第2話 紋章


 レオナがエリウスのモノとなって一月が過ぎていた。その間一度として戦の話は聞こえてこない。少なくともエリウスは約束を守ってくれていることになる。しかし同時に自分の奪還作戦は行われていない証拠でもあった。ある意味ホッとし、ある意味絶望した。
 「せめてクライゼだけでも助けに来た下されば・・・」
 今も心の奥底で愛する人に助けを求める。それは決して届くことはなかった。最近ではクライゼへの思いも薄れてきている。エリウスに抱かれるたびに彼への熱い思いが心の奥からこみ上げてきて、彼を求めてしまうのだ。何故これほど敵国の王子に惹かれるのか、レオナにはわからなかった。
 「レオナさまー!!」
 レオナに与えられた私室に一人の少年が飛び込んでくる。あわてて飛び込んできたせいか、部屋に入ったところでスっ転びそのまま壁に激突する。騒々しい乱入者にレオナは唖然としてしまう。そして大きくため息をつくと少年に近寄る。
 「キール、もう少し静かになさい。どうしたのです、そんなにあわてて?」
 「す、すみません、レオナ様。あ、え、えっと・・・じつは・・・」
 「もっと落ち着きなさい。まったく私よりも年上ですのに・・・」
 慌てふためく少年・キールをレオナは叱り付ける。少年といっても見た目だけで実際にはレオナよりもずっと年上である。ホビット族である彼は外見以上に年を取っている。レオナの身の回りの世話を任されているこのホビットは落ち着きがないところが欠点だった。レオナに促されて大きく深呼吸をする。ようやく落ち着いたのかゆっくりと話しはじめる。
 「エリウス様が会議を始めるそうです。レオナ様にも傍にいるようにとのお達しです」
 「会議?なんのですの?」
 「ぐんじかいぎってやつです。えっと・・・八大将軍様たちも全員そろうそうですよ。めったにないことだから出席しろとのことです」
 キールはエリウスに言われたことをちゃんといい終える。軍事会議では興味ないと思ったレオナであったが、八大将軍勢ぞろいと聞いてはいてもたってもいられなかった。ストラヴァイドにいても聞こえてきた彼らの実力。名前しか聞いたことのない八大将軍の顔を見ることが出来るのだ。
 「分かりましたわ。すぐに参ります」
 レオナは立ち上がると肩にベールを掛ける。そしてキールの案内で会議室へと向かうのだった。案内された部屋の入り口には大扉があり、その入り口はゴブリンの兵が守っていた。彼らはレオナの姿を認めると、あわてて中に許可を求める。そしてすぐさま扉を開けるのだった。左右に開かれた扉がレオナを室内に招き入れる。
 「よく来たね、レオナ。僕の傍に控えていて」
 レオナが入室するとエリウスは優しく自分の傍に招く。会議用のテーブルの一番奥にエリウスは座っていた。レオナは素直に彼の傍に近寄る。そばに立ち室内を見回す。会議室の席には七人の魔族が座っていた。レオナの入室に異を唱えるものはいなかったし、それをとがめようともしなかった。
 (私が裏切るとは考えていらっしゃらないようですね) 
 裏切らないという信頼なのか、裏切られてもそれを覆せる自信なのか、それはレオナにも分からない。もしかするとその両方なのかもしれない。もっとも自分も裏切るつもりなどさらさらなかった。もしかするとエリウスはそのことが分かっているのかも知れなかった。底知れに彼の考えにレオナはぞっとする。
 「では会議を始める」
 エリウスが厳かに開始を宣言する。話し合いをする中レオナは一人一人顔を確認してゆく。
 まずエリウスから向かって左手。闇の軍団第一大将軍、黒の死霊騎士・ストナケイト。この国の第一王子でありながら王位継承権を放棄した生粋の戦士。その剣の実力は無敵とまで言われ、多くの腕自慢が彼に戦いを挑み、そして散っていったという。会話を交わしたことはないが、普段は厳かな人物と聞いている。もちろん魔神であるので今見ている姿が本当の姿ではない。
 次にエリウスの右手に位置するダークエルフの少女。闇の軍団第二大将軍、暗黒の魔導師・フィラデラ。クリフトの双子の妹であり、エリウスの乳姉弟に当たる人物である。魔法については右に出るものはいない。それほどの使い手だった。レオナも王国で多くの魔術師を見てきた。だがその魔術師たちも彼女と比べたら赤子みたいなものだった。それほど実力に差があった。レオナにも気さくに接してくれる少女である。
 ストナケイトの隣、第三軍大将軍、重騎兵・シグルド。半人半馬・ケンタウルス族の戦士だ。騎馬軍団として機能するこの軍団を纏め上げている。槍と弓の使い手としても知られている。ストナケイトの親友で、ライバルでもあるという。性格も似通っていて、寡黙であるらしい。
 フィラデラの隣、第四軍大将軍、闇のゾフィス。レオナも名前しか聞いたことがない。いつも顔を仮面で隠し、体も影のように黒いマントですっぽり覆い隠してしまっている。それゆえ、顔も性別も種族もわからない。そこに存在しているのかすら分からない。底知れぬ不気味さが漂っている。第四軍が暗殺や情報収集を主任務とするものたちであることを考えれば当たり前であった。
 シグルドの隣には誰も座っていなかった。代わりに水晶球が一個置かれている。そこには大きな顔が映し出されている。その一つ目の顔に見覚えがあった。巨人兵・ファーガント、巨人族の若長である。巨人族だけあって身長は五メートルを超えている。ゆえにこの部屋に入れないのだ。性格は温厚でレオナにも優しく接してくれるが、一度怒ると手がつけられないらしい。エリウスを敬愛している一人だ。
 ゾフィスの隣には妖艶な女性が座っていた。第六軍大将軍、夢魔・オリビア。内部工作を得意とする部隊の長である。自身も夢魔として様々な工作活動に携わっている。大の男好きとしても知られている。レオナは話す機会もなかったのでそれ以上のことは知らなかった。
 ファーガントの隣には少女が座っている。第七軍大将軍、最高司祭・アルデラ。見た目はレオナよりも年下の彼女が最高司祭としてこの国の祭事を取り仕切っているのだった。言葉遣いも丁寧でいつも自分のことを様付けで呼んでくれる唯一の存在だった。ちなみにエリウスの側近でも在り、実はストナケイトの奥さんでもある。
 最後がオリビアの隣。言うまでもなく第八軍大将軍、疾風のクリフトである。
 これがヴェイス皇国全軍を指揮する八大将軍である。正直レオナにはこの中の誰一人として勝てる自信はなかった。ついこの間までは魔神にすら勝てると思い込んでいた。それは思い上がりでしかなかった。ここに来てからというもの、彼らの訓練を見て自分は彼らの足元にも及んでいないことを実感した。
 (もっと、もっと強くなりたい)
 レオナはそう思い始めていた。最近ではクリフトに稽古をつけてもらったりもしている。故国にいた頃など比べ物にならないほど強くなったと実感できるが、まだ彼らに勝てる気はしなかった。 
 そんな彼らを束ねる者、それがエリウスなのである。クリフトによれば剣術も魔術の腕も傑出した才能を持ち、策を弄するものだけではないという話だった。普段の姿からは想像も出来ない姿であった。そんな彼女をよそに会議は進行してゆく。
 「次にストラヴァイド光国についてですが・・・」
 オリビアがその名前を読み上げた瞬間。レオナは体を硬くする。何か大事が起こったのではないかといやな予感がしたのだ。しかしそれは取り越し苦労だった。
 「かの国は国境線を封鎖、それ以降専守防衛に専念しているらしくこちらへの侵攻の意思は示しておりません」
 それを聞いたレオナはホッと胸をなでおろす。まさか戦争状態になったのかと心配したのだ。同時に自分が見捨てられたような気がして悲しくもあった。もしかすると自国では自分はすでに死んだものとして扱われているのかもしれない。だから救出には来ないのだと。そう思った方がよほど気が楽だった。
 「よし、これで懸案はすべて審議し終えたな。各自先ほどの指示通り行動してもらいたい。では解散」
 エリウスが解散を宣言すると七人の将軍は部屋を出てゆく。あとにはエリウスとレオナの二人しか残っていなかった。先ほどのことで落ち込むレオナの顔を見たエリウスは小さくため息をつく。どう声をかけてやったところで彼女には何の慰めにもならないからだ。言いようのない沈黙が漂う。だがそれはまたしても一人のホビットによって打ち破られる。
 「エリウスさまー!!」
 会議室に飛びこんできたキールが二人の間の沈黙をぶち壊す。
 「キール!先ほども言ったでしょう!もっと静かになさい!!」
 「も、申し訳ありません、レオナ様!!」
 沈黙に耐え切れなかったレオナはキールを睨みつけ叱り飛ばす。彼女の低のいいウサ晴らしにされたキールは小さな体をさらに小さくしてしまっている。そんなレオナをくすくす笑いながら見つめるとエリウスはキールにここに来た理由を尋ねる。
 「あ、そうでした。エレナ様とヒルダ様がエリウス様をお呼びでございます」
 「母上たちが?いったい何用だろう・・・」
 訝しげにエリウスは腰を上げる。呼ばれたからには顔を出さないとあとで何を言われるかわかったものではない。仕方なく実母と義母の待つ部屋へと向かおうとする。
 「あ、お待ち下さい。レオナ様もご一緒にとのことでございます」
 「私も?何故?」
 「そこまでは・・・」
 意外な言葉にレオナは戸惑った。そんな魔物が自分にいかなる用があるというのだろうか。ひそかに緊張してしまう。エリウスのほうは顔を手で押さえている。
 「まったく・・・ただ彼女に会いたいだけで・・・」
 ブツクサ文句を言っている。その言葉の意味は分からないが、呼ばれたからには自分の謁見しなければならないだろう。エリウスに促されてあとに続く。と、突然エリウスが歩みを止める。
 「ゾフィスかい・・・何かあったのかい?」
 ”はい、若様・・・”
 エリウスの問いに誰もいないところから声がする。すると影が動き人の形を成してゆく。先ほどこの部屋から出て行ったゾフィスだった。相変わらず顔を隠していてその正体は分からない。
 「配下より緊急の連絡が入りました。ストラヴァイド光国で動きがありました」
 またしてもレオナはどきりとする。先ほど何の動きもみせないといわれたばかりなのに、いったいなにが起こったのかと心配する。ゾフィスの言葉を聞き逃すまいと耳をそばだてる。
 「国王ジーン=エイム=ストラヴァイドが崩御なさいました」
 あまりに衝撃的な言葉にレオナは目眩がした。一月前優しく言葉をかけてくれた父親が死んだというのだ。とてもではないがレオナには信じることが出来なかった。そんな彼女に信じられない情報が続く。
 「王弟ルード=ジナ=ストラヴァイドが国王に即位。その愛娘、リンゼロッタ=フォン=ストラヴァイドが第一王位継承者兼近衛騎士団団長に就任、”姫将軍"を名乗っております」
 思いもかけない展開にレオナは目眩がしてくる。叔父が従姉妹がまるで自分のすべてを奪っていくかのような行為をしているのだ。それを信じろというのが無理な話だった。だが、それを聞いたエリウスのほうはいたって冷静だった。むしろ予想した通りになったといった感じだった。
 「動くのが意外に早かったな・・・で、残りの、二王女の安否は・・・」
 「現在は光の宮に逃げ込みご無事の様子。ですがクライゼなる男がアリス王女を求めているとの情報も・・・」
 これがとどめであった。ルード、リンゼロッタ、クライゼ。自分が味方だと思っていた人物すべてが自分を利用しただけの敵だったのだ。一ヶ月前のヴェイス遠征、アレも罠だったのだろう。そして欲深き者たちが自分がいなくなったのをいいことに動き出したということである。そのことをようやく悟ったレオナは腹のそこから怒りがこみ上げてくる。三人を八つ裂きにしなければ気がすまない。それほどの怒りだった。
 「エリウス様!お願いがあります!私が国に帰ることをお許し下さい!妹たちを助ける許可を・・・」
 奴隷の身でそんなことを言える立場にないことは分かっていた。それでも妹たちを助けたい、その一身でエリウスに懇願した。だが、エリウスの返事はレオナにとって信じられ無いものだった。
 「いいよ。ついておいで」
 エリウスはそう言うとレオナの手を取る。故国に帰ることを許されると思っていなかったレオナはしばし呆然としていた。が、気を引き締めなおす。エリウスは短く呪文を唱えるとレオナを連れその場から姿を消す。転移魔法を使いいずこかへと向かうのだった。

 ストラヴァイド光国王都ストラーヴ。その南の外れに光の宮は建設されていた。代々光の巫女の祈りの場とされ神聖不可侵の宮とされていた。その宮が今軍隊に包囲されていた。いまやストラヴァイド国の軍のほとんどがルードの思いのままであった。
 「アリス姉様・・・なにがあったの?父様は?レオナ姉様は?」
 アリスにしがみつきながら幼い末姫・ステラは涙を浮べる。不安で不安で仕方がないのだ。そんな妹姫を抱きしめながらアリスは気丈に振舞い、妹を慰めてやる。
 「大丈夫。何も怖いことはありませんわ」
 「・・・うん・・・」
 優しい姉の言葉にステラは素直に頷く。とはいえアリスも安心しているわけではない。いかに光の宮といえどもただの祈りの場に過ぎない。自分に味方してくれる騎士はわずか。この状況で一斉に攻め込まれたらいったいどれほど持ちこたえることが出来るかわかったものではない。何か根本的策が必要だった。
 「姉様・・・私たちをお守り下さい・・・」
 アリスは姉に祈る。そのときだった。正面の扉が打ち破られる。騎士たちが自分を守るべく前をふさぐ。
 「こんなところに逃げ込んで・・・僕から逃げられるわけないじゃないか・・・」
 扉の向こう側からは優男が一人で入ってくる。クライゼ。姉を裏切り、死地に追い込んだ男。アリスにとって憎むべきものの一人だった。その男は平然と自分に言い寄り、自分のものになるように口説いてきた。父王が生きていた間は毅然と拒んできたが、その死後は強引に推し進めようとしてきたのだ。だからここに逃げ込んできたのである。
 「貴様ごときが姫様に触れるなど恐れ多い!!」
 「あれぇ?たかが騎士の分際で光の勇者たる僕に逆らうの?やだねぇ。身の程を知らない奴って・・・」
 クライゼは自分に剣を構える騎士に侮蔑をこめた視線を向ける。完全に相手を見下しきっていた。
 「まあいいや。君たち消えてよ、邪魔だからさ!"ライトニング・バースト"!」
 騎士たちの眼の前で光が膨れ上がり、爆発する。その爆発に騎士たちはことごとく吹き飛ばされ壁に、床に叩きつけられる。そんな騎士たちを見ながらクライゼは大笑いする。
 「だから言ったじゃないか、たかが騎士が僕に逆らうなって」
 「ならここからは私が貴様の相手をしてやろう」
 勝ち誇るクライゼに虚空から声がする。驚くクライゼの眼前の空間が歪み、その奥からレオナが剣を構えて飛び出してくる。不意を付かれたクライゼだったがレオナの一撃をかろうじて受け止める。
 「これは驚いた・・・まだ生きていたんですか、レオナ姫・・・」
 「ああ、こうやって生き恥をさらしているぞ、クライゼ。貴様たちに復讐するためにな!!」
 レオナの鋭い一撃をかわし、クライゼは距離をとる。そのクライゼをレオナは追撃する。
 「まったく、あの時死んでいてくれればこんな面倒なことにならなかったものを」
 「私に近づいたのはこのためか!アリスに近寄るための嘘だったのか!!」
 「当たり前だろう?アリス姫は光の勇者たる僕の伴侶。それを前国王はまるで会わせてくれなかった。だから君を利用したのさ。いい人だったよ、君は。僕の言うことは何でも聞いてくれたからね」
 クライゼは馬鹿にしたような口調でレオナを挑発する。その言葉にレオナはさらに怒りを爆発させる。力のこもった攻撃が二撃、三撃とクライゼに繰り出される。クライゼはそれを悠然とかわしてみせる。
 「まあ、そろそろ君も邪魔だったからね。国王排斥の下準備として暗黒の国にいってもらっただけの話さ。まさか生きていたとは思わなかったけどね。」
 クライゼはさらにレオナを挑発する。それがレオナから冷静さを失わせる策であることは誰の目にも明らかだった。いつのもレオナならばそれを見抜き、そんな挑発には乗らなかっただろう。しかし今の彼女はそれを見切れなかった。必要以上にクライゼを追いかけてしまう。
 「まあ、あの時死ななかったのなら今この場で始末するだけさ。”レイ・アロー”!」
 クライゼが右手をかざす。光の矢が収束し、レオナの腹部を貫く。レオナは大量の血を吐き出し前のめりに倒れふす。クライゼはその顔を無残にも踏みにじる。
 「結局君はこの程度なんだよ。光の勇者たる僕の足元にも及ばない、そこに倒れてる騎士どもと変わらないカスってことさ」
 「そのカス以下の存在が何大きなことをほざいている」
 レオナを蔑むクライゼにエリウスは冷たく言い放つ。今まで気づかなかったエリオスの存在にクライゼは驚きの表情を浮べる。エリウスはアリスたちの傍にたたずみ、レオナの戦いをじっと見つめていたのだった。その間一言も口を利かずに。
 「なんだ、おまえ・・・」
 いつの間にかアリスのそばにたたずんでいたエリウスにクライゼは驚きつつも強気の態度に出る。何者かは分からないが、自分より強いはずがない。そんな自信がそんな態度を取らせていたのだ。そんなクライゼの態度にもエリウスは一切動じることはなかった。
 「何者かは知らないけど、僕の邪魔をするなら・・・殺すよ・・・」
 「口先だけなら誰にでも言える。やれるものならやってみろ」
 クライゼの脅しにもエリウスは動じることなく逆に挑発してみせる。
 「それとも自称”勇者”殿は不意打ちしか出来ないのかな?御託はいいからさっさとしなよ」
 さらに追い討ちをかけるように さらに挑発する。もともと気の短いクライゼはそれで切れた。完全に逆上すると”レイ・アロー”をエリウスに放つ。光の矢がエリウスに炸裂する。
 「バカが・・・光の勇者たる僕を怒らせたりしなければ死なずにすんだものを・・・」
 「こんなちんけな魔法で誰が死ぬって言うんだい?」
 ”レイ・アロー”が炸裂したことで勝ち誇るクライゼであったが、それを片手で防いだエリウスには傷一つ付けることは出来なかった。信じられない光景にクライゼは数歩後退する。
 「そんな・・・なんなんだ・・・おまえ・・・僕の・・・勇者の魔法が効かないなんて・・・」
 「おいおい、冗談はよしてくれ・・・この程度の魔法じゃ、中級魔族以上は倒せないよ。第一光の魔法はストラヴァイド王家の血筋なら大概誰でも使える魔法だぞ?」
 顔面を蒼白にして驚くクライゼにエリウスはあきれ返ってしまう。同時にこの男の正体もおおよそ見当がついた。ルードの手駒として育てられた存在、つまり彼の妾の子供なのだろう。その彼がアリスを狙ったのは仮初の光の勇者の地位を確固たるものにするためだった。ようは自分の欲望のためだったのだ。
 「まあ、こちらの手助けをしてくれた御礼だ。お手本を見せてやる。”レイ・アロー”って言うのはこういうのを言うんだ」
 エリウスは厳かに言うと指を鳴らす。瞬間、クライゼの周囲の空間が歪み無数の”レイ・アロー”が放たれる。一斉に周囲から放たれた”レイ・アロー”はクライゼを串刺しにする。
 「ぐはぁぁぁぁっ!!」
 大量の血を吐き出してクライゼは地に伏す。信じられないことだった。自分が苦心して習得した”レイ・アロー”をいとも簡単に、それも無数同時に発動させたのだ。
 「貴様・・・いったい・・・」
 「カスに名乗る名前はないよ・・・それに、君の相手は、ほら、目を覚ましたみたいだ」
 あまりに圧倒的な力を持つ敵にクライゼは恐怖した。とてもではないがこの男に自分は勝てないだろう。瞬時にそう分かるほど実力は開いていた。そしてこの男は自分を見てはいない。他の箇所を見つめながらそういっているのだ。男の視線の場所に自分の視線を移す。
 「レオ・・・ナ・・・」
 そこには腹部を血まみれにしながらも佇むレオナの姿があった。口元から血をたらしながらじっとこちらを見つめている。美しい顔も血に染まり、その目には光はなく、死んだ魚のような目をしていた。何事かぶつぶつと繰り返し呟いている。なにを言っているのかと耳をそばだてる。
 「負けない・・・負けるものか・・・こんな・・・男に・・・」
 そう何度も何度も繰り返し呟く。まるで何かに取り付かれたかのように。そんなレオナにクライゼは恐怖した。先ほどは彼女を挑発し不意打ちでしとめることが出来た。だがもうその手は通じないだろう。いくら手負いとはいえ自分も身動きできないほどの重傷を負っている。逃げることは難しかった。何とか逃れる手段を画策する。
 「そうだ、レオナ・・・己を解放するがいい・・・”剣の巫女姫"の能力を・・・」
 徐々にオーラに包まれてゆくレオナを見つめながらエリウスはそう呟く。こらからなにが起こるか理解しているようだった。アリスもステラも姉の変化をじっと見つめるだけだった。レオナから放たれるオーラはさらに大きくなり、ついには彼女自身を包み込んでしまう。それはまるで赤い卵のようだった。
 「なにが・・・何が起こったんだ・・・」
 眼の前に出現した赤い卵、その異様さにクライゼは身動きできなかった。卵の中ではなにかが脈動するのが分かる。その脈動はどんどん力強くなってゆく。その脈動が最高潮に達したとき、卵のからが割れる。中から一人の女性が姿を現す。その姿は間違いなくレオナであった。だがそれまで来ていた服は消え去り、銀色の鎧を身に纏い腰には剣を下げている。腹の傷も完全にふさがってしまっていた。決定的に違ったのはその背中にある翼だった。煌めくばかりに美しい白き翼がレオナの背中には存在していた。誰もがその美しさに見惚れてしまった。
 「これは・・・いったい・・・」
 自分に起こった変化にレオナは戸惑った。あれほどの重傷を負いながら、助かったこと。そして何よりこの姿だった。背中に翼まで生えている。この変化に大いに戸惑った。
 「おめでとう、レオナ。紋章の力が覚醒したみたいだね」
 嬉しそうな顔でレオナに祝辞を述べる。レオナはあわてて主に駆け寄る。
 「エリウス様、これはいったい・・・」
 「覚醒したのさ、君の内に眠っていた力、”巫女姫”の能力がね・・・」
 「”巫女姫”・・・?」
 聞き覚えのない言葉をエリウスは口にする。それがなんなのかは分からない。だがその力を自分は持っていたということなのだろう。そしてこの命の火が消えるその瞬間に覚醒したということだ。信じられないような力が内からわいてくるのを感じる。
 「なんだか分からないが・・・この隙に・・・」
 クライゼはあわてて回復の呪文を唱える。さすがに全開には程遠い状態だったが、この場から逃げるくらいはどうにかなるほどは回復した。床から飛び起きると身を翻して逃げ出す。
 「なんだかわからんが、このままここにいたらやばすぎる・・・」
 後ろをちらりと振り返りながらクライゼは全力で走り出す。が、すこし走ったところで何かにぶつかってしまう。前を向くとそこにはいつの間にかレオナが佇んでいた。
 「へっ?あ?な、なんで・・・」
 先ほどまで自分の後ろにいたはずの彼女が自分の前にいることにクライゼは腰を抜かさんばかりに驚く。思わずしりもちをついてしまう。それ以上何もいえない。ただがたがたと震えるだけだった。
 「今なら分かるのに・・・私はなぜお前のような小物に心引かれたのだろうな・・・」
 「小物・・・?この光の勇者たるこの僕がか!!」
 自分に脅え、ガタガタと震えるクライゼをレオナは哀れみのこもった眼差しで見つめると、そうきっぱりと言い切る。そのレオナの言葉にクライゼはそれまでの恐怖を忘れたかのように激昂し、怒鳴り散らす。そして左腕を捲り上げるとそこに刻まれた勇者の印、”太陽の紋章"をレオナに誇示するように見せ付ける。
 「この紋章が選ばれし者の証!それを・・・それを小物扱いとは!!」
 「・・・それがなんだというのです?そんな偽物の紋章に何の意味があるというのですか・・・」
 レオナに冷たく言い放たれたクライゼの表情が青くなる。レオナのいうとおりこの紋章は本物ではない。ルードがクライゼを"光の勇者"に仕立て上げるために刻み込んだ刺青であった。これを見せ付けることで信用を勝ち取り、偽の勇者が本物面していたのである。それをあっさりとレオナに見破られてしまったのだ。
 「でも光の魔法が・・・」
 「それはお前がルードの妾の子供だからだろう?あんな男でも王家の血を引いているからな。その息子なら使えて当然さ。でも、光の勇者を気取るなら、20本同時に扱ってもらいたいね・・・」
 なおも食い下がるクライゼだったが、エリウスに一蹴されてしまう。同じ光の魔法でも実力の差は歴然としていた。それはクライゼが偽物であることを証明していた。
 「くそ・・・ここまできて・・・ここまできて・・・」
 行き詰まったクライゼは唇を噛み締めて呟く。せっかく光の勇者としてここまでのし上がってきたというのに、今眼の前にいる二人のために全てを失うわけには行かなかった。
 「こんなところで・・・」
 クライゼの表情に苦悶の色が浮かぶ。やっとの思いで最終目標であるアリスの元にたどり着いたのである。クライゼが光の勇者を演じていたのは何も父ルードのためではなかった。幼き日に見かけたアリスをモノにしたい、ルードと同じ欲望を満たすためだった。
 そのアリスを目の前にしてすべてが崩れ落ちようとしていた。
 「こんなところで終わってたまるかぁ!!」
 クライゼは吼えるように叫ぶと、"レイ・アロー"をレオナ目掛けて放つ。先刻に倍する大きさの光の矢がレオナに襲い掛かる。先刻のことを想えばレオナはどうすることも出来ないとクライゼは高をくくっていた。
 しかし、レオナは避けようともしないで悠然とその場に佇んでいた。翼で自分の体を覆い隠すと"レイ・アロー"を正面から受け止める。翼に着弾した光は四散し消えてゆく。
 「そんな・・・バカな・・・」
 「わかっただろう・・・お前の力はもはや私には通じない・・・諦めることだ・・・」
 「だ・・・だまれぇぇぇっっ!!」
 光の矢がまるで通じなかったことに驚くクライゼだったが、レオナに冷たく言い返され怒りまくる。腰の剣を抜き放つと何事かわめき散らしながらレオナに切りかかってゆく。でたらめな太刀筋でレオナをどうこう出来る筈もなく、あっさりと受け流されてしまう。
 「そんな・・・どうして・・・どうして当たらないんだぁぁっっ!!」
わめき散らしながら剣を振り回しクライゼがレオナに襲い掛かる。振り回すだけの剣などレオナには恐怖ではなかった。そしてこの程度の男に夢中になっていた自分が嫌になり、自己嫌悪に陥ってしまうのだった。
 「終わりにしよう、クライゼ・・・永遠に・・・」
 レオナはクライゼに別れの言葉を呟くと腰の剣を抜き放つ。星のきらめきを放つその剣が空を切るたびに空間が裂けてゆく。空間の裂け目は各所に発生し、いつしかクライゼを覆い尽くす。
 「はひぃっ・・・いあああっっ!!」
 「さようなら、クライゼ・・・”ディメンション・ブレード"!!」
 恐怖に歪むクライゼの眸に美しく佇むレオナの姿が映る。それがクライゼがこの世で最後に見た光景だった。次の瞬間クライゼの肉体は無数に切り刻まれ、この世から消滅する。クライゼが消滅するのを確認したレオナは踵を返すとエリウスの元に戻ってゆく。そのエリウスの傍ではアリスとステラが佇みじっと自分を見つめている。
 「レオ・・ナ姉さま・・・なの?」
 アリスの後ろに隠れながらステラは恐る恐る尋ねてくる。こんな翼が生えているのだから無理もなかった。それでもレオナは優しい笑みを浮べてステラの前にしゃがみこむ。
 「そうよ、ステラ・・・姉様、怖い?」
 じっと見つめる妹姫に静かに語りかける。怖いといわれても仕方がないと思って尋ねるのだった。ステラはしばらくじっとレオナを見つめていたが、ゆっくりと首を左右に振る。
 「ううん、怖くなんかない。だって、姉様。天使みたい・・・」
 ステラはそう言うと笑みを浮べてレオナにしがみつく。柔らかな翼の感触を確かめている。レオナはそんな妹姫をそっと抱きしめるのだった。
 「姉様。やはり姉様が”剣の巫女姫"でしたのですね・・・」
 ようやくアリスが口を開く。それはまるで昔から知っていたかのような口調だった。
 「アリス。貴方、知って・・・」
 「なんとなく・・・ですわ。だって私も”巫女姫”ですから・・・」
 妹姫の意外な言葉にレオナは愕然とする。あわててエリウスのほうを見ると彼も頷く。妹も自分と同じ人間だとは想像もつかなかった。だが、この不思議な雰囲気を漂わせるこの妹姫が”巫女姫"であるといわれるとなぜか説得力があった。
 「エリウス様、お聞きしたいことがございます」
 「いいけど、ここではまずいな。他の兵が乱入してくる可能性がある」
 レオナは疑問に思ったことを尋ねようとするが、エリウスはそれをとどめる。確かにこのままここにいればいらぬ争いの元となるだろう。ここはアリスとステラを連れて引いた方が得策だった。レオナはちらりと壁際に倒れた騎士たちのほうに視線を送る。
 「そなたたちはどうする。私たちとともに来るか?」
 「レオナ様・・・。いえ、われわれはここに残ります。家族を残してはいけません」
 騎士たちは静かに首を横に振る。ここにこのままとどまったとしてもあの叔父が彼らを許すとは思えない。見せしめのために一家皆殺しにする可能性もある。それでも残るといっているのだ。その決意を覆すことはレオナには出来なかった。それはアリスたちも同じだった。
 「・・・きみたちがもし・・・レオナやアリスたちのことを思っているのなら家族を連れて国境の砦まで来るといい。君たちを迎え入れるよう取り計らっておこう」
 「エリウス・・・様?」
 「僕はこういった忠誠心溢れる人間は好きだからね」
 寄り添うアリスの髪を撫でながらエリウスは優しく言ってくれる。そんな優しさが身内や恋人に裏切られたレオナには嬉しかった。
 「お前たち、聞いての通りだ。もう一度だけ、ストラヴァイド王家に仕えてはくれぬか。私やアリスにではない。正統王位継承者たるステラのために・・・」
 レオナの言葉に騎士たちははっとなる。異形となった自分や同じ"巫女姫"であるアリスのためではなく、人の子であるステラのために尽くして欲しいという彼女の気持ちを痛いほど感じたのだ。それを断るほど不器用な生き方は彼らには出来なかった。深々と首を垂れる。
 「もし、来る気があるのならばこの指示通りに来るといい」
 エリウスは騎士の隊長格に一枚の羊皮紙を渡す。そこには家族を連れて王都を脱出する術が書き込まれていた。もう一度騎士たちは首を垂れる。エリウスは短く呪文を唱えると彼らをいずこかへと飛ばす。軍に取り囲まれている以上、脱出させてやった方がいいと判断したのだった。
 「さて、われわれもいくとするか」
 エリウスの言葉にレオナもアリスも彼に身を寄せる。ステラは状況が分からないままアリスに抱きしめられていた。エリウスが呪文を唱えるとその姿が光の宮から消えうせる。あとには血の海だけが残されていた。

 その夜、アリスはエリウスの部屋にいた。ダークハーケン城まで跳んだアリスたちには部屋が割り当てられたが、彼女は自ら進んでこの部屋を訪れたのだ。部屋に入り込んだアリスの眼の前では二人の男女が身を寄せ合い、お互いを貪り、欲情の限りを尽くしていた。
 「ああっ・・・エリウス様・・・もっと・・・もっとはげしくぅ・・・あああああっ!!」
 美しい金色の髪を振り乱しレオナはエリウスの上で悶え、求める。先ほどまで毅然とした態度を取ってきた女性には思えない姿だった。はじめて見る男女の狂宴にアリスは言葉なく立ち尽くすのみだった。顔を真っ赤にしながらもその姉の痴態から目を離す事が出来なかった。
 「あっ、あっ、あっ、エリウス様、エリウス様。エリウス様〜〜〜!!!」
 エリウスはレオナの背後から彼女を貫き、激しく腰を打ち付ける。その動きにレオナは、形のよい乳房を揺らしながら、何度も、何度も主の名前を絶叫する。エリウスのペニスは遠慮なく何度もレオナの膣内をかき回し、子宮を犯してゆく。それを求めレオナも腰を自ら動かす。激しい腰のぶつかり合いがお互いを高みへと押し上げて行く。
 「やあぁ・・・ああああんっ・・・い・・・いく・・・いくぅ・・・・!!!」
 一際大きく戦慄くと、レオナは絶頂を迎える。床の上に倒れ伏せ、絶頂の余韻に浸る。いまやレオナにとってエリウスとの夜は至福のときであり、何ものにも換えがたいものだった。エリウスはそんなレオナから射精を終えたペニスを抜き取ると、自分たちを見つめてまま動かないアリスのほうを向き直る。
 「おいで、アリス。君も仲間に入りたいのだろう?」
 妹の名前を呼ばれてレオナはあわてて身を起こす。そしてようやくその場にアリスがいたことに気づき、あわてて汗ばんだ肢体をシーツで隠す。
 「アリス、貴方いつからそこに・・・」
 「あの・・・姉様たちが・・・やっている間中・・・ずっと・・・」
 つまり自分の痴態を妹にしっかり見られていたのだ。レオナは耳まで真っ赤にして震えている。アリスのほうも初めてみた男と女の営みにもじもじとしてしまっている。そんな姉妹をエリウスは笑って迎えるのだった。
 「ほら、アリス。ここへ・・・」
 「は・・・はい・・・」
 エリウスに促されアリスは床の上に上がる。エリウスは優しくアリスの黒髪を撫でると、そのまま彼女の唇を己の唇でふさぐ。長く優しいキス。いつしかアリスの両腕はエリウスの背中に回されていた。
 アリスの緊張が解けてきたことを確認すると、エリウスは舌を彼女の口の中に差し込んでゆく。一気に奥まで入れずに、ゆっくりと先端から嘗め回してゆく。アリスは最初こそ驚いた感じだったが、徐々にエリウスを受け入れてゆく。そして最後は舌をおずおずと絡ませてくる。ピチャピチャと唾液の絡まる音が響く。
 「んんっ・・・あ・・・あふぅ・・・ああっ・・・」
 自然に声が漏れてくる。それでもアリスは唇を離そうとはせず、エリウスを求めた。そんな二人を見ていたレオナも間を割って舌を絡ませてくる。エリウスはちらりとレオナを見ると自分は唇を離す。すると今度はレオナとアリスが舌を絡ませあい、唾液を交換し合う。
 姉妹のそんな卑猥な光景を見ながらエリウスはアリスの夜着を脱がせてゆく。胸のふくらみはほとんどなく、まだ肉付きも幼い。レオナに比べてまだまだといった感じだ。だが肌の白さはレオナ以上だ。透き通るような肌というのにふさわしい白さだった。
 「綺麗だ、アリス・・・」
 エリウスはそう言うとその白い肌に口付けする。強く吸い上げ跡を残す。白い肌に赤いキスマークが残る。さらにそれを舐めると、エリウスの頭はさらに下にさがる。優しく包み込むようにしてアリスの幼い胸を揉み回す。ゆっくりと強弱をつけて・・・
 「んんっ・・・んはあぁ・・・はあむんんんっ・・・」
 生まれて初めて男性に肌をさらし、胸を触られる。そんな恥ずかしさに顔を赤く染め上げながら、アリスは快楽の声を上げる。そんな妹の口を優しくレオナがふさぐ。アリスの喘ぎ声はくぐもったものになり、かえって色っぽく感じられた。そのエリウスの手の動きにあわせるように、アリスの乳首も硬さをもち勃起してくる。桜色のそこは赤みを増し、ヒクヒクともの欲しそうに戦慄いている。
 「すごいわ、アリス・・・こんなに硬くして・・・」
 唇を離したレオナが妹の乳首が硬く勃起していることに気づく。顔の位置を下げそこをぺろりと舐める。ビクンと体が震える。二度、三度舐めてやると、その度に体が反応する。
 「アリス、そんなに気持ちいの?」
 「わ、分かりません・・・ただ、舐められると・・・体が反応して・・・」
 レオナの質問にアリスは顔を手で覆い隠しながら答える。恥ずかしいのだろう、顔は耳まで真っ赤になっている。
 「いいんだよ、感じても・・・もっと、もっと感じてくれ、アリス・・・」
 そう言うと今度はエリウスがアリスの乳首を口に含む。舌で転がし、軽く歯を立てる。それに同調するようにレオナももう片側の乳首を口に含み同じように舌で転がし、軽くかんでみる。左右の胸から同時に襲い来る快楽にアリスは悶える。頭を振って声を上げる。
 「あああっ・・・いやっ・・・あああんっ・・・そんなに・・・・」
 弱々しく声を漏らしながらも喘ぎ、エリウスとレオナの行いを受け入れる。と、突然アリスの体が一際大きく震え上がる。エリウスの指がアリスの秘所に触れたのだ。初めて触れられるその感触にアリスはまったく免疫がなかった。腿をきつく閉じてしまう。
 「大丈夫よ、アリス。怖くなんかないから。すぐに気持ちよくなるわ・・・」
 レオナは恐れる妹の耳元で囁く。その間もエリウスの手はアリスの体を優しく撫で回していた。徐々に緊張感が取れ、腿が開き始める。その隙を逃さずエリウスの手が股の間に入ってくる。内腿を優しくなで上げ、下着の上から秘所に触れる。淡い茂みの感触と、指先に感じる湿り気。それがすべてであった。アリスをそれ以上怖がらせないように注意しながら下着の上から割れ目に添ってなで上げる。奥からあふれ出す愛液がさらに指先を濡らし、下着のシミを大きくしてゆく。
 「はああ・・・エリウス・・・さま・・・ねえ・・さまぁ・・・」
 アリスの声が鼻にかかってくる。完全にエリウスを求めきっていた。そこを見計らってエリウスは指を下着の裾から差し込む。濡れた割れ目は指をあっけなく受け入れる。男を知らないそこはまだ硬さを持ち、指の侵入を拒んでいる。エリウスはゆっくりと周りからほぐすように膣道を刺激する。蜜を絡ませながら入り口をかき回す。 
 「ああっ・・・い・・・あああんっ・・・エリウスさまぁ・・・」

 緊張の解けてきた膣内にゆっくりと指先を押し込んでゆく。締め付けるような感触に酔いながらエリウスはアリスの膣を楽しむ。そしてアリスの感じる箇所を一箇所、また一箇所と掘り返してゆく。その度にアリスの肉体は大きく戦慄き、奥から新しい蜜が滴ってくる。
 「やぁ・・・あああっ・・・な・・・なに・・・」
 襲い来る何かにアリスは戸惑いも声を上げる。妹に襲い掛かっているものがなんなのか、分かっているレオナは優しく妹の耳元で囁いてやる。
 「大丈夫よ、アリス・・・それに身を任せなさい・・・」
 姉にそういわれてあり巣はその快楽の波に身を任せる。エリウスの指がアリスの膣道を掘り起こした瞬間、彼女の眼の前が白く染まる。全身を大きく反り返らせ、何度も痙攣を起こす。膣内も何度も痙攣し、奥から蜜が止め処無く滴ってくる。絶頂。初めて感じる極みにアリスは身震いした。
 「そろそろ・・・いくよ・・・」
 エリウスはアリスに優しく囁く。アリスは小さく、しかし確かに頷く。すでに硬さを取り戻していたエリウスのペニスは脈打ち、アリスの膣内に入りたがっていた。その欲望を懸命に押さえ込みながらエリウスはアリスの体を抱き寄せる。折れてしまいそうなほど細い体を支えながら、ペニスの位置を調節する。ペニスの先端が割れ目に潜り込む。そこでエリウスは手をアリスの腰に添える。
 「いくよ・・・」
 エリウスの言葉にアリスは短く頷く。エリウスはアリスの体を引き寄せる。濡れた膣道にペニスが潜り込んでゆく。狭く固いそこをみちみちと押し開きながら押し進む。ペニスが奥に進むたびにアリスの顔に苦痛が浮かび上がる。それでも痛いとは言わずにエリウスにしがみつき懸命に耐え抜こうとする。エリウスの背中に幾筋も爪のあとが刻まれるが、エリウスはそれを気にはしなかった。
 「うぐっ・・・あうっ・・・あああっ・・・」
 アリスはエリウスにしがみつく懸命に痛みを意識から追いやろうとする。そんなアリスの背中をさすって落ち着かせながら奥を目指す。だが、ペニスはあるところから先に進まなくなる。硬く、頑強な砦がエリウスの侵入を拒む。エリウスは力を込め、一気にアリスを貫く。ぶつっと何かを引き裂き、あとはペニスはするりと奥へと沈んでゆく。
 「あぐあ・・・あああああっ・・・」
 ペニスがアリスの最後の砦を引き裂いた瞬間、初めてアリスは目に涙を浮べる。そして痛みにそれ以上どうすることも出来なかった。ただただ、エリウスにしがみつき痛みをやり過ごそうとする。
 「アリス、ゆっくりいくよ・・・・」
 アリスの耳元で囁くとエリウスはゆっくりと腰を動かし始める。アリスの膣の傷を傷つけないように優しく小刻みに動かす。円を描いたりもする。それに合わせて膣道も蜜に濡れ始め、すべりをよくしてゆく。それでもまだ痛みはあるらしく少しでも激しく動くと痛みに顔を歪ませる。
 「大丈夫よ、アリス・・・エリウス様、寝そべってくださいますか?」
 「こうかい?」
 レオナのいわれてエリウスは床に寝そべる。そのエリウスを跨ぐとレオナはアリスに体を摺り寄せる。そして自分に合わせるようにアリスの体を動かしてゆく。
 「ほら、こうやれば、痛みは少ないでしょう?」
 「は、はい・・・姉様・・・」
 レオナの動きにあわせてアリスの動きも徐々に大胆になってゆく。そんなレオナも物寂しいのか自分の指で慰めながら腰をエリウスに擦り付けてくる。そんなレオナをみてエリウスは笑みを浮べる。
 「なんだ、レオナも欲しいのかい?」 
 「あ、当たり前ですわ。こんな光景見せ付けられましたら・・・その・・・」
 恥ずかしそうにうつむくレオナにエリウスは笑みを向ける。そして自身の下半身に意識を集中させる。すると下半身がヒクヒクと震え、もう一本ペニスが生えてくる。アリスが飲み込んでいるのと比べても遜色ない大きさのものだった。レオナはそれの登場にびっくりしてしまう。
 「普段は出さないんだけどね。頑張るレオナにご褒美だよ。」
 エリウスの言葉にレオナは嬉しそうな顔を向ける。そしていそいそとペニスを掴むと、自分の膣内へと招き入れる。硬く熱い感触がレオナの膣内に広がる。
 「あふぅ・・・これ・・・これが欲しかったんですわ・・・」
 激しく腰を動かしながらペニスを貪る。肥大したペニスがレオナの膣内をかき回し、刺激する。
 「い・・・ああああ・・・いい・・・いいです、エリウスさまぁ・・・」
 「私も・・・私も・・・いい・・・です・・ああああんっ!!」
 エリウスの体の上で姉妹が舞う。お互いに背中に手を回し、愛しき人もペニスを貪る。いやらしく響く水音も、恥じらいもなく叫んでしまう言葉も、今は彼女たちには関係なかった。高みへ、絶頂へ。ただただそこを目指すのみだった。レオナの豊かな胸が揺れアリスの幼い胸とこすれあう。お互いの恥毛も絡み合い、あふれ出す蜜がエリウスの股を腹をぬらしてゆく。エリウスも二人の締め付けに限界を迎えていた。
 「あああっ・・・いいい・・イく・・イくぅうううううう!!!!」
 「やあぁぁっ・・・もう・・もう・・・だめぇぇぇ・・!!!」
 「うく・・・イくぞ・・・ふたりとも!!」
 エリウスの体が大きく戦慄き、二人の膣内でペニスが爆発する。とめどなく熱い精液が二人の子宮に流し込まれる。その熱さを体で感じながら二人も絶頂へと登りつめていた。小刻みに震えながら絶頂の余韻をお互いに貪りあう。その瞬間を狙うかのようにエリウスが短く呪文を唱える。アリスの首にもレオナと同じ首輪が出現する。その一角にある宝石には水晶の紋章が浮かんでいた。
 そんなことも関係なくレオナとアリスは床の上に倒れこむ。限界を迎えた体は眠りを求めていた。眠りにつく二人をエリウスは抱き寄せる。
 「これで二人目・・・」
 まだ道のりは長い、エリウスはそう覚悟していた。だが、この娘たちとならば乗り切れる。そんな気がしていた。そんなエリウスの視線が壁の方に向けられる。いかなるものも貫くような鋭い視線だった。
 「ゾフィス、かい?ずっと見ていたのか?」
 ”申し訳ありません。緊急の用でしたので・・・”
 影が動きゾフィスが姿を現す。この者には恥じらいなどない。もっともエリウスもこの現場を見られたからといって恥ずかしいとは思っていない。だがこの侵入者に恥ずかしがるものもいた。まどろみ始めたばかりの姉妹だった。あわてて体を隠す。
 「きみらしくないな。こんなところまで入ってくるなんて・・・それで緊急の用とは?」
 ”ストラヴァイドが大結界を張りました”
 その言葉にエリウスの眉が大きく跳ねる。大結界。いかなるものの侵入も許さない最高の結界。その代わり中のものは外に出ることも出来ない。持久戦をするときに使われる術である。
 「規模はどれくらいだい?」
 ”ほぼ国土全体を覆いつくすほど広大なものです”
 「そんな結界今のストラヴァイドには張れないはずです。アリスがいない今では・・・」
 大結界を晴れるのは王族か、光の巫女のみ。いまやそれほど大きな結界がはれるのは故ジーン前国王か、アリスくらいのものだった。ルード一族の力は弱く、結界は張れてもせいぜい一キロ四方が限界のはずだった。その彼らが国土全体を覆いつくすほどの結界など張れる筈がなかった。レオナの口から疑問の声が漏れる。
 「どうやってそんな大きな結界を・・・まさか・・・」
 ”はい、そのまさかでございます。奴らはジーン前国王の御霊を贄に使いましてございます”
 その言葉を聞いた瞬間、レオナは床を殴りつける。アリスも口に手を当て大粒の涙を浮べる。御霊を贄に使う。それはその人の魂が永遠に失われることを意味した。
 「エリウス様!ルードどもの討伐を私たちにお命じ下さい!!お父様の御霊を生贄にするなど奴らは今すぐにでも討たねばなりませぬ!!」
 「落ち着きなさい、レオナ」
 「しかし・・・」
 「わかっているでしょう?大結界は不可侵の結界。こちらからもあちらからも手をだすことは出来ない。ましてや前王の御霊を使ったとなれば・・・最低でも一年は結界は解けないでしょう。」
 結界は高貴な魂を生贄にすればそれだけ堅固なものになる。それはレオナたちもよく分かっていた。今の自分たちがルードたちに手を出すことが出来ないことが。
 「でしたら・・・私たちのこの怒りはどこへもっていけばいいのですか!!」
 やり場のない怒りにレオナは叫ぶ。優しかった父王をこんな目に合わせた叔父たちに鉄槌を下すことの出来ない自分たちがもどかしかったのだ。怒りと悲しみに涙し震える二人をエリウスは優しく包み込んでやる。エリウスもこの一件には怒りを覚えていた。自分たちの保身のためにこのような行いをする輩を許す気はなかった。
 「奴らはこれより一年間、あの結界から出てくることはかなわない。ならばその間にこの世界を変えてしまえばいい。奴らにとって逃げ場のない世界に・・・」
 「逃げ場のない世界?」
 エリウスの言葉をアリスとレオナは不思議そうに問い返す。エリウスはニィっと恐ろしい笑みを浮べてさらりとこういった。
 「世界を我が手に!!」


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