第32話  竜王女


 「そうですか・・・エリザ姉様たちがそんな目に・・・」
 フィーラは悲しそうな顔をして俯く。今年15歳になったばかりの少女には肉親の犯した罪はあまりに重かった。それが慕い仲良くしていた家族を裏切ってのことであればなおさらのことである。さらに自分と上の姉アルセラは蚊帳の外であったことがさらに彼女を傷付けていた。
 「でも、エリザ姉様が無事で本当によかったです・・・」
 目に涙を溜めながら嬉しそうに微笑むフィーラにエリザベートは笑顔で答えられなかった。すでに自分は人ではなく融合人間。魔族の血を体内に宿す身だったからである。それを悔いているわけではない。ただ、なんとなくフィーラに無事を喜ばれるのが心苦しかった。
 「それでアルセイラはどうしているのですか?あと、ライオットのことは何も知らないですか?」
 「アルセイラ姉様は一年前から奥の宮に篭られたまま一度もお顔をお見せくださらないんです・・・会いに行く事も許していただけないで・・・」
 一年前、つまりエリザベートたちがシールムたちに殺されたあの日以来アルセイラは顔をみせないのだという。その話を聞いたエリザベートは深い溜息を漏らす。
 「あの子は昔から勘が鋭かったわね・・・」
 エリザベートはおそらくアルセイラが一年前の事件のあらましを聞いて、姉達がエリザベートたちを殺したことに気付いたと推測した。その抗議の意味も込めて奥の宮に篭って顔をみせないのだろうとも。そのことにシールムたちもなんとなく気付いていたのだろう。だからフィーラにアルセイラに会いに行く事を禁じたのはそのためとエリザベートは推察した。
 「ライオット君とはもう一年以上あっていません・・・」
 「あの子が幽閉されている場所もわからないの?」
 「はい。わかっているのはお城にはいないこと、それぐらいしか・・・」
 フィーラからもたらされた情報を聞いたエリザベートは溜息をつく。フィーラはアルセイラのところにいけない以外は自由に出入りできたことからライオットが城にいないことを推測していた。もちろんアルセイラがライオットを匿っていれば話しは別であるが・・・すると沈痛な面持ちのフィーラが遠慮がちに尋ねてくる。
 「それで・・・あの・・・シールム姉様は・・・」
 「心配?あんな女でも・・・」
 「どんな罪を犯したとしても私の姉であることに代わりはありません・・・」
 姉であるシールムの犯した罪を知ったフィーラは姉がその罪を償ってくれることを望んでいた、しかしあの気位の高い姉がそう簡単に自分の非を認め謝るとは思えない。それを思いつらそうな表情を浮べるフィーラにエリザベートは何も言うことができなかった。
 「そうね・・・でも罪は償わないと・・・」
 「・・・はい・・・」
 エリザベートの言葉にフィーラは力なく頷く。いま姉がどうなっているのかフィーラは知らなかったし,エリザベートも教えるつもりはなかった。力なく項垂れるフィーラを見つめながらエリザベートは最下層に幽閉されたシールムのことを思い浮かべていた。
 (自業自得とはいえ・・・哀れなものね・・・)
 同情の気持ちは欠片もなかったが、フィーラに嘘をついたような気分でエリザベートは少し居心地が悪かった。そんなエリザベートの気持ちを知らないフィーラはわずかに笑みを浮べて来る。そんな笑みがエリザベートには心苦しかった。



 魔天宮最下層、妖魔族、巨人族の居住区に割り当てられたこのエリアに女の喘ぎ声がこだまする。その声は欲にまみれ、ケダモノの様な声であった。それも一人、二人ではない。何人という女の声が響き渡っている。居住エリアの一角に設けられた場所がその声の発生源であった。
 「うはぁぁっ!!もっろ、もっろぉぉっっ!!んぐっ、んぐっ!!」
 「はうっ!!いい、いいれすぅぅぅ・・・・」
 堕落しきった女たちの声がだらしなく響く一角。そこには何人もの女が首輪を嵌められ、鎖でつながれていた。両足を大きく広げ、群がる妖魔や巨人を受け入れる。休むことなく犯され続けたヴァギナとアナルはだらしなく開き、閉じることを忘れている。その奥からは妖魔や巨人が放った精液が止め処なく溢れてきていた。
 「ひんっ、もっと、もっと注ぎこんでぇぇ!!」
 自ら腰を振りヴァギナとアナルに沈み込んだペニスを貪る女達の声。その一部のお腹は大きく膨らみ、誰とも知れない赤ん坊を宿していた。それでも女たちは男を貪り、求め続けている。それが当たり前のことであり、自分の存在意義であるかのように・・・
 「んあはぁぁっ・・・いいよ〜もっとしてぇ〜、もっとおまんこにそそぎこんで〜」
 卑猥な隠語を口にしながら悶える女たち。彼女たちはもと捕虜である。エリウスは基本的に捕虜は無条件で解放している。万が一部下が捕虜を虐待した場合はそれを保護するように努めている。そしてそれを行ったものは厳罰に処せられる。四バカが戦闘時に戦功を立てながら、ファーガントの副官として軍議に参加できないのは捕虜をレイプしてしまうため、その戦功が帳消しにされてしまうからである。当の本人達は気にしている様子はないが・・・(レイプされたものは心を癒し、記憶を消してから解放される。)
 ただしいま、ここに集められている女は例外である。全て外界で何かしらの大罪を犯した者たちであった。もちろんただの犯罪者であれば法によって裁くことができる。しかし、その法によって裁かれないものも存在する。それが王侯貴族、大商人の関係者である。エリウスはそういった証拠を総て消し去り、法で裁けない者たちの情報をゾフィスに集めさせ、それをブラックリストに載せ、捕虜にしたときに秘密裏に裁くようにしている。こういったものにはエリウスは一切の容赦をしない。男は強制労働に駆り立てられ、女は妖魔たちの嬲り者にされていった。これは死ぬまで続けられ、逃げることは叶わない。また外から救出することもできない。まさに捕まれば地獄といったところであった。
 「ふぎぃっ!!しょ、しょこぉぉっっ!!!んんっぅ!!」
 そんな一角にシールムの姿があった。四バカに一晩中休むことなく犯され続けたシールムの精神は崩壊してしまっていた。あの気位の高さも、気の強さも全て失われていた。あとに残ったのは男を貪るただのメスであった。その後最下層に送り込まれたシールムは寝る間もなく妖魔や巨人に犯されている。
 「んっんぐっ、んんっっっ!!」
 口に突っ込まれたペニスに舌を絡め絞り上げる。たまらなく発射された精液をなんの躊躇いもなく、おいしそうに飲み干してゆく。空いた両手でもペニスを扱き、ヴァギナには二本、アナルにも一本ペニスを納めて快楽を貪る。全身は精液にまみれ、汚れていないところなどどこにもない。
 「んぐっ、んぐっ・・・お、おいひぃぃっ・・・」
 口の中に放たれた精液を一滴残らず飲み干すとシールムは恍惚の表情を浮べる。そんな彼女の空いた口に新しいペニスが押し込まれる。新しく押し込まれたペニスをシールムは嫌がることなく舐め回し、新たなる精液を求めて刺激する。いやらしく唾液を絡め舌を絡ませる。卑猥な音を立ててペニスを啜り、精液を求める。
 「ふうんっ、んんっふっ、んんっ・・・」
 口でペニスを堪能しながらシールムの腰は絶え間なく、いやらしく蠢く。ヴァギナとアナルを犯しているペニスを味わうように蠢く腰の動きに妖魔と巨人は辛そうな表情を浮べる。蠢いているのは腰だけではなく膣内も蠢いていた。何度も犯された所為で膣内はかなりゆるくなっていたが、それでもシールムが意識的に締めるとかなりきつくなる。
 「ふううっ、らして・・・いっぱい注ぎこんれ・・・お腹一杯さしぇて・・・」
 うっとりとした表情を浮べて懇願するシールムに答えるように耐え切れなくなった妖魔と巨人がヴァギナとアナルの中に大量に精液を発射する。お腹の中を満たしてゆく温かさを感じながらシールムは満足そうな笑みを浮かべペニスをしゃぶり、扱き上げる。
 「ふあああっ、もっと、もっといっぱいして・・・子宮の中をいっぱいにしてぇ!!」
 顔を、体を精液で汚しながらシールムはさらなる快感を懇願する。今のシールムにはセックス以外何も考えることはできなかった。何回膣内射精されることも、その結果妖魔や巨人の子供を宿す結果になってしまうことも、今のシールムには興味がなかった。お腹を満たしてくれる暖かさが全てであった。壊れたシールムは群がる雄のペニスを貪る。自分を満たすためだけに。だが彼女が満たされるときは永遠に来ないのかもしれない。それでもシールムはペニスにむしゃぶりつく、今というときを満たすためだけに・・・



 アルセルム国境線。展開されたアルセルム軍は5万を越えていた。主力である竜騎士団も半数が展開されている。地上軍も出し惜しみせずに全軍展開されている。その五万の兵の見つめる先には同じく展開されたヴェイス皇国第五軍、第八軍がそしてその後ろにはエヴィル・エレファントに引かれた巨大な宮殿がそびえたっていた。
 「ええい、まだシールムとフィーラの安否はわからぬのか!!」
 アルセルム国国王ファザン=アルセルムは苛立った口調で近従の兵に当り散らす。先鋒として出陣したシールムとフィーラが敗戦し、敵に囚われたというほうがファザンに衝撃を持って伝えられた。それは彼の傍に控える王妃ルナンも同様であった。元々気の弱い二人は大切な娘たちの安否を慮ってげっそりとやつれてしまっている。
 「たのむ・・・無事であってくれ・・・」
 二人が捕まって以来ファザンもルナンも一切食事を口にしていない。食事が喉を通らないのである。娘の安否を探らせてはいるが、いまだその安否はわかっていない。唯一わかっているのは二人が魔天宮といわれる敵の巨大移動要塞に連れて行かれたことだけであった。
 「だれでもいい・・・あの魔城から姫たちを助け出してくれ・・・」
 ファザンは悔しさを滲ませながら呟く。ルナンも目に涙を浮べて夫に縋りつく。そんな二人に側近達は何も言葉をかけることができなかった。もちろん彼らとて手を拱いていたわけではない。すでに数十人の密偵を魔天宮に向けて放っている。だが、その一人として戻ってこなかった。
 「陛下、ここは総攻撃で魔族を打つしか手はないかと・・・」
 側近の一人が遠慮がちにファザンに声をかける。これまでシールムとフィーラの安否を気遣って進軍できないでいたファザンであったが、いつまでもこうしているわけには行かない。最悪の場合敵がシールムたちを人質にして降伏を迫ってくるかもしれないが、そのときはそのときと覚悟を決める。
 「そうじゃの・・・エンシェント・ドラゴンは来ておるか?」
 「五体ともすでに後方に控えております」
 「神竜が使えぬのは痛いが、致し方あるまい・・・全軍に一時間後総攻撃を開始すると伝えよ!」
 ファザンの指令はすぐさま全軍に伝達される。この戦でヴェイスを破り大陸に平和を取り戻さん、攫われたシールム、フィーラ両姫君を救い出さんと、アルセルム軍の士気は高かった。すぐさま全軍が行動を開始し、一時間もたたないうちに突入の準備は完了する。
 「この一戦に我がアルセルムの存亡がかかっておる!奮起せよ!突撃!!!」
 ファザンの号令一過、アルセルム軍は一斉に国境を越え、眼の前に展開するヴェイス軍目掛けて突撃を開始する。地響きを立てての進軍にヴェイス軍もすぐさま応戦する。武器と盾がぶつかり合う音、肉を引き裂く音、断末魔の悲鳴、様々な音が戦場に鳴り響く。
 「第三騎士団、押されています!!」
 「第十五歩兵部隊、全滅!!」
 「第二竜騎士団、敵を撃破!!」
 ファザンのもとに様々の報告が寄せられてくる。だが、一向にシールムとフィーラの情報は寄せられる事はなかった。不安な表情を浮べるファザンとルナンであったが、まだ闘いは始まったばかりと、気を取り直す。だが次第にファザンのもとに寄せられる情報はこちらに不利なものになってゆく。
 「第一騎士団、半数が討ち取られました!!」
 「第三竜騎士団、全滅、左翼が崩れかけています!」
 ヴェイス軍は数的優位に加え、魔天宮に控えたダークエルフ弓部隊が”バリスタ”を使って群がる竜騎士に対抗してきている。その弓攻撃を掻い潜り反撃に出ようとするが、それは護衛のホブゴブリン長槍部隊に阻まれる。やむなく離脱したところを狙われる。弓攻撃の前に自慢の竜騎士団はなす術もなく次々に打ち落とされてゆく。
 「敵がここまでやるとは・・・止むをえん、エンシェント・ドラゴンを前に!!」
 戦況が悪いことを理解したファザンは切り札を戦線に投入する。五体のエンシェント・ドラゴンならばこの劣勢を吹き飛ばしてくれる、そう信じていた。ファザンの命を受けた竜信者がエンシェント・ドラゴンに戦いを求める。ゆっくりと目を開けたエンシェント・ドラゴンはじっと魔天宮を見つめると、その大きな翼をはためかせる。突風があたりに吹き荒れ、物をなぎ倒してゆく。大きく飛び上がったエンシェント・ドラゴンの姿をファガンは頼もしそうに見つめる。
 「頼むぞ、我らが切り札、我らが僕よ・・・」
 縋るような思いで上空にいるエンシェント・ドラゴンに言葉を投げかける。しばし上空に待機していたエンシェント・ドラゴンはもう一度大きく羽ばたくと戦場へ向けて飛び立ってゆく。戦場に着くとすぐさまエンシェント・ドラゴンはヴェイス軍目掛けてブレスを吐き出す。
 「おおおっ!!」
 強力なブレスに焼かれ、薙ぎ払われるヴェイス軍の姿を見てファザンとルナンは歓喜の声を上げる。その圧倒的な強さの前にヴェイス軍はなす術もなかった。それまで竜騎士を打ち倒していた”バリスタ”もエンシェント・ドラゴンの前ではその力を失っている。
 「これならば・・・これならば!!!」
 魔天宮にも降り注ぐブレスを見つめていたファザンは大きな期待を寄せる。このまま相手が戦意を失い,降伏すればシールムとフィーラを助け出すことができる。もちろん降伏したからといって魔族をそのままにして置くつもりはない。娘たちを取り戻したら皆殺しにするつもりでいた。
 「”竜の契約”ある限り、我等は負けぬ!!」
 エンシェント・ドラゴンの活躍を目の当たりにしながらファザンは歓喜する。そして古の昔、初代アルセルム王が神竜と結んだ契約に感謝する。全ての竜がアルセルムを守るために力を貸すという契約はその時よりアルセルムを守り続けているのだ。
 「そうだ・・・竜に守られし我らこそこの大陸の覇者なのだ!!」
 それなのに代々の王はその竜の力を使って侵略戦争を仕掛けるようなことはしてこなかった。神竜をはじめ、竜の力を持ってすればたとえ光の大国ストラヴァイドであっても、闇の王国ヴェイスであっても恐れることはなかったはずなのに、である。だが今は違う。自分が王になったからには神竜たちドラゴンを酷使してアルセルムを大陸の支配者にする野望がファザンには芽生えていた。
 「そうだ・・・わたしこそ、わたしこそが・・・」
 目を血走らせ興奮気味になっていたファザンの耳に悲鳴がこだまする。何事かと顔を上げたファザンは我が目を疑った。あれほど圧倒的な力を持ってヴェイス軍を、魔天宮を攻め立てていたエンシェント・ドラゴンが攻撃をやめ、次々に魔天宮に降り立ってゆくのが見えたからである。
 「何故だ、何故攻撃しない・・・我々との契約のもと戦わぬか!!」
 狼狽しきったファザンは大声で叫ぶがその声はエンシェント・ドラゴンに届くことはなかった。信じられない光景に愕然とするファザンだったが、すぐに現実に引き戻される。元々劣勢だった自軍はエンシェント・ドラゴンによって勢いを取り戻していたようなものである。そのエンシェント・ドラゴンがいなくなった今、勢いはまたヴェイスに傾いていた。
 「押さえよ、こちらに敵を近づけるな!!」
 ヴェイス軍が自陣に迫りつつあることを知らされたファザンは慌てて防戦するように指示を出す。その間に何とか動きを止めたエンシェント・ドラゴンを再び自分の支配下に戻そうと試みるが、まるでその思いは通じなかった。
 「なにが・・・何がどうなっておるのだ・・・”竜の契約”は・・・」
 呻くように訴えるファザンであったが現実は変わらない。やむなく撤退を考え始めたころにはすでに遅かった。周囲はヴェイス軍に囲まれ、近従の兵はほとんど残っていない状況であった。よく見ればほとんどの兵がすでに敗走し、戦場から撤退を始めている。
 「バカな!私は撤退していいなどと・・・」
 全軍に自分を守るように指示を出させるがどの部隊も自分達を守りに来ようとはしない。まるで誰か他のものの命令で動いているかのように自分を無視しているのだ。
 「わたしはこの国の・・・竜の国の王だぞ!!」
 「お前に王を名乗る資格があるのですか?ファザン・・・」
 絶叫するファザンに冷ややかな言葉が投げかけられる。その声のしたほうを振り返ったファザンは驚き腰を抜かしそうになる。それはルナンも同様であった。そこには四バカを従えたエリザベートが愛用の弓を手に二人を睨みつけていた。
 「エ、エリザベート・・・?」
 「そんな・・・あなたはあの時・・・」
 「あの時確実に殺したはずだ?そう言いたいのですか?」
 狼狽しきった二人の様子にエリザベートはバカに仕切った笑いを浮べる。シールムと同じような顔をしているのがおかしくてたまらなかった。エリザベートの姿を見た二人は抱き合うようにガタガタと震えだしている。
 「エリザベート様の姿を騙るとは!魔族め!!」
 事情を知らない兵達が武器を手にエリザベートに襲いかかろうとする。だが、瞬時にエリザベートの弓から放たれた矢が兵達の兜を吹き飛ばす。そのあまりの早業に兵達の動きがぴたりと止まる。
 「おとなしく見ていなさい!」
 エリザベートにきっと睨まれた兵達のほとんどはその威圧感に圧倒され動くことが出来なかった。それでもファザンの近従の兵だけはファザンを守るためにエリザベートに襲い掛かる。もちろんファザンを守るためだけではない。ファザンの口から自分達が前国王一家殺害に加担したことが露見するのを恐れてのことだった。
 「エリザちゃんは動くなって言っただろう?」
 腕の筋肉をひくつかせながらホウルが彼らとエリザベートの間に立ち、槍を振るう。避けそこなった者は串刺しに、避けられた者でもその衝撃波に吹き飛ばされる。
 「黙っておとなしくしていろ!!」
 胸の筋肉を戦慄かせながらカウルが斧を振るう。剛閃瞬き、一瞬でニ、三人の兵が鎧ごと胴体を真っ二つにされる。
 「おとなしくしてれば命だけは助かるぜ?」
 背筋を戦慄かせながらピウルが鉄球を振り回す。巨大な棘の付いた鉄球が振り回され、勢いのついた一撃は易々と人間の胴体を吹き飛ばし、肉塊に変えてしまう。
 「まあ、逃げるなら追いませんが?」
 腹筋を動かしながらチウルが大鎌を振るう。死神の鎌を髣髴とさせる一閃が閃き、一瞬にして近従の兵の首を跳ね飛ばす。残された体は2、3歩前に進むと、大量の血を撒き散らしながら大地に倒れ伏す。
 「くそ!陛下には我々近衛騎士団が指一本触れさせぬぞ!!」
 ほとんどの兵がその力に圧倒され、しり込みする中、四バカの猛威にも怯まずなおも挑みかかる者もいた。王を守ることを第一とする近衛騎士団であった。ここで国王を見捨て逃げ出すことは自分達の存在意義をなくすことになる。だが本来近衛騎士団とは王を守る楯。家柄はもちろん、実力も伴なわなければならない。しかしファザンが国王になって以降その陣容はすっかり入れ替わり、家柄のみの張りぼて騎士団となっていた。そのため近衛騎士団の中でも国王を守ろうと動いたのはわずか4人しかいなかった。
 「いくぞ!我らの実力思い知らせてくれる!!」
 動いたのは近衛騎士団長と副長の三人であった。威厳ある顔をしてはいる。実戦経験は皆無といった面々が揃う騎士団であったが、それをまとめるだけあってそれなりの実力は持っていた。ただ問題だったのはそれなりでは四バカの相手にはならないということであった。
 「そんなひょろひょろの腕で俺たちに傷付けられると思っているのかよ?」
 切りかかってきた副長の一人の剣を槍で受け止めたホウルは片手でその剣を弾き飛ばす。副長はそれでも諦めずに何度も斬りつけてくる。その度にホウルは悠然と片手で受け止めてみせる。何度切りかかろうともその槍はびくともせず、副長は疲労だけしていった。
 「俺とまともに戦いたかったらもっと筋トレして来な!」
 副長の攻撃に飽きたホウルは剣を弾き返すと猛然と突きかかる。その攻撃に慌てた副長は剣で受け流そうとするが、その受けた剣をへし折ってやりは副長の腹に食い込み、刺し貫く。大量に吐血した副長の体から力が抜け、手足がだらりと垂れ下がる。それは彼の命の終わりを意味していた。
 「せいやぁぁっっっ!!」
 鋭い気合と共に副長の一人が剣でカウルを突く。身長差からとても体には届かなかったが、それでも腿の部分に剣が突きたてられる。が、それだけだった。皮膚の上で剣は止まってしまい、肉を切り裂くことも叶わない。
 「なんだ、少し筋肉を締めたやっただけでもうだめなのか?」
 足元で愕然とした表情を浮べた副長をカウルは鼻で笑う。そのカウルの態度に副長はもう一度剣を持ち直し、腿に剣をつきたてる。が、結果は同じであった。
 「もういいや、そんな筋肉じゃ相手にならん!」
 カウルはつまらなさそうにそう呟くと手にした斧を軽く横に凪ぐ。体を覆った鎧は易々と裂け、血を撒き散らし、内臓をぶちまける。真っ二つに切り裂かれた副長の上半身は数メートル先にまで吹き飛び、痙攣を起こしている。が、その動きもやがて止まる、永遠に・・・
 「だからもっと気合込めて剣を振れよ!!」
 その場に腰を下ろしたピウルの腹に副長の生き残りが剣を振るう。豚の顔に似合わない引き締まった腹部に副長は何度も剣を振り下ろすが、傷一つつけることはかなわない。
 「この、化け物め!!」
 ピウルのそのバカに仕切った態度に激昂し、狂ったように剣を振るう副長であったが、何度剣を振り下ろしても腹部にはわずかな傷も付かない。鼻をほじりながら副長の好きにさせていたピウルだったが、やがて無造作に愛用の鉄球を副長目掛けて振るう。大振りの鉄球がすさまじい勢いで副長に襲い掛かり、避け切れなかった副長の腰から上は骨を、血を、肉を、眼球を、脳漿を撒き散らせてこの世から消滅する。
 「お前、不合格!!」
 ピウルは鼻を鳴らして鉄球を肩に担ぐ。腰から上を失った脚はよろよろとよたつくとそのまま倒れこみ、血の海を作り出す。ヒクヒクと痙攣していた足も、やがて動かなくなる。それにピウルは視線も送らずにいた。
 「ほらほら、どうしたのです?!!」
 鋼鉄の鎧を身に纏っているというのに近衛騎士団長の動きは他の誰よりも早かった。チウルの周りを駆け回り、隙を窺っては攻撃を仕掛けてゆく。確実に急所を狙った攻撃だったが、そのどれひとつとしてチウルにダメージを与えられずにいた。全てその筋肉に阻まれていたのである。
 「どうしました?剣の腕に自信があるんじゃなかったのですか?」
 自分の周りを高速で走り回る騎士団長の動きに目もくれずにチウルはククッと喉を鳴らして挑発する。全身隙だらけでどこからでも攻撃できるのだが、如何せん筋肉がその攻撃の邪魔をしていた。ならばと騎士団長はチウルの肉体の一点に攻撃の目標を絞る。
 「もらったぁぁっっ!!!」
 大きく飛び上がり、チウルの背後からその首筋に剣を振り下ろす。自分の体重、鎧の重さ、重力、そういったものの力を借りてチウルの首をそぎ落とさんと剣を振るう。これまでと違った感触が騎士団長の手に伝わってくる。だが、それは首を落とした感触ではなかった。
 「そんな、バカな・・・」
 首筋に振り下ろされた剣は確かに皮を一枚切り裂いていた。そこからわずかながら血が滲み出している。ただそれだけであった。とても首を切り落とすまではいっていない。
 「その程度ですか・・・」
 最後の攻撃を受けたチウルは大鎌を握りなおすと、空気を切り裂くほど高速に真下から真上に切り上げる。その攻撃をうけた騎士団長の視界が二つに分かれる。そしてその視界はすぐに真っ暗闇に落ち込んで行くのだった。縦に真っ二つに切り裂かれた騎士団長の体は自分の血の海に沈む。
 「ひ、ひ、ひゃああああぁぁぁっっ!!!」
 自分達の力を上回る騎士団長達が赤子のように四バカに捻られ、敵の圧倒的な力の前に脅えきった兵は恐慌をきたし、奇声を発しながら我先にと反転し逃げ出してゆく。もはや誰一人として国王を守ろうと思うものはいなかった。一歩でも早くこの場から逃げ出したい、助かりたいという願いしか残されていなかった。
 「これがあなたと人望というものよ、ファザン小父様・・・」
 冷ややかに言い放つエリザベートの眼差しがファザンとルナンを射抜く。ガタガタと震えながら二人は必死になって彼女から逃げ出そうとする。腰の抜けた状態ではまともに動くことは出来なかったが、それでも必死になって後退ってゆく。そのファザンの脚に矢が放たれる。肉を引き裂いた矢にファザンは悲鳴を上げる。
 「ひぎゃああっっ!!」
 「どう?痛い?では、こういうのはどうかしら?」
 いつ矢を引き絞ったのかわからないほどのスピードで矢をファザンに射放ったエリザベートは、またも見えない速度で矢を番えると今度はルナンの肩を正確に射抜く。鮮血が白いドレスを赤く染める。ルナンの絶叫が一拍おいてあたりに響き渡る。ルナンは肩を抑えてごろごろと転げ回る。
 「さて、あなたたちに聞きたいことがあるの・・・ライオットは今どこにいるの?」
 冷ややかな眼差しでファザンたちを見下ろしながらエリザベートはシールムに訪ねたのと同じことを二人に尋ねる。激痛のため顔中に汗を貯めた二人は涙ながらに首を横にふるう。
 「知らない、知らないんだ!!」
 「本当よ、わたし達は何も知らないの!!」
 懸命に頭を振って知らないと言い通すファザンとルナン。だが、その目はこの場をしのいで逃げだそうと言う意思に満ち満ちていた。その意思を見逃すようなことをエリザベートはしなかった。無言のまま矢を番えるとファザンの腹部に放つ。脂肪で膨らんだ腹部に突き刺さって矢をファザンはしばし無言で見つめていたが、すぐに激痛にのた打ち回る。
 「言いなさい!ライオットはどこにいるのです?」
 「だ、だから知らないと・・・」
 エリザベートの質問にヒステリー気味に答えようとしたルナンだったが、その耳をエリザベートが放った矢が吹き飛ばす。耳を押さえてのたうちまわるルナンを冷ややかに見下ろしながら、エリザベートはもう一度問いかける。
 「あなたたちの寝言に付き合っている余裕はないの。ライオットはどこ?」
 ファザンとルナンはここにいたってようやく自分達がどれほど追い詰められているかを理解した。今のエリザベートにいくら知らないと嘘をついても逃げることは出来ないだろう。嘘を突き通そうものなら体のそこかしこに矢を付きたてられるに違いない。これ以上痛い思いは御免だと考えたファザンはルナンに視線を送る。ルナンのほうも耳を押さえたままこくりと頷く。
 「わ、わかった・・・言う、言うから・・・」
 「これ以上、矢を打たないで・・・」
 必死に命乞いする二人の姿にこれ以上の嘘はつけないと判断したエリザベートは矢を絞る力を緩める。あとは二人の口からライオットの居場所を聞き出せばいい。しばし口ごもったファザンだったがやがて口を開く。
 「ラ、ライオットは・・・がはぁぁぁっっっ!!!」
 「あ、あなた?ぎゃあああっっっ!!!」
 話をはじめようとした瞬間、ファザンが、続いてルナンが胸元を押さえて苦しみだす。ごろごろとのた打ち回り、やがて痙攣を起こし始める。エリザベートが慌ててその体を抱き起こすが二人はすでに事切れていた。白目をむき、口の端には泡を吹いている。その手は心臓を押さえている。
 「いったい、なにが・・・?」
 「呪がかけられていたみたいだね・・・」
 エリザベートは背後から声をかけられ、慌てて後ろを振り向く。そこにはエリウスが立ってファザンたちの死体を見つめていた。さらにはエンシェント・ドラゴンの背中に跨ったエンたちが首をかしげながらファザンたちの死体を見下ろしている。エンシェント・ドラゴンが魔天宮への攻撃を急に止めた理由はエンたちであった。エン(実際にはヒョウがやったのだが)たちの説得に応じ、エンシェント・ドラゴンたちはおとなしくなったのである。
 「呪とはどういうことです、エリウス様?」
 「おそらくライオット王子の居場所をしゃべろうとすると発動するようになっていたんじゃないかな?」
 「一体誰が・・・」
 エリザベートはそこまで言って思い当たった。こんなことをするのは、できるのはこの世で一人しかできない。その正体に気づいてエリザベートは歯軋りをする。
 「自分の両親に呪をかけるなど・・・そうまでして己の地位が大切ですか、ディアナ?!」
 今回の一件の主犯にエリザベートは怨嗟の言葉を投げかける。その言葉にディアナが答えることがないと知りながら。


 「くふっ・・・あふぅぅっ・・・」
 甘ったるい声を上げて女が悶える。男が自分の豊かな乳房を弄びながらその頂点で固くしこっている部分を舐るたびに、甘い声を上げて喜ぶ。その白い肌は上気し、じっとりと汗ばんでいる。金色の豪奢な髪が肌にへばりつき、その姿がさらに妖艶さを増している。
 「んんっ、あああっ・・・」
 男が女の乳首を口に含み、舌先で転がし、啜るたびに、女は嬉しそうに男に縋りつく。男の手は乳房を離れ腰を伝って柔らかなでん部へと下りてゆく。そのでん部をしばしやさしく揉みほぐすと、腿を撫で、股の間へとゆっくりと移動してゆく。そこはすでに潤いきっていた。
 「すごいな、こんなに濡らして・・・」
 男は指先でいまだ水をたたえる場所を軽く撫でてみる。クチュリといやらしい音を立てて指が埋没する。それだけで女は体を小刻みに痙攣させ、喜びの声を上げる。男が二度、三度指先で膣口をかき回すだけで愛液が滴り落ち、男の指を濡らしてゆく。男の指がさらに奥へと向かおうとした、そのときであった。
 「お休みのところ申し訳ありません、ディアナ様!」
 扉の向こう側から誰かが声をかけてくる。ベッドから身を起こしたディアナは声の感じから自分の身の回りを守っている騎士の一人だろうと推察した。
 「何かあったのですか?よほどのことがなければここには近付かぬようにと言っておいたはずですが?」
 「申し訳ありません。ですが、緊急の要件でしたので・・・」
 「何があったのです?早く言いなさい!!」
 扉の向こう側で言いよどむ男にディアナは激しく叱責する。しばしの沈黙の後、男はゆっくりと言葉を紡ぎだす。
 「陛下、妃殿下共に戦死されたとの報告が・・・」
 「死体を確認したのですか?」
 「え?あ、いえ、まだ・・・お二人が敵に囲まれ、さらに胸をお押さえになって倒れられたとの報告が・・・」
 「そのようは不確実な報告をあげる必要はありません!!早急に事実関係を調査なさい!その上で報告を!!」
 「畏まりました!!」
 ディアナに叱責された騎士はすごすごと引き下がってゆく。扉の向こう側に気配がなくなってからディアナは隣に座る男に顔を向ける。
 「どうやら父上たちは裏切ろうとなさったようですね・・・」
 「呪が発動したということですか、ディアナ様?」
 「ええ、そうよ。シールムのほうはまだ無事のようだけど・・・心配、旦那様?」
 意地悪そうな笑みを浮べてディアナは男に尋ねる。ディアナに尋ねられた男は肩を竦めてみせる。
 「正直なところ、どうでもいいですよ。あれが生きていようが、死んでいようが、私には関係ない!」
 「アラ、永遠の愛を交し合った妻に対する言葉かしら、それが?」
 「意地が悪いな、君も・・・私が愛しているのは君だけだといっているだろう?」
 シールムの夫、ストラヴァイド光国の貴族でもあるウィーゼアはそう言うとディアナを抱きしめキスをする。ディアナはそれを受け止めお互い舌を絡めあう。二人が肉体関係を持つようになったのはシールムが居なくなってからではない。それはウィーゼアがアルセルムに来たそのときからずっと続いている。
 「ひどい旦那様ね・・・」
 「そう言う君だって私のことを受け入れてくれているのに、妹に私を下げ渡すなんて・・・」
 「仕方がないでしょう?あの時シールムがアナタと結婚したいということを聞かなかったんですから・・・」
 一年前、エリザベートたちの暗殺事件の後、シールムは今回の一件の褒美にウィーゼアとの結婚を望んだ。すでにディアナとウィーゼアは淫らな関係にあったが、シールムはそのことを知らずにそれを望んだのである。ディアナもウィーゼアと肉体関係にはあったが結婚する気はなかったのでシールムの望みをかなえることにした。
 「まったく、あれとはつまらない夜でしたよ・・・」
 ウィーゼアはまた肩をすくめて見せる。シールムとの新婚生活は退屈の一言であった。マグロのように寝ているだけのシールムにウィーゼアはすぐに嫌気がさす。そんなウィーゼアの思いに気付いたディアナは彼を王宮騎士に取り立て、自分の警護を任せることにした。そんな二人が肉体関係を再開させたのはすぐのことであった。
 「君が私と結婚してくれればよかったのだが・・・」
 「すまないわね、私が結婚する相手はライオット。もっともあんな人形との結婚は形だけだけど・・・」
 ディアナの胸を堪能しながらウィーゼアは上目使いにディアナを見つめる。その視線を受け流しながらディアナは笑みを浮べる。そんなディアナの答えにウィーゼアも笑みを浮べて乳首を口で貪り、指で膣をかき回す。ウィーゼアの愛撫にディアナは甘い声を漏らしてベッドに倒れこむ。
 「ふふっ、いやらしい姫様だ・・・不倫相手に愛撫されてこんなに濡らすなんて・・・」
 ウィーゼア膣から指を引き抜くとその愛液に濡れた指をディアナに見せ付ける。ウィーゼアの愛撫に愛液を滴らせたディアナはその指の濡れ具合に頬を染める。そして自分からゆっくりと脚を左右に開きウィーゼアを受け入れる。それを見たウィーゼアは指先についた愛液を舐め取ると、ニヤリと笑う。
 「どうして欲しいのですかな、姫様?」
 「意地が悪いですのね?お舐めなさい、ウィーゼア・・・」
 「おおせのままに・・・」
 ディアナに命じられるままにウィーゼアは彼女の股間に顔を埋める。そして愛液で潤ったヴァギナに舌を這わせてゆく。ゆっくりとチロチロ舐めてゆくと、さらに奥から愛液が滴り落ち、ウィーゼアの舌を、口を濡らしてゆく。それに合わせてディアナの口からまた甘い声が漏れ始める。
 「ふうんっ・・・そこ・・・そこよ・・・あああっ・・・」
 ディアナが甘い声を漏らすたびにウィーゼアはそこを中心に責めてゆく。ディアナのヴァギナから垂れた愛液はお尻へと滴り落ち、ベッドに水溜りを作ってゆく。ウィーゼアは攻めるのを愛液が滴る場所から勃起して顔を覗かせている淫核へと目標を変える。そこを舌先で突付いてやるだけでディアナは悲鳴に似た声を上げる。
 「ひゃああんっ!!そこは!!」
 「気持ちいいんでしょう?もっと舐めて差し上げますよ・・・」
 ウィーゼアは淫核に沿って舌を這わせぺろぺろと舐めあげてゆく。それだけでディアナは腰を浮かせて喜びを露にする。さらにウィーゼアは淫核を口に含み、舌先で転がしながら軽く歯を当てる。その強烈な快感にディアナはあっという間に登りつめてしまう。
 「ふああああっっ!!!あっ、あっ、あっ・・・・」
 がくりと脱力したディアナは呆然としたまま余韻に浸っていた。股間から顔を上げたウィーゼアは口元を拭いながら自分のペニスを扱きあげる。興奮しきってビンビンに勃起したペニスは準備万端であった。ウィーゼアは我慢できずにディアナの足を掴んで開かせると、いきり立ったペニスの先端を濡れそぼったヴァギナに宛がう。
 「行きますよ、ディアナ様・・・」
 「んんっ、はいって・・・硬くて大きいのが入って来た・・・」
 ディアナは嬉しそうな表情を浮べて何度となく受け入れてきたペニスを受け入れる。柔肉を押し広がながら侵入するペニスにディアナは嬉しそうな声を上げる。その声を聞きながらウィーゼアは激しく腰を彼女に叩きつける。ディアナの膣内は狭く絡み付いてきて、これまで我慢を重ねてきたウィーゼアにはそう長くもちそうもなかった。
 「そ、そんな激しくしたら・・・あああっ、さっきイったばかりだから・・・」
 先ほどの絶頂で感度が増していたディアナも同じであった。ウィーゼアの激しい攻めにあっという間に限界を迎える。ウィーゼアも限界を目指して腰を動かし続ける。
 「ああっ、もう、もう!!!」
 「くうう、限界!!」
 びくりと大きく震えたディアナに膣内がきゅううっと締め付けてくる。それは彼女が絶頂を迎えたことを示していた。そしてその締め付けにウィーゼアも限界を迎える。しかし膣内射精だけは厳禁とされていたウィーゼアは慌ててペニスを膣内から引き抜く。
 「ディ、ディアナ様!!」
 「ふあっ・・・んんんっっ!!」
 勢いよく引き抜いたペニスを絶頂に浸るディアナに顔に差し出す。絡みつき泡立った愛液にまみれたペニスを眼前に差し出されたディアナは嬉しそうにそれにしゃぶりつく。ディアナがペニスを口に含んだ瞬間、ウィーゼアの我慢は限界を超える。そのまま熱い粘液をディアナの口の中に吐き出す。喉の奥にへばりつく粘液をディアナは一滴残らず飲み干してゆく。ウィーゼアが射精を終えてもペニスから口を離さず、尿道の奥に残った精液を啜り上げ、陰茎に絡みついた愛液までしゃぶりつくす。
 「ぷはっ・・・んんっ、おいしい・・・」
 口元に残った精液まで嘗め尽くすとディアナは嬉しそうな顔をする。そんなディアナを抱きしめながらウィーゼアはごろりと横になる。ディアナはウィーゼアの胸に抱かれながら妖艶な笑みを浮べる。
 「父上と母上が死に、シールムは敵の捕虜。ようやく計画を実行できますわ・・・」
 「では君がこの国の女王に?」
 「ええ。監禁されていたライオット王子を助け出し、前王崩御の真相をあなたの父上の罪状と共に国民に発表する。」
 「先王の遺児を助け出し、そのうえで国王の悪事を国民が知れば君は英雄だ」
 そこまで話した二人はニヤリと笑う。もちろん前王一家暗殺の主犯はディアナである。その罪を総て亡き父親に擦り付けて自分を英雄化しようとたくらんでいるのである。もちろんライオットを監禁したのもディアナである。それを開放したなどとは片腹痛いはなしである。しかしディアナはそれを平然と実行するつもりでいた。
 「国民は私とライオットの結婚を大いに祝ってくれるでしょうね・・・」
 「もっともライオット王子はこの一年間、あそこに監禁して薬漬けにしてあるから生ける人形にすぎませんが」
 「そう。だからこの国はわたしとあなたのもの・・・」
 一年前、エリザベートたちを暗殺したときから暖め続けてきたこの国の乗っ取りの計画がようやく成就するときが来たのだ。暗殺後すぐ事を起こせば国民には信じてもらえない可能性を考えたディアナは一年間、このときを待ち続けたのである。気の弱い両親がいつしゃべるかわからないと不安に思っていたディアナは、もしものことを考えて二人には内密に呪をかけておいた。二人の死に方の報告から、それがここで役に立ったようである。二人をどう始末しようか思案していたディアナにとって一つの懸念がなくなったのである。だが、同時に新しい不安が生まれた。
 「でも、呪が発動したとなると誰かあのときのことを、ライオットを探している人物が敵にいるということになりますね・・・」
 「そこだよ。何者かは知らないが、あのときのことを知っているのが不思議でならない・・・」
 覚えのない敵の存在にディアナもウィーゼアもやや不安を隠せずにいた。だが、この計画を実行してしまえば国民がその敵の言葉を信用するはずがない。こうなったら一刻も早く事を起こす必要があった。
 「残る懸案は・・・アルセイラね・・・」
 「”竜王女”殿下ですか・・・困りましたね、彼女は・・・」
 アルセイラを奥の院に監禁してはいるが、手出しできずにいるディアナとウィーゼアは渋い顔をする。竜と会話できる彼女の存在は今後のこの国の維持に欠かせない存在である。生かさず、殺さずを突き通して行くしか手立てはなかった。アルセラをどうするかを相談しているところに新たな報告が入ってくる。それはアルセイラが奥の院から姿を消したという報告であった。それを聞いたディアナもウィーゼアもなんともいえない渋い顔をしたのは言うまでもなかった。


→進む

→戻る

ケイオティック・サーガのトップへ