 「ひぃぃっ・・・い・・・あぐっ、ああああっ・・・・ひっっっん!!」
 ペニスに貫かれるアナルの痛みは治まり、自分の中を出入りするに貧のペニスの与える快感にレオナは酔いしれていた。その快感は自分が今エリウスの傍にいることを感じさせてくれ、自分をエリウスが愛してくれていることを実感させるものだった。
 「エリウス様、エリウス様、エリウスさまぁぁぁ!!」
 絶叫するようにレオナはエリウスの名前を連呼する。エリウスも背後からレオナを抱きしめ、自分が今そこにいることを教えるように腕に力を込める。そのエリウスの腕の力を感じ取りながらレオナは絶頂へと導かれてゆく。
 「ふっぁぁぁ、もう・・・もう・・・んんんああああああっっっ!!!」
 膣とアナルをこれでもかといわんばかりに締め付けてレオナはイってしまう。そのニ穴の締め付けにエリウスの我慢も限界を超え、二本同時に精を放つのだった。膣内と直腸、二箇所に放たれた精を感じながらレオナはそっとエリウスに手に自分の指を絡ませる。
 「エリウス様・・・私を、私たちを・・・離さないで下さい・・・もう二度と・・・」
 エリウスを失いたくない思いに駆られながらレオナはエリウスにそう語りかける。対するエリウスはないも言わずに、ギュッと彼女を抱きしめる。その腕の力を感じながらレオナは夢の闇へと降りてゆくのだった。

 「あとは第五の関・・・か」
 エリウスはベッドの上で上体を起こしたままそう呟いた。おそらく次に出てくるのはストラトス王子とその側近だろう。ストラトス王子はサーリアを取り戻すために必死になってくるに違いなかった。それでもエリウスは何の心配もしていなかった。気がかりなことはそのあとだった。
 「おそらく”奴”が出てくるはずだ・・・」
 そいつとの決戦を思いながらエリウスはそっとレオナの髪を撫でる。エリウスの手を握り締めたまま眠りに就く姫君の寝顔を見つめながらエリウスは、全ての愛情と優しさをこめて一言呟くのだった。
 「離すわけないじゃないか・・・愛しき我が”娘”たちよ・・・」


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